始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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やれば出来る。かといって毎日出来るかと言えば難しい


新生

 

 

鬼と人間に何の違いがあるか。そう考えた時

鬼は人間よりも自分達の方が優れてると言うだろう。

人間は鬼のような化け物と相容れないと言うだろう。

 

愚かだ。

人と鬼に違い等存在しない。それが千年以上に渡り童磨()の次に長く生きた鬼である私の結論だ。

 

(鬼舞辻無惨)は自分が優れた生物であると自覚している。

鬼の中で始祖を除いて最も優れた鬼。上弦の壱(十二鬼月の頂点)

 

そんな私ですらも、あの継国縁壱(化け物)には手も足も出なかった。

 

私達のように人間からすれば人智を越えた存在とも言える程の怪物。それを簡単に屠れるような人間は確かに存在する。確かに過去の存在だ。神に選ばれた才能を持ったような存在だ。

 

それでも、それは確かに現実に存在している。

 

「それと比べれば私はどうだ?」

 

己の強さはあくまでも鬼としての上限を逸してなどいない。始まりの鬼として注ぎ込まれた血の量は別格だ。人も鬼も数えることも出来ないほどに喰らってきた。

 

「そうして千年生きてきて、それでも私は童磨にすら及んでいない」

 

そうだ鬼として生まれ、私が至高の存在として長年に渡り鍛え抜いた肉体はそれでも足りないのだ。

 

「最早、稀血を喰らったとしても下弦の鬼を喰らっても私には大差がない。成長はしても微々たる物でしかない」

 

目の前で手足の健を切られて転がる人間を前にして、鬼舞辻無惨は衣服を脱ぐ。

その身体は一見すれば一切の傷も持たず、鬼としての力に満ち溢れている。そう見える。

だが、

 

「私の身体には未だに傷が刻まれている」

 

始まりの剣士。日の呼吸の使い手。その男(継国縁壱)に刻まれた傷は身体を灼き、自身の複数作り上げた急所を今も狙っている。それを癒すことが出来ず、傷を隠すために力を使う事になっている。

 

「甚だ認めたくない事だが…!この体は最早ダメだ。他の鬼と比べれば圧倒的だとしても童磨と黒死牟には肉体の純度で及ばない…!!」

 

ギリギリと剣歯を砕かんばかりに尖らせながらも鬼舞辻無惨は認める。己の肉体は既に限界だ

ならばどうするか。

 

「新しい肉体が必要だ。今以上に強く、素質に溢れた肉体が」

 

そうだ。己は既にそのヒントを得ていた。数百年前、消えない傷を与えられ!身体を切り刻まれたあの時に!

 

「鬼食いの剣士。その身体は童磨の分け与える多量の血に耐えて、奴の影武者を作り上げる事が出来た。そして、鬼食いは鬼の能力を使いながら日の光を浴びても死なない。ならば」

 

鬼舞辻無惨は自身の肉体を変化させる。細く長く相手の身体に潜り込めるように、そして目の前の鬼食い()()()()()の肉体を奪い取れるように。

 

「これで対等だ。私の全能力を持ち、日光を克服した肉体を得てこそ童磨に挑むことが出来る。お前はその為の贄だ」

 

「う、うあああああああああ!?」

 

動けないように刻まれた肉体が瞬く間に再生する。上弦の壱。今まで喰らってきた雑魚鬼とは比べられない程に濃く、強い鬼が自ら己に入り込んでくる。

 

記憶が、能力が、総てが塗り潰される。十数年の過去など千年の奔流と比べれば一瞬で流される小石に過ぎず。

 

「あぁ…!ふふ…はははははははは!!素晴らしい身体が軽い…今までの肉体がどれだけ奴の斬撃に侵されていたか良く分かる」

 

その肉体の持ち主は朝日に照らされた肉体で静かに涙を流す。

 

「以前の私は死んだ。見ていろ童磨、必ず私が貴様の全てを喰らって見せるぞ」

 

鬼舞辻無惨は高らかに笑いながら新生の産声を上げた。

 

 




【大正コソコソ噂話】
無惨殿は俺と同じように弱い鬼の視界なら覗くことが出来るよ!今の肉体を選んだのは最終選別をこそこそ覗いてたかららしい!!
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