「恐ろしい程に童磨の血が濃い。最初から十二鬼月の下弦と同程度の血を摂取している。加えて…」
女は、
「…この子は童磨を喰らっている。千年の時を越えて、分け与えられるのではなく、自ら血肉を奪い取った逸材。呪いも外れているし、既に上弦に匹敵する…」
珠世は、慄くと同時に期待もしていた。あの男とこの子は、間違いなく台風の目になる。あとは切っ掛けさえ有れば…
〝今度こそは珠世殿の目的が果たせる事を、俺も期待してるぜ?〟
脳裏に響いた声に、奥歯を噛み砕いて即座に再生しながら、自分に言い聞かせて心を落ち着かせる。
「…お前と私を必ず殺してみせる」
その為ならば、どんな手を使おうと、何百人を殺そうと構わない。冷徹な殺意を胸に秘めて、猛毒の鬼は研究を続ける。
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「状況は一言で言うならば最悪です」
継子である玄弥の言葉に、竈門禰豆子は身構える。山の内部に潜入した隊士は、半数以上が未帰還。その上で、血鬼術に掛けられ、わざと外に逃がされた隊士によれば
「複数体の十二鬼月がいます。群れているとなると…柱であっても厳しいかと」
「そう…逃げてきた隊士達の容態は?」
「全員が自害しています。竈門禰豆子を連れてこい、という伝言を残して」
玄弥の冷たい瞳が、言外に罠だと告げている。こんな事に付き合うのは無意味だと。しかし
「私が行く。まだ生きている人達を助けなくちゃ」
十二鬼月が複数体いれば、それこそ兄の行方を知る鬼も今度こそ見付かるかも知れない。それに柱として、仲間を見捨てる選択なんて取るはずもない。
「当然だが、俺も行く。お前だけには任せられない」
「義勇さん…」
先程までの言葉とは違って、真摯な表情と誠意が感じられる。やはり、この人も柱に相応しいと見直して感動していると
「……はぁぁぁぁ…良いですよ。行きましょう」
二人の言葉に、心底うんざりするような表情と深いため息をついた玄弥だったが、柱の決定を覆す事も出来ないと腹を決める。かくして、三人の鬼狩りが新たに山中へと踏み込むのであった。