ブルートタイプビースト=キムンウルズスのパワーに窮地に陥るウルトラマンネクサス。
「ウルトラマンを援護だ!。」
クロムチェスターα機を操る孤門がβ機を操縦する凪、数馬に指示を出す。
2機のクロムチェスターはキムンウルズスを攻撃するが強靭な筋肉の鎧には効果は薄かった。
ネクサスに迫るキムンウルズスはその剛腕をネクサスに向けて叩きつけようとした。
ネクサスは咄嗟にアームドネクサスからシールドを張ることで対処する。
シールドに遮られ、攻撃が通らないことに苛立つキムンウルズスはさらに力を込めるべく右の剛腕を大きく横に引いた。
その瞬間を狙ってネクサスはクロスレイ・シュトロームを撃った。
放たれた光線はキムンウルズスの胸部に当たり、爆発を起こした。
ギシャアアアオオン!!
痛みからキムンウルズスは胸部を抑える。
ネクサスは畳みかけるべくメタフィールドを展開しようとするが、キムンウルズスが地面を掘り始めた。瞬く間に地中へ姿を消したキムンウルズス。
ネクサスは一時その場で変身を解いた。
変身を解除した大紀はキムンウルズスの攻撃を受けた場所を抑えていた。
「なんつうパワーだよ。っ、ああ。これは厳しい相手だな。」
先程の戦いで今回の相手が今迄に戦ったビーストたちよりも格上と言わざるを得ないことを大紀は気付いていた。
キムンウルズスが地中へ潜ったことでナイトレイダーの面々は現場近くの公民館にて弾たちから情報を聞いた。
「あれは依然に俺が撃退したビーストです。その時よりもはるかに巨大になっています。」
弾からの説明で今回確認されたキムンウルズスは依然に自衛隊を襲った個体であること。弾が撃退した時に付けた左目の傷がその証拠であること、恐らく傷を治す中で多く人々を捕食して成長したのだろう。
「あのビースト、ウルズスにこちらの攻撃はあまり効果が無かった。」
「恐らく元になったヒグマの特性を引き継いでいると思います。」
孤門の言葉に蘭が口を開いた。
「野生のヒグマもまさに筋肉で出来た鎧を纏っていると言っても過言ではないです。ヒグマを銃で射殺するには頭か心臓を正確に狙う必要があるんです。」
蘭の説明を聞いて、ナイトレイダーの面々の表情が暗くなる。
ナイトレイダーの装備は正確にビーストの弱点を狙い撃つ装備は無かったのだ。
「隊長、ストライクチェスターのあれなら。」
数馬が孤門にあれと言った。
「ストライクチェスターに装備されているストライクバニッシャーのことだね。」
ストライクバニッシャー、クロムチェスター3機が合体したメタフィールド突入の機体ストライクチェスターが装備する高火力兵装である。ストライクバニッシャーであれば有効打になり得るかもしれない、そう数馬は言いたかったのだ。
「あれだけのビーストに高火力兵器を使って効果があるか。ウルトラマンの光線を受けてもあまりダメージを受けたようには見えなかったぞ。」
だが、戦いの様子を見ていた弾はネクサスの光線があまり効いていないことから、現時点の最強火力であるストライクバニッシャーがキムンウルズスに効果があるのか疑わしいことを告げた。
弾の言葉に大紀の脳裏にキムンウルズスとの戦いが浮かび上がった。
ネクサスに変身した大紀は先程の戦いの中で分かった情報を思い浮かべる。
確かに、蘭が言ったようにキムンウルズスの肉体は言葉の通りに強靭な筋肉で覆われた屈強なものだった。
ここまでに戦ったビーストたちは人間よりも強靭な肉体を持っているものの、ウルトラマンの力を持ってすれば大なり小なりの傷が付いた。だが、今回のキムンウルズスはそれこそ鍛え上げた肉体による頑強さが際立っており、戦っている時の手ごたえは硬いゴムに覆われた岩を叩いているようだった。
そのことを思い出す大紀は今だに痺れが残る手を握りしめる。
「いや、そう言っても奴もビーストよ。倒せない道理は無いわ。」
空気が重々しいものになる中で凪が鼓舞する。今、対峙しているキムンウルズスも彼らがこれまでに戦ってきたビーストの一体である。必ず、攻略する手段はある。
「まず、今日は休もう。それに合わせて、キムンウルズスを攻撃しよう。」
孤門のその言葉に一同は明日に備えて休むことにした。
その夜、地下に潜っていたキムンウルズスは深い森の奥に身を隠していた。
捕食本能によって生きるビースト、その1体であるキムンウルズスは捕食本能とは別のある感情に動かされていた。それは、復讐心。キムンウルズスは自分に傷を付けた人間のことを覚えていた。
キムンウルズス、ウルズスの元となったヒグマは知能も高い。高所にある餌をとるために工夫をしたり、エサが良く取れる場所についても記憶していることがある。その知能を高さをビーストとなっても引き継いでいるのだ。
キムンウルズスは左目の古傷が自身の殺意によって激しく疼くのを感じた。
ネクサスと対峙する前に銛で感じた匂い、その匂いが自身の左目を奪った相手であることに気付いていたのだ。
血の匂いが混じるその吐息は激しく、全身の筋肉が戦慄いていた。
キシャアアアア!!
森に木霊するその咆哮は業火の如き憤怒と刃の如き殺意を帯びていた。
街明かりの見るキムンウルズス、その心境は人間の言葉に表すのならば「決して、楽には殺さない。存分に苦しませてやる。」だろう。
その夜、大紀は公民館の外へ出ていた
キムンウルズスの叫びが遠くから響いていることからやすむことをせずに警戒に当たっていた。そこへ、鈴音が水の入ったペットボトルを持って来た。
「お、サンキュ。」
「少しは休みなさいよ。まあ、すぐ近くにいるのに休むも無いか。」
そう言って鈴音は自身が買ったペットボトルのふたを開け、中身を飲み始める。それを見て、大紀も水を飲み始める。
一口飲み終わった鈴音は大紀がペットボトルの中身を飲み干すのを待った。
大紀が飲み終わり、鈴音が口を開いた。
「今日、あんたが戦った奴。弾隊員が昔撃退した奴だって聞いた時に、まさかそんなビーストがいるの?って思った。そんな奴が居たら、人間なんて本当に無力じゃないって、この仕事を選んだって言うのに弱気になっちゃって。」
鈴音の言葉に黙って聞く大紀。他に人が居ないことを確認してエボルトラスターを取り出す。
エボルトラスターは微弱ながらもキムンウルズスのビースト振動波を感知していた。
まだ、自身が手にした力の意味を知らない大紀。それでも、隣で弱音を吐きだす鈴音に励ましの言葉を口にする。
「弱気になるのもおかしくないって。ナイトレイダーの仕事は危険なことが多いだろ。今日の奴を見て弱気になるのも分かる。俺もどうやって戦えば良いのか分からなくて、正直ここまでの自信みたいなものが吹き飛んだよ。でも、逃げ出さないのがスズの強いところだと思う。弱気になってもここにいるのがさ。」
「そんなことを言ったら、ヒロだって。ウルトラマンになって戦っていることを考えたら、私達よりもずっと強いじゃない。」
「ありがとう。なんか、行けそうな気がしてきたな。」
お互いに話をしたことで胸中の整理が着いた二人。その表情はとても晴れやかでありながら強いものだった。
「明日、あいつを倒そう。」
「ええ。明日は、私達でやるわよ。」
お互いの拳を突き合わせる大紀と鈴音。
二人が互いの決意を確認している頃、一人公民館の床の上で大の字になっていた弾。
今回のビーストは自身と因縁深い相手である。そんな相手との戦いに他の隊員を巻き込むわけには行かないと考えていた。
妹の蘭と谷垣の二人は既に帰っている。前線から離れたものの故郷が戦いの場となってしまったことにどこか罪悪感のようなものを抱いていた。
「俺の手で必ず終わらせてやる。」
一人決意する弾。
そうする中で時間が経っていく。
動きがあったのはそれからほどなくだった。
「山中からビースト振動波が強大化。ウルズスの活動が活発化!」
モニターを確認していた数馬がビースト振動波の増大を確認した。そのことを聞いたナイトレイダーの面々は急いで公民館から出た。
公民館から出たないとレイダーの面々が目撃したのは山を粉砕しながらキムンウルズスがその姿を見せた瞬間だった。
「僕はα機に、副隊長と菊池隊員はβ機へ。弾隊員はγ機に乗ってビーストを攻撃。市街地への進行を食い止める。鳳隊員と剣崎隊員は自衛隊、警察等と連携して住民の避難を。」
「「「「「了解!」」」」」
孤門の指示の元に各自で行動を開始するナイトレイダー。
まだ、朝焼け前の空にクロムチェスターが飛び立つ。
住民の避難を急ぐ大紀と鈴音。
各々がそれぞれの役目を全うするべく迅速に行動を開始する。
出現したキムンウルズスは遠くにいる弾の匂いを鋭敏にとらえていた。そして、弾の乗ったクロムチェスターγ機に狙いを付けていた。
「各機、攻撃開始!」
孤門の指示によって一斉に攻撃を開始するクロムチェスター。
攻撃が始まった瞬間、γ機に向かって突進するキムンウルズス。
「なっ!?クソっ!!」
弾は操縦桿を思い切り引き、キムンウルズスの突進を躱す。
空中へ逃げたクロムチェスターγ機に対して、腹部の第二の口を開いてそこから舌を伸ばす。
「弾隊員を援護!」
孤門の乗るα機、凪と数馬の乗るβ機が弾の乗るγ機を援護する。
キムンウルズスの舌は攻撃を潜り抜け遂にクロムチェスターγ機をとらえた。
「くおっ!俺ばっかり狙いやがって!!」
弾は何とかして拘束から逃げようともがくがキムンウルズスの舌はメタルコンバーダを内蔵したγ機のパワーでも振り切れなかった。
同じ頃、町で避難を進める大紀と鈴音。自衛隊と警察、消防の協力により住民の避難が迅速に行われた。
「スズ。こっちのブロックの避難は完了。」
「OK.じゃあ、私達も行きましょ!」
避難が完了したことでキムンウルズスの元へ向かおうとする二人。その二人の視界にキムンウルズスの舌に囚われているγ機の姿が入って来た。
「ヒロ、先に行ってて。後で私も行くから。」
鈴音の言葉に強くうなずく大紀。大紀はそのまま走り出し、エボルトラスターを取り出す。
エボルトラスターを鞘から抜き放ち、ウルトラマンネクサスへ姿が変わった。
デヤッ!!
ネクサスはアームドネクサスにエネルギーを集中、キムンウルズスの舌を切り裂いた。
ギシャアアア!!
痛みで呻くキムンウルズス。その憎悪を瞳に滾らせ、ネクサスを睨みつける。
対するネクサスは前回の反省からキムンウルズスが怯んでいた隙に剛力形態ジュネッスストロングに姿を変えていた。
真正面から互いに組み合ったネクサスとキムンウルズス。
パワーとパワーのぶつかり合い、優勢はキムンウルズスだった。
「赤い姿でも押されています。」
「なんて力なの。」
ネクサスとキムンウルズスの戦いを見る二人。孤門も弾もその様子を見ていた。
「隊長、あの姿でも押されてます。」
「弾隊員、左目の傷は確か君が付けたんだよね。」
「ええ、まあ。それが?」
力に特化しているジュネッスストロングでも押されるキムンウルズスのパワー。そこで孤門はネクサス=大紀を援護するためにある作戦を思いつく。そんな中、クロムチェスターに通信が入る。
「すみません、今よろしいですか?」
通信をしてきたのは鈴音だった。そして、その隣には避難しているはずの蘭だった。
「蘭!お前、避難してなかったのか!!」
「お兄ちゃん、ごめん!ただ、一個アドバイスがあって!!」
「隊長、よろしいでしょうか?」
「手短にお願いします。」
孤門の言葉に蘭が話し始める。
「今暴れているビースト、ヒグマの特性を色濃く引き継いでいますよね。それだったら、弱点も同じだと思うんです。つまり、心臓の部分を狙い撃つ以外にヒグマの弱い部分を狙うんです!!」
「それはつまり、どこを?」
孤門の言葉に蘭が自信をもって言う。
「鼻です!!神経が集中しているから弱いんです!それにお兄ちゃんが昔付けた傷も狙うと効果的です!」
蘭の言葉に孤門が笑みを浮かべた。
「ありがとう、蘭さん。弾君、聞いていたよね。」
「もう一度あの熊公の左目をやれってことすよね。後は鼻か。」
ここまでの話で完全に動きが決まったナイトレイダー。その行動は速かった。
「各機、キムンウルズスの左目を狙って攻撃!その後は鼻にターゲットを集中!」
「「「了解!!」」」
クロムチェスター各機はキムンウルズスに向かって急降下、その左目に雨のようにレーザー攻撃を行った。そして、古傷に命中して傷が露出した。
ギシャアアア!!
左目をまたもつぶされたキムンウルズスはネクサスを放してしまう。
解放されたネクサスはがら空きになった胴体に零距離でナックルレイ・シュトロームを当てた。
大ダメージを受けても、まだ健在のキムンウルズス。ネクサスは再度ナックルレイ・シュトロームを胴体に当てる。二発目のナックルレイ・シュトロームを受けて腹部の傷ができる。そこにネクサスは最大出力のオーバーナックルレイ・シュトロームを至近距離でぶち当てた。
三度の最大攻撃によりやっとキムンウルズスが消滅した。
「終わった。じゃあな、熊公。」
消滅したキムンウルズスを見てそう言った弾。そして、他のクロムチェスターや通信で写る鈴音と蘭。遅れて通信をした大紀の声を聞きながら弾は海を見た。
新たな始まりを迎えるように朝焼けが海を染めていった。
長らくお待たせして申し訳ございません。
今回の敵であったキムンウルズスは銀色の怪獣さんのアイデアから頂きました。僕の方での設定は下の通りです。
ウルズス
ヒグマがビースト化した存在。群れで動くビーストでヒグマと同じく強力な腕力と爪、キバが武器。自衛隊時代の弾の攻撃を受けた個体はエサを喰らい、大きく成長した。キムンウルズスと名付けられたこの個体は強化体のビーストとは違い、元のヒグマのように強く大きく成長したことでこれまでのビーストとは一線を画す存在となっている。そのパワーはジュネッスストロングを大きく上回り、ナックルレイ・シュトローム2発とオーバーナックルレイ・シュトロームを受けてやっと撃破できたほどの防御力を有していた。