始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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まさか日刊ランキングに乗れるとは思いませんでした。
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これからも不定期なるかも知れませんが、思い付けば投稿していきたいと思います。

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『鬼殺隊』人喰い鬼を滅ぼす剣士の集団。政府非公認の組織でありながら歴史は古く、数百年前から鬼を殺してきた。強さに応じた階級で分けられており、最初の階級である『癸』から『甲』の十段階。そして、剣士の中で最高峰の実力を持った『柱』に分類される。

 

現在の水柱である『冨岡義勇』もまた、その使命に従って鬼を狩る為に動いていた。

 

''炭焼きの家で瞳に数字を入れた男を見た''

 

そんな報せが有ったとお館様から仰せ遣った。本来であれば俺よりも相応しい柱が行くべきだが、生憎と皆が任務に出ていた。俺には見合わない仕事だが、お館様に言われて向かうことになった。

 

「…ここか」

 

山間部に有る村は田舎という言葉が似合う様子で、余所者である俺を見ると疑わしい目線を向けてくる者もいた。それから数時間掛けて人に聞いてみたが、一向に教えてくれる人物が見付からない。凍えそうな程に吹雪く雪の中で、ようやく辿り着いた家では既に全てが終わっていた(始まっていた)

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

妹が熱を出した。長女として家事を熱心に行って、家を母さんと一緒に支えてくれていたけれど、まだ小さいから無理が祟ってしまったようだ。本当なら、俺も看病をしていたかったけど、今日は町に炭を売りに行かなくてはいけなかったんだ。

 

いつもは出来る限り町の人を手伝うけれど、禰豆子が風邪を引いた為に余り手伝えなかった。むしろ、栄養を付けてやれと野菜や、肉なんかを貰ってしまった。勿論お礼はきちんと伝えたけれど、今度きちんと手伝えなかった分まで手伝わないといけない。

 

「もうすぐ日暮れだ…夜までには帰れそうだな」

 

夕暮れが近付く町から出て、家へ帰ろうとする。三郎じいさんの住んでる家の近くを通ろうという時、声を掛けられた。

 

「君、もしかして炭焼きをしてる一家の子かな?神楽を伝えてる」

 

不思議だった。その人は、こっちを見ているのに()()()()()()()()意識を向けているはずなのに匂いがしないなんて初めてで、俺に話し掛けているのか一瞬分からなかった位だ。

 

「え、ええ。そうです。炭焼きをしてる炭十郎の息子の炭治郎です。神楽の事まで知ってるんですか?」

 

日ノ本の言葉で話し掛けて来なかったら異人だと思ったかもしれない。背丈も俺や町の人よりずっと高いし、洋服を着て髪も白と赤が混じっていたから。この人は何が可笑しいんだろう?愛想笑いなのかずっと笑顔を浮かべてる。

 

「うん。そうか!ここで会ったのも何かの縁かも知れないし、伝えておこう。今日は家に帰らない方が良いよ?」

 

その言葉を聞いたときに俺の背筋に言い様のない寒気がした。まるで、気付かない内に体が氷付けにされてしまったようだった。男は言葉を続けた

 

「知ってるかい?夜になると人を喰らう鬼が出るかも知れないんだ。もうすぐ日暮れだ、そんな時に山を通るなんて俺はしない方が良いと思うし、良かったら町で仲良くお喋りでもしないかな?」

 

男は愉しそうに笑って言うが、その言葉にも一切感情の匂いは乗っていなかった。本気で言っている訳ではないことが明白だった。だから、俺は

 

「いえ!家族が熱を出しているので帰ります!

お兄さんは気を付けて下さい。心配してくれてありがとうございます!!」

 

心配してくれた事には感謝をしてから足早にそこを去った。山を登る途中で振り向くと夕暮れに照らされながら男がずっとこちらを見ているのが分かった。男から離れても、しばらくは寒気は収まらなかった。

 

「…やれやれ。行ってしまったな。俺は悲しいよ、お兄さんだなんて言われたのは久し振りだし、あんなに良い子が死んでしまうのは可哀想だ。…そうだ!()()()()()()()()()()()()家族と離れるのは可哀想だけど、俺の子供達もお腹を空かせてるに違いないからな」

 

だから、あとはお前に任せるよ。病葉(わくらば)

お前には俺の血を預けるから、あの子は鬼にするんだよ。その代わり、他の家族は食べて良い。それが済んだら戻っておいで。出来たら無惨殿も黒死牟殿も喜ぶからね。

 

「御意。童磨様のご命令と有らば」

 

瞳に数字が刻まれた十二鬼月の一人、下弦の陸である病葉はそう言い残して童磨の元を去った。

 

「楽しみだ。あの子は素直そうだし、きっと猗窩座殿の様に良い子に育ってくれるだろう!終わったら病葉にも血を分けてあげることにしよう。きっと、どんどん強くなるだろう。百年近く入れ替わってない上弦だけど、もしかしたら越えてくれるかも知れないからなぁ!無惨殿を越える鬼になったら凄いぞ」

 

楽しみだなぁと言って鬼の始祖である童磨は、すっかり日が暮れた夜の森にて、月明かりを背に受けていつまでも嗤っていた。

 

 

──────────────────────

 

「ただいま!皆無事か!?母さん!禰豆子!竹雄!花子!茂!六太!」

 

全力で走ることで何とか夜までに辿り着いた。息を切らして皆を呼ぶと、禰豆子以外は出てきてくれた。

 

「どうしたんだよ兄ちゃん汗だくだぞ?」

 

「禰豆子お姉ちゃんは寝てるよー!」

 

「にいちゃんだいじょうぶ?」

 

「炭治郎どうかしたの?」

 

良かった…少し不安になっていたけど、皆普段と何も変わらない。禰豆子も寝てるだけなら、きっと栄養を付ければ治ってくれる筈だ!

 

「何でもないんだ。それより!町で色々食べ物を貰ってきたから今日はご馳走だぞ!」

 

わーい。とその言葉を聞いて皆、喜んで準備をしてくれた。母さんは俺の事を心配そうにしていたけど大丈夫!俺は長男だし、例え鬼が来たところで皆の事は俺が守ってみせる!

 

──夕食を食べ終えた後の事だ。禰豆子も具合が悪くても夕食はたっぷりと食べた。汗も吹いてあげたし、この分ならきっと明日には良くなる。そう思って寝床の準備をしている時だ。

 

コンコン

 

「?今何か…」

 

コンコン

 

「誰か…来た…?」

 

玄関から戸を叩く音が響いていた。夜中だというのに、こんな所に来客が来るなんて…それに今の時期は雪だってある。わざわざ登ってくる人が居るわけがない

 

コンコン

 

変わらずに響いてくる音に竹雄が出ようとするのを止めて、俺は念のためにと玄関の斧を確認して、慎重に戸に近付く。近くにいくと鼻を付く匂いがする。おぞましい血の匂い。こんなのは普通じゃない…!これは…!

 

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン

 

「皆ぁ!逃げろぉ!!」

 

俺が声を張り上げると同時に、ノックは鳴り止んで俺ごと玄関が吹き飛んだ。体を強かに打ち付け、血を吐いた。霞む目を凝らして、玄関を見る。そこには

 

おにがたっていた

 

 

 




童磨「坊や。俺と一緒にお茶しない?」

炭治郎「とっととくたばれ糞野郎」

童磨「きゅんと来たわ。あの子鬼にして!」

病葉「うぃっす」
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