ウルトラマンネクサスover10yearsT   作:柏葉大樹

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 こちらではお久しぶりです。長らくお待たせしました。今回の話は前後編の前編となります。それでは、どうぞ。


ウルトラマンネクサスover10yearsT 第8話

 北海道白老町、つい最近国立の民族学博物館が設立されたことで有名であり、自然が残る山々に太平洋を望むこの場所に限らず、北海道では古くから野生のヒグマが人里に現れることが多かった。かつて、北海道には三毛別という地で凄惨なヒグマによる獣害事件があった。他にも凄惨な結末を迎えた事件があり、それらの事件の記憶から道民は山に入った時にはヒグマに気を付けることを心にしていた。それだけではなく、ヒグマと出会った時には決してヒグマに背を向けてはならない、ヒグマに食われた食料を取り返さないといったことを学んでいた。

 

 「今回は随分とデカいな。」

 

 白老町の道有林(北海道が管理してる林。林と言えど山の中なので森みたいな場所。)に地元の猟友会に所属している老ハンターが入っていた。つい数日前に町の付近にある山でクマの目撃情報があったのだ。それも日にちが経つほどに町へ近づいており、昨夜には今までに確認されたことがない程の大きさのヒグマらしき生物が街と山の境で目撃されたのだった。

 老ハンターはヒグマが目撃された場所に今までに確認されたことがない程の大きさの足跡を見つけた。

 老ハンターはそのまま山の奥へ奥へ入っていった。

 山の奥へ入るにつれてどこから異臭が漂ってくる。

 老ハンターはそれをクマが食べた獲物の腐敗臭だと結論付けた。この時点でその結論の正解が出ていなかった。だが、その結論自体は間違っていなかった。彼はこの時点でシカか何かと考えていたからだ。当然、この時の答えは彼の常識の範囲内には無かったのだが。

 

 「な、なんだこれは!?」

 

 老ハンターが見つけたのは地面に埋められた複数の人間の遺体だった。そのどれもが無残な殺され方をしていた。

 

 「これは、俺だけの手に負えないな。」

 

 そう言って彼が山を下ろうとした時だった。彼の背後の木々がなぎ倒れる音がした。その音が鳴った方向に振り向くとそこには彼の身長を大幅に超える、体長はざっと20mを超えるヒグマに似た怪物がいた。

 

 「っ!」

 

 彼は咄嗟に長年のハンターとしての直感で怪物に猟銃を向けて弾丸を撃ち込んだ。

 

 「ブモオオオオオオオオオオ!!」

 

 怪物は雄たけびを上げると弾丸を物ともせず、その巨大な右手で老ハンターを叩き殺したのだった。怪物は殺した老ハンターの死体を咥えるとそのまま山の奥へと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はあ、里帰りも久しぶりだな。」

 

 北海道の空の玄関口の一つ、道央圏にある新千歳空港に弾の姿があった。今の弾の姿は私服で休暇を取って地元に戻っていたのだ。スーツケースを持って弾は新千歳空港から故郷、白老町へ向かう快速電車に乗り込んだ。期しくも弾は今その地で起きている事件に関わることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「休暇ねえ。」

 「反町隊員って地元が北海道、だったっけ。」

 

 東京では大紀と鈴音がナイトレイダーに新しく配備される予定のパトロール車、ナイト

クルーザーのテストを行っていた。今はパトロールの中で車の性能テストを行っていた。

 

 「それにしても、ヒロ。もっとスピード上げられないの?」

 「何言ってんのさ、警察や消防とは違うんだぞ。それに今回のは最終配備のための走行テストだ。スピードを出す必要はない。」

 「真面目か。」

 

 なお、車内の会話はフォートレスフリーダムのブリーフィングルームにも聞こえていた。

 

 「鳳隊員、スピードを出したいならフォートレスフリーダムに戻ってからにしなさい。」

 「もうデータも十分だ。後は戻ってくれ。」

 

 ブリーフィングルームにいた凪が鈴音に注意をし、孤門がナイトクルーザーに乗る大紀と鈴音に指示を出す。

 

 「了解。予定ルートを通って戻ります。」

 

 そう言うと運転をしている大紀が通信を切る。

 通信が切れるのを確認すると鈴音がつまらなそうに外を見る。

 

 「あまり、つまらなそうにしないでくれ。そもそも、スズは前の試運転で運転しただろ。」

 「分かってないわね。男ならもっと飛ばしなさいよ。」

 「ビーストが出てらな。生憎、今は出ていないようだから、このまま安全運転でフォートレスフリーダムに戻るぞ。」

 「はいはい。」

 

 会話を終えて大紀が信号を曲がる。ナイトクルーザーはそのまま都心からフォートレスフリーダムへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「変わんねえな、ここも。」

 

 弾は故郷白老町へと到着した。

 荷物を持って駅を出た彼は歩きながら街の風景を見る。そこには近年出来た民俗学博物館の建物が見えた。

 

 「いや、あの建物は無かったな。民族共生なんて聞こえは良いけどな。」

 

 そう独り言を言って弾はその場を後にする。

 街のいたるところを見る彼はある一軒家に立ち止まる。そこの家の表札には反町の文字があった。

 弾はその家のインターホンを押す。

 インターホンが鳴った後に家から誰かが出てきた。

 

 「は~い、え、お兄ちゃん!?」

 「久しぶり、蘭。」

 

 中から出てきたのは眼鏡をかけた弾と同世代の女性、妹で大学院生の蘭である。

 

 「お父さん、お母さん!お兄ちゃん、帰って来たよ!」

 「ああ、蘭。親父とお袋には言ってある。」

 

 そのまま、玄関へ入る弾。久方ぶりに家族と共に過ごすのだ。

 

 「弾、しばらくぶりね。」

 「急に来てゴメン、お袋。」

 「良いのよ。ささ、入っちゃいなさい。」

 

 出迎えた弾の母が家に入るように催促する。

 スーツケースを持って弾は実家へと入っていった。

 

 その夜、弾は家族と共に食卓を囲んでいた。テーブルの上に上がるのは北海道を代表するジンギスカンである。鉄なべの上で肉を焼いていき、焼き上がったそばから肉を食べていく弾。

 

 「それで、今の仕事はどうだ?上手くいっているのか?」

 「ああ。親父が心配するようなことは無いよ。ビーストが出てきた時が緊張するけど、上司や入隊した動機は信頼できるよ。」

 「そうか。それは良かった。」

 「でも、お兄ちゃん。私はまだ心配だよ。すごく危険な仕事じゃない。」

 「まあ、それを承知でやるのを決めたんだ。蘭が心配するようなこと、それを起こさないようにもしてるよ。」

 

 食卓を囲みながら話す弾と家族。危険なのは承知だが、弾も家族が心配しているのはよく分かっている。その夜は久方ぶりの家族で囲んだ食卓でジンギスカンを焼く音が響いていた。

 

 

 

 

 

 翌日、弾は蘭が行っている研究の手伝いに付き添っていた。

 

 「最近、山に入っていった人の行方不明が多いの。それも、ヒグマの目撃情報が多い山で。」

 「それで、ヒグマの研究をしている蘭の所に協力をくれってか。警察は?」

 「流石に警察も探してるよ。ただ、私は大学の研究でヒグマを対象にしていて、教授から調査を進められたってだけ。」

 

 ここ最近頻発しているヒグマの被害調査を行っている蘭。弾は休暇を取っているため普段装備している武器を携行していなかった。念のために二人はクマよけのための鈴、クマ撃退用のスプレーを装備している。

 

 「なあ、兄ちゃんがいる必要はあるのか?」

 「お兄ちゃんならヒグマは余裕でしょ?」

 「こんな装備じゃあ無理だって。せめて、猟銃くらいは。」

 「って言うと思ったから今日はハンターの人も呼んでる。」

 「俺、いらねえじゃん。」

 「良いから、良いから。」

 

 二人はハンターが待っている山道の入り口へ到着する。そこにはオレンジの帽子にジャンパーを来た弾と同年代の若い男性がいた。

 

 「谷垣さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします。」

 「ああ、反町さん。準備は出来ていますので行きますか。そちらの方は?」

 「兄です。今回、同行させていただきます。」

 「兄の反町弾です。よろしくお願いします。」

 「反町弾、あの反町弾か。」

 「どこかで会いましたか?」

 

 ハンターの青年、谷垣源二は弾に対してこう言った。

 

 「ビーストを撃退するために危険行為をした君を知らない人間は自衛隊にはいないぞ。」

 

 谷垣源治は弾とは別の駐屯所に居た元自衛官である。彼は元々、東北の出身で、彼の家系はハンター、マタギをしていた。自衛隊を辞めてから彼は北海道白老で熊撃ちをしている老ハンターに弟子入りしていた。 

 弾のことは北海道の自衛隊の中では怪物退治のために暴走した違反者として名が知られていた。だが、

 

 「俺でも、その状況ならそうするくらいは考えるが。」

 

 山道を共に進む源二はそうでは無かった。

 

 「お兄ちゃん、自衛隊辞めたって言うのは首にされたの?」

 「まあ、そういうこと。実際には依願退職扱いだけどな。」

 

 弾は昔のことは流しつつ、今回の同行について源二に話をする。

 

 「それで、なぜ一大学院生の研究に同行するんだ?猟友会がそう簡単には同行を許可しないだろ。」

 「あんたの妹さんがいる研究室とは付き合いがあるんだ。教授を通じて今回は入るんだ。それに、今回は俺の師匠がやるはずだったんだが。」

 

 源二の言ったことに弾は疑問に思い、聞いた。

 

 「急用なのか?」

 「熊撃ちの二瓶って白老に居れば聞いたことがあるだろ。」

 

 熊撃ちの二瓶と言われて、弾は地元で有名な猟師のことを思い出した。

 

 「ああ、有名な猟師の爺さんだ。谷垣は二瓶さんの弟子で師匠の代わりに引き受けたのか?」

 「違う。」

 

 弾の問いに即座に源二は違うと言った。

 

 「二瓶さんは三日前にヒグマの調査をしたのを最後に行方が分からなくなっている。二瓶さんが使っているルートは俺も知っていた。そこに、調査の依頼もあって同行することにしたんだ。」

 

 ここまでの話で弾は事の経緯を聞く中で過去のある出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今から3年前、弾は北海道千歳市にある自衛隊駐屯地に配属されていた。

 

 「反町、速くしろ。」

 

 弾は上官から重火器の運搬を命令されていた。この上官とはこの駐屯地に来てから衝突が何度かあり、今ではこのようなことを無理難題として言われることが多かった。

 

 「今に見てろよ、クソ上官。」

 

 一人、愚痴をこぼしながら作業する弾。そんなある日、弾が所属する駐屯地にビースト、後にブルートタイプウルズスと呼称されるビーストが複数体で襲撃してきた。

 装備が比較的整っていた自衛隊の駐屯地にそのような襲撃が起こり、ビースト相手に訓練をしていない自衛官たちは何とか対処をするものの徐々に犠牲者を出してしまっていった。

 弾は避難を進めながら、上官に押し付けられた重火器の運搬により知った保管場所へ向かっていた。弾は本来であれば上官に許可を得る必要がある重火器の使用を、個人で行い、ウルズスの一体の左目を撃ちぬくことで撤退に追い込んだ。この時の行動を上官によって重大違反として自衛隊を辞めることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (あの時のビーストのことを思い出すなんて...。まさか、だよな。)

 

 当時のことを思い出していた弾は現実へと意識を切り替えて先へ行く蘭と源二の後ろを歩いていく。

 弾が山へ入っている頃、東京のフォートレスフリーダムではナイトレイダーの面々がブリーフィングルームに集まっていた。

 

 「北海道にビースト振動波が?」

 

 ブリーフィングルームに集まっている面々はデスクの上に投影された北海道の地図、そこに赤い点で表示された点を見て鈴音が言った。

 

 「ああ。この数日に急激に反応が強くなっていた。」

 

 吉良沢がタブレットにある資料をデスクの上に投影する。

 

 「過去に北海道ではブルートタイプビースト=ウルズスが確認されている。」

 「和倉さんが言っていた奴、ですか。」

 

 吉良沢の言葉に以前にここで話に出たウルズスのことを思い出す孤門。大紀も思い出して話題に出す。

 

 「恐らくは、過去に自衛隊で弾隊員が撃退した個体の可能性があります。調査のために現地へ行く必要があるのでクロムチェスターの準備が出来ています。準備が出来次第、現地へ向かってください。」

 

 それからほどなく、彼らはクロムチェスターで北海道へ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 クロムチェスターが北海道へ向かう中、弾たちは山の中腹に当たる場所へ来ていた。

 道中の痕跡を見ると、ヒグマの研究をしている蘭がそこにあった痕跡、正確には尋常ではない大きさの足跡を見ていた。

 

 「こんなに大きい足跡、見たことない。」

 

 源二は周囲を警戒しており、弾は蘭が見ている足跡を見てすぐに周囲を警戒した。

 

 「蘭、谷垣。ここから逃げるぞ。」

 「どうしたんだ、急に。」

 

 弾の言葉に谷垣が疑問をぶつける。

 

 「ここに居るのはヒグマじゃない。恐らくは俺が前に,,,。」

 

 弾が言葉をつづける前に森の奥がざわざわと大きく音を響かせたのだった。

 

 「走れ!」

 

 弾の言葉に蘭も谷垣もその場から走り出した。

 

 弾たちが走り出した後、森の木々がバキバキと音を立てて倒れていく。

 そこから姿を見せたのが巨大なビルほどの大きさのヒグマ、その腹部には骨でできた第2の頭部があり、ヒグマの頭部にある左目は古傷によって塞がれていた。さらに、その両手は棘を有する甲殻で覆われており、鋭い爪がぎらついていた。

 ブルートタイプビースト=ウルズス、その歴戦の個体であり北海道の先住民アイヌの言葉からキムンカムイの名を冠するキムンウルズスがその姿を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「隊長。ビースト振動波が増大。」

 「菊池隊員、位置は?」

 「白老町、その山林ですね。」

 「鳳隊員と剣崎隊員、準備は?」

 「いつでも良いです。」

 

 キムンウルズスが出てきたことでクロムチェスターに乗るナイトレイダーのメンバーは現場へ急行する。

 彼らが見たのは巨大なキムンウルズスのその姿だった。

 

 「周囲に逃げ遅れた人は?」

 

 α機に乗る孤門はβ機の数馬と凪に聞く。

 

 「キムンウルズスの前に走っている民間人が3人。」

 「鳳隊員と剣崎隊員は民間人を保護。副隊長と菊池隊員はそのまま僕と一緒にビーストを攻撃。」

 「「「「了解。」」」」

 

 クロムチェスターα機とβ機がキムンウルズスを攻撃する。

 自身へ攻撃するクロムチェスターに敵意を向けるキムンウルズス。四足歩行から後ろ足でたちが上がり、両腕を大きく振るう。

 弾たちの近くに着陸したγ機。そこから大紀と鈴音は弾たちと保護する。

 

 「反町隊員!」

 「いや、悪い。この二人を含めて民間人は居ない。」

 「ヒロ、私は3人を安全な場所に移す。」

 「分かった。俺は地上から援護する。」

 

 民間人を乗せる以上、大紀は地上に残る。鈴音が3人をγ機へ誘導する中、大紀はディバイドランチャーを構えて、キムンウルズスに向かって行く。

 大紀は森の中に入り、エボルトラスターを取り出した。

 大紀はウルトラマンネクサスに変身、キムンウルズスと対峙する。

 

 デェア!

 

 キムンウルズスは新たに現れたウルトラマンネクサスに敵意をむき出しにする。

 

 グルルルル

 

 敵意を露にした唸り声を響かせるキムンウルズス。

 キムンウルズスはウルトラマンネクサスに向かって突進する。

 ネクサスはメタフィールドを展開しようとするがキムンウルズスの突進の方が速かった。

 

 デェヤアア!!

 

 圧倒的な重量から繰り出される突進にネクサスがフッ飛ばされた。

 キムンウルズスの巨体は強靭な筋肉でできており、鈍重そうな見た目に反して瞬発力があった。その他に、鋭い爪を備えた両腕から繰り出される一撃はネクサスの体を容易く傷つける。

 

 「ウルトラマンを援護だ!」

 

 孤門の指示で2機のクロムチェスターがキムンウルズスに攻撃をするが強靭な筋肉の鎧を持つキムンウルズスに効果は薄かった。

 強大なパワーを持つキムンウルズスを前にネクサスは窮地に陥る。

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