ウルトラマンネクサスover10yearsT   作:柏葉大樹

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ウルトラマンネクサスover10yearsT 第5話

 アフリカ大陸中央部。90年代よりそこでは伝説の魔獣ジーナフォイロの目撃が多発していた。人が混じったような顔をした巨大コウモリのうわさはたちまち広まった。ジーナフォイロに遭遇した者はその赤く光り輝くその眼に魅入られた者は激しい動悸を覚え、立っていられないほどになる。遭遇した者はその後に軽い体調不良を覚え病院へ受診したが軽度の被曝が見られたと言う。このジーナフォイロ、アフリカの他にもアメリカでも目撃例があり、噂ではUFOと共に現れたとも。ただし、ジーナフォイロは2000年に入る頃には目撃例も出ておらず、現地ではその存在がまことしやかに語られるもののほとんどの人々がその存在を忘れるようになっていた。

 

 「それでこんな仕事をするのかよ。」

 「まあ、ジャパンでは頻出しているビーストもこっちではそもそも現れている奴が少ないし、現れた奴も俺達で楽に対処できる奴らばかりだからな。楽な仕事だし、給料もそこらの仕事よりはるかに良いからな。」

 

 夜のぬかるむ道でも走るジープに乗っているのはTLTアフリカ支部の調査員である。これまでTLTアフリカ支部では激戦区であるTLT日本支部と比べるとビーストの発見数が少なかった。確認されたビーストも現地の動物が巨大化、と言っても精々が10メートル未満のものでほとんどが目立った被害を出す前に殲滅できていた。

 

 「まあ、どうせ今回も多少でかくなったゾウとかだろ。新人のお前には手厳しいだろうがすぐに終わるさ。」

 

 そう言ってジープを運転する調査員。助手席に座る新人の調査員はこれなら保護区のレンジャーとなんら変わりないと思っていた。

 

 「さて、そろそろお目当てのビーストがいる地域のはずだ。気を引き締めろよ。」

 

 そんな中でジープはある地点で止まった調査員は周囲を警戒する。そんな中で森の奥から何やら赤い光が見えてきた。

 

 「来た来た。さあ、その姿を見せろよ。」

 

 調査員は支給されているディバイドシューターを構え、光の方へと向けて徐々にその光の方へと歩いていく。彼らがその直後に見たのは彼らがこれまでに遭遇したビーストとは比べ物にならない怪物だった。彼らの行方はその直後から分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 「さてと。」

 

 その日、大紀はいつものように勤務を終えて帰る途中だった。その大紀の前に知り合いが居たからだ。

 

 「スズ。」

 

 幼馴染の鈴音が私服姿でいたのだ。

 

 「ちょっと付き合いなさいよ。」

 

 ぶっきらぼうにそう言った鈴音。それに大紀は驚きながらも鈴音に付き合うことに。二人は近くの喫茶店に入ると二人はそれぞれコーヒーを注文した。その後はどことなくお互いによそよそしい雰囲気で黙ったままだった。

 

 「久しぶりね。」

 「まあ、中学を卒業してから会ってないからな。」

 

 そう言ってまたお互いに黙ってしまう。

 

 「なあ、なんで店を閉めてんの?」

 

 その中で大紀はずっと疑問に思っていたことを鈴音に尋ねた。

 

 「色々あるのよ。」

 「ラクロスは?今も続けてんの?」

 「そもそも、ナイトレイダーに居るんだからしているはずが無いでしょ。」

 「そうだよな。」

 

 そう言われ大紀は注文したコーヒーを飲む。それを見た鈴音は

 

 「フフ、話題が無くなるといつも困った顔をするわよね。」

 

 と言った。

 

 「やっぱり、あんたは変わってないわね。」

 「それ、ほめてんの?」

 「ほめてるわよ、ヒロが変わらずにいい奴ってことよ。」

 「どうだか。」

 「すねないでよ。」

 

 やっと二人の間の空気が柔らかくなった。すねている大紀はそのままコーヒーを飲む。

 

 「それで隊長と副隊長のスカウトを受けるの?」

 「え、ああ。受けるかどうかともかく前におごってくれた飯の礼を言わないと行けなくて。」

 「入隊するの?」

 「いや、まだ。」

 

 鈴音は大紀に入隊の件を聞くが大樹自身はまだそれ自体を完全に決めてはいなかった。

 

 「今、世話になっているところで子どもたちを見ているんだ、ようは児童通所デイサービス。流石にいきなり消えるのは子供たちに悪いって思ってて。」

 「学校の先生になるんじゃなかったの?」

 「いや、大学で免許はとったけど別の教員免許を所得したくて。それにいろいろと子どもに関わる仕事の資格が取れれば、ほら就職に有利になったりするだろ。」

 「ああ、やっているうちにそっちよりもそこで正社員になる方が速いんじゃないの?」

 「まあ。だから、スズの上司の二人には悪いけどまだ入隊は決めれないな。」

 「そう。まあ、いいんじゃない。」

 

 そう話をする二人。そこで鈴音があることを大紀に尋ねる。

 

 「ねえ、なんであんたがウルトラマンに?」

 「分かんねえ。」

 「心当たりは?」

 「一切ないよ。」

 「そう。」

 

 だが、それもすぐに会話が終わる。まだ、大紀自身も自身が選ばれた理由を求めていた。

 

 「いつか、見つかると良いわね。」

 

 鈴音はそう言うと一人で店を出る。大紀はそのまま店で空っぽのコーヒーカップを見つめていただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アフリカ、TLTアフリカ支部ではビーストの調査中に行方不明になった調査員の行方を捜していた。

 

 「一体、どこへ消えたんだ。」

 

 TLTアフリカ支部に基地がある南アフリカ共和国出身の白人系の隊員はクロムチェスターα機で空中から調査員が行方不明になった森の地域を捜索していた。

 

 「ただ、カバに襲われたっていうのもあり得るだろうが。」

 

 そう言っていた時、クロムチェスターの計器から近くから強大なビースト振動波が放たれていることに気付いた。

 

 「なんだ、この反応は。」

 

 その次の瞬間、森の中から巨大なコウモリの羽が出てきたのだ。そのままコウモリの羽からその体が出てくる。その見た目は正しく巨大なコウモリであり、その顔はまるで人間とコウモリを無理矢理混ぜ合わせたかのような風貌であった。

 

 「なんだよ、あいつは。」

 

 驚く隊員を尻目に巨大コウモリは翼を広げてそのままアフリカの大地から飛び立った。

 

 「アフリカ支部!こちらは行方不明の調査員の捜索の中、新種の巨大ビーストを確認。迎撃を行う。」

 

 隊員はそのままクロムチェスターα機を操り、巨大コウモリを攻撃する。だが、巨大コウモリはそれを意に介することなく、そのまま翼をはばたかせて夜空へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「先日、TLTアフリカ支部で巨大ビーストが確認されました。」

 

 フォートレスフリーダムでは吉良沢が先日アフリカで確認された新種のビーストについてナイトレイダーの面々に話していた。

 

 「現地にて何度も目撃情報が報告されている未確認生物、ジーナフォイロと身体的特徴が一致していることから今回確認された新種のビーストはこれまでに目撃されたジーナフォイロそのものであると断定した。さらにはその他の特徴から過去の出現したフィンディッシュタイプに分類されるビーストとの類似性が見られたことからジーナフォイロもフィンディッシュタイプに分類されました。」

 

 吉良沢はブリーフィングルームのデスクの上にTLTアフリカ支部から得られた画像から作成した画像データを投影する。

 

 「こいつ、気持悪い見た目してんな。」

 「ぱっと見はコウモリだけどな。」

 

 画像を見る弾と数馬はそうジーナフォイロを評する。一方、画像を見ていた鈴音は吉良沢に声を掛ける。

 

 「どうして、アフリカに出現したビーストの情報を?基本的にはそれぞれの支部で対応するのではないのですか?」

 「それはアフリカ支部の管轄であるアフリカ大陸からこの日本に進んでいることが判明したからだ。」

 

 その時に鈴音の問いに答えたのは門倉だった。日本支部上層部の重鎮がいることに弾と鈴音は姿勢を正す。

 

 「そう硬くならないでくれ。私も元はナイトレイダーの隊長だ。そうかしこまらなくていい。」

 

 そう言うと門倉はそのまま空いている椅子に座る。

 

 「アフリカ支部ではこれまでに判明しているジーナフォイロの関する資料を送ってくれた。目を通してもらいたい。」

 

 そう言うと門倉は紙の束を孤門に渡す。

 

 「門倉さんは今回のジーナフォイロに関してはどうお考えで。」

 「では、イラストレーターの考えは?」

 

 吉良沢は門倉に質問を掛けるが返って来たのは門倉の質問だった。これには吉良沢も一瞬面食らったがすぐに気を取り直す。

 

 「アフリカ支部によるとこのジーナフォイロは新たな生息地を探すために現れたと見ています。それに関しては私も同意見です。」

 「そのターゲットが日本、か。」

 「断言はできません。ただ、なぜアフリカの人口密集地を狙わなかったのかは分かりませんが。」

 「ここにウルトラマンがいるから、でしょうか。」

 

 吉良沢と門倉の会話に鈴音が入って来た。

 

 「どうして、ウルトラマンが関係していると。」

 「ここまでのビーストはまるでウルトラマンと戦うことを想定しているかのようになっています。過去のビースト以上に力を付けているとしか。」

 

 その鈴音の意見を聞いた門倉は孤門、凪、吉良沢の順に視線を移した。

 

 「なるほど、それも言えるかもしれん。そのことについては今後の調査にも反映させよう。本題に戻すがジーナフォイロの侵攻ルートは依然として判明していない。くれぐれも警戒を緩めないようにしてくれ。」

 

 そう言うと門倉は若いメンバーを見る。

 

 「君達、若い世代がこの仕事に就いてくれて本当に感謝している。くれぐれも君達の光を見失うことが無いようにして欲しい。我々の仕事はきれいごとばかりではない。私もそこにいる孤門隊長と西条副隊長と共にナイトレイダーに居た時はそれを重々承知で勤めていた。当然、私もそこにる2人もやりきれないことが数多くあった。だが、今もこうしてTLTにいるのは私たち自身が出来ることをする為に、かつての過ちを決して繰り返さないためにここにいる。」

 

 そう言って門倉は席を立った。

 

 「何かあれば私に言ってくれ。現場のことはしっかりと上にも通さないとな。」

 

 そう言ってブリーフィングルームを後にする門倉。その姿を見て、若いナイトレイダーのメンバーはいまだに彼も前線で戦い続ける人物なのだと分かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、ナイトレイダーの面々が眠りにつこうとした時だった。フォートレスフリーダム内で緊急を告げるサイレンがそかしこに鳴り響く。

 ナイトレイダーの面々は急いでブリーフィングルームへと集まる。

 

 「コードネーム、ジーナフォイロ出現。」

 

 先にブリーフィングルームに居た吉良沢がタブレットを操作する。そこに数馬も加わり、ジーナフォイロを居場所を探す。

 

 「東京湾海上にジーナフォイロをビースト振動波を探知。このままでは東京の市街地に到達します。」

 「副隊長はβ機、鈴音隊員と弾隊員はγ機に搭乗してくれ。僕はα機に乗る。数馬隊員はここでイラストレーターと共にジーナフォイロの分析を頼む。」

 

 孤門はナイトレイダーの面々に指示を出す。全員がブリーフィングルームにて装備を整えて、クロムチェスターに乗り込む準備を整えた。

 

 「ナイトレイダー、シュート!!」

 

 孤門の掛け声でブリーフィングルームから格納庫へ一気に移動する。そして、フォートレスフリーダムから3機のクロムチェスターが夜空の中、東京湾上空に出現したジーナフォイロの元へ飛んでいく。

 

 

 

 

 ドクン!ドクン!

 

 その夜、ジーナフォイロが出てきた時間と同じ頃にベッドの上で眠り始めようとしていた大紀にもそれを告げるエボルトラスターの鼓動が聞えた。大紀はすぐにエボルトラスターを掴んで外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の東京湾お台場上空。そこではフィンディッシュタイプビースト=ジーナフォイロとクロムチェスター3機による苛烈なドッグファイトが繰り広げられていた。

 クロムチェスターα機は高速でジーナフォイロを後を追い機関銃を連射するもジーナフォイロは巨体からは考えられないほどの身のこなしで機関銃の弾丸を躱していく。さらに上空からクロムチェスターβ機も機関銃を発射するも不規則な動きからジーナフォイロはこれも躱していく。

 

 「弾隊員、行きなさい!」

 「おうら、ミサイルをたらふく喰らえ!!」

 

 だが、それはクロムチェスターβ機を操縦する凪の作戦だった。空中で動いているジーナフォイロはクロムチェスターγ機の大量のミサイルの餌食となったのだ。ミサイルはそのままジーナフォイロに向かって不規則な動きで空中を飛び交いジーナフォイロの当たるかと思われた。だが、無数のミサイルはそのままジーナフォイロの体を通り抜けてしまい、ミサイル同士で激突して爆発した。

 

 「何、あれ。」

 「ミサイルが通り抜けやがった。」

 

 目の前で起きたことが全く理解できない弾と鈴音。爆発に巻き込まれながらもジーナフォイロはものともせず翼をはばたかせる。

 

 「孤門隊長、見た?」

 「しっかりと確認した。」

 

 その様子は孤門も凪も確認していた。ナイトレイダーの面々がジーナフォイロの能力に面食らっている中、赤い光が現れた。

 

 「ウルトラマン!」

 

 お台場の上空に現れた銀色の巨人、ウルトラマンネクサス。それを見るジーナフォイロは醜悪なその顔を歪ませて咆哮した。

 

 ジュア!!

 

 ネクサスはパーティカルフェザーをジーナフォイロに発射。だが、ジーナフォイロはいきなりその姿を透明にしてその場から消えてしまった。

 

 「いきなり消えたぞ!」

 「ビースト振動波も消えてる。」

 

 クロムチェスターでジーナフォイロを探す弾と鈴音だが一向に見つからなかった。それはネクサスも同様で、空中に浮かびながら周囲を警戒していた。そこにいきなりジーナフォイロが出現して足の爪でネクサスを攻撃した。

 

 ディヤアアア!!

 キシャアアアアオオン!!

 

 ジーナフォイロは透明化からの攻撃でネクサスを翻弄する。さらにはかなりのスピードを保ったまま飛行しており何度も何度もヒットアンドアウェイを繰り返す。

 

 「ウルトラマンを援護だ。」

 「「「了解!!」」」

 

 それを見ていたナイトレイダーの面々はジーナフォイロの動きを見て、散開する。そして、ジーナフォイロが幾度目かの透明化の後にネクサスの背後に出現した。

 

 「そこだ!!」

 

 その瞬間をナイトレイダーの面々は逃しはしなかった。クロムチェスター三機の一斉攻撃は見事ジーナフォイロに命中した。

 

 キシャアアオン!!

 

 どうやら、ジーナフォイロの通り抜けは攻撃中は出来ないらしい。ジーナフォイロが怯んだところをネクサスは逃さずにその飛行スピードに対抗するためにジュネッススピードにタイプチェンジした。

 ジーナフォイロは夜空を高速で飛ぶもそれを上回る速さでネクサスは飛行する。さらにすれ違いざまにネクサスはアームドネクサスの刃でジーナフォイロを切り裂いていく。時折、透明化と透過で攻撃をやり過ごそうとするジーナフォイロだったがネクサスの援護をするナイトレイダーの攻撃もあってそれを使う暇が無かった。

 ネクサスは両腕を振るい、三日月形のカッター光線であるラムダ・スラッシャーでジーナフォイロの翼を切断する。

 

 キシャアアアア!!

 

 痛みの悲鳴を上げて落下するジーナフォイロ。ネクサスは両腕をクロスして発射する必殺光線であるスラッシュレイ・シュトロームをジーナフォイロに浴びせた。

 ジーナフォイロは胴体にX字に輝く光を浴びて全身を青白い粒子となって消滅した。




フィンディッシュタイプビースト ジーナフォイロ
 アフリカで確認されたビースト。古い目撃情報では90年代より存在が確認されていた。現地で噂される未確認生物UMAのジーナフォイロそのものである。
 能力は赤く光る眼で対象の動きを硬直させる、透明化、物質の透過である。大量の動きを硬直させるのは両目から強力な放射線を照射して対象の動きを止めるのである。現地でジーナフォイロに遭遇した者達が放射能被曝と診断されるのはこれが所以である。森の中で姿を隠して人間を待ち伏せして捕食していたと考えられており、実際にはかなりの犠牲者を出したと考えられる。
 生息地のアフリカから日本に移動した理由は判明できていない。また、過去に出現したフィンディッシュタイプビーストと同様に高い再生能力を有しているが元々飛行するための肉体構造であるために肉体の強度は低く通常兵器でも十分なダメージを与えることが出来る。

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