BIO HAZARD -Queen Leech- 作:ちゅーに菌
おバイオRE4楽し過ぎますわ……(とりあえず真っ先にレッド9を限定仕様にしつつ)
「撃てっ! 撃てぇ! 何としてもこの場で仕留めろッ!! そうすれば本部部隊が――」
研究施設を完全制圧する少し前、タイラント研究所の4階層。
その階層にある数回建てのビルが収まるような巨大なラボラトリー区画内にて、肉体でもあるヒルの装甲に覆われた大型のタイラント――ジャバウォックは前のみを見据え、ただ前進していた。
『スペンサァアァァ……!』
即席の防衛ラインのようなバリケードに沿って、様々な場所にいる数十人の武装警備兵や研究者たちからどれだけ銃弾の豪雨を全身に浴びようと、手榴弾やロケット弾の爆発を受けようとも一歩一歩着実に踏み締めるその歩みは決して止まらない。
ジャバウォックの全てを司るネメシス寄生体は、キメラーβ達のそれとは格が違う。何せ女王ヒルであるジャクリーン自身の頭角個体の遺伝子を基礎に持つからだ。
すなわち、完全な"上位個体"である。
「どうして止まらない!? 高々、出来損ないのタイラント1体だぞ!?」
"出来損ない"――研究者の1人が言い放ったその言葉もまた間違いではない。
明らかに量産型タイラントの失敗作であるバンダースナッチベースのタイラントであり、人間への擬態を含めた完璧な兵士を造り出すというタイラントのコンセプトとは端から違っているからだ。しかも明らかにB.O.W.としては完成しているように見えるため、尚更であろう。
何よりもタイラントが完璧な兵士ならば、ネメシス寄生体とヒルの再生能力に、タイラントの頑強さが加えられたジャバウォックは、正に"不死の怪物"であった。
ジャバウォックが侵入時と比べてロケット弾を避けなくなったのは、ジャバウォック自身が捕食者としての位置を見誤っていたからに他ならない。
確かにタイラントと言えども銃弾を浴び続ければ、当然に膝を突く。過度な爆発を受け続ければ、死に絶えるのが道理。
しかし、ジャバウォックの身体は浴びせられる銃弾を内部まではまるで通さず、ロケット弾を受けようとも幾らか表面のヒルで出来た装甲が剥がれるだけ。何より与えられるダメージよりも肉体の再生速度の方が遥かに速かった。
ジャバウォックに対し、銃器を捨てて即席の火炎瓶や火炎放射器を作り挑もうとする愚か者はおらず、地下深くのこの場所に日の光が届く筈もない。
故にこれはジャクリーンが想定した仕様通りの性能と戦果であった。
そもそもジャバウォックは言ってしまえば、タイラントを
そのため、弱点を突かれさえしなければ、一切隙のない仕上がりになっており、紛れもないハイエンドなタイラントとしてあまりに完成していたのだ。
更に一度、フォーアイズが受傷したため、自ら判断して前衛に出ており、自身が全ての攻撃を受け止める事を誰に言われるまでもなくしており、他のタイラントやロケットランチャーを持つ相手を優先的に無力化してもいた。
「タイラントが……ッ!?」
ジャバウォックに迫るタイラントは、その伸縮自在の剛腕で絡め取るように捕らえ、異常な腕力で上半身ごと握り潰されている。ハードウェアとしての動きしか出来ないアンブレラのタイラントにとって、ジャバウォックはあまりにも相手が悪かったと言える。
紛れもない暴力の権化でありながらも要人を護るSPのようであり、その知能は女王ヒルの遺伝子を持つことで、ただ命令に従うだけの通常のネメシスよりも上である事が伺えるだろう。
『アンブレラァァァアァァ――――……!!!!』
つまり間違いなく、目の前のそれは現時点でこの世界に存在し、ワンオフで換えの効かない
◆◇◆◇◆◇
『こんばんは!』
ソレが目の前に姿を現したのは余りに唐突だった。
白昼夢から覚めた微睡みのように穏やかで歪んだ景色の中、アジア系のハーフに思える小さな少女の輪郭だけが、まるで浮き出ていると錯覚するほど酷くはっきりと像を結んでいる。
無邪気で屈託のない笑顔と少女らしい和やかな雰囲気は、その場を共有するだけであらゆるモノから牙を抜いてしまうように思えるが、彼――彼らは湿った視線を少女に向けるばかりだった。
『へぇ……"ほか"のとはやっぱりちがうんだぁ……』
少女の形をした何かは、これまでとは違う値踏みするような笑みを小さく浮かべると、椅子に座るようにひょいと腰掛ける。
するとそこにはいつの間にかトレンチコートのような防護服を着た大男――Tー103が両手を添えて椅子代わりになっていた。
しかし、そんな量産型タイラントの表皮には、やや光沢を帯びた黄と赤の血管のような何かが多数走行しており、その瞳は色と光のないモノではなく、赤々とした異様な輝きを宿している。
更にそんな少女の背後で控えるように次々と他の量産型タイラントや、数多のハンター、研究員や警備員や清掃員等の様々な格好をした人間が並び立つように次々と現れた。
そして、それらの存在は共通して表皮に血管のような何かが走行し、赤い輝きを帯びた瞳をして、時折小さく左右に揺れる程度の動きしか見せず、さながら幽鬼の群れのように思えた事だろう。
『人形さんはもうたくさんだし――じゃあ、ともだちになろう?』
無邪気に笑う少女は小さく指を鳴らし、よく通る音を響かせる。
すると無機質な景色は彼らのよく知る研究所の培養槽が立ち並ぶ光景に変わり、働く昆虫のような研究員の往来が繰り返された。
そして、そんな忌むべき景色は、ひとりの研究員がまるで風船のように破裂した事で連鎖的に全ての研究員が白衣を着た血染みに変わり、床にぶちまけられる。
更に研究所の培養槽がひび割れた後、砂のように崩れ去ると共に、研究所という空間がシュレッダーに入れた紙を思わせるほど粉々に掻き消えた。
『――約束するよ』
最後に彼らの前に広がった景色は、陽の当たるどこにでもあるような一面の草原であったが、彼らの誰もが未だ見たことないそれは、まるで何物にも縛られる事のない世界であった。
◇◆◇◆◇◆
「ああ、夜は暖かくして眠るんだぞ?」
広大な草原ばかりが広がる国道にて、ジャクリーンは通話をしていた。見れば彼女の隣に聳える電信柱の電話線に配線と受話器が繋がれている。
更に近くの路肩で3輪の40tトレーラーが停泊しており、簡素な外装の巨大なコンテナが佇んでいた。
「――そうか、それは何よりだな」
それを最後にジャクリーンは通話を終えると、片手を触手に変えて電話線に接続した配線に触れると共に回収をする。
そして、トレーラーへと向かうと、彼女の位置からは見えなかった車体の裏に回り込む。
「そろそろ休憩はいいかね? 明日までにラクーンへ戻らねばならぬのだ」
『………………』
そこには青々とした草原を眺めている拘束衣を纏った怪物――ネメシスの姿があった。どうやらジャクリーンらがタイラント研究所から強奪した4体のネメシスの内の1体らしい。
声を掛けられたネメシスがジャクリーンの方に顔を向けると、その足元にいた彼女の助手であるフォーアイズが口を開いた。
「ママ、もう少しだけ見させてあげてよ? 他の子はまんぞくしたみたいだけど、この子はまだ見たいんだって」
しかし、その声色は幼げでやや舌足らずに思え、見ればフォーアイズの表情も普段の彼女ならばまずしないような屈託のない笑みを浮かべていた。彼女を知るものが見れば、不気味にさえ思えるだろう。
「そうか、それは無粋だったな……。それは良いが、ママは止めろ」
「うふふ、照れているのね。ア・ナ・タ――じゃあ、パパー」
「それはもっと止めろ」
「もう、お父さんったら照れ屋なんだからねぇ――ねー」
人格が切り替わるように言動と態度が異なり、会話をしている様子を見せるフォーアイズにジャクリーンは溜め息を落とす。
「ラムダ、それでタイラント研究所の方はどうなっている?」
「んー……はんぶん以上やられたかな。のこってるのはびーおーだぶりゅーぐらい?」
フォーアイズの腹にいる
それを聞いたジャクリーンは小さく肩を竦める。
「ふむ……ラムダが吸収した奴らは60~70%近く壊滅したか。
「どうして
「奴らここまでの事をされて、まだ穏便に事を済ませたいのだろう。或いは内部の武装蜂起程度に考えているのだろうな」
"少なくとも自らにバイオテロを仕掛けて来る者がいるなど端から考えてはいないさ"とジャクリーンは続け、小さく鼻で嗤う。
「全く……お蔭で研究所からの逃走は余りにも簡単だったな。出て行って下さいと言っていた様なものだ」
「それは博士がラクーンと同じように前もって下水道の全てを把握して逃走経路を確保し、ラムダが掌握した量産型タイラントを何体か下水道に放って撹乱したせいでしょ?」
フォーアイズの呟きにジャクリーンは言葉を返さず、掌を開くとそれをフォーアイズとネメシスの前に掲げるように見せた。
それを行うジャクリーンの表情は、酷く嬉しげで裂けんばかりに口の端を伸ばして笑っていることが見て取れるだろう。
「さて……この辺りが潮時だな」
「だいじょーぶ? 私がやろうか?」
「気遣いは嬉しいが、流石の私もこれを譲ってやるほど気前は良くはないものでね。何より杜撰なアンブレラどもに教えてやらねばなるまい」
ジャクリーンが片目を瞑ると、彼女の脳裏にヒル人間の視点でモノを見ている光景が映る。
そして、その目の前には物々しいまで厳重にされた鍵穴があり、それに何の躊躇もなく彼女は鍵を差し込んだ――。
「諸君、徹底した廃棄処理とはこうするのだよ」
その直後、フォーアイズが眺めていた方向の遥か彼方に爆炎による火柱が見え、直ぐにそれは大きなキノコ雲を形成し、それは立ち上ると共に快晴の青空にただ浮かぶばかりだった。
◆◇◆◇◆◇
1998年9月24日
◆◇◆◇◆◇
ラクーンシティのスタジアムで暴動事件があった翌日の正午。
ラクーンシティ内にあるスペンサー記念病院の医局は、血と硝煙の臭いで満ちた惨たらしい光景が広がっていた。
医局では、デスクを無造作に退かしてスペースが作られ、その壁際に医師たちや他部門の役職者らが並べられて、武装した二足歩行の昆虫たちと日系人の妊婦が見張るという異様な光景が広がっている。
そして、医局の中央では既に二十数名の武装した人間と数名の医師の死体が転がっており、武装した人間の装備からこの病院と秘密裏に隣接するアンブレラ施設から来た事を示唆していた。
そこには二人の生者だけが残っており、片方は片腕からショットガンが生えて半ば一体化している白衣姿の女。もう片方はその女の前に跪く中年男性――医師のナサニエル・バードだけである。
「待て!? わ、私を殺せばワクチンは永遠に闇の中だ! それでもいいのか!?」
「ああ、それならば一向に構わない。貴様程度に造れる物をこの私が造れない筈が無かろう?」
女はくつくつと笑い、茶化すように肩を竦めて見せた。
他の死体から察するにアンブレラの警備兵及びアンブレラに与していた医師たちと、目の前の異形たちとの戦闘の一部始終を見せ付けられているであろう無辜の医師たち多くは、目を背けつつもただ眺めるばかりであった。
女――ジャクリーン・マーカスと名乗る明らかに人間ではない何かは、このバード医師の近くに転がる院長の死体に対し、既に生きていた頃に拷問紛いの事を終えている。
それにより、奇病――ゾンビウィルスであるTーウィルスや、この病院と物理的にすら繋がっているアンブレラの実態について、全て各々の口から吐かせていた。そのため、そもそもこの事態はアンブレラが引き起こした事であり、彼女に殺された者はそうしたアンブレラ直属の者や、黙殺して支援ながら甘い汁を啜っていた者である。
彼らは元々素行も極めて悪い者が多かったが、その中でも最後まで何故か残されたバードに感しては、マイケル・ウォーレン市長やブライアン・アイアンズ署長と共に"恒例のお楽しみ"の内容まで全て赤裸々に吐かされたため、同情や哀悼の念すら他の医療従事者達からは全く感じられない始末であった。
「それにしても貴様ら揃いも揃って情報管理が手温過ぎる。傘の下と言うのはそれほどまでに人間を無能に変えるのかね? なぁ、バードくん?」
「うっ……」
元々、ラクーンシティにバイオテロを仕掛ける予定であった彼女は、計画の段階で生存者の確保の観点から"病院"を、脱出経路の関係から"警察署"の二点を押さえるつもりであった。そのため、既にこのスペンサー記念病院のアンブレラに染まった職員をリストアップしていた故に起こせた凶行である。
尤もスタジアムでの暴動事件という名の近年類を見ない異様な流血騒動と、この病院ですら理事長命令による治療方法の無い奇病の無償受け入れという異常事態が起こっているが故の凶行とも言える。
「欲しいものはなんだ!? かっ、金か……? 金だな!? 幾らでも用意してやる! おまっ、君もアンブレラを裏切っ……見切りを付けた質なのだろう!? ならば私と同じだ! 私のワクチンと君ならアンブレラを倒せ――」
その直後、女はバードの片足の大腿へショットガンの銃口を向けると、一切躊躇なく発砲した。
「うわぁぁぁあぁぁぁ!!!?」
「たかが足を撃たれた程度で喚くな人間。そこのフォーアイズなら全身を撃ち抜かれようと笑って見せるぞ? それで、誰がアンブレラだと……? 面白い冗談だ。もう一度、言ってみろ」
ジャクリーンは床であらゆる液を垂れ流しながら悶えるバードを小さく嗤っていたが、突如その表情を歪ませ、銃を持っていない方の片腕で胸ぐらを掴み上げる。
「最低限の忠誠すら尽くせぬ傘にすがることしか出来ないアンブレラ崩れの寄生虫風情が……。貴様には精々野垂れ死ぬのが似合いだ」
「か、ひっ……ま、待って、全部私が悪かったから――」
その言葉の直後、異形の触手と化したジャクリーンの片方の腕が急激に伸長し、バードは医局の窓に向かって勢いよく叩き付けらようとし――その直前で行動が止まり、自身の方へバードを引き寄せた。
「ふむ……。私の剥き出しの感情としては貴様をこのまま窓の外へ投げ捨てたいところだが、生憎そういうわけにはいかない。では助けてやろう」
「……ぁ……あっ、ありがとうござっ……ひっ――」
「その足、痛かっただろう?」
「ひぎゃぁぁあぁぁァぁ!!!?」
その言葉と共にジャクリーンは自身が撃ったバードの片足を根本から引きちぎり、その断面に触手を這わせて傷口を喰らうと血を凝固させて止血する。
そして、白目を剥いて泡を吹いている彼を他所に、近くにあったロッカーに触手を伸ばして留め具ごと引き千切った。
最後に"後はブライアン・アイアンズとアンブレラの研究者がひとりは欲しいところか……"等と呟きつつ彼をロッカーに入れ、出口を下に向けて置くとその上にジャクリーンが座る。
「さて……」
ジャクリーンという異形の怪物は慣れた様子でショットガンを体内に収納すると、両腕を触手から白魚のような手に戻し、身体の血濡れた汚れを払って居住まいを正す。
「院内消毒も終えたところで、改めて自己紹介を。私は製薬企業アンブレラの創始者の1人――ジェームス・マーカスだ。ジャクリーン・マーカスでも構わない。好きに呼びたまえ。先んじて諸君が奇病と呼ぶ感染者を治療方法すら無いにも関わらず、無限に無償受け入れするという理事長命令だけは止めさせて貰った。まあ、認識はこの病院を占拠したテロリストで構わんよ」
医師らに向き合うと、ジャクリーンは恭しく頭を下げた。
「以後、君ら医師、他の医療スタッフ及び患者全ては人質として扱い、私が統括する。そして、私の目的は1人でも多く人命を救助し、勝手にバイオテロを引き起こしたアンブレラ告発の生き証人として、証言台に立てる状態でこのラクーンシティから脱出させる事だ。無論、諸君らもその中に含まれているぞ」
その様子はこれまでの凄惨な行動とは打って変わり、酷く知性的かつ紳士的に映るだろう。しかし、その発言内容はこれまでの行動と余りにも乖離しており、その意図を汲み取ることも信用を置くことも出来よう筈もない。
「そこで、まず諸君らにはふたつの選択肢がある」
そんな中、ジャクリーンは指を2本立て、医療スタッフらに問い掛けた。
「ひとつはこのスペンサー記念病院をB.O.W.により武装占拠したテロリスト、すなわち私に服従する事だ。ちなみにバードとやらが言っていた未完成のワクチンとやらより、既に試験も終えた実用段階のワクチンが私の元にある。一瓶で30人、今の手持ちで900人分ほどだな。まず、私はこれを諸君らに無償で提供しよう」
医局はざわめく。医療従事者らも現在起きている明らかに人為的な異常事態を理解しており、つい先程まで殺された面々が人間を何とも思わない悪魔のような存在であった事を悟る。
しかし、だからと言って目の前の本物の悪魔の話を端から信じることも出来ないであろう。とは言え、既に人智を超えた状況に医療従事者らの反応は半々と言ったところであった。
「もうひとつはコイツらと同じく、白い床を赤く塗り替えるかだ」
尤もその言葉と共に片足が異形化し、足元にある死体のひとつの頭部が踏み砕かれ、その中身を撒き散らすまではの話であろう。
「忠誠は問わん。求めるのは服従だ。服従は規律を生み、規律は力となり、その力が全ての源となる。それをどう使うかは諸君らに一任しよう。さあ、好きな方を選びたまえ」
医局のざわめきは止み、張り詰めた空気が流れ、広がる血潮と脳漿が酷く鮮やかに映る。
圧倒的な武力と自身を含む異形の怪物の集団に異論を唱えられる者など居るわけもないだろう。
「よろしい……私に異論を唱える輩は居ないようだな? ならば私は人間諸君らの保護と適切な予防と治療を行い、何もかも全てを殺してでも一人でも多くの人命を救う事を我が父に誓おう」
そう言い放ったジャクリーンは妊婦の助手――フォーアイズを呼び付けると、その体内から1Lほどの容量の大きなバイアル瓶を取り出し、それをフォーアイズの眼前に掲げる。
「――――!」
その様子を見たフォーアイズは幽霊でも見たかのように目を丸くして驚いていた。
「フォーアイズ、Tーウィルスの感染疑いが無いかつ立位歩行の困難な全患者に対し、優先的に"
「いいの⁉」
「有事の際だ。今使わずしていつ使う? 患者への使用判断及びこの院内の全権はお前に一任する。臨時、医院長だな」
「えへっ、うふふふ……ふふ……! 博士……愛してるわぁ……!」
「………ひとりも殺すなよ?」
「そんな勿体ないことしないわ」
青い液体が並々と詰まったバイアル瓶をジャクリーンから受け取ったフォーアイズは、自前の金属製の動物用注射器を取り出すと、それにバイアル瓶の中身を入れ、鮮やかな青色を恍惚とした表情で眺めていた。
流石にその様子に一抹の不安を覚えて釘を刺したようだが、イマイチ信用に欠ける返答にジャクリーンは目頭を押さえる。
「それより、ネメシスたち
「いや……折角、窮屈な檻から出られたのに今度は地獄の釜に飛び込む事もなかろう。何よりこれは我々のエゴだ」
「ふーん……まあ、何でもいいけれど。博士はこれから」
「これから私は脱出地点への入り口兼籠城拠点兼避難場所として警察署を掌握する。穏便に済めばそれに越したことはないが……プレイグクローラーまみれにして、ダンプリングタイガーとT-002まで配置した洋館を正攻法で脱出したとかいう例の"S.T.A.R.S."たちと最悪の場合は戦闘になるかも知れん」
「凄いわよね、彼ら。ウルフパックと殺り合ったらどっちが生き残るかしら?」
「お前がいたら反則だろうに……。兎に角、先にラクーン大学でT‐001とリサとDr.ローガンとタナトスと合流し、残りのワクチンを補充してから向かう。戦力的には大した問題では無かろうが、72時間私から連絡が無かった場合、病院を破棄し、院内の生き残りだけで脱出しろ。そのためにジャバウォックとキメラーβは全てそちらに預ける」
「そんなにしなくても私とラムダだけで十分よ――じゅうぶんよー」
愛おしそうに自らの腹部を撫でながらやや幼げな口調で言葉を繰り返すフォーアイズを眺めつつ、ナサニエル・バードが入ったロッカーを軽々と肩に担いだジャクリーンは肩を竦める。
「ラムダの能力は取り込めるB.O.W.などが存在する事前提の受け身の能力だ。何も対象が居なかった場合、数百人の人間を護衛しての脱出は困難だろう。ラムダに侵食されれば常人の脳は耐えられないしな。そのための最低限度の護衛要員が居るに越したことはないと思うがね?
反乱の抑止にもなる。それに
「……博士ってアンブレラから出来たとは思えないぐらい慎重よねぇ」
「アイツらが可笑しいんだアイツらが……。それと途中でケンド銃砲店に寄る。新しい銃を幾つか発注していてな。どうなっているが知らんが、店が残っていれば受け取りに行く」
それだけ言うとロッカーを担いだまま、ジャクリーンは医局を後にしたが、出入り口で一度止まると医療スタッフらの方に身体を向ける。
「それでは諸君、良い悪魔を存分に味わいたまえ」
"それを努々忘れるな"、それだけ告げた人の形をした悪魔は硬い足音を響かせながら病院を後にするのであった。
※ジャクリーンさんはキレ散らかし過ぎて、顔に軽くガナード並みに血管浮き出てます。
〜 医薬品コーナー 〜
フォーアイズ主導でジャクリーンと共同開発した医療用Tーウィルス試作品のひとつ。ジャクリーン曰く、"ろくでもない外法、商品価値のない失敗作"だという。詳細は次回以降。
~ QAコーナー ~
Q:このジャバウォックがバイオハザードで最強のタイラントなの?
A:流石にテイロスの方が倍以上強いです