始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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書けるうちに書いておこうと思います。


模索

 火産霊(炭治郎)の頭の中は、常に靄の掛かったようだった。物も見えるし、聞こえる。なのに意味が頭の中で繋がらない。情報を整理する為の回路そのものが、一つ一つ丁寧に切られているようで、唯一理解出来るのは匂いだけだった。

 

 知らない女(珠世)の匂いが、自身の身体に触れている。時々、鈍い痛みが鈍麻した脳に刺激を与える。それさえも、彼にはどうでも良い。

 

「恐ろしい程に童磨の血が濃い。最初から十二鬼月の下弦と同程度の血を摂取している。加えて…」

 

 女は、見たこともない道具(顕微鏡)を弄り回している。白痴も同然の今も、炭焼きをしていた人間の頃ですら、寡聞にして知らないような物だった。

 

「…この子は童磨を喰らっている。千年の時を越えて、分け与えられるのではなく、自ら血肉を奪い取った逸材。呪いも外れているし、既に上弦に匹敵する…」

 

 珠世は、慄くと同時に期待もしていた。あの男とこの子は、間違いなく台風の目になる。あとは切っ掛けさえ有れば…

 

今度こそは珠世殿の目的が果たせる事を、俺も期待してるぜ?

 

 脳裏に響いた声に、奥歯を噛み砕いて即座に再生しながら、自分に言い聞かせて心を落ち着かせる。

 

「…お前と私を必ず殺してみせる」

 

 その為ならば、どんな手を使おうと、何百人を殺そうと構わない。冷徹な殺意を胸に秘めて、猛毒の鬼は研究を続ける。

 

──────────────────────

 

 「状況は一言で言うならば最悪です」

 

 継子である玄弥の言葉に、竈門禰豆子は身構える。山の内部に潜入した隊士は、半数以上が未帰還。その上で、血鬼術に掛けられ、わざと外に逃がされた隊士によれば

 

「複数体の十二鬼月がいます。群れているとなると…柱であっても厳しいかと」

 

「そう…逃げてきた隊士達の容態は?」

 

「全員が自害しています。竈門禰豆子を連れてこい、という伝言を残して」

 

 玄弥の冷たい瞳が、言外に罠だと告げている。こんな事に付き合うのは無意味だと。しかし

 

「私が行く。まだ生きている人達を助けなくちゃ」

 

 十二鬼月が複数体いれば、それこそ兄の行方を知る鬼も今度こそ見付かるかも知れない。それに柱として、仲間を見捨てる選択なんて取るはずもない。

 

「当然だが、俺も行く。お前だけには任せられない」

「義勇さん…」

 

 先程までの言葉とは違って、真摯な表情と誠意が感じられる。やはり、この人も柱に相応しいと見直して感動していると

 

「……はぁぁぁぁ…良いですよ。行きましょう」

 

 二人の言葉に、心底うんざりするような表情と深いため息をついた玄弥だったが、柱の決定を覆す事も出来ないと腹を決める。かくして、三人の鬼狩りが新たに山中へと踏み込むのであった。

 

 

 

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