始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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今回は書いてて楽しかったのですが、少し無理矢理だったかも知れません。


月の牙

 

 

端的に言って下弦の弐である響凱は不幸だった。いつもの如く稀血(まれち)を拐い喰らった。人を大量に喰えないからこその行動。それ自体はいつも通りだった。問題は鬼殺隊に発覚した事だ。

 

下弦の弐となり幾年月。特殊な立場である下弦の壱を除けば、下弦の鬼の中では頂点に位置していた。鬼狩りの柱を殺した事もある己であり、配下として鬼を屋敷に配置もしていた。いざとなれば、自分が出ればそれで問題はない筈だった。

 

それなのに、自分は柱でもない鬼狩り程度に、どうして追い詰められている?

 

「小生は負けぬ…!あの方に認められたのだ負ける訳にはいかぬのだ!!」

 

響凱は不幸だった。柱を除いた鬼狩りが相手ならば間違いなく勝利していただろう。しかし、この時にこの場に来ていた三人の鬼狩りは、柱に匹敵する戦力を持っていたのだ。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

鎹烏に導かれた先の鼓屋敷へと向かう途中で、禰豆子は最終選別で出会った二人と再会していた。

 

我妻善逸と桑島獪岳。大正の世において、よく目立つ二人の金髪とまるで漫才をしているが如き会話は、目が合わなければ恐らく知らない振りをしているかも知れなかった。

 

「禰豆子ちゃあん!!聞いてよ!獪岳の奴が酷いんだ!また俺の事バカにするんだよ!!!」

 

涙と鼻水を垂らしながらこっちに近付いてくる。正直、知り合いだとあまり思われたくはないと思った禰豆子だった。

 

「それは善逸が馬鹿だからじゃないの?」

 

思ったことを素直に伝えてみると更にぎゃあぎゃあと喚き出す。正直うるさいので、目線で何とかしてくれと訴えると渋々と言った様子で獪岳が近付いてくる。

 

「おい、カス善逸!迷惑がってんだろうが。俺だってテメーには辟易してるのにこれ以上被害者を増やすなバカが」

 

辛辣極まりない言葉だが、このくらいの扱いの方が良いのかもしれない。獪岳の方はともかく、善逸はいつも通りの拍動や筋肉の動きだろうから。

 

「久し振り善逸に獪岳。二人も任務だったの?」

 

「そうなんだよぉ!絶対死んじゃう!!俺の事守ってよ禰豆子ちゃん!獪岳!」

 

「カスは放っておいて良いが、お前が居るなら楽な任務になりそうだ」

 

こんな二人だが実力は確かなのは最終選別の時に知っている。近況の報告をしながら、私達は善逸がうるさく騒ぎながらも、目的地である鼓屋敷へと歩を進めた。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

弱い鬼は簡単に倒せた。獪岳が隙を作り、善逸が首を落とす。私が手を出すまでもなく、二人の力量なら十分に可能だった。何で常中をしないのかは不思議だけど、それを除けばそこそこ早い二人なら、ほとんどの鬼は問題ないみたいだった。

 

私は二人より少しだけ早く動くと、下弦の弐に遭遇していた。空間を操作する血鬼術の持ち主で、少しだけ手間取ったけど、近付けば問題なかったので、両手と両足に鼓を奪うことにした。

 

【水の呼吸 参ノ型 流流舞い】

 

「しょ、小生の手足に鼓を一瞬で…!?」

 

戦いている下弦の弐の首もとに日輪刀を突き付け尋ねる。

 

「鬼の始祖、童磨の居場所はどこ?」

 

この鬼も十二鬼月だ。あの男の居場所を知っているかも知れない。そう思って尋ねるが、鬼は必死の形相で手足を再生させて、逃げようとする。再び切り落として尋ねる。

 

「童磨は、お兄ちゃんはどこにいるの」

 

怒りが湧き上がりそうになるのを抑える。この鬼から少しでも情報を引き出さねばならないのだから。だが、鬼はなおも抵抗しようとする。

 

「小生は負けぬ…!あの方に認められたのだ負ける訳にはいかぬのだ!!」 

 

必死に再生した手足を振り回してくる。だが、全て切り捨てる。この鬼からは情報を聞き出せそうにないかも知れない…そう思って楽にしようとした時だ。

 

「まだだ…あの方はいつも小生を見て下さっている…!そして、助けて下さるのだ!!」

 

鬼がそう言ったと同時に屋敷の天井を突き破って何かが降って来た。それは、着地と同時に両の手に持つ刀を振るってきた。

 

「猪突…猛進!」

 

 

【月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月】 

 

 

「っ…!」

 

 

【水の呼吸 拾壱ノ型 凪】

 

 

無数の斬撃のぶつかり合いは甲高い音を屋敷中に轟かせる。それらは、近くにある床を天井を壁を、そして鬼をバラバラに切り裂いた。

 

「ど、どうして小生ごと…!」

 

困惑した様子で消滅していく鬼を見て、獣の牙のような痣を顔に浮かび上がらせた美少年は言った。

 

「弱味噌が俺に話し掛けんな!俺はそこの女を切りに来ただけだ。お前強いな!かまぼこねず公!」

 

消えていく鬼を踏みつけながら、笑ってこちらを振り向いて獰猛に笑いかけてくる。

 

「…!」

 

油断なく刀を構えた私に向かって、刀を向けて彼は己の名を口にする。

 

「嘴平伊之助!父ちゃんに言われて、お前を殺しに来た!一刀両断の細切れに削ってやるぜ!!」

 

獰猛な獣のように飛び掛かってくる伊之助と私は互いの刃を交わらせるのだった。

 

 




伊之助「響凱、聞こえていたら己の不幸を呪うが良い」

響凱「不幸だと…!い、伊之助お前は…!」

伊之助「君は良い友だったが父上(童磨)が悪いのだよ。ふふふ、ははは」

響凱「謀ったな伊之助ぇぇぇ!!」
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