始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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呼吸法の時に色を付ける試みをしてたんですけど、あんまり合わない気がしてきたのでやめようかと思います。




 

 

伊之助は喜んでいた。自身の訓練で切ってきた手応えの無い鬼達とは違う。ギリギリの所で命を奪いあう緊張感こそが己の求めていた戦いなのだと。

 

「愉しいなぁ!蒲鉾ォ!」

 

【月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り】

 

師匠に習った呼吸法と技。まだ一刀では師の斬撃を再現出来ないが、二刀流の手数を用いて模倣した刃を振るう。

 

「私は愉しくない…!」

 

【水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦】

 

対する禰豆子も型で対応する。防御に優れた水の呼吸は正しく相手の動きに対応していた。これまでと同様に刀をぶつけ合った後に、両者は退いて一呼吸置いた。

 

「蒲鉾!俺様相手に手を抜くとは何様のつもりだ!」

 

伊之助が怒っていた。刀を振り回しており、明らかに苛立ちを隠していないので、禰豆子も気になったことを聞くことにした。

 

「そもそも、貴方人間でしょう!?何で私を襲ってくるのよ!」

 

私も怒っていた。せっかく、童磨とお兄ちゃんを探すための手がかりになりそうな鬼だったというのに、こいつのせいで台無しになってしまったからだ。

 

「俺様は鬼から生まれ、鬼に育てられた侍だ!弱味噌の人間と一緒にするんじゃねぇ!

そんなことよりもだ!日の呼吸を使ってこいよ!蒲鉾!!」

 

鬼が餌である人間を育てる事が有るなんて、私には想像も出来なかった。それでも疑問は残る。どうして()()()()()()()()()()を伊之助が使いこなしているのか。

 

「私は竈門禰豆子!伊之助、今から貴方を倒すわ!私が勝ったら童磨の居場所を教えてもらう!」

 

怪我をさせてしまうかもしれないけど、殺さずに捕まえる。兄と童磨を見つけ出すために…!

 

「はははははは!俺様が勝つ!」

 

伊之助と私は同時に走り出す。強く刀を握り締めて、互いが持つ刀を目掛けて渾身の攻撃を放つ。伊之助の二本の日輪刀と、私の持つ刃が赫色に染まった日輪刀とが甲高い音を立てて激しく衝突する。

 

 

 

【月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾】

 

 

 

【ヒノカミ神楽 灼骨炎陽】

 

 

 

互いが互いを打ち倒そうとする斬撃は威力の差から、赫刀が日輪刀の一本を切り飛ばしたが、二振り目の刀は、激しいぶつかり合いから熱を帯びて、禰豆子が持った刀と同様に赫刀へと変化を遂げて、そのまま互いに吹き飛ばされた。

 

「くっ…!まだ…」

 

宙返りして、着地した私は油断なく伊之助を見つめる。彼もまた同じく着地した後に、自らの刀を見て震えている。

 

「ははははははは!ようやく至ったぜ!師匠と同じ赫刀だ、感謝するぜ竈門禰豆子。さあ、このまま…!?」

 

ベベン

 

突如鳴り響いた琵琶の音と同時に伊之助が床に空いた障子へと吸い込まれる。兄と童磨の時と同じ、鬼の血鬼術に他ならない。

 

「逃がすかぁ!」

 

床に空いた障子へ飛び込もうとする私を、抑える手があった。ふざけるな、兄の手掛かりなんだぞ!

 

「禰豆子ちゃん待った待った!うわ、力超強いんだけど!?」

 

善逸が私を必死になって抑え付ける。暴れる私を余所に、障子は閉じて後の空間には何も残ってはいなかった。

 

「また…また逃がした…!!何で止めたの!?」

 

後ろから羽交い締めにしてきた善逸に喰って掛かる。彼は怯えた様相でありながらも、はっきりと口にしてきた。

 

「あの先には大量の鬼がいるかも知れないんだよ…禰豆子ちゃんが強くても一人で勝てるかは分からない」

 

優しく宥めるように口にする善逸。正論だというのは分かってる。伊之助を無傷で止めるのに手間取っていた私は、まだまだ実力として弱いことも。それでも

 

「そんなことは分かってる!それでも、私はお兄ちゃんに会いたかった。自分の家族を…助けたかった!!」

 

涙を流して告げる私の言葉に善逸は何も口にせずにただ、私に手拭いを渡してくれた。後ろで呆れている獪岳に気付きながらも私は、しばらくの間、泣き続けていた。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

無限城。童磨や十二鬼月等の強力な鬼が集う城に伊之助は送られてきた。

 

「鳴女!俺を元の場所に戻せ!決着はまだ…」

 

息を荒げて、そう要求する伊之助の元に現れたのは琵琶を携えた鬼ではない。漆黒の刀を手に持った剣鬼だった。

 

「私が呼んだ…伊之助…貴様の負けだ」

 

両の瞳に刻まれた数字は上弦の弐。十二鬼月の一人にして、伊之助の師である黒死牟が言葉を告げる。

 

「あのような日の呼吸の紛い物程度に…刀を折られるなど軟弱千万…お前には…失望した…」

 

黒死牟が淡々と告げる言葉に伊之助も言葉を返す。

 

「違う!あのまま行けば俺が勝っていた!赫刀だって…「黙れ」

 

一閃

痣を出した伊之助にすら振るった様を見極められぬままに、伊之助の持った赫刀を半ばから先を寸刻みにして、体中に切り傷を刻み付けた。

 

「があッ!?」

 

倒れ伏す伊之助を掴み上げる黒死牟。眉を動かすことなく、再び言葉を紡いでいく。

 

「お前は日ノ本一の侍とならねばならない。私が教えた呼吸法で全ての呼吸を…奴が伝えた呼吸を葬り去る事が…お前の責務だ」

 

黒死牟が片手で刀を振るうと無限城の床に穴が空く。切られた先には無数の鬼達が蠢いている。欠けた十二鬼月の下弦候補として、無限城に飼われている者達だった。

 

「それを…相手を殺そうともしない手抜きの技で…刀を折られて醜い姿を去らしている…生き恥」

 

伊之助を穴の縁まで持っていくと血を流したままに、そこへ放り込む。血に、肉に狂喜乱舞する鬼達には目もくれない。

 

「私を殺す侍になれ…その程度で生き残れないならば最早生きている必要などない…」

 

最後に告げて去っていく黒死牟を見ながら伊之助は立ち上がる。

 

「上等だ…!刀が半ばだろうが、傷付いてようがこんな雑魚鬼に俺様が殺られるかよ…!!」

 

半ばで断たれた日輪刀を携えて、眩む視界と揺れる体に笑いながらも、伊之助は鬼の群れへと飛び込んでいったのだった。

 

 

 

 

 




【大正コソコソ噂話】
善逸と獪岳は仲良くないのに一緒にいるよ!二人は同じ師匠の元で修行中に雷に打たれてから、互いが互いを引き寄せる磁石みたいになっちゃったんだって!
修行をサボる善逸のせいで師匠が来ないのに腹を立てたらしいよ!髪の色もお揃いだね!

「俺が木に登って泣いてたら獪岳が蹴り落とそうとしてきたんだよ!」

「そしたら偶然雷が落ちてきやがってこの様だ…!」
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