BIO HAZARD -Queen Leech- 作:ちゅーに菌
「なあ、最近トイレがよく故障しないか?」
"使用禁止"と書かれた貼り紙が貼られた隅の個室を眺めつつ、用を足しながらそう呟いたのは、このタイラント研究所に勤めている武装した警備兵の男であった。
そんな彼と同じようにただの製薬会社にしては物々しい服装をして、小便器に並んで用を足している同僚の男は小首を傾げつつ呟く。
「そういえば、地下6階と地下7階のトイレにもこんな貼り紙してあったな」
「
「まあ、職員数の割には無駄に個室が多いから特に気にならないが……確かに多いかも知れん」
隣にいる同僚はそう呟きながら何気なく個室に目を移す。そこには10近い数の個室が並んでおり、公に出来ないような施設にしては確かに多過ぎると言えるであろう。
警備兵の男は、外面だけ充実させたいという施設長の虚栄心が見え透けるようでなんとも言えない気分になるが、そんな中、ポツリと隣にいる同僚が呟いた。
「なあ、ところでお前は……アンブレラは好きか? "忠誠"を誓っているか?」
「なんだ藪から棒に……」
そう言いつつも警備兵の男は少し思案する。そして、なんでもないような様子で言葉を返した。
「忠誠とかはどうでもいいが、金払いは兎に角良い。そこは気に入っているな」
「ははは、そうか」
「え……?」
すると同僚の男は冗談を浮かべたような笑みのまま――掌に生えたショットガンの銃口を男に向けると共に即座に発砲する。
男の頭は風船のように弾け飛ぶと共に、同僚の男のよく
「では死ね」
既に殺し終えたタイミングでそんな言葉を放つ同僚の男。そして、直ぐにその身体は粘性の高い液体が混ざるように変化し、別の形を取る。
「さてさて……」
変化――擬態が終わるとそこには、大学卒業時代の頃の美男子であったマーカス博士を彷彿とさせる"美女"が居た。彼の妹や姉だと言われれば万人は信じてしまうであろう。
また、白いローブのような衣服を纏っており、人間離れした彼女の美貌を引き立てていると言える。
「リサはこの姿、余りお気に召さないようだが、これこそ私だ」
誰に言うわけでもなく、そう呟いた女性――ジャクリーン・マーカスは少しトイレの鏡に自身の姿を映し、身嗜みを整えるように擬態の細部を調整していた。
その間に使用禁止の貼り紙がしてあった個室から周囲へと広がるように、下水管から便器を通してわらわらと大量のヒルが次々と溢れ出る。更に換気ダクトからもヒルが濁流のように零れ落ち、この空間を瞬く間に湿っぽく蠢くようなヒルの巣へと変えてしまう。
「空気と水を拒めぬ以上、どうあっても
そして、ヒルの巣から"擬態マーカス"あるいは"人型ヒル"と呼ばれるヒルが集合し、攻撃形態の人型になったそれらが、無数に起き上がり、操り人間のような奇妙な歩き方をしながらフロア全体へと広がっていく。
直ぐに悲鳴や銃声が聞こえ、それは別の階層からも聞こえることをジャクリーンは、感覚器で感じ取っていた。
「こんなものか」
人型ヒルたちが全て出て行った後、化粧のように暫く弄っていた擬態に納得がいったのか、靴音を響かせながらジャクリーンは向かう。
すると直ぐに人型ヒルに半分ほど喰われている白衣姿の人間が目に入ったが、特に気にせず彼女は素通りする。
αー7ーB.O.W.保管庫と書かれたプレートが貼ってある倉庫の前で立ち止まり、その扉を開けて中に入ると、中に安置された幾つものコンテナを眺めた。
コンテナの目穴には、ハンターの試作品やリッカーや二次感染個体などのB.O.W.が休眠状態で置かれており、積まれたコンテナのそれぞれにB.O.W.が入っているならば相当な数と言えるであろう。
そして、その中でもかなり新しく置かれたと思われるそれを眺める。
「人を隠すなら人の中、B.O.W.を隠すならB.O.W.の中とは皮肉なものだね」
それには"試験用旧式改良型B.O.W."と刻まれており、中には多数の人型の何かが身体を縮めるように休眠状態で置かれていた。
「さあ、では早速試験を始めようか?」
ジャクリーンの手で金属扉が開け放たれ、彼女は鳴き声のようで歌のようでもある音を放つ。
するとたちどころにそのコンテナ内のB.O.W.たちは覚醒し、外に出ると彼女の前に立ち並ぶ。
それらは180cm近い背丈でよく発達した成人男性のような体格をしながら、身の丈以上の長さの折り畳み可能な10本の背中の腕を持つジャクリーン開発のB.O.W.――"キメラーβ"11体であった。
そして、それらは彼女の一声で一斉に動き出し、彼女の背後で隊列を組むように整列する。
「では行こうか諸君」
ジャクリーンはそのまま、キメラーβたちを背後に従えてタイラント研究所の広い廊下を練り歩く。
すると直ぐに前方で起こる断続的な銃声に気付き、然も当たり前のように分岐路を選び、そちらへ向かって行った。
「クソッ!? どこの部署から沸いたこの化け物どもは!?」
「無駄に頑丈で――ひぎゃぁぁぁ!!!?」
「ば、爆発しただと!? 接近戦は危険――なんだ!?」
すると流石にそこにいた十数体の人型ヒルだけでは、三十人以上いる警備兵を殺し切るには至らなかったようで、銃器の前に人型ヒルたちから死亡……と言うよりも擬態が維持できない程のダメージを受け、弾け飛んでヒルを拡散させているモノが現れている。
そして、そんな比較的善戦している警備兵らの前に現れた白いローブを身に纏う美女と、その背後に並ぶ明らかにマッシブな体格をしたキメラのような何かの群れ。これに驚かない訳はないであろう。
「こんばんはアンブレラの尖兵ども。さあ、精々忠誠を示したまえよ」
『――――――!』
その言葉と共に、11体のキメラーβたちはギチギチと顎を鳴らしながらそれぞれ別の手近な警備兵らに襲い掛かる。
当然、倍以上の数の有利がある警備兵らは、近寄って来るキメラーβをそれぞれアサルトライフルやサブマシンガンなどの銃器で迎撃した。
しかし、キメラーβらは6本の多腕で頭部と胴体を覆った上、残る4本の腕を別の脚のように使うことで銃弾を身に受けつつも被害を減らし、射線から離脱しつつ進む事で更に被弾を押さえつつ突進して来る。
元々の身体能力の高さから20~30mほどの距離を数秒と掛からずに詰め、真っ先に警備兵の元へ到達したキメラーβはそれぞれ左右2本の腕をしゃくりあげるように放つ。
「――がぁ!?」
研ぎ澄まされた爪を持つ両手は、容易く防弾チョッキごと警備兵の胴体を背中まで貫通し、身体ごと宙に浮かせる。
『――――!』
そして、死体を投げ捨てると残る8本の腕を駆使し、あろうことかこの警備兵が構えていたアサルトライフルや、装備していたホルスターからハンドガンを抜き放つと、近くの警備兵を銃撃した。
「そんな馬鹿――」
驚きのままに一体のキメラーβに銃撃された最初の警備兵の胴を中心に、技量は余り感じさせず、乱射と言っても差し支えない量の銃弾が放たれ、防弾チョッキが無意味なほど撃ち込まれた後に事切れる。
直ぐに弾切れを確認したそのキメラーβは、手近な死体を盾にしつつ遮蔽物を縫うように移動し、新たな弾倉や銃器や手榴弾を見つけると10本の多腕で拾い上げ、警備兵らの挙動をじっと見据えつつ、リロードや銃器の切り替えを交えつつ警備兵らと交戦する。
銃を使うB.O.W.。この時点で警備兵の数の有利性は消えたと言っても過言ではない。人間より、速く、硬く、強く、しなやかで強靭な生物が銃を用いるとなれば、並みの人間に勝てる道理など無いのだから。
更に警備兵らを見て徐々に"銃の扱いを覚えた"のか、乱射気味だった銃撃は、ある程度落ち着いて確実に殺すために放つようになる。
その光景はB.O.W.と言うよりも無敵の"兵士"として余りにも完成していた。
「一応、カタログを説明しておこう」
残る警備兵の人数が半数を切り、双方で銃声が響き渡り続ける中、往来のど真ん中をゆったりと歩いているジャクリーンは警備兵らに語り掛ける。
無論、彼女も時折流れ弾に被弾しているが、まるで受け付けているような様子はなく、幽鬼や悪魔のような類いに警備兵らからは見えたものであろう。
「それらはキメラーβ。タイラント素体の遺伝子情報を用いた受精卵に、二次感染の変異体の大百足のセンチュリオンの遺伝子と、君らが先ほど戦ったヒルの遺伝子を加えることで生まれ、キメラに比べて劇的な身体能力の強化を図ったB.O.W.のキメラーαに、私が改良したプロトタイプ・ネメシスを注入し、知能の向上を追加したB.O.W.だよ」
既にキメラーβによって、警備兵の数はキメラーβ達を下回るが、キメラーβは一体足りとも数を減らすどころか元より硬い外殻と危機回避能力によって致命傷を負うことはない。
「そして、ネメシスが銃火器を扱えるように、このキメラーβたちには銃や手榴弾の扱いを覚えさせている」
"とは言え、やはり付け焼き刃だったから、本場の君たちでたった今学習しているのだよ"と言いつつ、ジャクリーンは笑みを溢す。
そして、僅か3名となった警備兵の一人が、腕をバネのようにして跳躍してきたキメラーβに刺し貫かれた。
「ぁ……死ね化け物!?」
しかし、その警備兵はそれでは終わらず、手榴弾のピンを抜くとキメラーβに抱き着き、もろとも爆ぜる。
爆炎が晴れると、多腕でガードはしていたキメラーβであったが、至近距離からの爆発には耐えられなかったようで、半数以上の腕が吹き飛んでいた。
「おお、君はいい忠誠だったな。中々、アンブレラポイント高いぞ。しかし……寄生体ネメシスの再生能力と、昆虫由来の再生能力を持ち合わせている故、倒すなら即死させねば苦労するよ?」
直後、キメラーβの多腕の根本が泡立つように蠢くと共に、失う前と全く同様の腕が生え直す。それは自動小銃程度では打倒しようもない兵器であること意味しているであろう。
「キメラとは名付けているが、寄生体ネメシスベースのB.O.W.でもあるのだよ」
そして、遂に警備兵は最後の一人となったところでジャクリーンが手を掲げ、静止の合図を出す。
すると直ぐにキメラーβらは攻撃を止め、彼女の背後に整列して並んだが、それらの多腕には警備兵たちが用いた銃器とその弾薬、手榴弾、大型ナイフなどが握られており、B.O.W.としては余りにも異様であった。
「あっ……ひぃ……ああ……!?」
「どうだね? まあ、キメラーβは今のところ商品として扱う予定はない。精々、ハンター以上タイラント未満程度の私の可愛いB.O.W.達だよ」
既に戦意を喪失し、床に倒れて恐怖から動けずにいる最後の警備兵にジャクリーンは軽やかな足取りで詰め寄る。
そして、警備兵に片腕を向けると、その掌からショットガンの銃口が伸び、それを額に突きつけた。
「冥土の土産に覚えておけ。私はジェームス・マーカスの愛娘。ジャクリーン・マーカスだ」
一度のマズルフラッシュの後、額をスイカのように割られた最後の警備兵は項垂れるように事切れる。
そして、ジャクリーンは彼の遺品をまさぐり、銃器や弾薬を取り出すと近くのキメラーβに渡し、それを皮切りに他のキメラーβらも残っていた武器を回収していた。
「さて……おお、これでゆっくりとネメシスを探せるな。陽動の甲斐があったというものだね」
すると人型ヒルの一体が、白衣姿の人間の死体を引き摺りながら不規則な歩行で歩いて来るのを目にし、ジャクリーンは嬉しげに目を細める。
それはこのタイラント研究所の所長の死体であり、その胸にはIDカードが付いている。この施設の自爆装置の起動にはこの所長が持つIDカードによる承認が必要なため、これがなければ自爆することは出来なくなるのだ。
「あーん」
そして、たった今、所長のIDカードはジャクリーンの体内に収まった。
つまりこのタイラント研究所を自爆させるには、無数に沸く人型ヒルと、11体のキメラーβを捌きつつ、女王ヒルを殺す必要があるのだ。
すると彼女は感覚をある程度共有する他のヒルの現在地に目を向け、概ね全九階層のこのタイラント研究所の6~9階層にあたる下層部分のほぼ全域に少なくとも人型ヒルが行き渡っていることを知る。また、中層に近づくほどアンブレラ側が抗戦できており、6階層ではほぼ拮抗している。
ちなみに彼女が直接警備兵を排除し、制圧したこの9階層には、タイラントの研究に直接関係する区画は何もないが、施設を運用する上で重要な設備がほぼ集約されており、この階層を奪い取ったということは、施設機能を掌握したにも等しかった。
「最下層は完全に制圧。中央制御室も
そうジャクリーンが呟いた直後、施設全体が僅かな揺れに見舞われる。
その事態に大方の見当は付いているのか、彼女は小さく笑みを浮かべながら肩を竦めると、キメラーβ達を引き連れて何処かへと向かうのであった。
◆◇◆◇◆◇
「さあ、臨床実験を開始する」
それらはアンブレラの貨物エレベーターでタイラント研究所の地下エントランスまで運ばれて来た大型トラックのコンテナから姿を現した。
片方は全身を覆う青黒いローブを纏った妊婦の女性なのだが、もう片方がアンブレラらにとっては問題であろう。
『………………』
それはタイラントよりも二回りは巨大な3.5mほどの背丈をし、灰色の肌に黒紫色の血管が浮き出て、肥大化した隻腕を持つB.O.W.――量産型タイラントのバンダースナッチに似た何かであった。
しかし、施設下層にて突如鳴り響いた襲撃とB.O.W.の暴走を告げるアラートに右往左往するばかりの上層の職員達はそれを目にし、外部のアンブレラ支部や本部からの増援や誰かが鎮圧用に試作タイラントを起動したモノだと考えていたのだ。
そのため、アンブレラらにとっては完全に寝耳に水であった。まさか、アンブレラ以外で製造されたタイラントを1体だけを引き連れ、真っ正面からアンブレラに殴り込みを掛けてくるような余りにも無謀で現実味がない事態など想像出来よう筈もないのだから。
「ジャバウォック」
『――――――』
そして、隣の女性にジャバウォックと名前を呼ばれたそれは、運ばれて来たトラックをあろうことか容易く掴み上げると、それをエントランスへ向かって放り投げた。
施設へ直撃の後、女性がペンのようなスイッチを押し込むと、トラックは大爆発を起こし、一部の研究区画ごとエントランスを消し飛ばす。どうやらかなりの量の爆薬が積まれていたらしい。
暫く爆炎に一帯が包まれた光景を見届けたジャバウォックは、ある程度火の手が収まったところで歩いて内部へ向かう。
その頃には事態を察知した上層の警備兵が全壊したエントランスの奥の通路に集結しており、銃器に加えてロケットランチャーを持ち込んでいる者も見られる。
そして、それを視認したジャバウォックの頭部と肥大化した腕部を除いて、全身が泡立つようにヒルが浮き出ると女王ヒルのような肉体が形成され、片腕が不揃いな五指の百合の花のような触手と化す。
「撃てぇ!」
号令の後、横殴りの銃弾の嵐とロケット弾がジャバウォックを襲う。
しかし、ジャバウォックはタイラントらしく銃弾を一切意に介さず、向かってきたロケット弾を枝分かれさせた触手で受け止めると、明後日の方向へ投げ捨てて無力化する。
「た、弾が効かない!?」
的のようにロケット弾以外の銃弾を受けるジャバウォックの身体は、只でさえ強靭なタイラントを素体に、頭部と肥大化した腕以外の全身を異常に硬く弾性に富む女王ヒルの再生装甲とでも言うべきものが覆っていた。
最早、自動小銃程度の銃器ではダメージにすらならず、更にある程度のダメージならば再生装甲とネメシスの再生力がカバーし、ロケット弾は受け流しているため、幾ら撃ち込まれようとも無敵の化け物かのように一歩一歩足を踏み締め続ける。
警備兵らはB.O.W.を始めとしたタイラントやネメシスの存在を知らない訳ではないため、かえって明らかにそれ以上の怪物に対峙した事を悟り、多大な恐怖と混乱を巻き起こしていた。
『スペンサァァァ……!!』
依然として銃弾を受けながらジャバウォックは、底冷えするような咆哮を行うと腕を伸ばして床を掴む。更に触手を弓のように引き絞ったまま腕を縮め、それだけで前方に20~30m以上瞬時に前進していた。
そして、警備兵らの中央に飛び込んだジャバウォックは、そのままの勢いで横薙ぎに触手を放つ。
それは最早、触手と言うよりも20m近いブレードと化し、通路という閉所で放たれた事も相まって、展開していた警備兵らの肉体ごと通り過ぎたあらゆるものを引き裂き粉砕する。
「ぎひぃ――!?」
そもそも大幅に身体機能が強化されたクリムゾンヘッドですら胴ごと真っ二つに出来る代物を、人間に対して向けてしまえばどうなるかなど語るまでもないであろう。
警備兵らは半ば壊滅し、触手が通り過ぎた場所には、バラバラになった人体の残骸が転がるばかりであった。
「ひっ……来る――あ」
辛うじて当たらなかった警備兵の眼前に開かれたジャバウォックの掌が迫る。
そして、断末魔すら上げさせずにスッポリと身体を包むと、そのまま握り潰してしまった。
「て、てて、撤退!! 撤退ィィィ!?」
「ああ、凄い……これで商品未満の試作B.O.W.なのだから博士はイカれてる」
そんなことを呟く全身を隠した妊婦のフォーアイズは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す警備兵の背にアサルトライフルを撃ち込む。
そもそもB.O.W.とは、敵に与える道徳的嫌悪と恐怖、完結した戦闘能力、そして何よりもハードウェアとしての安定した運用などの完成度が求められ、現在開発済みのジャクリーン製B.O.W.はその全てをアンブレラを凌駕するレベルでクリアしていた。
しかし、ジャクリーンはそれらに加えて、安定した商品価値に拘り、高過ぎないほどほどの性能と高いコストパフォーマンスを実現させようとしているため、試作品の域を出ない。
すなわち、ジャクリーンにとっての試作品とは、持てる技術をコストを度外視して詰め込んだハイエンドB.O.W.の事を指す。
「表層は概ね制圧、続いて二層。ええと……ここか。その床ぶち抜け」
『スペンサァ……』
粗方、警備兵を掃討し終えたフォーアイズは、この施設の図面を思い出しつつ、ジャバウォックに指令を与える。
それによって振りかぶられたジャバウォックの拳は、分厚いコンクリートと鉄筋の床を発泡スチロールか何かのように破砕し、そのまま真下の階層へと降りた。
そして、土埃が晴れるとそこには大量のカプセルが並んでおり、その中には爬虫類のようなB.O.W.――ハンターが並んでいる。
「ありがとう」
『非常事態発生、第一種バイオハザード警戒体制発令。非常事態につき、一層及び地上までの全隔壁を緊急閉鎖します。繰り返します――非常事態発生』
「――あら、なんて私たちにグッドなタイミング。博士は既に制御を奪い取ったのね」
するとそんなアナウンスが入り、フォーアイズらが二層に降りた直後のタイミングのため、ジャクリーンが狙って行ったものであるとフォーアイズは確信した。
そもそもこのタイラント研究所は1~9階層であり、1~3階層の上層、4~6階層の中層、7~9階層の下層の三層大きくに別れている。
上層は唯一地上への出入口が置かれ、量産型B.O.W.開発が行われている区画。中層はタイラント研究が行われている区画。下層は施設の中枢部が置かれた区画。
そのため、出入口の最上層と、施設自体の維持や制御に関わる最下層に同時に攻撃を仕掛け、タイラント研究所を上下から挟み込むように陥落させるというのが、この襲撃作戦の全容だ。余ほどに己らのB.O.W.に自信がなければ成し得ない作戦であり、同時に戦闘員兼研究者としてのフォーアイズを信用している故でもあることが伺えるであろう。
「それより……お待ちかねの実験の時間だ……。さあ、やって私の可愛いラムダ……!」
「うん、お母さん!」
すると二度声を上げたフォーアイズのローブの裾から細長く赤珊瑚のように強い赤をした触手が大量に生えると、瞬く間にハンターが入ったそれぞれのカプセルまで到達する。
そして、ガラスを突き破ると、それぞれのハンターの身体に突き刺さった。
「どう? 出来そうかしら?」
「もちろん!」
すると瞬く間に触手のような何かを刺されたハンターらの身体に赤い血管が浮き出た。
そして、それらが目を開くと瞳孔が赤く染まり切っており、カプセルを破壊して脱出したハンターらはフォーアイズの周囲に集まり、それに彼女は酷く感銘を受けた様子で身を震わせる。
「ああ……素敵よラム――」
「今だ撃てぇ! 撃て撃てぇぇ!」
すると室内に雪崩れ込んできた警備兵や銃を持つ研究員らが、脇目もくれずにフォーアイズ目掛けて一斉に銃撃した。
元
少しの間、掃射を受け、それはジャバウォックが肥大化した手を間に振り下ろして盾にしたことで終わりを告げたが、それまでに彼女の両腕と片足は吹き飛び、無数の銃弾が背部の全身に突き刺さり、己の血に濡れた床に転がっていた。
アンブレラらは未知のタイラントの操作者を仕留めたことを確信し――即座に彼女の手足が生え直し、一部剥き出しとなっていた脳も再び元通りの組織で覆われる。
「殺す……」
そして、憎悪に顔を歪めてポツリと呟いた彼女は、ローブの裾から部屋中に伸びていた触手が再び動き出すと、それらの先端をアンブレラらへと向けた。
「ウフフ……アハハハ! アッハッハッハッ! いいわ……いいわいいわいいわラムダぁ! 私の可愛いラムダ!? 見せて……もっともっともっとお母さんにちょうだい!!」
直ぐに恍惚の表情に顔を歪めたフォーアイズは、アンブレラらが蠢く触手に次々と貫かれて絡め取られる様を眺め、高らかに叫ぶのであった。
~ジャクリーンのアンブレラ社員審査~
アンブレラに忠誠誓ってます
↓
ジャクリーン「そうか、結構結構。では死んだアンブレラだけが良いアンブレラだ、死ね」
アンブレラに忠誠誓ってません
↓
ジャクリーン「は? "忠誠"は"服従"を生み、
"服従"は"規律"を生む"。"規律"は力となり、その力が全ての源となるのだ。そんなこともわからぬアンブレラの屑に生きる価値などはない、死ね」
難しいお年頃
※特殊なアンブレラ社員の一例
フォーアイズ「アンブレラを捨てて博士の元で研究がしたい! 占拠中のところバイクで来ました!」
ジャクリーン「ええ……(困惑)。そうなの……なんかパパンっぽいから合格」
Dr.ローガン「イヒヒ……マイスイートハートォォォ……!!」
ジャクリーン「……………………。なんか、パパンっぽくて放っておけないから保護」
ファザコン