ウルトラマンネクサスover10yearsT   作:柏葉大樹

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ウルトラマンネクサスover10yearsT 第7話

 八王子市、東京都の中でも中心部である23区から離れたそこである人物に関することでとある人物がそのアパートへと訪ねていた。

 

 「おい、矢車。居るんなら返事をしろ。」

 

 その人物は警察官であり、その人物とも関係が深かった。日下部ソウジ、彼はこの後に自身が巻き込まれるであろう事件のことを何ら予測していなかった。

 

 

 

 

 

 

 大紀(ヒロキ)は事業所で子供たちの面倒を見ていた。その中のある一人と一緒にブロックで遊んでいた。

 

 「へえ、ところでヒナタのお父さんさ。今度休みなの?」

 「うん!父さん、今度の休みに一緒にゲームをするって!!」

 

 ヒロキが話している子は日下部ヒナタ。大紀がここで勤め出してから2年目の時にこの事業所へ来たのだ。ヒロキによく懐いており普段からよく話すのである。

 

 「先生の親戚も警察だけどすごく忙しいって聞いているけど。」

 「でも、父さんね、しばらく休むって。」

 「へえ、そういう時もあるんだ。」

 

 大紀はそう聞くと自分で作っていたブロックの恐竜をその場に置いた。

 

 「それじゃ、先生さ。他の先生とお仕事、交代してくるから。」

 「うん。行って。」

 「本当、毎回さっぱり言うよねぇ。」

 

 大紀はこのようにして日常を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日前、フォートレスフリーダムから大紀の自宅に戻った時だった。

 

 「スズ、俺やっぱ入隊はしねえわ。」

 「そう。」

 「やっぱりさ、今いる場所でさ、子供たちが可愛いんだ。いきなり消えるのは出来ねえし、俺はそこまでして戦おうとは思えない。」

 「一応、入隊しないってことは隊長たちに伝えておくわ。」

 「ありがと。」

 「ええ、それじゃ。」

 

 そう鈴音とやり取りをしたのだ。大紀の中では決心はついていなかった、というよりも今の自分が居る場所では無いという気持ちが強かったからであり、自分の中の戦う理由もいまだに定まっていなかったからである。それに関してはスズネも言及することは無く、そのまま二人は別れた。

 そんなやり取りがあってからの初めての週末、後30分ほどで就業時間が終了するという時だった。

 

 「ヒナタ君!お母さんがお迎えに来ました!」

 

 玄関の方から他の職員が奥まで聞こえる声で言ったことを聞いた大紀は記録を書く手を止めて、近くの部屋で遊んでいるヒナタに声を掛けた。

 

 「ヒナタ、お母さんが迎えに来たよ。」

 「ええ、もう!?」

 「うん。準備は?」

 「出来てるけど。」

 

 当のヒナタ本人は帰る時間が来たということでやや不満気であった。だが、特にごねることもなくヒナタは迎えに来た母親と共に帰った。なお、去り際に色々な諸々な作業が残っていることに大紀は気付き、翌日が休みということもあって残業をすることを決心したそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 ヒロキが残業に追われている中、フォートレスフリーダムのブリーフィングルームではナイトレイダーの面々が集まっていた。

 

 「それでは都内に新たな反応が出たと。」

 「はい。しかし、今回の反応はごく短い時間のみに探知され、数秒後には消失しました。」

 

 彼らは今数日前に出たビースト振動波についてブリーフィングを行っていた。デスクの上のホログラムには東京都の地図が出されており、反応が出た地点が赤く表示されていた。

 

 「東京都八王子市まで反応は絞れました。しかし、そこからの詳しい地点の判明は出来ていません。この数日までに反応が確認することが出来たのはそこまでです。現地で調査を行いますが住民の混乱を防ぐために今回は軽装でお願いします。」

 

 吉良沢の指示で今回は孤門と鈴音が現地で調査を行うことになった。他のメンバーはフォートレスフリーダムで待機することになった。

 

 

 

 

 その翌日、大紀はエボルトラスターがビーストの出現を検知したのを感じてビーストを探していた。流石にナイトレイダーに入らないと伝えたとは言え、ビーストをそのまま野放しにするということは出来なかった。

 

 「一体、どこなんだよ。」

 

 そう言ってエボルトラスターを見ると既に反応は無くなっていた。

 

 「ここ最近はずっとこうだな。いったい、どこに居るんだよ。」

 

 そうエボルトラスターを見て言う大紀。ここ数日の間に大紀もエボルトラスターの反応には気付いていた。だが、どれも即座に反応が消えていたのだ。

 

 「やっぱり、入るべきか。」

 

 そう言う大紀は自身の手にあるとある連絡先が書かれたメモに視線を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さっきの反応はこの区域からだった。」

 「それにしてもそんな短い間って何なんでしょうか。」

 

 時同じく調査を行っていた孤門と鈴音はビースト振動波が検知された区域の調査を行っていた。そこは住宅街であり、特におかしい点があるというわけでは無かった。

 

 「こんな住宅地にビーストが出現したことってあるんですか?」

 「いや、過去のビースト被害に直接住宅街を襲ったというものは無いよ。どういうわけ、こういった住宅地を狙った個体は少なかった。工場内を巣にしていたビーストもいたけど周辺に被害が出る前にどれも駆除できたんだ。」

 

 鈴音の問いに孤門が答えた。二人はそのまま歩きながら調査をしていたがそこに激しいノック音が響いて来た。二人はノック音が響いている場所へ向かう。そこにはボロアパートの一室を何度もノックする男がいた。

 

 「矢車!また、来るからな!」

 

 男はそう言って扉から離れた。男が下ってくる階段の下で孤門と鈴音は待っていた。

 

 「あんたたちは?」

 「僕らはナイトレイダーです。少し、お話を伺っても?」

 

 この男は日下部ソウジ、このアパートの住人を何度も訪ねているヒナタの父親だった。

 

 「それで、バケモン退治をしている奴らがどうしてこんなところに?」

 「それはビ「パトロールですよ。何か変わったことはありませんでしたか?」

 

 鈴音の言葉を遮って孤門がソウジにそう尋ねた。

 

 「先週から、さっきのアパートに住んでいる知り合いの矢車が音沙汰なしになっていて。それぐらいだな。なんだ、最近この辺りにバケモンが出たのか?」

 「そう言うわけではないです。ありがとうございました。」

 

 孤門と鈴音はそこから離れた。

 

 「あの、隊長。どうして?」

 「ビーストの調査なんて言えば相手がどういう反応をするか分からないんだ。今はまだ完全に出てきたわけじゃない。無用に不安を掻き立てるわけにもいかない。それに。」

 「それに?」

 「あの人の言った矢車っていう人を調べた方が良いかもしれない。」

 

 孤門と鈴音はそのままフォートレスフリーダムに戻った。その後に孤門と鈴音は他のメンバーと共に矢車についての調査を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休日が明けてからの月曜日、大紀はその日もヒナタの面倒を見ていた。理由は来所した時からあまりにも不機嫌で意気消沈した様子だったからだ。

 大紀はヒナタが来た瞬間にこれは何かあったと即座にわかった。だが、特に聞き出そうするのではなく活動場所のプレイルームへ入った時にただ隣に座っただけだった。そうしているうちにヒナタの方から話し出した。

 

 「先生。」

 「どしたのさ、ヒナタ。今日、ずっと元気ないじゃん。何かあった?」

 「うん。父さんね、お休みだったけどお仕事あるって。」

 「ああ、がっかりだったな。」

 

 そう聞く大紀の表情はとても優しいものだった。

 

 「怒ったの?」

 「うんうん。」

 「そうか、偉かったな。ちゃんと我慢出来て偉かったぞ。」

 「うん。」

 

 そう言って大紀はヒナタのことを褒める。だが、それを言われてもなおヒナタの表情は明るくならなかった。それに対して大紀は内心ではそうだよなと苦笑いをしていた。

 この時の大紀はまさかこの後に起きるであろう事件でヒナタたち家族とより深く関わることになるとは思っていなかった。

 

 「おし、じゃあ、今日は何をして遊ぶ?」

 「う~ん、先生のケータイで音楽聞きたい。」

 「じゃあ、友達と他の先生たちがいないときにな。今なら大丈夫だけど、どう?」

 「うん、する。」

 「じゃあ、シールを張って。熱を測ったらすぐにやるか。」

 「は~い。」

 「って言った瞬間にふざけてシール帳じゃないものを出さない。てか、それは幼稚園のお便り帳でしょ!!」

 

 そのようなやり取りのなかで大紀は自分のスマホに入っている音楽を流し始めた。それを聞いたヒナタはすぐに見てわかるように上機嫌になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それで調査の進捗はどうだい。」

 

 その同じ頃にフォートレスフリーダムではナイトレイダーの面々が矢車について調査をしていた。

 孤門の言葉にすぐに反応を返したのは数馬だった。

 

 「矢車という男は隊長が鳳隊員とともに調査していた地域に住んでいる警察官でした。矢車ソウ、35歳で先月に警視庁を自主退職しています。」

 

 そう言ってタブレットを操作する数馬。ブリーフィングルームのテーブルの上のディスプレイには矢車ソウのプロフィールが映し出された。

 

 「理由は体調の悪化により。警視庁を辞めてからは一切動きが分かりません。周囲の量販店を利用した記録も先月を境に一切ありません。」

 「普通、そんなのあり得ねえぞ。他には何かねえのか。」

 

 数馬の情報に弾がそう言う。だが、数馬が調べた情報は提示されているもの以上のことは分からなかった。

 

 「それじゃあ、分からないでしょ。この矢車って人、こないだ私達が殲滅したビーストの現場を調査していたらしいのよ。」

 

 鈴音が今度は新たに警視庁が行っていたビースト出現地の調査の概要を提示する。

 

 「私達が現場に来るまで規制線を張っていたでしょ。その時にどうも怪しい動きをしていたのが目に付いたのよ。その時はそこにいるビーストの殲滅が優先だったから私も隊長に言った後は知らなかったけど。」

 「孤門隊長、そのことについて警視庁には?」

 「僕の方から厳重注意をしてもらうように言った。ただ、その後のことはそっちでするとしか聞いていない。」

 

 今から3か月前、プリガノティタス討伐の直後である。八王子市から秩父方面へ向かうトンネルにビースト出現が確認されたのだ。確認されたビーストは小型だったもののビースト頻出期から存在が確認されているフィンディッシュタイプビースト=ノスフェルだったのだ。現地の警察が出現時に対応したのだが小型とはいえ10メートル近くのビーストの対処には手を焼いたのだった。警察からの要請を受けたナイトレイダーはノスフェルの殲滅を行った。いくら再生能力を有するノスフェルでも小型の個体で弱点を破壊する手段もあったためにそう苦戦することは無かった。その際に、規制線を張っていた警察官の何人かがノスフェルと接触したのだった。後の検査で幸いにもビースト細胞に侵された警察官はいなかった。そう、その時の検査では誰一人としてビースト細胞に侵されているはずがないのだ。

 

 「あの時の検査では誰もビースト細胞の反応は無かった。それなのにその時の対応を行った警察官に変化があった。」

 

 孤門の言葉にナイトレイダーの面々が脳裏にあるストーリーが浮かび上がっていた。

 

 「その時の検査で反応が無かったのは殲滅した直後でビースト細胞そのものが不活性化していたと思う。それが時間を掛けて活性化していった。すぐに調査班にも連絡をしよう。明日には彼の身元を保護しないと。」

 

 孤門の中にあった懸念はその翌日に分かることになる。それもかつて彼の前で起きた最悪の形を彷彿させるような、そんな形で分かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝だった。出勤してきた大紀の目に飛び込んだのは職員が慌ただしく動いている姿だった。

 

 「あの、どうしたんですか?」

 「ヒナタ君が誘拐されたって。大紀先生も手伝って!!」

 「ヒナタが!?」

 

 大紀がそれを聞くと即座に事業所を出たのだ。

 そのことを聞いて必死に走る大紀。そして、大紀の懐にしまってあるエボルトラスターはこれまでにない程に強い反応を示していた。

 

 

 

 

 同じ頃、ナイトレイダーの面々はバンに乗って八王子へと来ていた。全員が装備を整えており、これから向かう場所は住宅地ということもあって周辺に住んでいる住民の避難も進められており、町は完全に封鎖状態となっていた。

 

 「ターゲットはアパート内に潜伏中。抵抗する場合は状況を見て電気ショック弾で動きを止める。ビースト化していなければ身柄を保護。ビースト化していれば殲滅対象だ。気を引き締めてくれ。」

 

 バンに乗っているナイトレイダーの面々にそう孤門。

 孤門の言葉を受けて装備の確認をするメンバー。そうする中でついに目的地へと来たのだ。

 

 「おい、矢車!辞めろ!!」

 

 到着したナイトレイダーの面々の目に飛び込んできたのは人質を取る矢車に呼び掛ける日下部ソウジだった。

 

 「ウルサイ!お前の息子がどうなっても良いのか!!」

 「お父さん!!」

 「辞めろ!!」

 

 人質になっていたのはヒナタだった。ナイトレイダーの面々はソウジと矢車の間に割って入る。

 

 「おい、あんたら!」

 「ナイトレイダーです!下がってください!!」

 「おい!何をしやがるんだ!ガキがどうなっても良いのか!!」

 

 孤門たちはソウジを守るように並び矢車を囲む。だが、当の矢車は興奮状態にありとても説得に応じるような状態では無かった。

 

 「どいつもこいつもバカにしやがって!!」

 

 興奮状態の矢車。そして、その顔は血管が膨張して蜘蛛の巣のような文様を描いており、目は爛々と光っていた。その様子からはただ事では無いことを察知したナイトレイダーの面々。だが、人質を取られている以上は対処できる方法は無いかに見えた。

 

 「おい。」

 「ああ!?ギャッ!!」

 

 そんな矢車に背後から声を掛けていきなり殴りつけた人物が居た。

 

 「ヒロ!」

 

 鈴音が気付いた人物は事業所からヒナタの行方を捜すために方々を走っていた大紀だった。だが、東京都内、それも二十三区から八王子市に来るのは不可能だった、普通の方法では。

 

 「先生!」

 「ヒナタ!平気か?」

 

 すぐにヒナタを抱きかかえて矢車から距離を取る大紀。その間、ヒナタは大紀に強くしがみついていた。

 

 「ヒナタ君のお父さん、ですよね。」

 「あなたは確か。」

 「説明は後でします。今は逃げましょう。」

 

 大紀はヒナタを抱えてソウジの元へ。人質が居なくなったことでナイトレイダーの面々もディバイドランチャーを矢車に向ける。

 

 「鳳隊員。彼らを安全な場所に。」

 「了解!」

 

 鈴音は孤門の指示に従い、大紀たちを安全な場所へ連れていく。

 

 「待て!」

 「動くな!!」

 

 自身を攻撃した不届き者を追おうとする矢車だが、その前を孤門たちが立ちふさがる。

 

 「ふっ、ふっ、フー、フー!ふざけるな、クソが!」

 

 矢車はより興奮した状態になり、右腕をナイトレイダーの面々に向かって突き出した。その瞬間、矢車の右腕は鋭い爪を持った禍々しいものへと変貌してあろうことか伸びたのだった。

 

 「なっ!」

 「全員散開!」

 

 それに弾が驚くも凪の指示でその場に居た4人は散らばった。

 

 「この野郎!」

 

 弾は倒れながらもディバイドランチャーの光弾を矢車に撃ちだす。

 撃ちだされた光弾は変化した右腕にかき消され、矢車本人には当たらなかった。

 

 「隊長、彼からビースト振動波を探知。徐々に反応が強くなっています。」

 「総員、対象をビーストと認定。殲滅する。」

 「「「了解!」」」

 

 数馬が孤門に矢車からビースト振動波の反応があることを伝えると孤門はその場に居る3人に矢車を攻撃する旨を伝えた。

 ナイトレイダーの面々は四方から矢車を囲み、ディバイドランチャーの引き金を引き続ける。

 撃ちだされた光弾は次々と矢車に直撃する。

 

 「ガアッ!!」

 

 光弾が当たると矢車の衣服が破れ、その下の彼の体を傷付けていく。傷を負うにしたがって人間としての形を保っていた矢車の姿も徐々に彼の肉体を蝕んていった物の影響を受けたものへと変わって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移り、ナイトレイダーの面々が乗って来たバンの所へ。

 鈴音はヒナタとソウジをバンに乗せており、大紀は鈴音の隣に立っていた。

 

 「私達から指示があるまでここで待っていてください。私は隊長たちの所へ戻ります。」

 

 鈴音はそう言って装備を確かめる。

 

 「あの、矢車はどうなるんですか。」

 

 そして、ソウジが鈴音に声を掛けた。

 鈴音はソウジの質問に僅かばかりに考え込む。

 

 「お父さん、あの様子だと既に説得はあまり期待できないと思います。」

 「殺すのか。」

 「それは...。」

 

 ソウジの言葉に鈴音が言いよどむ。そこで大紀が助け舟を出した。

 

 「それはそうと、良いのか?俺が近くに居るからスズは行けよ。」

 「ああ、まだ良いわよ。殺すかどうかはまだ分かりません。ですが、ビースト細胞に侵されているのならば最悪は。」

 

 それでも鈴音がそう言った。それに対してソウジはただ一言「そうか」とだけ言った。

 

 「あいつは馬の合わないことばかりだった。正直なことを言えば警官としてはあまりいいやつでは無かった。だが、それでも、そうなるのはあまりいい気はしない。」

 

 その言葉に鈴音は表情を硬くする。

 

 「だけど、これ以上他の人間に危害を加える前に止めて欲しい。頼む。」

 

 ソウジがそう言って頭を下げた。鈴音はそれを受けて孤門たちの元へ急いだ。

 鈴音がその場を立ち去った時、ソウジが大紀に視線を移した。

 

 「あの、もしかしてヒナタが通っている...。」

 「ああ、見学の時以来ですね。職員の剣崎です。」

 「ああ、ヒナタがヒロ先生って言っているのはもしかして。」

 「そうだよ!先生がヒロ先生だよ!」

 「ヒナ、先生のこと、そう呼んでたの?」

 「ヒナタが誘拐されたことを聞いてですか。」

 「ああ、まあ。警察官であるお父さんからすれば褒められたことでは無いのは分かりますが、動かずにいられなくて。」

 「先生、どうやって来たの?」

 「え!?ああ、ちょっと、言えない、かな。」

 「え~。」

 

 ソウジと大紀の会話に入るヒナタの様子を見て二人は自然と笑い合う。

 

 「お父さん、ヒナタ君、ゲームが一緒に出来なくて残念がってました。帰ったら、一緒にしてください。」

 「ああ、はい。普段、忙しいから中々出来なくて。」

 「じゃあ、ヒナタ。先生は他の先生たちに電話するからお父さんと一緒にここに居るんだぞ。」

 「うん!」

 「そしたら、お父さん。俺はすぐ近くに居るので安心してください。それにきっとすぐに終わるので。」

 

 そう言って大紀はバンから距離を取った。そして、懐に仕舞っていたエボルトラスターを取り出した。エボルトラスターからビーストがいることを知らせる鼓動が強く脈打っていた。

 

 「ああ、意味を探すより目の前の守りたいものを守る。」

 

 そう言って大紀はエボルトラスターを強く握った。その瞬間、鈴音が向かった先から巨大なビーストが出現した。

 

 「うおおおおお!!」

 

 強く叫ぶと同時にエボルトラスターを引き抜いた。光が溢れ、大紀はウルトラマンネクサスへと変身した。

 

 シャアアアッ!

 

 ネクサスはそのままビーストに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 時間は少し遡って鈴音が孤門たちの元へ戻った時だった。

 

 「遅れてすみません!」

 「鳳隊員!すぐに攻撃に入りなさい!」

 「了解!」

 

 鈴音も凪の指示に従って矢車を攻撃する。

 矢車の姿は既にそのほとんどが人間のものでは無かった。

 元になったビーストであるフィンディッシュタイプビースト=ノスフェルを思わせるものになっていた。

 

 「ふ、ふざけるな!うああああああああ、ゴギュアアアアアア!!」

 

 矢車がそう叫んだん瞬間、矢車の肉体が肥大化したのだ。ノスフェルの体色である薄桃色からくすんだ灰色の体色へと変化し、両腕には手首から巨大な爪が2本伸びたのだ。さらに背中には2対の巨大な角に、無数の小さな刺が生えてきた。臀部にから骨が突き出て、筋肉に覆われ先端が二股に分かれた長大な尻尾へと変化した。そして、最後まで人間のものだった顔は醜悪な悪魔そのものの顔となった。巨大化が完了すると同時に両肩から元になったビースト細胞の持ち主であるノスフェルの頭部が出現したのだ。

 フィンディッシュタイプビースト=ザ・ワン・アナザーと後に呼称されるビーストは一際大きな咆哮を発した。それからザ・ワン・アナザーの眼前にネクサスが出現、走り出してきたのだ。

 

 ジュアア!!

 

 ネクサスはそのままザ・ワン・オルタナティブの胴にストレートパンチを放った。それを受けてザ・ワン・アナザー、ネクサスを両腕で掴むと近距離から青色破壊火炎を放ち、ネクサスに浴びせた。

 ネクサスは全身を赤く発光させてビーストの動きを封じるオーラミラージュでザ・ワン・アナザーの攻撃を防ぐ。そこから、ザ・ワン・アナザーの胴に蹴りを入れて距離を離した。

 ザ・ワン・アナザーはそこから何度も青色破壊火炎を放つがネクサスはそれをアームドネクサスで次々と霧散させていく。

 

 ゴギュアアアアアア!

 

 ザ・ワン・アナザーは両腕の爪を鋭く伸ばし、ネクサスに大きく振りまわす。

 ネクサスは右腕のアームドネクサスを赤く発光させ、ジュネッスストロングにタイプチェンジした。

 強靭な肉体を持つネクサスジュネッスストロングはザ・ワン・アナザーの爪を真っ向から殴り、根元から叩き負ったのだ。

 

 ゴギュアアアアアア!!

 

 痛みに叫ぶザ・ワン・アナザー。その顔面にジュネッスストロングの容赦ないロシアンフックが炸裂する。

 

 ジュアッ!

 

 何度も何度も顔面を殴り飛ばしていくジュネッスストロング。一際、強烈なストレートパンチがザ・ワン・アナザーの顔面に深々と刺さった。

 

 ピア、ギュアア!!

 

 痛みから小さな鳴き声を上げるザ・ワン・アナザー。さらに追撃の手を緩めないジュネッスストロングはザ・ワン・アナザーの尻尾を掴み、なんとその場で大きく振りまわし始めた。ザ・ワン・アナザーの巨体が宙を舞い、というよりは力任せに振り回される。俗に言うジャイアントスイングだが、その効果は覿面であまりの遠心力にザ・ワン・アナザーも戦意を喪失していた。

 

 ジュアアアアッ!!

 

 ジュネッスストロングがひときわ大きな声でザ・ワン・アナザーを放り投げた。そのままの勢いでザ・ワン・アナザーは何もない平地に叩きつけられた。

 ジュネッスストロングは両腕を腰だめに引き、アームドネクサスから拳大の光球を2つ生み出した。2つの光球は合体してジュネッスストロングの胴を隠すほどの巨大な光球へと変わったのだ。

 

 ジュアアアア!!

 

 巨大になった光球をジュネッスストロングは右腕で殴りつけてザ・ワン・アナザーに向けて発射した。たとえ、不死身の生命力を持つフィンディッシュタイプビーストですらその細胞の一片も残さないほどの威力を持つジュネッスストロング最強技、オーバーナックルレイシュトロームがザ・ワン・アナザーに命中、大爆発!文字通り、ザ・ワン・アナザーは消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後、フォートレスフリーダムにて。

 

 「紹介しよう、彼が今日から新しく配属される剣崎大紀君。」

 「剣崎大紀です。よろしくお願いします。」

 

 そこには孤門に紹介され、ナイトレイダーの制服に身を包んだ大紀の姿があった。




フィンディッシュタイプビースト=ザ・ワン・アナザー
 ノスフェルのビースト細胞に侵された矢車がビースト化した姿で、その姿かたちはかつて新宿で最初に発見されたスペースビーストであるザ・ワンの第3形態であるベルゼブアに酷似している。通常、ビースト細胞に侵された人間はビーストヒューマンと呼ばれるビーストの傀儡になるのだがどういうわけかこのような変化を遂げた。
 ザ・ワン・ベルゼブアと違い、両肩のネズミの顔がノスフェルのものとなっている。基本的な能力は口から青色破壊火炎を放つことと両腕の爪を展開することが出来る、怪力を有する程度。劇中ではジュネッスストロングのオーバーナックルレイシュトロームを受けて消滅したがフィンディッシュタイプビーストに共通の不死身の生命力を有している。なお、なぜノスフェルのビースト細胞が最初のビーストであるザ・ワンに酷似した姿を取ったのか不明だが人間の細胞と融合したことが何かしらの影響を与えたのではないかと考えられっる。
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