始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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文才も無い身ですがそれなりに頑張ろうと思います。



俺と私

 

 

その男は生まれた頃より、特別な人間として育てられてきた。唐から流れ込んできた幾つもの学問や、宗教。彼の家はそうした物を学んで出来た倭国独自の教えを家業としていた。

 

『万世極楽教』

 

当時では珍しく、貴族ではなく平民が中心の団体であり、懺悔によって罪を許される事で、神の慈悲が与えられ天国へと迎えられる。そういった教えからか、信者の数はそれほど多くも無かったが、熱心な者達が多く童磨の両親も、そこの長と信者という関係性であった。

 

そこで生まれた童磨は瞳の虹彩が、虹色をしていた。それを見た両親は、この子は神の御子に違いない。そう思い込み、八つになる頃には教祖として祭り上げられていた。

 

──────────────────────

 

「と、まあそんな風に育てられたのは良いんだけどね。残念ながら俺には神の声なんて物は一度も聞こえなかったんだよ」

 

信者も両親も頭が悪い。神なんて物は存在しないし、極楽も地獄も無い。人は死んだら意識も何もなくなるだけなのに、そんな事すら理解出来ないなんて可哀想で仕方がない。

 

「頭の悪い信者達は、そんな俺にどうか助けて欲しいと頭を下げて懺悔するんだ。まだ八つの子供にさ」

 

そんな惨めな存在が可哀想で泣いてしまったよ、と過去の事を思い出してこの男は嘯いている。下らない。私はそんな事には欠片も興味が湧かない。

 

「それでは、貴方はどうやって鬼になったのですか?その方法にはとても興味があります」

 

この私が死に掛けていたのは認めよう。だが、憐れみを以て、こんな薄ら笑みを浮かべた阿呆のような男に救われた等我慢ならない。この男の秘密を得たなら直ぐにでも殺してやる。

 

「ああ、それはやめた方が良いと思うよ。無惨殿」

 

俺を殺したら、無惨殿も死んでしまうからなぁ。と事も無げにこの男はそう言った。

 

「……なんだと?貴様は言った筈だ。私もまた鬼となったのだと。人を遥かに越えた身体能力に、再生力。日光を浴びれない事と、人肉を喰らわなくてはならない事を除いて不都合はないと!お前は私に嘘を付いたのか!」

 

激昂した私の言葉にも、奴はさして気にした様子もなく答えた。

 

「仕方がないだろう?俺も初めてやったことなのだから。どうやら俺が同族を増やすと、相手の思考や位置などを感知できるらしい。そして俺が死ねば無惨殿も死ぬ、これらは感覚として今分かったのだ!」

 

伝えていなかった事は申し訳ないが諦めてくれ!と奴は何が面白いのか、また笑い声を上げている。それが再び私に怒りを呼び起こすので、苛立ちを込めて奴の頭蓋を蹴り飛ばす。が、腐った柿の如く飛び散った肉片も、辺り一面へと撒き散らされた墨のような血液も、数秒もすれば再生する。忌々しい、今の私ではあれほどの速度での再生は不可能だ。今は奴を殺すことは出来ないだろう。

 

「そう怒らなくても良いじゃないか。俺達は今のところは二人しかいない同族なのだから、仲良くしよう!それに、無惨殿が考えている通り、今は弱すぎるからな。鬼としてもっと力を蓄えないと俺には勝てまいよ」

 

………一時的に、怒りを抑える必要がある。最早私の肉体は死病を患ってなどいない。この肉体は限りなく完璧に近い。日光を克服し、童磨()を越えて私こそが、完璧な生物に登り詰めるにはその必要があるのだから…!

 

「期待しているよ。無惨殿」

 

俺は優しいからな。強くなりたいというなら喜んで力を貸してあげよう。その代わり、無惨殿にも俺の肉体を調べることに協力してもらおう。そう言って嗤う奴を私はただ睨み付けていた。

 

………いつかは殺してやるぞ。童磨(気狂い)め…!!

 

 

 




無惨様が知りたがっていた鬼になった方法は
童磨殿が風邪を引いた事で善かれと思った信者が善良な医者を連れてきました。万病に効く薬になりうる物として、薬を投与した所で体の変化で童磨が苦しんだので、信者に医者は殺されてしまい、鬼になっています。
信者からは毒を盛られた後遺症で日光に当たれなくなったと考えられています。
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