始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

12 / 21
今回とても難産でした。どうするべきか考えてみたんですが、こうなってしまいました。



敗走

 

 

浅草

東京府の中でも栄えた場所であり、夜間であっても光が絶えない眠らない町。そこに竈門禰豆子は居た。

 

水柱である冨岡義勇からの推薦で、育手である鱗滝左近次を紹介された禰豆子は、最終選別を生き残って鬼殺隊の隊士としての任務に当たっていた。

 

鬼に連れ去られた兄、竈門炭治郎を救い出し、家族を殺した鬼達を滅ぼす為に。

 

本来であれば何年も掛けて会得するべき呼吸法を既に覚えていた禰豆子だが、鱗滝から水の呼吸も伝授されていた。現在では常に全集中の呼吸を行う常中(じょうちゅう)も行えるようになっていた。

 

余談ではあるが優秀な隊士の多かった最終選別により、現在の藤襲山には鬼が一匹も残っていない。

 

そんな禰豆子は浅草にて、二人組を追い掛けていた。

 

一人は白い帽子を被り、松毬模様の洋装の男。

一人は後髪に簪を差し、花柄模様の和装の女。

 

睦まじい様子の男女に見える二人であったが、禰豆子の目は、二人が人間ではない事を見抜いていた。そして、大量の人間に囲まれた状況でも食欲に惑わされずに、人間の振りを続ける事から強力な鬼であることは明白だった。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

鬼舞辻無惨と珠世は浅草の町を歩いていた。近くには珠世の屋敷があり、そこでの研究の傍らの情報交換が目的である。

 

「それで?太陽を克服する方法、または鬼を人間に戻す薬とやらは見付かったのか?」

 

洋装の男、鬼舞辻無惨がゆっくりと歩きながら周囲の人間には聞こえない程度の声量で話しかける。

 

「確かに、貴方の血で研究は随分と進みました。ですが、それらの完成にはもっと多くのサンプルが必要です」

 

それに答える和装の女、珠世も同じ程度の声量で答える。この二人は共に人間ではない為に、その程度の声量であっても容易に聞き取ることが出来た。

 

「より多くの十二鬼月、それも上弦の血が必要か。だが」

 

無惨と珠世も十二鬼月の上弦であるからこそ分かる。強さはもとより、上弦の鬼は()()()()のだから。

 

「ええ。彼等、一人一人ならば私達で十分に倒せても全員を相手にすれば、敗北は必至です」

 

珠世の言葉に無惨は鼻を鳴らす。苛立ちを交えて言葉を続けた。

 

「では、どうする?童磨は何も言わない。私達では不可能だと思っているからだ」

 

「やはり、鬼殺隊を利用することが一番でしょう」

 

珠世は目を伏せた上で、悲しげな口調で言う。

 

「私と貴方の悲願、童磨を殺すこと。それには鬼殺隊と上弦の鬼をぶつける事。それこそが必要不可欠です」

 

無惨もまたその考えに同意を示していた。二人の間で共通の認識として、童磨と鬼殺隊をぶつけ合わせる事が必然であった。

 

「下弦の鬼が幾ら葬られた所で、何の価値もない。だが、上弦は違う」

 

「私達の間で入れ替わりが起こらなくなって百年。上弦の意識は停滞している」

 

「ああ。奴等を使って、私達が至高の存在へとなるのだ」

 

「…」

 

無惨は笑顔を、珠世は暗い顔をして明るい街を歩いていく。その二人が人気の少ない路地裏へと侵入した所で、近付いてくる者がいた。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

追っていた鬼二人は人気の少ない路地裏に向かった。好都合だと思った。お兄ちゃんの事と、童磨の事を吐かせよう。そう思って追った先で二人は待ち構えていた。直ぐに日輪刀を抜いた。

 

「貴様は…そうか。竈門禰豆子だな?」

 

男の方の鬼が不機嫌極まりないとでも言うように顔をしかめて、こちらを睨み付けてくる。

 

「私を知っているの?」

 

油断せずに日輪刀を構える。男の体は臓器が複数に増やされており、明らかに人間ではない。だが、最も危険なのは恐らく

 

「貴女の事は、あの男が伝えています。かつて存在した日の呼吸を継ぐ女と」

 

こちらの女鬼の方だ。見た目は人間の形をしているのに、中身がない。大量の液体で肉体の全てを満たしている。

 

「そう。それよりも、あなた達に聞きたいことがある竈門炭治郎という名前は知っている?」

 

鬼達に質問を投げ掛ける。答えが返ってくるとは思っていなかったが、予想外に奴等は話した。

 

「あの小僧か。童磨がお気に入りだと言って、奴の拠点に直々に連れていくといっていた」

 

「あの男のお気に入りになるなど…さぞかし不運な星の元で生まれたのでしょうね」

 

その口振りで分かる。こいつらは正しく奴等の居場所を知る鬼だ。

 

瞳に入った数字は上弦の肆、上弦の壱

 

十二鬼月の上弦が二人もこの場にいる。

 

「お前達から童磨の居場所を吐かせる。そして、お兄ちゃんを取り戻す!」

 

そうして、私が奴等に型を放とうとした時だった。

 

「なんだぁ?男が女二人連れてこんな所で、突っ立ってんじゃねえよ!」

 

「あの女、刀を持ってる!修羅場ですぜ」

 

「顔色の悪い男が、浮気でもしたのかい?」

 

都合が悪い酔っ払いが、この場に入ってきてしまっていた。一般人に見られた!そう思った時

 

惑血・膚忸の魔香(わくち じくじのまこう)

 

血鬼術・毒血棘幕(けっきじゅつ どっけつきょくばく)

 

鬼の二人が血鬼術を既に放っていた。咄嗟に切り払った私だったが、問題なのは奴等の放ったものが毒だった事だ。

 

「う、うわぁあああああああ!?」

 

「な、なんだぁ?このにお…」

 

「ひ、ひいいいいいい!?兄貴と奥さんが!」

 

香りを吸い込んだだけで、全身が溶け崩れる程の猛毒。地面に吸い込まれて、範囲内を犯す。どちらもおぞましい血鬼術!この人達を守りながら、戦うわけには…!

 

「私達を追ってこようと言うのであれば、これを先程の人混みで放つことになります。夥しい人が死ぬでしょう」

 

「それでも、私達を狙うというなら来るが良い。お前達鬼狩りの答えは決まっているだろうが」

 

そう言い残して、こちらに歪んだ笑みを浮かべながら街中へ去っていく鬼達を私は見逃すしかなかった。

 

「ごめんなさい…!」

 

匂いを吸った人は助からない。けれど、男の方の毒なら可能性はある。毒が回ってしまった足を日輪刀で切り落とす。重い物を切り落とした音、男の人の絶叫と、悲鳴が上がるけど命には変えられない。持っていた包帯できつく患部を縛る。

 

「すぐに医者に見せてください!この人の命は助かります!」

 

「あ、兄貴の足が…そ、そうだ姉御は…?」

 

「残念ですが…助けられませんでした。ごめんなさい」

 

呆然とした風な男の人を手早く立ち上がらせる。たとえ、どんなに辛い出来事が起きていても、彼にはやってもらわなくてはならないのだから。

 

「早く!この人も直ぐに医者に見せないと死んでしまいます!私は、着いていく事が出来ないんです。お願いします…!!」

 

「わ、分かった…兄貴、しっかり…」

 

「う、うう…」

 

男性達の様子を最後まで見守ることが出来ない。それを申し訳なく思いながらも、官権に見付かる前に手早くその場を離れる。しばらく、近くを探してみたが、あの二人の鬼は影も形も見付からなかった。

 

 

 




禰豆子「ところで見てくれ、こいつ(兄貴の足)をどう思う?」

舎弟「凄く…大きいです」

お詫び
禰豆子が強くなった関係上、時系列に変化が起きるはずなのに浅草にて登場させて、無惨様に襲われた酔っ払い三人についてお詫びいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。