BIO HAZARD -Queen Leech-   作:ちゅーに菌

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 どうもちゅーに菌or病魔と申します。

 最近、遊戯王の方を沢山投稿していたので、自分へのご褒美に初投稿です。ゲームで最初に見た時から私が未だにトップクラスで好きなクリーチャーであり、実は原作ではほとんど居ない始祖ウィルスベースのB.O.W.のアレが主人公のお話でございます。読まれた方々の暇潰しにでもなれば幸いです。ではどうぞ。










アークレイ
女王ヒルの手記 1


 

 

 

 

 父が私たちの観察記録をつけていたので、今日より記録をつけることにする←私以外の誰かが拾った場合は決して中を覗かないように。

 

生涯目標

『オズウェル・E・スペンサーの殺害』

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その前にとっくりと話を聞いてやろうじゃないか。

 

 

 

1998年5月5日

 

 5月5日。私の誕生花はアイリス。そして、花言葉はmessage(伝言、メッセージ)hope(希望)faith(信頼)friendship(友情)wisdom(知恵、賢さ)などだ。ならば私は、父の声無き声を伝えよう。父の希望となろう。父の信頼を裏切った者を粛清しよう。父の友情を踏みにじった者に復讐しよう。そして、父の知恵は私が受け継いだ。

 

 まずはおはようと言うべきか。私が真に生まれたこの日に感謝しよう。

 

 記憶によれば、この日は太平洋の向こうにあるという日本という国ではこどもの日、端午の節句などと言われ、元々は男の子を祝う日だそうだ。それを終戦から3年後に"子供の人格を重んじ、子供の幸福をはかるとともに、母に感謝する"という慣わしとなっている。そして、我が父は全く社交的ではなかったが、その習慣は何故か偉く気に入ったらしく、この日が来ると毎年我々の培養槽の上に小さな鯉のぼりの旗を立てていたらしい。昔は喰うばかりで気にも止めなかったが、そういった意味があったと思うと感慨深さもあるというものだ。

 

 それはそれとして、遂に我々が個として完成した場所は忘れもしないこのアンブレラ幹部養成所。我が子とまでは言わないが、父にしては珍しく両腕と呼べる程には信頼していたアルバート・ウェスカーとウィリアム・バーキンに裏切られ、怒りよりも困惑が勝りながら死した記憶が甦る。もし、会うことがあったのならば、問い質したいところだな。目標に加えておこう。絶対に許さんぞアイツら、私の善意をなんだと思っている。

 

 さて、前置きはこれぐらいにして我が父が殺されてから約10年。ようやく父から全てを継承して新たな段階へと至った我々――頭角個体の片割れが私である。まあ、父を喰らっているときは一悶着も二悶着もあったが、最終的に頭角個体は多い方が生存率が上がるという事で同意し、父の血肉と臓腑は平等に分けたため、その事についてはもう過ぎたことだ。

 

 ひとまず、我々でこの昔に比べればかなりくたびれたアンブレラ幹部養成所の再稼働を進めようとすると、何故か今となっては憎きアンブレラのマークを服に付けた研究員や特殊部隊が、10年で勝手に沸いていたラーカーや、ブレイグクローラーや、ヒルを避けつつ、この施設の電力などを復旧しているではないか。

 

 10年丸々放棄されていたような朽ち方の私の施設に土足で踏み込んだ彼らに憤慨すると共に、我々は真っ先に排除に掛かり、彼らを一掃して一息を入れた。

 

 しかし、全て奪い去り、10年経ったこの施設に今さら何の用だと考え、ろくに情報も聞き出さずに皆のランチにしてしまったことに冷静さを欠いたと反省していると、この施設でほぼ唯一の交通手段である黄道特急が止まる姿が見えた。つまりは再び、アンブレラ社員の来襲である。

 

 見たところ今度は、特殊部隊が多めだったため、万全を期すために10年前から飼育室に入れられたままだったと思われるエリミネーターと、野生化していたエリミネーターをけしかけて部隊を襲わせたところ、虐殺に等しい光景が生まれ、記憶にある以上の性能に舌を巻いていた。

 

 生物兵器としてエリミネーターは既に進化の袋小路に達していても、性能自体は既に実用レベルのようだ。まあ、爬虫類や昆虫と違い、猿科の哺乳類は拡張しようがないため、ここまでと言えばここまでなのだが、巧緻性を考えれば施設防衛という点では割りとありかも知れないな。

 

 ついでに拷問に掛けるわけでもなく、彼らがこのアンブレラ幹部養成所に来た理由は判明した。

 

 

《ラクーンシティから北 8マイルのアークレイ山中に、年前に閉鎖され 我が社の幹部養成所がある。現在、その施設再利用を目的とした事前調査が行われいる。

すでに第一班が現地入りして調査を開始しいるが、君のチーム 手助けもらいたい。 なお、以降の指示は、ウィリ ム・バーキ とア ・ ー》

 

 

 ともあれ、アンブレラ滅ぶべし。

 

 我々がタッチの差で進化を遂げていなければ奴等は、父を殺し、研究の全てを奪い去っただけでなく、骨の髄まで抜き去ろうとしていたという事実に私は生まれて2度目の激怒をした。

 

 まあ、向こうとて馬鹿ではない。喰おうが、殺して捨て置こうが、職員が帰って来なければ警戒するだろう。こんな施設なのだから、そう低くない確率で始祖ウィルスかT-ウィルスがベースの何らかに殺られたと考える筈だ。そうなるとこちらが好きに動く時間を稼ぐためにも近くにあり、特殊部隊が置かれているアークレイ研究所を可及的速やかに襲えば一帯を陸の孤島に出来ることを片割れに提案した。

 

 するとアイツは"流石は我が子だ"等と言って、父のように私に接して来た。我々は機能上は同一の存在であり、あくまでも父の全てを受け継いだだけで本人ではない。私にも少なからず、自身と父の自我同一性が同化しているところはあると、自分自身で感じるが、片割れのそれはまるで自己が完全に父であると認識しているように見える。どうやらアイツは擬態の果てに私とは違った進化を選んだらしい。

 

 アレはまるでダメだな。父のようにではこの世界を生きては行けない。何せ、父が何故殺されたのかを熟考する頭があれば、その結論には至らない筈だ。人間という種の底のない欲と、おぞましさを父を通してあれほど感じておいて、それでも擬態という道を選べたのならそれは愚かという他ない。

 

 最早、アレは私にとっては進化の袋小路に自分から入り、絶滅を待つだけの愚かな種でしかない。それにわざわざ愛着を向け、思考を割き、介護してやるほど私はお人好しでもなければ、そもそも人間ですらない。父の復讐を真に考えるならば、もっと賢く貪欲に生きねばならぬのだ。

 

 今から更に体を進化させつつ、どのタイミングでコレを囮にしてアンブレラの目から逃れようかを考える方が、ずっと建設的であろう。

 

 とりあえず、そのような考えは胸に秘め、アークレイ研究所を襲撃するためには、過去の事故記録から活性死者の犬を使うのがいいのではないかとアレには提案した。ウィルスにより活性死者と化す人間と違い、活性死者の犬は身体能力が強化される。元々、中型犬以上ならば容易に人間と互角以上に渡り合え、群れを成して統率性もあり、鼻が効く。走る活性死者の犬に弾を当てるなど至難の技だろう。その上、この辺りの山には幾らでも野犬がおり、この場においては人間よりも替えが効く。30~40頭も捕まえてウィルスを打ち込めば、即席の特殊部隊の出来上がりという訳だ。

 

 よって、こちらで通信施設とヘリポートを押さえ、車両を粗方破壊してしまえば、後は犬が勝手に部屋に立て籠る者以外は全て始末してくれる。アークレイ研究所の周りは全て深い森のため、徒歩で犬の群れを越えようなど自ら犬用ジャーキーになりに行くようなものであろう。

 

 アンブレラとて、事件の処理は社内のみで済ませなければならないため、破棄されたアンブレラ幹部養成所よりも、アークレイ研究所を優先する筈だ。犬を森に配置した上、そこの生物兵器を粗方解き放っておけば、そちらの解決に躍起になり、上手く行けば2ヶ月ほど時間が稼げるだろう。豊富な栄養さえあればもっと早く可能だが、2ヶ月あれば最低限の栄養のみで植え付けた我々(ヒル)の卵が丁度孵化する。

 

 後はやはり、万全を期すならば、アークレイ研究所にも遠くはない距離にあるアンブレラ所有の黄道特急を時期を見て、掌握してしまえばアンブレラ幹部養成所は、完全な陸の孤島になるというわけだ。

 

 自分で考えていてもよくもまあ、アレに全てを押し付けて囮にさせるための方法を思い付くものだな。

 

 アレにはアークレイ研究所には私が襲撃に行き、可能な限りアンブレラの連中を撹乱して見せるという旨を伝え、アンブレラ幹部養成所は任せると言うと、何故か快くエリミネーターを10体ほど融通してくれたため、活性死者の犬だけでなくエリミネーターも連れて行くことになった。

 

 表面上は取り繕い、自身の更なる進化のために、私にとって10年研究が進んでいるアークレイ研究所へと乗り込むことになる。

 

 とは言え、せめてもの義理立てとして、アンブレラ幹部養成所の再稼働だけは済ませてから向かおう。それから地下区画や、周囲を少し散策して気付いたが、かなり二次感染の影響を受けたイレギュラーミュータントがいたため、それらについてもまとめてから行くとしよう。

 

 ああ、楽しみだ。楽しみだな。

 

 

P.S.

 イレギュラーミュータントの散策中にアンブレラ幹部養成所の1階でショットガン、2階でグレネードランチャーを拾い、3階でパーツになっていたカスタムハンドガンを組んだので持って行く事にする。どうせ、置いてあっても誰も使わないだろう。まさか、武器すら現地調達のような阿呆はここには来まい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1998年5月12日

 

 5月12日。今日は赤十字社が、1820年のナイチンゲールの誕生日に因んで制定したナイチンゲールの日である。また、国際看護師の日でもあり、真っ当な製薬会社ならば喜ばしい日のひとつであろう。

 それはそれとして、今日の空模様は厚い雲で覆われ、日射しひとつないため、昼でも過ごし易くて実によい日だった。

 今この記録を付けたときは、アークレイ研究所を襲撃した日の翌日の夜にまとめている。破壊した施設をある程度こちら側で掌握し、一息ついたところだ。

 

 さて、まずアークレイ研究所襲撃の感想を述べると、正直興醒めと言う他ない。B.O.W.研究の最先端であった筈のアークレイ研究所が、私と10体のエリミネーターと、38匹の活性死者の犬だけで半日足らずで壊滅だ。一体、日頃からどんなバイオハザード対策をしていたというのだ。アンブレラ幹部養成所ではその辺りは徹底していたさ。10年前の当時のままならば同じ事をされても10日は持ちこたえられたと自負しよう。まあ、それも相手が内部の人間ではまるで無意味だったがな。

 

 それはそれとして、興味深い事柄を知った。その中で父が殺された年に、ウィリアムの主導により、T-ウィルス計画――すなわちB.O.W.の究極形態と謳われる"タイラント"が開発され、これによりT-ウィルス計画は一応の完成を見たらしい。その後、ヨーロッパ第6研究所にて、寄生生命体・NE-α型――通称ネメシスを用いて、タイラントそのものを改良するのではなく、新開発の寄生生命体を投与することで、宿主の延髄付近に新たな脳を形成し、中枢神経回路の改変と共に脳機能を支配することにより、知能向上を図るという"ネメシス計画"なるものも始動しているとのこと。父はウィルスによる進化を中心に研究していたため、この発想は目から鱗だ。

 

 そして、アークレイ研究所にもプロトタイプ・ネメシスが送られ、それをリサ・トレヴァーに投与したらしいが、リサ・トレヴァーに投与されたネメシス・プロトタイプが体内の始祖ウィルスの影響で消滅してしまったとのことで、大した結果は上がらなかったらしい。しかし、プロトタイプ・ネメシスの設計図は残っていたため、造ろうと思えば造れなくもないため、小躍りしたい気分だ。

 

 さて、そんなアンブレラにしては、素晴らしい研究を先にやられてしまえば、私も1人の研究者として、多少の対抗心も燃えようと言うものだ。そして、疼く研究心を抑えつつ、何か無いかと考えたが、流石にアークレイ研究所にあるにはあるが、1体の製造コスト面や稀少性から、外部のアンブレラを釣るための人質にしているT-002型は使えない。そんなとき、アンブレラ幹部養成所にもタイラントがいたことを思い出した。

 

 そして、アンブレラ幹部養成所に戻った私は、今こうして立ったまま書き記している。目の前には、破棄されたタイラントシリーズの試作品にして第一号。コードNoはT-001型。研究員の間ではプロトタイラント等と呼ばれていたB.O.W.がいる。既にデータ収集後に廃棄処分されたとあったので、コレが動く姿が見れないのが少しだけ残念ではあるな。しかし、まだ死体から何か得るものや、新たなB.O.W.開発のインスピレーションになるかもしれない。

 

 それにしても皮膚の腐敗が進んでいたり、脊髄が見えているとはいえ、タイラントなだけはあり、暴君たる威厳溢れる姿は変わらんな。生命活動を完全に停止して尚、当時から全く衰えない浮き出た血管や筋骨隆々の肉体からは、まるで生き――(ここで記録は途切れている)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1998年5月13日

 

 おい、アンブレラ共。お前らはあれか。有機生命体兵器における廃棄処分という言葉の意味をまるで知らないのか。それとも高度なギャグか。はたまた、私が前に立つことを見越してこんな趣味の悪いビックリ箱を置いておいたのかどうなんだ? 突然、腹を貫かれた身にもなれ。私が、少し評価してやれば、直ぐに評価を叩き落とすような真似をするな。

 

 まさか、プロトタイプとはいえ、私にタイラントを床に捩じ伏せる怪力があるということを初めて知れたのは百歩譲っていい。

 

 だが、最初から暴走状態の上、カタログスペックよりも遥かにタフで、何度でも立ち上がってくる事と、逆に考えれば廃棄処分仕切れなかったレベルの強靭な生命力に対して逆に興味が湧いてしまい、ひょっとしたら使えるかもしれないため、コイツが動けなくなるまで殴りあった上、絞め落として気絶させてから、薬品で活動停止状態にしてアークレイ研究所に持ち帰るのは非常に骨が折れた。まあ、私には骨なんて無いがな。

 

 ここまで来るとT-001型に若干の愛着が沸き、多少の運命さえも感じる。当時の我が研究所や、アークレイ研究所に匙を投げられたこのT-001型。大きな問題点は、投与したT-ウイルスが極度に作用したため、思考能力の劣化が著しく、命令による制御がこのままでは不可能な点。それと、皮膚の腐敗などの肉体の保存状態と言える。折角なので、これらは父からの課題ということにしておこうか。肉体の保存状態に関しては大した問題ではなく、知能についてはプロトタイプ・ネメシスがある。少々、改造の必要は無論あるが、だからこそ楽しめると言うものだ。

 

 ふと、監視モニターで外を見ると、腹が立つ程の快晴だった。日射しは私の大敵のため、今日は日が落ちるまでT-001型の改修案の模索と、ネメシス・プロトタイプの製造及び改造を行うため、少し色々と試してみる事にしよう。

 

 

 






~B.O.W.~

女王ヒル
 ジェームス・マーカスが"2体"遺した始祖ウィルスベースの怪物の頭角個体のうちの1体。B.O.W.の始祖のようなもの――女王ヒルの片割れであるが、ジェームス・マーカスそのものに進化して最終的に処理場で没した女王ヒルの片割れとは違い、マーカスがヒルに我が子のような愛情を注いでいたことに恩義を感じ、自身をジェームズ・マーカスの子として進化した。アンブレラ――と言うよりもオズウェル・E・スペンサー個人への復讐のためだけに行動している。
 マーカスの姿や記憶など全てを取り込んでいるが、もう片方の頭角個体とは異なり、マーカス本人とは性格がかなり異なる。主な違いとしては、マーカスが殺された理由をマーカスの記憶と、これまで喰らった人間の脳髄から得た常識という記憶の断片に当て嵌めて考えたところ、社交性の取得が必要という結論に至ったため、B.O.W.にしては不気味な程に話がわかり、アンブレラに与していない人間ならば、実験体が足りないなどの理由さえなければ女王ヒルから殺すことはない。しかし、そこに人間に必要な一切の倫理観や道徳心が伴っていないため、明らかに人間らしい思考からは掛け離れている。
 最終目的はスペンサーへの個人的な復讐なのだが、マーカスらしく根が陰険かつ自尊的なところを性格に引き継いでいるため、復讐の過程でスペンサーを失墜させるためにアンブレラ社を廃絶及び、マーカスが開発した彼にとっての最高傑作の女王ヒル(B.O.W.)の優位性をアンブレラ社が生み出した全てのB.O.W.よりも上だということを証明する2つの達成を前提にしているため、スペンサーの殺害は可能な限り後回しにしている。


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