始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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今回の敵は完全体累君です。


意図に掛かる

 

 山に入った俺達は、なぜか人や鬼の気配を感じなかった。そのまま中腹まで登った時、強い刺激臭がする。同じ匂いを感じて、禰豆子も玄弥も顔を顰めながら進んでいた。

 やがて、木々の合間に出る。不自然な程に拓けた空間は、明らかに手が加えられた物だった。そして…いる。

 

「また来たんだね。鬼狩り」  

 

 白髪に赤い斑点のような文様が浮かぶ、白い服の子供。こんな夜更けの森に居ることはあり得ない。何よりも、その鬼の左眼に刻まれているのは下伍の数字…十二鬼月だ。

 鬼は手から糸を出しており、鬼の背後へと伸びている。そこにあるのは、無数の繭。恐らく、中には…

 

「十二鬼月…!貴方は竈門炭治郎を知っている?」

 

 禰豆子が油断なく刀を構えながら、尋ねる。俺もまた刀を抜くと、いつでも戦闘に入れるように準備を進める。

 

「竈門炭治郎…?ああ、あの鬼なら、ここに来てるよ。ほら」

 

 下弦の鬼が手を引くと、ボタボタと血が垂れる。鬼の頭上には、俺が禰豆子と出会った時に連れ去られた少年の鬼が、無数の糸に体を裂かれながら吊るされていた。

 

 

────────────────────────

 

 

 日の呼吸の女(竈門禰豆子)が、激昂した声を上げながら迫る。()()吐縛鬼()では、対応出来ずに一太刀で首を落とされる。だが、それは警戒してない状況での話だ。冷静に指を引けば繭の一つが、自身と鬼狩りの間に割り込む。女剣士もまた!、それを認識した上で、あえて糸のみを切断すると、人間を溶解するための酸、それによって服のみが溶けた、金髪の隊士が零れ落ちる。

 

「ゲホッゲホッ…いやぁぁぁぁ!死ぬかと思った!なんなら死んだよ!俺完全にあのままだと溶けて死んでたよね!?って禰豆子ちゃん助けてくれたの!?神様仏様禰豆子様ありがとおおおお!!!」

 

 汚い高音の悲鳴を巻き散らかしながら、出てきた鬼殺隊(善逸)に竈門禰豆子が抱き着かれている。それを見て男の方の柱はますます渋面を濃くする。

 

「やはりこの繭たちは…」

「僕の非常食。蜘蛛は獲物を溶かしてから、ゆっくり啜るんだ。早くしないと、全員溶けてなくなるよ?」

 

 その言葉を聞いて、柱ともう一人の鬼殺隊が即座に動く。森の奥にある繭を解きに向かっている。下弦の鬼()なら、あの柱一人でも十分という判断だろう。それこそがこちらの策であるとも知らず。

 

 

────────────────────────

 

 

 善逸を引き離してようやく、鬼に向き直る。人質は二人に任せて、すぐにこの鬼を滅せば問題はない。そう思った時に、刺激臭が濃くなる。周囲から無数の小さな蜘蛛と、人の頭を付けた蜘蛛が湧いてくる。

 

「そっちの人面蜘蛛達も、元々は人間だよ。僕の毒でそんな姿に変わってる。命令には従うけど、自意識は残ってるから」

 

 酷薄な笑みを浮かべる鬼。尚の事、決着を急ぐ必要がある。自分では血鬼術の毒は解除できないのだから、同僚の蟲柱に応援を要請し、人々を治せるか確かめる。そして炭治郎(お兄ちゃん)を連れ帰らなくてはならない。

 

「…」

 

 すぅっと、常中で常に行っている呼吸法を意図的に濃くする。体温と心拍数を上げれば、痣はより濃くなり、力を込めて握れば日輪刀が赫く輝く。

 そこに無数の蜘蛛が殺到するが、四百と少しの蜘蛛を切り捨てて、百体ほどの人頭蜘蛛を気絶させる。その勢いのままに首を落とそうと迫る。

 

[日の呼吸 参ノ型 烈日紅鏡]

 

 日輪刀によって、左右から切り払う高速の二連撃で胴体と首を狙う。たとえ避けられたとしても赫刀なら、再生が遅れる。そう考えての判断だが、()()()()()()。その動きだけを練習していたかのように、二歩下がられた事で、袈裟懸けに胴を切り裂くのみに終わり、首は自身で最初から切断していたらしい。日輪刀が振られた勢いで、ごろりと転がるのが見える。

 だとしても、次の型で、そう思った瞬間に転がった胴体が()()()。裂いた部分から飛び出したのは、青年の様に成長した鬼の肉体。先程までと比べ物にならない速度で、自身の転がった首を拾うと接合した。

 

「ようやく脱皮が終わった。()()もこの術を使うのは久し振りでね、ここからが本番だ」

 




元々、下弦の壱相当のスペックがあり、家族からも力を回収しつつ、鬼殺隊の隊士で栄養補給も行った完全体累君…何より日の呼吸についても情報を与えられて熟知していた為に、攻撃をかわせました。冷静なのも大きいですね
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