BIO HAZARD -Queen Leech- 作:ちゅーに菌
今年最後の投稿なので初投稿です。
正直、小説にする前にプレイしたりして、前編に引き続きつくづく思いましたけど、本当に初代の謎謎解きパートが果てしなく多いのと資料省くと使えるところ少ねぇな!? ラクーンシティからは視点がジャクリーン中心に戻る関係でちゃんとダイジェストにはならないと思いますのでご了承下さい。
「いいかお前ら……アンブレラは黒だ。ドス黒過ぎる……表向きには製薬会社として40年以上に渡り、アメリカの国家企業として世界で親しまれているが……そもそもが馬鹿げたウィルスと
現在は洋館1階の食堂。ハーブ畑による治療を終えて、ある程度復活したエンリコ・マリーニは真っ先に生存してここにいるS.T.A.R.S.全員に対し、アンブレラの闇を訴えた。
レベッカ以外はアンブレラ自体に対してはまだ半信半疑だったが、ブラヴォーチームのエンリコがアンブレラ幹部養成所から持ち出した多少の資料を元に語ると、完全に信じるに足る確証を得た様子である。
「そして、S.T.A.R.S.のアルファチームの隊長――アルバート・ウェスカーは最初からアンブレラの人間だ。それもウィルスや生物兵器を研究していた側の……な」
エンリコが全員に見せたやや古ぼけた写真には、白衣を着た金髪の男性が2人と、老人が1人笑顔を見せて写っている。裏側を見れば、写真に写る者の名前だと思われる"ジェームス、アルバート、ウィリアム"の3人の名前が書かれていた。
「実はこれらの資料の在りかは、アンブレラの創設者の1人のジェームス・マーカスの娘を名乗る"ジャクリーン・マーカス"なる奇妙な女が、アンブレラ幹部養成所にいて、彼女から教えてもらった。他に彼女を見掛けた者はいないか?」
「ああ……」
「ジャクリーンねぇ……」
エンリコの話を聞いたレベッカ以外のS.T.A.R.S.の隊員はレベッカへと目を向ける。そして、レベッカが口を開いた。
「彼女自身が綴った日記の内容を信じるのなら、ジャクリーンはジェームス・マーカスから直接生まれたB.O.W.です」
「なに――?」
レベッカは更にジャクリーンがアンブレラに対して生物兵器を用いて、父であるジェームス・マーカスの復讐のために全面戦争を仕掛けようとしていること。そして、そのためにアンブレラが世界最悪かつ世界初のウィルス兵器によるバイオハザードを引き起こした事実を作るため、ラクーンシティそのものを犠牲にしようとしていることを告げた。
怪物を造った怪物と、怪物に作られた怪物の喰らい合い。ラクーンシティはその戦場になるというだけの話ではある。しかし、10万人規模の人間が住む街で起こり、質の悪いことに人間がいなければ発生しないのだから始末に負えない。
更にレベッカはジャクリーンと直接話したアンブレラという国家企業の強大さについてもエンリコに語った。
「なんということだ……」
それだけ言ってエンリコはジャクリーンを責めようとはしなかった。そもそも洋館に隣接されたアークレイ研究所を襲撃したジャクリーンを造ったのはアンブレラ、S.T.A.R.S.を設立して影からこの洋館に送り込んだのもアンブレラ。ジャクリーンが悪魔ならば、アンブレラは魔界そのものである。
もし、対峙すれば間違いなくジャクリーンがラクーンシティを襲撃する前に殺してでも止めるであろうが、ジャクリーンもまた被害者あるいは癌細胞のように増殖し続けるアンブレラが生み出した最後の良心なのかも知れない。
「……とりあえず、この洋館を脱出しないことには何も始まらない。可能ならばアンブレラの研究の証拠を確保しつつ、脱出方法を模索しよう」
「これでS.T.A.R.S.が5人ね」
「まだ、空にいるブラッドも合わせればちょうど6人だな」
『――――――――!!!』
「そんなこと言ってたら、虎野郎のお出ましだぜ」
「本当にしつこいですね……!」
S.T.A.R.S.らは尚も徘徊を続けているダンプリングタイガーを切り抜けつつ、まずは研究所の入り口を探すことにしたのであった。
◆◇◆◇◆◇
「こ、これは……」
「紛れもなくウェスカーだな……」
「アイツ、白衣着てまでグラサン掛けてやがるぜ……」
洋館の地下深くにあったアークレイ研究所に到達し、尚も続く謎解きをクリアし、執念深いことに研究所にまで侵入してきたダンプリングタイガーをかわしつつ、謎解き用のフィルム映像を見たS.T.A.R.S.らの目に映ったのは"アンブレラの研究員たちと共に映る白衣姿のウェスカー"の姿だった。
最早、ウェスカーがアンブレラと繋がっているどころか、当事者なのは疑いようもないことであろう。
そして、S.T.A.R.S.らは追いかけて来るB.O.W.を倒しつつ、アークレイ研究所の地下深く――タイラントが製造されていた研究室に入ると、そこにはあの男の姿があった。
「ウェスカー……!」
「ようこそ、S.T.A.R.S.の諸君。思った以上に残ってしまって腹立たしい限りだよ。そして、やはりクリスは残ったか。期待通りだな、私の部下だから当然だが」
そこで彼らを出迎えたのは、忘れもしないこの男――アルバート・ウェスカーである。そして、ウェスカーの部下であったクリスが前に出て叫ぶ。
「最初から……最初からS.T.A.R.S.を裏切っていたんだな!」
「ああ、ことの経緯は大方君らが思っている通りだ。だが、こちらも時間が惜しいものでね。片手間で失礼する」
「このゲス野郎……!」
サングラスを掛けた彼は、こちらに目すら向けないまま、化け物――タイラントが入った培養槽の隣にあるコンソールに何かを入力し続けていた。
「何をしているウェスカー?」
「………………」
「ウェスカー! コンソールから離れろ!」
「……はぁ、バリー」
そして、当然S.T.A.R.S.らはウェスカーへと銃口を向ける。しかし、ウェスカーはそれを気にした様子もなく、相変わらず、コンソールを弄る。そして、何度か警告をされたため、小さく溜め息を吐くと行方不明のS.T.A.R.S.の隊員――バリー・バートンの名を呟く。
「動くな!」
すると、S.T.A.R.S.らの真後ろから彼らが知る声が聞こえ、そちらに振り返ると――そこには彼らにマグナムリボルバーの銃口を向けるバリーの姿があった。
「バリー!? どうして!?」
「何をしているんだバリー!?」
「まさか、バリーもアンブレラの――」
「悪く思わないでやってくれ。彼は娘を人質に取られているんだ」
そう言ってウェスカーは小さく嘲笑いながら、尚もコンソールに向き合い――ふとした瞬間に表情を曇らせ、驚いたように口を開いた。
「なに……?」
そして、S.T.A.R.S.らがバリーと膠着状態にある中、焦るようにコンソールを叩き続けるウェスカーであったが、やがて手が止まる。
しかし、ウェスカーがコンソールに指を触れずともディスプレイ内で勝手にプログラムが組み上がる様子が見て取れた。
「ありえん……たった2ヶ月足らずで、あれだけの研究をしながら、プログラミング技術を覚え、あらかじめ次に操作されたときに自身のプログラムでタイラントを起動するように仕込むなど――」
そして、作業を終えたディスプレイには、ただ一言だけこう文章が表示されていた。
《"
次の瞬間、培養槽のガラスを突き破ってT-002型――タイラントが飛び出すと、真っ先に駆け出してウェスカーの首を片腕で掴み上げ、もう片方の爪の並んだ腕で彼の体を刺し貫いた。
「――――――!?」
声を上げる暇すらなく即死であろう。そのまま、ウェスカーの亡骸をタイラントは遠くに放り捨てると、それに目を向けることもなく、バリーを含むS.T.A.R.S.らを見据えると、飛び掛かるために構え始める。
「させない!」
直ぐに反応したレベッカがホルスターからマグナムを抜き出して放つのと、マグナムリボルバーを構えたバリーがタイラントに向かって発砲するのはほぼ同時だった。
一発を頭部、一発を胸部に受けたタイラントは、即座に横に飛び退き、他の培養槽の裏に立つことでそれを盾にしている。
「バリー……!」
「すまねぇ……! コイツでウェスカーをぶち抜くべきだったんだ」
「ありがとう! でも話は後よ! 来るわ!」
タイラントは培養槽と天井の隙間を潜り抜けるように跳ぶと、S.T.A.R.S.らの頭上から巨大な爪を振り下ろした。
間一髪のところで全員は飛び込み散らばることで避けたが、彼らのいた金属の床板は、巨大なハンマーで殴り付けたかのようにひしゃげている。
「くっ……!? 映画スターかよコイツは!?」
リチャードがそう言うのも無理はない。タイラントは自身の弱点である心臓と頭部を両腕で庇いながらも、指の隙間からこちらを覗いて確認し、基本的にジャンプによる長距離の跳躍のみで移動している。
「なんだ……!?」
そして、更にタイラントは、タイラント用の銃弾さえも容易に弾く培養槽を素手で破壊することで1枚の強化ガラスの板に変え、それを爪のない手で構えて心臓と頭部を守りながら、今までのように戦い始めた。
強化ガラスはタイラントの爪の前には無力だが、マグナム弾程度なら小さなヒビしか付かず、割れればまた別の培養槽を破壊して強化ガラスの盾を作り立ち向かって来る。
ジャクリーンのように銃でも持っていれば、とっくの昔にS.T.A.R.S.は死傷者が出ているであろう。
とは言え、タイラントにとって災難だったのは、ここにはS.T.A.R.S.らが6人いたことだ。あらゆる方向から繰り出される銃撃を前面のみの盾で十全に防ぐというのは、流石に無理が生じていた。
1~2人ならいざ知らず、流石に6人から同時あるいは別々で攻撃されれば堪ったものではない。単純なハードウェアの限界ということなのであろう。
そして、合計百数十回に及ぶ銃撃の末、タイラントは膝を折り、床に叩き付けられるように倒れ付したまま、遂には動かなくなった。
「やったの……?」
「みたいだな……」
「だが、虎のようにまた動かないとも限らない。ブラッドも燃料に猶予がないらしい。証拠の確保は不十分だが……まずは命だ。信号弾は既に見つけてある、ヘリポートから脱出しよう」
エンリコの指示に従い、S.T.A.R.S.らはヘリポートを目指した。すると直ぐに機密保持のための自爆装置が起動し、アナウンスによるカウントダウンが始まった。
◇◆◇◆◇◆
ヘリポートに向かう途中で襲い来るB.O.W.を片付けながら、最後にエレベーターでヘリポートに到着しS.T.A.R.S.らは信号弾を放ってブラッドが乗るヘリコプターに合図を送った。
ひとまずはこれで助かると、思い思いに安堵の様子を浮かべていると、ヘリポートに空いた穴からタイラントが跳躍して現れた。
「タイラントだ!?」
「くそっ……! 案の定、追ってきたか!?」
そして、タイラントが暴力性に満ち溢れた眼光をし、こちらを襲うために動き出そうとした丁度そのとき――。
『――――――――!!!』
タイラントが通ってきた場所を同じく跳躍して、これまでS.T.A.R.S.らを執拗に追い続けてきたダンプリングタイガーがタイラントの背後に降り立つ。
「嘘でしょう!? ここでアイツまで!?」
「不味いわ……これじゃあ、ヘリに乗れないわ!?」
タイラントがS.T.A.R.S.の隊員へ歩き出す中、ダンプリングタイガーは一旦S.T.A.R.S.の隊員を眺める動作をした。次にタイラントの背を眺め、感情を映さない瞳で少しだけ思考しているように止まる。
そして、ダンプリングタイガーはカチカチと顎を打ち鳴らすと――高い脚力で跳躍し、タイラントへ向けて襲い掛かった。
「――――――!?」
『――――!!』
「なんだ!? 喧嘩別れか!?」
「いや……虎野郎はタイラントの方が俺らよりも旨そうに見えたんだろ!」
タイラントの背中を鎌状の腕で大きく引き裂いたダンプリングタイガー。流石に堪らない様子で怯んだタイラントは、振り返るのと同時にダンプリングタイガーの胴体を爪で薙ぐ。それによって、ダンプリングタイガーの胴体に大きな爪痕が刻まれる。
『――――――――!!!』
しかし、全く怯まないダンプリングタイガーは、タイラントを2本の腕で正面から抱き着くように拘束すると、残り2本の鎌状の腕でタイラントの胴体を交互に連続で突き刺し始める。
その威力は凄まじく、タイラントの鋼のような肉体を容易に刺し貫いた。また、3m近い体格を持つダンプリングタイガーは、タイラント以上の怪力を持つらしく抜け出すことは不可能であろう。
「――――――!」
『――――――!?』
しかし、アンブレラの究極生命体であるタイラントもそれだけでは終わらない。タイラントはダンプリングタイガーの胴体の下部に刻まれたついさっきつけた傷跡に爪を差し込み、上へ向けてしゃくり上げる。
それにより、ダンプリングタイガーの胸部の外骨格が剥き出しになり、更に斜め後方に抜けた爪により、1本の腕が千切れ飛ぶ。
『――――――――!!!!』
思わぬ反撃に激昂した様子のダンプリングタイガーは、大顎を開くとタイラントの頭部に齧りつく。ミシミシと異音を響かせた末、遂にタイラントはだらりと体を投げ出したまま動かなくなった。
『………………』
ダンプリングタイガーはタイラントの亡骸を、喰らうことも肉団子にすることもなく地面に落とすと、S.T.A.R.S.らへと向く。その姿は左の片腕を根本から消失し、胴体前面の外骨格を抉り取られたことで内部が露出しており、その中央で心臓のような器官が拍動する様子がありありと見える。
しかし、それでも尚、おぞましいまでの生命力でそこに存在し、手負いになったことで、却って顕現した悪魔のような風貌は対峙するものを、見ただけで戦意を失わせるには十分過ぎると言えるだろう。
『――――――――!!!!』
そして、ダンプリングタイガーはそのまま咆哮を上げると、数百どころか、数千に登るほどのこれまで見たことがない、凄まじい数のワスプがダンプリングタイガーの周囲を飛び回りつつ、特に前面の外骨格を覆うように全身にまとわりついた。
「どうやらこれで最後のようだな!」
「ここで倒すわよ!」
クリスとジルを皮切りにS.T.A.R.S.ら6人がダンプリングタイガーに銃口を向け銃撃すると同時に、ダンプリングタイガーは人間のように助走をつけて走ると、数mの距離を一気に詰めてクリスに飛び掛かる。
「くっ……!」
クリスはそれを横に飛び込みながら避けつつ、サブマシンガンを連射するが、ワスプの鎧と呼べるような密度と数により、着弾しても撃った分だけが削れるだけで、先にこちらの弾が尽きることは明白と言えよう。
「なんて嫌な防弾チョッキだ!?」
リチャードがアサルトショットガンを放つが、やはりワスプで出来た鎧の一部が犠牲になるだけでダンプリングタイガーには一切のダメージが通っていない。
「埒があかねぇ! ブラッド! 俺が積み込んだアレを落とせ!」
『待ってくれバリー! 今やってる!』
そんな中、ダンプリングタイガーのワスプの鎧が蠢くと、数十匹のワスプがヘリポート中に散らばり、S.T.A.R.S.らを襲うために飛び回り始める。
「日頃からどんな発想をしていたらこんな化け物を思い付くんだ!?」
エンリコはそう言いつつも、レベッカから渡されたサブマシンガンで次々と飛び交うワスプに弾を当てて落として行く。他のサブマシンガンを持つ隊員も応戦したため、直ぐに散らばったワスプは片付けられる。
「ダメっ! 蜂の鎧が厚過ぎて、火炎瓶では燃やしきれないわ!」
レベッカも火炎瓶をダンプリングタイガーに向けて何度か投げたが、燃えた箇所から直ぐにワスプが剥がれ落ち、装甲の層のような役割をする上に一定のペースで補充されるため、ほとんど意味はなかった。
『――――――!!』
「コイツ……!?」
ダンプリングタイガーは一番近くにいるためか、何故かクリスを執拗に狙って攻撃している。クリスは他の隊員の元に行かせないように一撃一撃が当たれば即死しかねないほどの威力を持つ攻撃を紙一重で回避し続けている。
「おい、早くしろブラッド! クリスが死ぬぞ!?」
『――よし、投下したぞ! ソイツで吹き飛ばしてやれ!』
するとブラッドの乗るヘリコプターから、四連装のロケットランチャーがヘリポートに投下され、それを直ぐにバリーが受け取ると、ダンプリングタイガーへと向けて構える。
「ソイツから離れろクリス!」
「――ああ!」
クリスが飛び込んでダンプリングタイガーから離れると、その直後に発射されたロケット弾がダンプリングタイガーへと一直線に迫り、その体へと着弾し、大爆発を起こした。
「ざまあみろ! これで……なんだと!?」
しかし、爆炎が晴れた場所には、ワスプの鎧を失っただけで、本体は健在のダンプリングタイガーの姿があった。
「ならもう1発……!」
そして、バリーからロケットランチャーが再び放たれ、ダンプリングタイガーへとロケット弾が殺到する。しかし、ダンプリングタイガーはロケット弾を当たる直前で腕を振ってあらぬ方向へ弾き飛ばしてしまう。
「デタラメ過ぎるだろ……!」
「でも今なら当たるわ!」
『――!?』
ジルがサブマシンガンを剥き出しの心臓部へと放つと、ダンプリングタイガーは少し怯み、明らかにこれまでとは違う反応を見せる。
しかし、直ぐに大量のワスプがダンプリングタイガーへと集まると、再びワスプの鎧と化して全く銃弾が通らなくなった。
「もう一度、ロケットランチャーを撃って蜂を剥がして!」
「おう!」
バリーがロケットランチャーを放つと再びダンプリングタイガーは爆炎に包まれ、体を覆っていたワスプが霧散する。
「今だ! 総攻撃だ!」
『――――――――!?』
エンリコの掛け声で、彼とジルとクリスとレベッカはサブマシンガンを放ち、リチャードはアサルトショットガンを放つ。それはダンプリングタイガーの心臓部へと命中し、少なくないダメージを与えただろう。
『――――――――――――』
するとダンプリングタイガーはこれまでとは若干、質の違う咆哮を上げる。すると、ヘリポートの外壁をよじ登り、10匹近いプレイグクローラーが侵入し、S.T.A.R.S.らへと襲い掛かってきた。
「コイツ!? どんだけ呼んだら気が済むんだ!?」
流石にS.T.A.R.S.らのほとんどが、プレイグクローラーの対処に追われる。そのうちにダンプリングタイガーは、全身に三度ワスプの鎧を纏う。
そして、自身もS.T.A.R.S.への攻撃を再開し、ジルに向けて十数mの距離を跳躍により一度で詰め寄ると、その大鎌を振り下ろした。
「ジル!?」
「リチャード!?」
それにジルよりも先に反応したリチャードがジルを押し退けて庇う。リチャードはダンプリングタイガーの攻撃を肩に受けて弾き飛ばされた。
「リチャード……!? よくも!」
「だ、大丈夫だ……! それよりもアイツを――」
リチャードが持っていたアサルトショットガンを拾い上げたクリスがダンプリングタイガーへと接近し、至近距離で放つ。ワスプの鎧によってダメージは皆無だが、その衝撃で行動を止めることは出来る。
「退けクリス!」
バリーの叫びでクリスがその場から飛び退くと、ダンプリングタイガーへと最後のロケットランチャーを放ち、ワスプの鎧を撃ち砕く。
「クリス先輩! これを使ってください!」
そして、レベッカがダンプリングタイガーの最も近くにいるクリスに向けて、自身のマグナムを投げた。
それをダンプリングタイガーへと飛び込みながら空中で受け取ったクリスは、爆炎が晴れたばかりのダンプリングタイガーの懐へと潜り込み、マグナムを心臓へと直接突きつける。
「終わりだ化け物……!」
『――――――――――――――――』
そして、マグナムの弾倉が空になるまでダンプリングタイガーの心臓へと放たれ、復讐と狂気の元に生まれた生命へ終止符を打った。
『――!? ――――!!!?』
度重なるダメージとトドメにより、ダンプリングタイガーは腕を無造作に振り回しながらよろめいて後退し、その場に四つ這いになるように倒れ込む。
しかし、まだ死なずにもがいているため、S.T.A.R.S.らは銃を向けたが、その後ろを見て一様に固まる。
なぜならダンプリングタイガーの肩に完全に死んだと思っていたタイラントの腕が掛けられたからだ。ダンプリングタイガーがタイラントの近くに来たこの瞬間に、高過ぎる生命力で、既に上半身だけの機能すら満足に残っていないほどの損傷を受けているタイラントが再び復活したのである。
『――――――――――――――――』
そして、タイラントはその大爪でダンプリングタイガーの背中から心臓を貫いた。
傷口から大量の体液が溢れると共に、全身の再生能力が完全に停止し、周囲に幾らか残っていたワスプが蜘蛛の子を散らすように離れて行く。
『――――………………』
ダンプリングタイガーは完全に生命活動を停止し、2度と動くことはない。
そして、タイラントもまたあの一撃が本当に最期の執念だったのか、ダンプリングタイガーをその腕で貫いたまま、壊れたロボットのように停止して、2度と動き出すことはなかった。
そんな狂気の産物でしかない二者を見たクリスは、勝ち残り生き残ったにも関わらず、決して晴れない表情で呟く。
「帰ろう……アンブレラとジャクリーンを止めなければならない」
それを聞いたS.T.A.R.S.らは思い思いの様子や表情を浮かべながらヘリコプターに乗り込んで行く。
後に洋館事件と呼ばれ、全ての発端の出来事の更に原初の出来事となるこの事件は、S.T.A.R.S.の隊員5名を犠牲に終結したのであった。
◆◇◆◇◆◇
アルバート・ウェスカーは、ウィリアム・バーキンから手渡された始祖ウィルスがベースで、肉体的に死亡してから70%の確率で復活と共に肉体の強化を、20%で復活のみ、10%でそのまま死亡する効果のある試作品の強化薬による賭けに勝った。
そして、彼は強化された自身の肉体性能に喜びながら自爆のカウントダウンを始めたアークレイ研究所を抜け出し、洋館へと戻り、エントランスから外に出ようとしている。
(許さんぞクリス……セルゲイ……スペンサー……そして、マーカス……! まずはアンブレラだ……!)
しかし、ウェスカーが本来入手する予定だったデータがアンブレラのAI――レッドクイーンの機密保持のための防衛機能により、入手不可能だったため、ウェスカーの内心は荒んでいた。
道中に襲い来るゾンビや、クリムゾン・ヘッドを倒しつつ、ウェスカーは洋館の廊下を抜け、特徴でもある広いエントランスに出て――。
「やあ、アルバート。随分、久しいな」
ひとりの白衣を着た老人――ジェームス・マーカス博士の姿をした何か。そして、この洋館を建築したジョージ・トレヴァーの娘――リサ・トレヴァーが、この屋敷に招かれたときの14歳当時のままの姿で隣にいることでウェスカーは訳がわからず絶句する。
マーカス博士はそれを面白く思ったのか、くつくつと笑いつつ小さく指を鳴らす。するとエントランス内に3体のタイラントが現れた。
1体はアンブレラ幹部養成所で見たやや肌が緑掛かっているT-103型と酷似したタイラント。背に剣を装備している。
2体目は黒紫色の肌をして3.5m程の巨大なバンダースナッチのようなタイラント。明らかに量産型の風体ではない。
そして、3体目。胴体の上半身、左肩部、左手の爪部以外の全ての肌がゴールド色をした奇妙なタイラントである。まあ、金色というよりもターメリックライスのような色なのだが、相対的にウェスカーにとってこの個体が1番意味のわからない個体かもしれない。
それら3体のタイラントは全てマーカス博士と、リサ・トレヴァーの背後に立ち、対峙しているウェスカーを見下ろす状態で動きを止め、マーカス博士はどこか面白げに口元を歪める。
「私がとっくに逃げ出していると思っていたか? それよりも、確かにアークレイ研究所に残したタイラントのプログラムに細工をし、君を一度殺した筈なのだが……なぜまだ生きているのかね?」
ウェスカーは自身でもここまでやるのかと呆れるほど陰湿かつ用意周到な徹底振りに冷や汗を流し始め、まずはこの窮地をどう切り抜けるか考えるのであった。
~ボスクリーチャー~
ダンプリングタイガー(最終戦)
これまで幾度となく行く手を阻んできたダンプリングタイガーとの最後の戦闘。ゲーム的には30回以上ダンプリングタイガーに肉団子作りをさせ(この際、自爆までの制限時間が3分から5分になる)、制限時間ではなくタイラントのHPを削り切ることで発生する通常プレイでは見られない隠しボス。タイラントのHPを全て削ると、ムービーが入りロケットランチャーの投下ではなく、ダンプリングタイガーとの連戦になる。
○攻撃パターン
弱点はタイラントが剥がした胸部の外骨格の中にある心臓部。全身にワスプの鎧を纏っており、一切のダメージを通さない。ロケットランチャーを当てたときのみ、一定時間だけ剥がれ、本体にダメージが通るようになるが、心臓部以外にはダメージが32分の1になる上、ワスプの鎧を剥がした状態でロケットランチャーを撃つと弾かれる。
この戦闘で時間経過によってブラッドが落とすロケットランチャーは1度きりで、弾数は4発のみだが、時間経過でロケットランチャーの弾を4発ずつ投下する。しかし、制限時間がスーパータイラント戦を含めて5分しかないため、時間的に8~12がロケットランチャーの撃てる限度数である。
また、ナイフによる攻撃でのみ弱点が設定されており、心臓部にマグナムより高くダメージを与えるため、24回心臓部にナイフを当てれば倒すことが可能で、ナイフで倒した場合、銃で倒したときとは別で専用のムービーが入る。
・ワスプ飛ばし
徘徊時は4~5匹を直線に飛ばすだけだったが、全方向にワスプを無差別にばら蒔き、単純にフィールドをワスプだらけに変える。ワスプの鎧を纏っていないときは使用しない。散らばったワスプはサブマシンガンを持つ味方NPCが自動的に倒してくれるが、飛んでいるワスプにロケットランチャーが当たると当然、ダンプリングタイガーには当たらないため、そちらの方が問題となる。
・プレイグクローラー呼び
ワスプの鎧を纏っていないときに行う行動。数体のプレイグクローラーを呼び寄せる。ワスプの鎧が剥がれた回数に応じて使用頻度が増す。
・切り裂き
徘徊時と異なり、走って接近してプレイヤーに近付き、鎌状の腕で斬りつけてくる攻撃。高威力の上に確定で毒状態にするが、攻撃前に大きく振りかぶるため、避けること自体は可能で、攻撃後の硬直も長め。
・ジャンプ切り裂き
プレイヤーの位置までジャンプして放物線を描きながら引き裂き攻撃をしてくる。振りかぶり動作を空中で済ませる上、どんな距離でもすぐに距離を詰めて高威力の攻撃かつ確定で毒状態し、攻撃後の硬直もほとんどないため、切り裂き攻撃よりも避け難く遥かに危険。徘徊時よりと異なり、切り裂きよりもこちらの攻撃頻度が高くなっている。
・掴み掛かり
タイラントが片腕を奪ったため、拘束がし難くなり、徘徊時と違って即死攻撃までに時間が掛かる。そのため、味方やプレイヤーが掴まっても、一定量ダメージを与えれば抜け出すことが可能。
~B.O.W.~
ゴールドタイラント
アークレイ研究所にいた何故か身体がゴールド色をしたT-002型。普通のT-002型からすると90%以上相当の完成率だったが、この通り、皮膚が異常な変色を起こしたために何かしらの危険を孕むと予想されて破棄されていた。それを女王ヒルが完成させた上でアークレイ研究所から持ち出した個体。性能的には通常のT-002型と大差無いが、なんとなくゴージャスな気分になるので、女王ヒルは気に入っている。
※セガ・サターン版にいるよくわからないポッと出のアレ(原作再現)