始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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今回今までで一番長くなったかも知れません。


天魔

 

 

日輪刀を構える縁壱だったが、それを見ても童磨は動じなかった。にこぉっと微笑んだまま近くの塀へと腰掛けると、横に座るように促した。

 

 

 

「そう殺気立たなくても良いじゃないか。殺し合うにしても、その前に少しお喋りしてくれよ」

 

童磨にそう言われたので、縁壱も刀を納めると無表情で横に座ることにした。そのまま半刻、童磨は笑い、縁壱は無表情でただ座っていた。

 

「…何か私に聞きたい事が有るのか…?」

 

座り始めて一刻して、ようやく縁壱から童磨に話しを振った。それに対して童磨は

 

「てっきり、何か聞きたいのは君の方かと思ってたけど」

 

無惨殿にも話し掛けていたようだし、と言われてこの男が先のやり取りを見ていた事に気付いて納得した。

 

「何故鬼を増やす?鬼は人の営みを破壊し、罪もない命を奪っている。それに何の意味がある?」

 

常に疑問だった。人を喰らわなければ生きられない怪物へと人を変えて、それを私が生まれる以前から延々と繰り返す。そんな行為の何が楽しくて、笑っているのか。鬼の始祖に私はどうしても聞いてみたかった。

 

「別に楽しいとは思っていないよ。俺は可哀想な人々を救っているだけなんだ」

 

鬼になる事は悪い事である。家族の事ですらも餌としか見られなくなり、二度と陽光を浴びることなく、永遠に暗闇を彷徨う生き物となる。そう考えていた。だからこそ、鬼になる事が救いであると謳うこの男を凝視してしまった。

 

「鬼になれば人であった頃の病や怪我は治る。人間とは比較にならない身体能力も得られるんだ」

 

それは確かに喜ばしい事のようにも聞こえる。

 

「体の弱い子や、病床に臥せる子、戦で怪我を負った子なんかは、どんな対価を払ってでも救われたいと思ってるんだよ」

 

本来ならそのまま死んでいく筈の人々を対価もなく助ける。

 

「それとも、俺が助けた(鬼にした)()は、そのまま死んだ方が良かったかな?人を殺してたとしても、それでも彼等だって生きているんだ」

 

それを殺そうだなんて、それこそ悪いことだろう?

 

まるで私達(鬼殺隊)がしている事こそが、己という神の決定に逆らう悪逆無道であるように、奴が言っているが私の心に響くことはなかった。

 

「なぜ、そんな心にも無いことを言う?」

 

私からの返答を聞いて初めて男は、それまでの話で多様に変化させていた表情を止めた。

 

「心にもない?そんなことはないよ、俺は可哀想な子達を救ってあげている。そんな子達が鬼狩りに殺されるのが嫌だから、こうして君と話をしてるんだぜ」

 

それは一瞬の事だからこそ、恐らく今まで指摘したのは私だけだったのだろう。そこまで隠し通してきた奴の内心すらも、私は見透かしていた。

 

()()()()()()()()()()()。心臓の拍動も変わらなければ、脳からの分泌物の変化さえもない。表情の変化も、話の中で流した涙でさえも、お前が意図的に筋肉を操作して行ったまやかしに過ぎない」

 

お前は表情と声の調子を変える事によって、人の感情を再現しようと努力しているだけだ。

 

「本当は鬼にした人間の事も、鬼に殺される人間の事も何とも思っていないのだろう?」

 

救いの手を差し伸べるのも、人を殺して喰らうのも、自分に出来ることだからやっているだけ。本当の意味でお前にやりたいことなど何もない。()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「この問答ですら時間の無駄だった。お前にとって命の価値とは()()()に過ぎない」

 

私が表情を変えずに言い放った言葉に、(童磨)は感情の籠らない顔で答えた。

 

「…信者達は俺に自分を理解してもらいたいと思っていた。逆に鬼の皆は俺に心を読まれることを恐れていたけど、なるほどね。自分を理解されるというのはこういう気持ちなのか」

 

気持ちが良い(気持ちが悪い)

 

「一つ学んだよ。どうやら、俺にも嫌いな人間っていうのは居るみたいだ」

 

君の事は好きにはなれないかもしれない。そう言って童磨(鬼の始祖)が立ち上がった。

 

 

「そうか。私も一つの疑問に答えが出た。結局のところ、鬼とはお前という存在が生み出した哀れな被害者でしかない」

 

惡鬼滅殺

 

「長き戦いの決着を付けよう」

 

お前は討ち滅ぼさねばならない存在だ。そう言って縁壱(始まりの剣士)が立ち上がった。

 

白み始める空を前にして、原点にして頂点の二人がぶつかり合う。

 

──────────────────────

血鬼術・粉凍り

 

先手を取ったのは童磨である。手に持った二つの扇子を振るって細やかな凍らせた血液を撒き散らす。吸い込めば、肺が壊死する程の温度の氷だが、それも

 

【日の呼吸・円舞】

 

縁壱が赫刀を振るえばその剣圧によって、氷は吹いて飛び、融解して地を濡らす。その勢いのままに縁壱は更に詰め寄って、童磨の頚を狩らんとする。横一線に振るわれた()()()()()を、扇で受け止めて童磨が言う。

 

「無惨殿との戦いを見ていて分かった。その赫い刀は熱によって産み出されている」

 

余りにも振るわれる速度が速い日輪刀は空気との摩擦で、()()()()()()()()()()。加えて、持ち手本人の高い体温もまた刀身へと伝わる事で、猩々緋砂鉄の太陽としての特性が引き出されている。

 

「だったら、まずは温度を奪おう」

 

微笑みながら再び童磨が扇を振るう。

 

【血鬼術・散り蓮華】

 

そこから放たれた二つの蓮華の花が、強力な冷気を広範囲に放っていく。長くいれば、それだけで人の身は凍り死に至るが

 

「……」

 

【日の呼吸・碧羅の天】

 

常人よりも遥かに温度の高い縁壱の肉体は、温度差で湯気を発し、振るわれた三度の斬撃は例え日輪刀のままでも威力を変えずに、蓮華の花を裂いて、童磨の体を薙がんとする。童磨が逃げる方向すらも、予測した上で振るわれる斬撃も、来ることが分かっていたように童磨は致命傷を避ける。

 

「聞いていた通りだ。その目も恐ろしい代物だね」

 

今度はそれを封じよう。と言って、童磨は新たに技を繰り出す。

 

【血鬼術・凍て曇】

 

視界を潰さんと迫る煙のような氷、余りにも低い温度を続けて数度送り込まれて、目を潰そうとされたのにも関わらず縁壱の心には一切の動揺はなかった。むしろ、その煙と体から発せられた湯気で、視界が閉ざされた事こそが童磨にとって最大の隙になったのだった。

 

「終わりだ」

 

【日の呼吸・幻日虹】

 

特殊な捻りと回転を加えられた、斬撃は童磨にとって無惨との戦闘中にも見せられてはいなかった物だ。それによってまるで、分身したかのように縁壱の残像が浮かび上がり、迫り来る日輪刀を避けることも出来ずに、頚を飛ばされた。

 

 

──────────────────────

 

首を切った。間違いなく。始祖の鬼である男の体は塵のように崩壊していく。首を切られた刹那に、最大威力の技なのか巨大な氷で出来た仏像をぶつけても来たが、それも切り捨てた。東の空から浮かび上がった太陽が、崩れゆく氷を照らして、綺羅びやかに輝いていた。

 

朝日の差し込む太陽の元、男がそこに立っていた。先程まで会話をしていた男と同じ顔で、柏手をしながらこちらへ向けた笑みを浮かべている。

 

「いやぁ、負けちゃったね!中々に良く出来ていただろう?俺にそっくりだし、俺の技もちゃんと使えるんだよ!」

 

最初から私が戦っていたのは鬼の祖ではなかった。鬼の祖は既に太陽を克服していた。奴が姿を表したのは

 

「鬼食いは鬼にならない。最初はそう思ってたんだけどね、そうじゃない事が分かったんだ。そもそも受け入れられる血の量が多いせいで、少しでは足りなかったんだ」

 

だから限界まで血を与えた上で、影武者として利用した。俺の記憶を与えて、前の記憶を消して、血鬼術も覚えさせた。

 

「それでも出来上がった鬼は、結局のところ縁壱殿には勝てなかったようだ!人格も少しは残ってしまったのかも知れないな。可哀想に」

 

そんな言葉と共に涙を流し、一転して笑顔に戻ってから再び童磨は言った。

 

「まあ、そんな事はどうでも良いか。それよりも縁壱殿」

 

貴方も鬼にならないか?厳勝殿も待っているよ。

 

鬼が不吉を運んできた。

 

「二十五迄に死んでしまうだなんて可哀想で、優しいおれは耐えられない‼️どうか俺に救わせておくれよ」

 

私は…俺は始めて憎悪を込めて刃を振るった。

 

その姿を見ても童磨はやはり、何の感情も込めずに嗤っていた。

 

 

 




童磨「何か知りたい事は有りますか?」

鬼殺隊&鬼柱&今日も美しい珠世様「「「お前を消す方法」」」」
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