ウルトラマンネクサスover10yearsT   作:柏葉大樹

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ウルトラマンネクサスover10yearsT 第3話

 東京都から離れた富士山付近の樹海。そこに入っていた散策客である男が森の中を必死な形相で全力疾走をしていた。

 

 「はあ!はあ!はあ!何なんだよ、あれは!?」

 

 男は何かに追われているらしく必死で走っていた。だが、慣れない森の中を速度を落とさずに走り続けるのは非常に困難で躓いて転んでしまい、その場に倒れてしまった。

 男は後ろからやって来る何かを見て恐怖の表情を出した。

 

 「来るな!来るな!来るな!あああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 森に男の恐怖の叫び声が響いた。その次には何かが肉を食べる咀嚼音が森の中を終わりなどが無いように響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何なのよ。」

 

 同じ頃、フォートレスフリーダムのブリーフィングルームではでは鈴音が何度もウルトラマンの映像を見ていた。その動き、ビーストとの戦い振りを何度も繰り返し見ていた。その動きになぜだか脳裏に今では連絡をほとんど取っていない幼馴染が浮かんだのだ。

 

 「どうして、あいつと被るのよ。」

 「鈴音、まだいたの?」

 

 そんな時に凪が入って来たのだ。

 

 「警戒態勢は解かれているのよ。何をしていたのよ。」

 「実は、ウルトラマンの映像を何度も見てました。」

 

 鈴音の答えを聞いて凪は3日前のブロブスターとウルトラマンネクサスの映像を見る。

 

 「何か気になることがあるのかしら。」

 「いえ、特には。」

 

 自身の中にあった違和感を凪に伝えなかった鈴音。凪は鈴音を表情を見て、ただ一言無理をしないようにと掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 「どうして、俺だったんだ。」

 

 自宅のベッドの上でエボルトラスターを見る大紀。

 かつて、10年前に新宿で出現したウルトラマンと漆黒の巨人の戦いを見た大紀。そして、それからも続いたビーストの襲撃の中でナイトレイダーに助けられた過去。それがあっても平凡な人生を送ると思っていた矢先に起きた出来事。適応者に選ばれた大紀はその意味を見出そうとしていた。だが、誰に対してではないその言葉の答えが返ってくることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行方不明者?」

 「ああ。この3日間で富士周辺の青木ヶ原樹海で10名近くの行方不明者が出ている。捜索に出た警察からも行方不明者が出てきた。そこで僕たちに調査が依頼された。」

 

 フォートレスフリーダムのブリーフィングルームではここ数日で起きている行方不明者の捜索について話されていた。

 

 「ただ、散策ルートから外れたってだけじゃないですか?他には自殺で入った可能性だって。」

 

 弾が考えられる可能性について話をし始めた。

 

 「樹海に入る人が注意書きを無視してルートから外れた結果、場所が分からずに戻れないケースはあります。森に入ったってヘリからじゃあ確認も難しいですけど。」

 

 弾の話を聞いてタブレットを操作していた数馬がタブレットを置いた。

 

 「それだけで俺達に調査を依頼する警察じゃない。警察内で行方不明に、なおかつ捜索中になったならそれは重大な問題がある。だから、俺達に調査が来たんだろう。」

 

 数馬の意見を聞いて弾が納得した表情になる。

 

 「これから現地に向かって調査を開始する。」

 

 そう言うと孤門はその場に居る全員を見渡す。

 

 「ナイトレイダー、シュート!」

 

 かつてはここで和倉が言っていた掛け声を自分が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、仕事が休みになっていた大紀は実家周辺を歩いていた。

 東京から離れ、見慣れた街並みを見る大紀はある場所で足を止めた。

 

 「ここも閉まってから長いよな。」

 

 その場所には鳳飯店と看板が掲げられた建物があった。かつてはここに足を運んでいた大紀。ここには幼少のころから遊んでいた幼馴染の父親が鍋を振るっていたのだ。だが、高校から大学と音信も途絶え、大樹が働くようになってからこの店も閉まってしまった。

 

 「おじさんもおばさんも連絡が着かないし、スズも何をしてんだか。」

 

 しばらくは店の外観を見ていたが大紀はまた歩き出した。

 大都会である東京と比べ人や車の通りはそこまで多くは無く、建物も高層ビルは何一つない関東地方の田舎ほどではないが都会でもない場所。大紀が育った場所はそういう場所だった。そして、10年前のビーストの事件が頻出していた地域にもほど近い場所でもある。この街ではかつての事件を覚えている人間は、正確には詳細に覚えている人間はいなかった、大紀を除いて。

 かつて、この町の近くに出現したビーストは岩石のような体表を持ち背中には巨大な結晶を複数持っていた四つ足で歩行するタイプであった。インビンシブルタイプビースト=ゴルゴレム、大紀はこのビーストが出現した当時のことをよく覚えていた。山奥で煌めく火花に町まで届いた獣の声、この町の郊外に出現した巨大な怪物のことを大紀はよく覚えていた。だが、当時は情報規制が敷かれていたために幼かったが口に出していけない程度は感じ取っていた大紀は当時のことは話さなかった。

 

 「あの人は、俺に諦めるなって言ってたナイトレイダーのあの人って今もナイトレイダーに居るのか。あの後のことが怖くて父さんにも母さんにも話さなかったしな。」

 

 10年近く前、東京に家族で行った時、運悪くというべきかビースト=ペドレオンの大群が出現した時に大紀は巻き込まれていた。その時にナイトレイダーに助けられた大紀はその姿にあこがれを持った。だが、それからはかつてのことで叩く世間の動きを見て自然とそのあこがれも口にしなくなった。

 

 (はあ、昔のことを思い出していい気がしねえな。てか、こんな俺がウルトラマンなんて。)

 

 そう思ってエボルトラスターを出した大紀。よく見るとエボルトラスターの発光体が明滅していた。

 

 (どっかにいるのか?でも、こないだのでかいやつの時よりも明滅が弱い。何か理由でもあるのか。)

 

 大紀は一度実家へ戻り、実家の物置にあったバイクを出してエボルトラスターの反応を探してバイクを走らせ始めた。

 

 

 

 

 

 青木ヶ原樹海に到着したナイトレイダー。各々が装備を整え樹海の散策道へと入っていく。

 

 「二手に分かれて捜索をしよう。弾と数馬は散策道から僕と副隊長、鈴音で森に入る。」

 「了解。」

 

 孤門たちは二手に分かれる。散策道から捜索を始める弾と数馬はパルスブレイカーの反応を逐一確認しながら進んでいく。

 孤門と凪、鈴音は弾と数馬と別れて森の中へ入っていった。

 森の中は何か際立った異常を見せることは無かった。元々、自殺の名所でもあるこの樹海一帯は人が居なくなることはそう珍しいことではない。鬱蒼とした森の中は確かに人生に生きる意味を見いだせない者たちを誘惑する何かがあるようにも感じられた。

 

 「ビースト振動波は今の所は検知されないわね。」

 「以前に出現したビーストにビースト振動波を打ち消す煙を発生させる能力を持った者もいました。もしかすると何かしらの能力でビースト振動波を消せるのかもしれないです。」

 

 凪の言葉にかつて出現したビーストのことから予想されることを話す孤門。

 

 「でも、本当に何もないってこともあり得ますよね。」

 

 孤門の言葉にそう言った鈴音。その鈴音の表情を見て凪が口を開いた。

 

 「ええ。でも、この森の中に何もないっていう証拠にはならないわ。ビースト振動波だけを頼りにするのは危険よ。」

 「私はただそういうことも考えられるっていうことを言いたいだけです。」

 

 鈴音はそう言った。彼女のその言葉はナイトレイダーにおいて持ち得るべきのある資質が欠如しているように見えた。特に凪はそれを鋭敏に感じ取っており、ある種の危機感を抱いていた。鈴音は睨みつけるように孤門と凪を見ていたが向きを変えて歩き出した。

 

 「鈴音隊員。待ちなさい。」

 

 凪はそう言うと鈴音を追い始めた。孤門も凪と共に鈴音を追おうとした時だった。

 

 

 ジジジジジジジジジジジジジジジジジ。

 

 

 辺り一面に何かの音が響いた。それはまるで虫の羽音のようだった。

 

 「何、この音。」

 

 そう言った鈴音が音の方向を探そうとした時だった。羽をはばたかせながらこちらに向かう巨大なバッタの大群が見えたのだった。孤門と凪は迷わずにディバイドランチャーを構えた。鈴音も遅れてディバイドランチャーを構えて引き金を引こうとした時だった。

 

 バシュン!バシュン!

 

 バッタの群れに向かって波動弾が2発放たれた。波動弾に当たったバッタは青白く光り消滅し、生き残っていた他のバッタはどこかへ飛び去った。

 孤門たちが光弾が放たれた方向を見るとそこには適応者が持つ武器、ブラストショットを持っていた大紀がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は孤門たちが二手に分かれた時まで戻る。

 

 「ここか。」

 

 大紀はエボルトラスターの反応が樹海の散策道の入り口から強くなっていることを突き止めバイクを止めた。散策道に入った大紀はエボルトラスターの反応を見てそれが散策道から外れた森の方角に強く反応していることに気付く。

 大紀はエボルトラスターと同じくいつの間にか手にしていたブラストショットを持ち、森の中へ入っていった。森の奥深くへと入っていくにつれてエボルトラスターの反応が強くなっていった。

 

 (この奥に何がいるんだ。見たところは何も変わり映えはしないのに。)

 

 奥へと進んでいく大紀の前に濃紺色の制服を着ている3人組=孤門たちの姿が見えた。その段階で孤門たちの前方から無数の虫の羽音が響いてくるのに気付いた。大紀が見ると無数の巨大なバッタらしき怪物が飛んでくる姿だった。大紀はそのままブラストショットを構えて、2回は波動弾を放った。放たれた波動弾はバッタの怪物に当たり消滅させることに成功した。だが、生き残っていた他のバッタの怪物の逃亡を許してしまった。

 

 「あいつらなのか。」

 

 飛び去ったバッタの怪物を見てそう呟く大紀。その大紀に孤門、凪、鈴音が歩み寄って来た。

 

 「あんた、ヒロ?」

 「もしかして、スズか。」

 

 鈴音は大紀のことにいち早く気付いた。それは声を掛けられた大紀も同じだった。

 

 「鈴音隊員、彼は?」

 「ああ、副隊長。彼は私の古い知り合いの剣崎大紀です。」

 

 鈴音は凪に大樹のことを聞かれそう答えた。

 

 「ありがとう。君のおかげで助かったよ。」

 

 そう孤門が大樹に声を掛けると大樹はその顔を見てかつて出会ったナイトレイダーの隊員が彼だということに気付いた。

 

 「あなたは、あの時、俺を助けてくれた。」

 「あなた、どこかで会ったかしら。」

 「7年前、新宿でビーストの大群が出た時に助けてもらいました。あの時はありがとうございました。」

 

 当時のことを思い出して孤門に礼を言う大紀。その孤門も当時のことを思い出したようで。

 

 「あの時の子か。立派に育って良かった。」

 

 と笑顔で言った。そこで鈴音は大紀の手にある物を見て大樹に尋ねた。

 

 「ねえ、あんたの手にあるのは何。それでさっきのビーストを倒したの。」

 「いや、これは、、、。」

 

 詳しい経緯を話そうかと悩む大紀。だが、その手にあるブラストショットを見た孤門と凪はそれの意味することを即座に理解していた。そう、かつて自分たちが使っていたものだから。

 

 「君が新しいウルトラマンなんだね。」

 

 孤門がそう言うと大紀がなぜという表情を浮かべた。

 

 「詳しい話はあとで聞くよ。それに今はあのビーストたちを何とかするのが先だ。」

 

 孤門は今はビーストの捜索を優先させることをはっきりと言い、なおかつ大紀の同行を言外に認めたのであった。

 孤門たちのパルスブレイカーは一向に何の反応も示さないのに対して森の奥へと進むにつれて大紀が持つエボルトラスターの反応が強くなっていった。

 

 「この先か。」

 

 大紀が先行するなかで孤門たちも後を追う。森の奥には何やら何かの動物のものだったと思われる骨の破片や腐った肉の塊や臓器、そして行方不明になっている多くの人々の荷物と思われるものの残骸が数多くあった。

 この光景には大紀も鈴音も顔をしかめ、視線をそらした。一方の孤門と凪はその場にあった骨片などをよく観察する。

 

 「ここで殺されたのは間違いないわね。」

 「それにしてもこんな捕食を行うビーストなんて今まで確認されていない。さっきのビーストの仕業なのか。」

 「そう見るべきね。それに彼のエボルトラスターを見ればもう出てもおかしくないわよ。」

 

 孤門も凪も警戒を強めるなかで先程にも聞いた無数の羽音がまた響いてきた。それは今度は彼らのいる全方向から響いていた。

 

 「ここが巣なのか。副隊長は弾隊員と数馬隊員に連絡を。一点突破でここを脱出する。」

 

 そう言って孤門はディバイドランチャーを構え、遠くからやって来るビーストに次々と光弾を撃っていく。それに習い鈴音もディバイドランチャーを構えた。大紀はブラストショットをより強力なエアバーストモードへと変形させ、強化された波動弾を放っていく。

 無数のバッタたちは次々と消滅していく。だが、数が減っているはずなのにその勢いは衰えなかった。その理由はすぐに判明した。森の中から巨大なバッタ型のビーストが出現しており、その腹部から小型のバッタたちを次々と生み出していたからである。

 インセクトタイプビースト=アトラクトム、新たに出現した新種のビーストである。

 アトラクトムは鋭い刺を有する足で次々と森の木々をなぎ倒して大紀たちに迫って来た。

 

 「嘘...。」

 

 ナイトレイダーの入隊して間もない鈴音はアトラクトムの巨大な姿を見て恐怖の感情を出だしてしまった。そこに無数の小型のアトラクトムが襲い掛かった。

 

 「スズ!!」

 

 大紀はブラストショットの波動弾でバリアーを作り鈴音を守った。その鈴音を凪が腕をつかみ引っ張って安全な場所へ連れていった。

 

 「僕たちは森の外から奴を攻撃する。君はウルトラマンになって奴を食い止めて欲しい。」

 

 孤門が大紀にそう言った。その孤門の表情を見た大紀は面食らっていたが意を決してエボルトラスターを引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中からネクサスがその姿を現した。姿を現したネクサスはアトラクトムと対峙してファイティングポーズを取った。

 アトラクトムは腹部から無数の小型アトラクトムを出してネクサスを牽制、そこに口から毒液を吐いた。

 ネクサスはアトラクトムの攻撃にバリアーを展開して防いでいく。それを見たアトラクトムは足を深く曲げて突如大ジャンプをした。そのままアトラクトムはネクサスの周囲をジャンプしながら翻弄、小型アトラクトムの対処に追われていたネクサスは突如背後から来たアトラクトムの強烈なキックを躱すことが出来なかった。地面に倒れ込むネクサスを踏みつけるアトラクトム。そこにクロムチェスターα、β、γの3機が到着した。

 

 「ウルトラマンを援護する。」

 「「「「「了解!」」」」

 

 クロムチェスター3機は次々と搭載された装備群を放っていく。アトラクトムは自身に迫るミサイルや速射砲を小型アトラクトムの群れを盾にすることで防いだ。

 ナイトレイダーの攻撃にアトラクトムの注意がそれた。その隙を逃さずにネクサスはアトラクトムの足を掴み引きずり倒した。ネクサスはそこでメタフィールドを展開した。それを見たナイトレイダーもメタフィールドが形成されるその瞬間にメタフィールドの内部に入った。

 メタフィールド内で果敢にアトラクトムに攻撃をしていくネクサス。アトラクトムはカウンターで噛みつき攻撃、毒液、強力なキックを放っていく。ネクサスを援護するナイトレイダーは様々な方向からアトラクトムを攻撃していく。

 アトラクトムは小型アトラクトムを次々と生み出してはナイトレイダーへ攻撃させていた。

 ネクサスはアトラクトムの強固な甲殻で十分なダメージが入っていないことからその甲殻の上から強烈な攻撃を繰り出せるジュネッスストロングに姿を変えた。ネクサスはアトラクトムに剛力を生かした強烈無比なパンチを何度も何度も頭部に浴びせていく。

 メタフィールド内に鈍い音が響き、小型アトラクトムがクロムチェスター3機の攻撃でどんどんと燃えていく。

 アトラクトムはジュネッスストロングの剛力による強烈な攻撃に既に息も絶え絶えだった。

 ネクサスはアトラクトムの頭部を掴み、そのまま力任せに投げ飛ばした。空中に浮かんだアトラクトムに必殺技のナックルレイ・シュトロームが炸裂。空中で爆発を起こしてアトラクトムは消滅した。




インセクトタイプビースト アトラクトム
 容姿はウルトラマングレートに登場した昆虫怪獣マジャバのバッタ版。名前の由来はオンブバッタの学名より。
 主な能力は植物を砕く強靭な顎、バッタ由来の強力な脚力、口から吐く毒液、脚についた鋭い刺、腹部から小型のアトラクトムを放出する。
 人間を捕食する際は小型アトラクトムの群れに襲わせ、じわじわとなぶるように捕食する。


 今回のビーストは銀色の怪獣さんからアイデアを頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。他にオリジナルビーストのアイデアをくださる方はぜひ僕の方へメッセージを送ってください。これからもよろしくお願いします。

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