アトラクトムが撃破されてから1週間が経ったある日、大紀は職場のデイサービスに居た。
その時は子ども達と一緒に遊んでいた大紀。その表情はビーストとの戦いで見せていた険しい表情ではなく非常に柔らかな笑顔を浮かべていた。
「大紀!大紀!」
「先生な。で、どうした。」
「ぷっ!」
「なっ!唾を吐くな!」
「アヒャハハハハ!」(゚∀゚)アヒャ
「おい、待てえ!!」(# ゚Д゚)
なんと大紀に唾を吐く悪戯をした子どもと大紀が猫とネズミの追いかけっこのような追いかけっこを始めた。そんな追いかけっこはアニメの様に猫が痛い目を逢うかのような(この場合の猫は大紀だろうが)結末にはならなかった。
「大紀先生。お客さんよ。」
「へ!?」
「良いから、行きなさい。先方がどうしても会いたいみたいよ。」
主任の職員の言葉に追いかけっこを中断した大紀。追いかけっこは終わり、大紀は来客の対応をすることに。
「ああ、お待たせしました。」
玄関へ行くとそこには私服姿の孤門と凪が居た。
「やあ。あの時以来だね。」
「え、いや、どうして。」
「仕事が終わったら良いかしら。その時に詳しい話をするわ。」
突然の来訪に驚く大紀。挨拶もほどほどに孤門と凪はその場を後にしていった。首をかしげながら仕事に戻った大紀。言うまでもなくその後も子ども達から呼び捨てにされる、パンチやキックを受ける、唾を吐かれるなどの悪戯を子どもたちが帰るその時まで続いた。
大紀が仕事を終えた時と同じ頃、東京都をめぐる下水道では何か巨大な物が蠢いていた。
「はあ、全く。よりによってもうすぐで仕事が終わるってのによ。」
下水道の異変を聞いた水道局員が下水道の様子を見に来たのだ。彼はライトを手に先へ先へ進んでいく。
「全然、先が見えねえな。」
そう言いながら進んでいると急に歩いていた下水道の感触が変わったのだ。コンクリートで作られたことを示す硬いものからまるで何かの生物の体内の様に柔らかい感触になっていたのだ。
「なんだ?」
そう言って天井を見上げたその次の瞬間、彼が居た場所が勢いよく閉じたのだ。それはそのまま下水道の中をその巨体で切り崩しながら進んでいった。
「それで話というのは?」
大紀は孤門と凪と共に近くのファミレスに入っていた。
「君が良ければ、だけどナイトレイダーに、僕たちが指揮する部隊に入って欲しいんだ。」
「え?」
突然の申し出に大紀は疑問の声を出した。それもそのはず、彼は適応者とは言えその仕事は児童発達支援の事業を行っている事業所の職員である。ビースト関係、それも実戦での活躍を期待されているナイトレイダーに入ることはそこまで考えていなかったのだ。
「それは。」
「当然、私達もいきなり入りなさいと言っている訳じゃないわ。適応者になったことも含めてあなたには考える時間が必要でしょ。」
大紀が返事をしようとすると凪がそれを制した。当然ながら、孤門も凪もかつては適応者であった。まだ、光に選ばれて間もない大紀にはまだまだ時間が必要なのは分かっている。
「あの。」
「どうしたんだい?」
大紀の問いかけに孤門が気付いた。
「あなたがたもそうだったんですか。」
大紀の問いに対して二人は頷いた。
「なら、この力の意味とか、どうして俺だったのか。」
「それは、私達が言えることじゃないわ。一つ言えるのはあなたは確かにその力を受け継いだ。そこに意味があるかどうかはこれから先、あなた自身で見つけることよ。」
かつて、怒りに囚われ闇に堕ちかけた凪。その凪も実のところは光が自らを選んだ理由ははっきりとは分かっていない。だが、その光を受け継ぐことに意味があり、その受け継いだ光を真なる力を手にするべき人物=孤門へとつないだことに意味があるのだと今は考えている。その凪も、凪から光を受け継いだ孤門も同じなのだ。
二人の姿を見た大紀は自分が欲しがっている答えは二人から得られるものではないというのを知って、内心は肩を落としていた。
「連絡があれば、ここに。」
孤門が大紀にケータイの番号が書かれた紙を渡す。孤門と凪はそのまま店を後にした。それから一人で考えていた大紀だったがいつの間にやら頼んでいない料理が来たり、その会計がとっくに終わっていたりでナイトレイダーに入るか入らないかに関わらず二人に会わなければならない要件が出来てしまったことを店を出るころにはしっかりと頭の中の予定に入れることになっていた。
翌日、フォートレスフリーダム内のブリーフィングルームにナイトレイダーの面々が集まっていた。
「昨日、東京都内でビースト振動波が検知って都内に出現したのって俺達が入隊する前に出現したペドレオンがまだ残ってたんすか?」
今回のブリーフィングにあるビースト振動波の話を聞いて弾が口を開いた。そこへブリーフィングルームに入った来た人物が居た。
「いや、ビースト振動波を調べた結果、新種のビーストであることが判明した。」
彼の名は吉良沢優。かつてはTLT日本支部の作戦参謀であり現在はビーストの減少に伴い、TLTから離れて鳥類学者として研究をしていた。
「イラストレーター、戻っていたんですか。」
「本日付でナイトレイダーの作戦参謀になる吉良沢です。孤門隊長、西条副隊長、改めてよろしく。」
そう、吉良沢も今回のビーストの活性化から日本支部に戻っていたのだ。
「吉良沢優。かつての上層部の人間が現場に入るんですね。」
「君の話を聞いていると菊池隊員。僕の話を聞いて良い印象を抱いていないは分かる。それでもビーストに被害を抑えるために協力して欲しい。」
数馬の言葉にそう答えた吉良沢。数馬はすぐにタブレットに視線を戻した。
「それでは、今回確認されたビーストについて僕の方から分かったことを伝えよう。」
吉良沢は10年前とは違いナイトレイダーの面々と同じテーブルに着く。その中で吉良沢はタブレットを手に今回出現したビーストの情報を提示する。
「今回確認されたビーストはコードネームをプリガノティタスと認定している。このビーストは現在判明しているのは東京の地下に潜伏していることとスキャンした結果がかなりの体躯を誇る爬虫類型、レプタイルタイプであるということだけです。。既にプリガノティタスによるものと思われる行方不明者も出ています。」
タブレットからは空中から地中をスキャンしたことで判明したと思われる画像が出てきた。
「ただ、現在では相手の能力も正体も分かっていません。そのため、今回はクロムチェスターα機、β機、γ機によるディグフォーメーションをメインに作戦を行います。地上ではδ機が待機、ディグチェスターで地底に居るプリガノティタスを攻撃、地上へ追いやり、地上にて集中砲火という流れです。ですが今回はあくまで相手の正体を探り、可能であれば撃退に留めてください。」
テーブルの上に出ている画像では今回の作戦概要が出ている。その中で吉良沢は今回の作戦ではあくまで調査と撃退が目的であることを強く言った。
「あの、撃退ってのは分かるんすけど倒すのはアウトですか?」
「殲滅を目的としている部隊である以上は殲滅が優先では?」
今回の作戦で殲滅ではないことに疑問を呈した弾と鈴音。二人に対しても吉良沢は答えを返した。
「過去に出現したビーストであれば情報も多く、出現が確認されれば即座に殲滅します。ですが、今回は新種ということでむやみに殲滅しようとすれば市街地に居るということもあり、無用な被害が出てしまう可能性があります。被害を最小限にする為に今回は可能であれば撃退としています。」
以前とは違い、民間人に被害が出るような作戦ではないことに孤門と凪は吉良沢の変化を感じた。吉良沢も10年という月日の中で変わっており、それは10年前から旧知の中である孤門と凪は容易に感じ取れた。
「作戦開始は明日の明朝からです。皆さん、英気を養っておいてください。」
ブリーフィングルームから弾、数馬、鈴音が退室すると残ったのは孤門と凪、吉良沢だけになった。
「お久しぶりです。」
「まさか、日本に戻っていたなんて。」
「いや、研究の拠点は日本だったんで時折戻ってきてはいました。」
孤門が日本に戻っていたことに驚いていると吉良沢は研究に関することを話した。
「あの彼はどうしているの?」
「憐なら元気にしています。今もあそこの遊園地で働いています。」
彼らの共通の話題でもあるとある青年、その彼が今も元気にしていることを知ると凪の表情が和らいだ。
「どうして作戦参謀に?それもナイトレイダー直属なんて。」
「実はかねてから和倉さんからアドバイザーとしての要請があり、今回はナイトレイダーが正式に動き始めたということとお二人が居るということから作戦参謀として入隊を伝えました。」
10年という月日の中で吉良沢も孤門たち同様にビーストとの戦いに完全に離れたわけでは無かった。だが、それについて吉良沢は以前の様には考えていなかった。
「今も出現が続くビーストの生態を解明していく必要があります。その点では私の戦いも終わっていません。」
「全然、出ねえ。」
大紀は孤門から受け取った電話番号に電話をかけていた。だが、この日は新たに確認された新種のビースト、プリガノティタスへの作戦ですでに出動していた孤門。電話をかけても出てくるわけがなかった。
「それでは作戦を開始してください。」
フォートレスフリーダムでは吉良沢がブリーフィングルームから指示を出していた。都心から離れた場所から孤門が搭乗するクロムチェスターδ機が上空で待機、弾が操縦するα機に凪が操縦するβ機、鈴音と数馬が搭乗するγ機が準備に入った。
「ディグフォーメーション、開始。」
凪がマニュアルでの合体を始めた。空中でα機、β機、γ機が合体してドリル戦車型のチェスターであるディグチェスターが完成した。ディグチェスターはそのままロケット噴射で地面に突入する準備を整えた。
「メタルコンバーダ稼働。ドリル動作開始。」
主な操縦を担当するα機のコックピットに居る弾が操縦する。ディグチェスターはそのまま地中に大きな穴をあけて東京都の地下へと進んでいった。
「こちらフォートレスフリーダム。ディグチェスター、応答してください。」
「こちらディグチェスター。フォートレスフリーダム、どうぞ。」
「ディグチェスター、そのまま進んでください。クロムチェスターδ機は上空でビーストスキャナーでプリガノティタスを探し続けてください。発見次第、ディグチェスターに案内してください。」
「了解。」
上空を高速で飛行するクロムチェスターδ機が地中に眠っているプリガノティタスを探す。その進行に合わせてディグチェスターは地中を掘り進んでいく。
「前方に巨大な空間を発見、突入します。」
「ディグチェスター、前方の巨大空間からビースト振動波を探知。厳重に警戒して行動を開始。」
「了解。」
進んでいく中で地下に巨大な空間があることが分かり、ディグチェスターはそのままその中へ突入した。巨大な空間は街一つがすっぽりと覆えるほどの巨大な空間でその中心で侵入者に気付いたビーストが目覚めた。
発達した両脚に地面を掘削するために硬く鋭い爪を有する巨大な腕、全身を覆う鱗は重なり合ってまるで岩のような甲殻となっている。胴体には剣山のような鋭い甲羅に覆われていた。その顔は元になった生物のワニガメの特徴を色濃く残しながらそのくちばしはまるで肉を切り裂くような形状でありながら長く発達した牙があった。侵入者のディグチェスターを睨むその両目は血の様に赤く染まっていた。レプタイルタイプビースト=プリガノティタス、この地下巨大空間の主である。
「ターゲット確認。攻撃に移る。」
「ホーミングミサイル、発射!」
凪の号令の下で弾がミサイルを発射。ミサイルは寸分違わずにプリガノティタスに命中した。
「副隊長、以前ターゲットは健在。来ます。」
周囲を警戒していた数馬がプリガノティタスが健在であることを伝える。その言葉の通りに煙の中から出てきたプリガノティタスは全くの無傷だった。
プリガノティタスは自身を攻撃した不届き者を見つけると口を開けて舌を伸ばしてディグチェスターをからめとった。
「装甲損傷!引っ張られます!」
「弾隊員、メタルコンバーダを稼働。ドリルで舌を攻撃して脱出するわ。」
「了解!メタルコンバーダ、フルパワー!これでも喰らえ!」
ディグチェスターはドリルを高速回転させてプリガノティタスの舌を破砕した。
ギシャアアアアアア!
痛みのあまり、プリガノティタスは地下空間から脱出。地上へと逃げた。
「孤門隊長。ターゲットが地上へ。迎撃を開始して。」
「了解。」
凪は上空で待機していた孤門に通信を入れる。ディグチェスターはそのままプリガノティタスを追って地上へ向かう。
ドクン、ドクン!
勤務が終わり自宅へ戻る途中の大紀がエボルトラスターの鼓動に気付く。すぐさま、人通りの少ない路地へ入りウルトラマンネクサスへと変身する。
ネクサスはその場から飛び去り、ビーストのいる場所へ向かう。
プリガノティタスが出たのはまだ開発が進んでいない地下トンネルの入り口だった。その入り口を破壊して地上に出たプリガノティタスは傷を癒そうと人口密集地である都心部へと進みだした。それを空中からクロムチェスターδ機がレーザー攻撃で阻止しようとする。
「攻撃が一切通じていない。前に出現したグランテラと同じくらいの甲殻なのか。」
クロムチェスターδ機の装備でも十分な傷を付けれないことから以前に出現したクラスシティアンタイプ、グランテラを思い出す孤門。地中から出たディグチェスターも分離してクロムチェスター各機で攻撃を続ける。だが、それに意を介さず進撃を続けるプリガノティタス。それを見た孤門はそれを阻止するためにクロムチェスター4機の合体=ハイパーストライクフォーメーションを始動しようとした。その瞬間だった。
ディアアアア!!
空中から高速でネクサスが飛来、進んでくるプリガノティタスの頭部にキックを放った。
ギシャアアアアアア!!
プリガノティタスの頭部から火花が散り、プリガノティタスが地面に倒れる。
キックをしたネクサスはその場で回転、メタフィールドを展開した。メタフィールドの形成が終わるとネクサスはジュネッスストロングへタイプチェンジした。
プリガノティタスは爪を振るいネクサスを攻撃するがネクサスはプリガノティタスの両腕を受け止め腹部に強烈なキックを放った。ミサイルもレーザーも通さないプリガノティタスの甲羅もジュネッスストロングのパワーには敵わないらしくキックを受けた場所の甲殻が欠けていたのだ。
ギシャアア!!
だが、プリガノティタスは両腕を広げて腹部を大きく見せると腹部の甲羅が開き、中から次々と岩石を吐き出していく。ジュネッスストロングは両腕をクロスしてクロスシールドを展開、岩石を防いでいく。ジュネッスストロングの動きが止まった瞬間にプリガノティタス地面に両手をついて4足歩行となる。そして、頭部をジュネッスストロングの方へ向けるとその顎を大きく開けた。プリガノティタスの顎は首まで開き、ジュネッスストロングを飲み込むほどの大きな口となった。プリガノティタスはそのまま大あごにジュネッスストロングを捉え、勢いよく顎を閉じたのだ。
プリガノティタスは自身を攻撃した敵を自らの胃袋に収めて満足そうにした。だが、プリガノティタスの体の内部からミシミシという音が響く。プリガノティタスは音を出所はどこかと辺りを探そうとした時だった。
ミシミシミシミシ、バキャアアアアン!!
ギシャアアアアアア!!
プリガノティタスの甲羅が内側からひび割れ爆ぜたのだった。立派な甲羅は見る影もなく大きな穴を開けていた。中から飛び出したのはネクサスジュネッスストロングだった。プリガノティタスの内部から力づくで突き破ったのだ。地面に着地したジュネッスストロングは両手からエネルギーを激しくスパークさせる。スパークしたエネルギーを集中して右腕の拳を突き出すと同時に紅蓮の光線としてプリガノティタスに放った。ジュネッスストロングの数少ない光線技の一つであるオーバーフレアシュートである。
オーバーフレアシュートを受けたプリガノティタスは爆発を起こし、微粒子レベルで完全に消滅した。
レプタイルタイプビースト プリガノティタス
東京の地下に潜んでいた新種のビーストでペットで飼われていたワニガメがビースト化した存在。長く伸びる舌に、地面を容易く砕く鉤爪、腹部の第二の口から高速で吐き出す爆発岩石が武器。普段は二足歩行だが四足歩行の体型に変化すると首まで大きく開く大顎で相手を補食する。全身の甲殻が岩石のように硬く、クロムチェスターのミサイルやレーザー兵器が大きな効果を与えることは出来なかった。