BIO HAZARD -Queen Leech- 作:ちゅーに菌
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1998年9月1日
六ヶ月の特殊訓練を終えた。体の方もようやく勘を取り戻してきたようだ。
私は有能な兵士だったが、謂れのない容疑で銃殺が決まった。拷問され自白を強要されたのだ。
銃殺を待つ朝。それは唐突に訪れた。奇跡だった。企業が私を拾い、生きるチャンスを与えてくれたのだ。
1998年9月15日
私はバカンスを切り上げて本部に戻った。私の所属部隊であるU.B.C.S.に出動要請があったようだ。
アンブレラは企業テロや要人誘拐に対抗するため独自部隊を所有しているが裏の商品が起こす問題を専門に処理する掃除婦も飼っている。
私の所属はその後者の部隊だ。
1998年9月23日
今日、アンブレラの裏の商品を製造している工場のひとつが人の手で吹き飛んだらしい。
私のような末端には事態の重要性はあまり分からないが、上の人間の慌てようからかなりマズいようだ。
その上、ラクーンシティでも問題が起きているそうで、作戦がやや前倒され、2日後には私の隊を含めたU.B.C.S.の派遣が決まっている。
輸送ヘリで市中心部へ一個中隊が投入されるらしく、過剰なのではないかとしか思えないが、仕事は仕事だ。
1998年9月26日
日付が変わり、ようやく落ち着けた。
しかし、地獄にいることには変わり無い。狂っている。この街に自然の摂理などは存在しない。死してなお飢える者どもが生ける者の生肉を狙っている。
私は銃殺を選ぶべきだったかも知れない。少なくともこの警察署の外に比べれば収容所は天国だった。いや、署内もまた地獄なのだろう。
アンブレラの創設者を名乗るあの悪魔の領域は、地獄の中で嘘のように平穏で酷く現実感がない。今も外で蠢きながらゾンビを蹴散らして喰らい歩いている人ではない何かの群れがあんなにも恐ろしい。
あんなものを生み出したアンブレラは正気なのだろうか? 私はいつまで悪夢を見るのだろうか?
◇◆◇◆◇◆
U.B.C.S.――。
それは
役割としてはアンブレラの自社開発したウィルスやクリーチャーなどによる災害・事件・事故を処理し、更にアンブレラに対する企業テロなどに対処させる名目で組織され、緊急事態が発生した場合には汚染地域へ真っ先に派遣される部隊だ。
開発中のB.O.W.がフィールドテストの最中に暴走して研究員に多数の死傷者が出たり、施設や実験機材が破壊される事件が多々発生したため、制御不能に陥ったB.O.W.を鎮圧するべく同部隊の設立が計画されたというのが経緯であり、U.S.S.とはライバル関係に当たる。
実際に生存者や目撃者などの身柄確保、証拠類の隠滅なども任務としており、B.O.W.の暴走による被害もU.B.C.S.の活躍で減少し、アンブレラの秘匿をする役割をしていた。
そのため、ラクーンシティにU.B.C.S.が投入されるのもまた自然と言え、その数も一個中隊規模であり、輸送ヘリによって市中心部へ一個小隊約30名編制の計四個小隊の120名が投入されたのだ。
しかし、ラクーンシティへ投入された部隊は、任務の内容から危険性が非常に高い事が予め予想されていたため、大量の活性死者やB.O.W.などとの戦闘データを得るための部隊であり、隊員の大半は服役中の戦争犯罪者や重罪を犯して無期懲役か死刑判決を受けた元軍人、亡命軍人、元ゲリラ兵などといった者たちで構成されており、贖罪を不問を条件に傭兵として組織している。
つまりは120名にも及ぶ使い捨てのモルモット部隊であった。
そのため、名目上は市民救出を任務として1998年9月25日の薄暮にラクーンシティの中心部へとU.B.C.S.が投入されたが、当然人間が最も多い場所は最も活性死者とリッカーが蔓延る危険地帯であり、結果は火を見るよりも明らかだろう。
そして、そんなU.B.C.S.らは現在――。
「理解出来たかね? つまりアンブレラにとって君らは使い捨ての消耗品。ただの地獄への試金石。初めから救助も生還も期待されていないどころか、生き残れば確実に抹消されるだろう」
多数の生き残りが
元々は純粋なアンブレラではなく、贖罪不問の傭兵として今回の作戦に参加していたU.B.C.S.らの反応は事実を受け止められずに呆然とするか、酷く怒りながら狼狽するかのふたつに別れている。
「そもそもなんだこの出来損ないの遠足の
彼女――アンブレラ創設者のひとりを名乗るジャクリーン・マーカスは、U.B.C.S.らから受け取っていた作戦指示書を失笑と共に床へ投げ捨てる。
UBCSエコーチーム
エコーチームは市街地を掃討し、生存している民間人を時計塔内部に避難させることが第一目的である。
民間人はアンブレラ系列の従業員を優先して救助すること(褒賞あり)。
活性死者(汚染死亡後のゾンビと呼ばれる存在)は耐久力が高く、機能停止に追い込むのは難しい。充分警戒せよ。
作戦エリアからの撤退
1:撤退は作戦終了、もしくは任務の
続行不可能により行う。
2:郊外に待機中の大型ヘリコプターを
時計塔正面の庭に誘導する。
3:時計塔の鐘の音を合図とし本作戦の
終了、もしくは失敗による中止を
市街で作戦中の全部隊に伝達する。
「なんだこれ……。ゾンビの事も他のB.O.W.だのイレギュラーミュータントの事もまるで書いて……」
救助したU.B.C.S.とジャクリーンが話し合うとの事で、彼女を心配して護衛兼R.P.D.代表の一人としてここにいるマービン・ブラナーに作戦指示書が目に入り、彼女が警官へ向けて講義した内容とのあまりもの乖離に思わず呟かれた独り言が酷く木霊する。
ちなみに護衛を買って出た者は、S.T.A.R.S.らや戦える民間人を含めてかなりの数いたが、それらを彼女は交渉の邪魔になるとして拒否し、代表として近くに居たマービンを引き連れ、後はアルバート・ウェスカーとT-001の3人と1体のみがジャクリーン側に居た。
「生き残った小隊長は4名中で君だけか。運が良かったな。金に眩んだか、命と誇りを天秤に掛けて誇りを捨てた者にしては……だが」
「ああ……U.B.C.S.小隊長のミハイル・ヴィクトールだ」
U.B.C.S.で他の小隊長が全て殉職したため、生き残りを纏める事になり、今こうして交渉の席にも着いているロシア系の男性のミハイル・ヴィクトールが答える。
彼は目の前の白衣姿の女の異様な態度に多少眉が動いているが、特に目立った外傷はなく、ゾンビの群れやイレギュラーミュータントを切り抜けて来た手練だと言う事が分かるだろう。
ちなみに投入されたU.B.C.S.ら120名の中で、救出されてエントランスにいる者は68名。かなり大規模にラクーン市警とジャクリーンによる救出活動が行われたため、ここに居ない者の生存は絶望的と言える。
ヘリコプターからの降下から2時間程度も立たず、U.B.C.S.はほぼ半壊していた。
しかし、そんな彼らとは言え、扱い方に秀でた者達がアサルトライフルやサブマシンガンを始めとした火器や装備で固めているため、仮に交渉が決裂すれば強大な敵となるのは間違いないが、彼女の態度は尊大かつ嫌悪感が見え隠れし、彼らをまるで敵になるとは考えていないようにさえ思えるだろう。
「U.B.C.S.はこの私の指揮下に入り、ラクーン市警と行動を共にして暫くは民間人の救出に当たって貰う。元々の作戦通りなのだから問題は無かろう? 尤も……アンブレラへと義理立てをしたい等とこの期に及んで宣うのなら話は別――」
「ふ、ふざけんな! こんなんだったらムショの方がマシだ! こんなん聞いてな――」
『コノ場デ殺スゾ……人ノ話ヲ遮ルナ』
「ひッ……!?」
投入からラクーンシティ警察署に避難してくるまでで恐慌状態に近いのか、刑務所に入るような人間性故か、ジャクリーンの決定に一人のU.B.C.S.隊員が声を上げたが、彼女の喉から出た男とも女とも付かず異様で人間味のない声色で半ば脅迫されて沈黙する。
罪人崩ればかりの今のU.B.C.S.らが警察署内で行儀がいいのは、小隊長のミハイルが生き残っている事と、交渉相手のジャクリーンが端々で明らかに人間ではない様子がチラついている恐怖もあるのだろう。
まあ、一番の要因は彼女の背後に控えている身の丈2.5m以上の大男であるT-001が、"ネメシス用ガトリングガン"を片腕に担いでいる事の強い抑止力であろう。誰であろうと少なくとも言葉が通じる程度の正気な相手が、このように露骨な武力を誇示していれば、慎重かつ正気にもなるというものだ。
「悪いな……少し時間をくれ。部下たちと話を付けなければならん」
「もちろん構わないよ。私とてわざわざ骨を折って助けた者を相手に署内を戦場にしたい訳では無い」
ミハイルは一旦交渉の席を立ち、U.B.C.S.らの元へと向かう。
その背を見送ったジャクリーンは少し天井を見詰めた後、U.B.C.S.らの方へ声を掛けた。
「ニコライ・ジノビエフはいるか? U.B.C.S. D小隊B分隊隊長のニコライ・ジノビエフだ」
それはU.B.C.S.隊員の名指しの指名であった。
まさか、ラクーン市警に陣取っている明らかに堅気ではなく、人間かも怪しい者に関係がある者が自らの部隊にいるとは思わず、U.B.C.S.らの視線が一箇所に集中し、それによって仕方ないと言った様子でロシア系の男がジャクリーンの前まで来る。
「私だが……?」
「君がそうか。君、アンブレラ幹部のセルゲイ・ウラジミールからグレッグ・ミューラーというラクーン大学教授の救出任務を受けているね?」
「なんのことだ?」
「おや? U.B.C.S.や生存者を殺して回る監視員としてではなく、個人的な依頼だったのかね? それなら悪いことを聞いたな」
「………………」
その言葉にニコライは表情を消して押し黙る。
監視員とはT-ウィルスやB.O.W.などによる事件の記録を取り、更にアンブレラに関しての証拠隠滅として裏で行動する者たちである。投入されたU.B.C.S.らの中や、陸路で十数名が少なくともラクーンシティに侵入しており、ジャクリーンは前提としてニコライが監視員であると断定している様子であろう。
ニコライは明らかに自身の素性が筒抜けだと言う事に、内心これまでアンブレラで活動して来た中で最も驚愕し、尚且つ冷や汗とも脂汗とも付かぬものを全身から吹き出していた。
(マズい……)
何せ、ニコライはU.B.C.S.延いては監視員として極めて優秀であり、それ故にアンブレラのあらゆる情報を知らされてもいるため、今の状態が何れ程危険な状態なのか理解しているからだ。
まず、この得体の知れない怪物はアンブレラ創設者のひとりを名乗っているが、再稼働予定だったアークレイ山中のアンブレラ幹部養成所にて、ジェームス・マーカス博士に擬態出来る未知のB.O.W.が、
その際、U.S.S.の装備をまるで受け付けておらず、最低でも分隊支援火器レベルの代物でもなければ相手にすらならないと考え、仮に目の前に居るのがソレならば残るU.B.C.S.全員で掛かっても倒し切れるか怪しいだろう。その上、明らかに人並み外れた知性があり、個としても出し抜けるのか既に怪しい。未知のB.O.W.だとまだ断定は出来ていないが、楽観出来るような状態でもない。
更に怪物の背後で控える
少なくとも最新鋭のタイラントを真っ向から相手に出来るような戦力は、それこそアメリカ軍レベルのものだ。当然今のU.B.C.S.には余りに荷が重い。
「やあ、元気そうだな。ニコライ」
「………………」
そして、名前や能力を知る程度で大した関係も無かったが、さもかつて交友でもあったかのようにニコライへ声を掛けて来た金髪のオールバックにサングラスを掛けた男――アルバート・ウェスカーがトドメである。
明らかに嫌がらせのために柄にもなく笑みを浮かべている彼は、アンブレラの離叛者であり、アンブレラ幹部並みの能力はあったのだが、何かとアンブレラ内で疎まれたり恨まれる事が多く、昇進街道から外れていた人間だった。
アークレイ山中での事件を期にアンブレラのライバル組織のH.C.F.に流れた筈のウェスカーだが、何故かこんなところに居ることがそもそも謎であり、またその戦闘能力はニコライをして常人離れしていると言わざるを得ないレベルである。
少なくともニコライにとってマトモに相手をしたいような連中ではない事は確実であった。
また、監視員についても簡潔かつU.B.C.S.らに聞こえるように語られているせいで、彼には最早後が無い。
「良かったな。君が救出する予定のグレッグ・ミューラーなら――ここにいるよ?」
「な……」
次の瞬間、ニコライの目の前でジャクリーンの姿が蠢くと、グレッグ・ミューラーという男そのものに変わり、姿だけでなく声までそれに変化している。
そのまま、ジャクリーンはニコライの間近まで近づくと更に言葉を続けた。
「グレッグ・ミューラー本人なら8月の初頭には既に死んでいる。中身は兎も角、身体はとても美味であったぞ。まあ、残念ながら君の救出任務は最初から頓挫していたわけだが」
そして、その場で再びジャクリーン・マーカスという女の姿へと戻る。
「そもそも元のグレッグ・ミューラーがタナトスの取り引きに応じると思うかね? プライドと我欲ばかりが先行した実にアンブレラらしい男だったからね。とは言え、ラクーンシティに潜伏中に折角の隠れ蓑を抹殺対象にでも指定されたら堪らん。こちらとしても妥協した苦肉の判断だ。それが今となっては色々と都合がいいのは皮肉というか、情けは人の為ならずと言うべきか……」
聞いても居ないことをジャクリーンは話しつつ、懐から何かを取り出して見せる。それは何の変哲もない小切手とペンであった。
「兎も角、君の人となりはセルゲイから聞いている。仕事熱心で任務達成率も高く、報酬次第で……少々の無理もしてくれるとかなんとか」
そして、小切手に数字を記入し、それをニコライへと渡すと彼から離れて元いたところで再び向き合う。
渡された小切手を彼は眺め――そこに記されていた異様な金額に生唾を呑み込んだ。
「依頼はふたつ。ひとつは生存者をなるべく殺さない事。もうひとつは……方法は問わん。君以外の監視員を可能な限り皆殺しにしてくれ」
「なんだと……?」
それはニコライは元々アンブレラに対し、自分の持つ情報の価値を高めて報酬を吊り上げるために他の監視員を殺して回ろうしていたため、奇跡的に渡りに船であった。
「ラクーンシティ内の監視員を殺して回れ。あれらは居るだけで任務として生存者を殺し回るだろうからな。百害あって一利なしだ。そもそも可能なら私が殺っていたが、流石にそこまでは手が回らないのでね。訳は後で話すとして、今は口を挟んでくれるなよブラナー君?」
「警官としては見過ごせないが……。博士がそう言うなら……そうなんだろうな」
マービンにそう言って話を付けると、ジャクリーンはまたニコライに向き合う。
「君にも分かるだろう? この有様ではアンブレラはそう遠くない内にどのみち潰れる。それなら君としてはアンブレラや私から搾取出来るだけ搾取して新たな仕事場を見つけるのが賢い選択だろう。まあ、退職金と思えば悪くない話だと思うがね?」
「ふむ……」
ニコライは考え込む。
元々は小規模なウィルス漏れや暴走したB.O.W.の処理だったが、アークレイからラクーンシティと凄まじい速度で被害が拡大しているのは火を見るよりも明らかであり、アンブレラに先が無いことは彼も理解し、そのためアンブレラを売るところまで考えているところであった。
しかし、生存者の殺害を縛られれば、結果的にアンブレラに渡す情報が減り、報酬金が減る事に繋がるため、それに彼は難色を示す。
とは言え、依頼内容と不釣り合いなほど小切手に提示されている金額が高く、それを捨て置くのは勿体無いと彼が感じるレベルのため、素直に従うにしても折衷案を提示したいところであり――。
「ああ、そうそう――それは前金だ。達成すればその3倍出そう」
「――!? 止せ、ニコライ!? やめ――」
次の瞬間、ニコライはホルスターからハンドガンを抜き放ち、銃声と同時に集まっているU.B.C.S.らから少し離れていた隊員の頭部に風穴が空いた。
撃たれた者は声を上げていた様子だったがまるで関係なく撃ち抜かれ、事切れた肉体はそのままエントランスの石造りの床に打ち付けられるように倒れ込む。
「金は命より重い。君を見ているとよく分かるね」
「ククク……思わぬ臨時収入だ。まずは一人だな」
そんな会話をしたジャクリーンは再びマービンの方に顔を向ける。
「確かに歴史を紐解いても間違いなく金は命より重いが、それは命が軽いという事とイコールではない。命は決して軽くはないのだ。そこを履き違えてはいけないね。この場では奇しくも金より命が重い。だから金で生存者の安全がより保証されるならそれに越したことはないだろう。むしろ、彼を抱き込むだけで邪魔な監視員の処理までしてくれるのだから儲けものだ」
「本当に口が上手いな博士は……」
警官としては間違っているが、生存者を助ける手段としてはこれ以上なく正しい手段であり、甘言と自らが汚れ仕事と憎まれ役を引き受けている上、ついでに横目で見ていた小切手に書かれていた莫大な金額故にマービンはそれ以上の口を開けなかった。
「マーカス博士、期待していい。俺は常に契約を守る」
「忌々しくも頼もしい限りだ。その調子で出来れば君以外一人残らず頼むよ。さてさて……少しばかり強引な交渉をしようか」
ジャクリーンが話していた監視員だったとは言え、隊員が殺された事で明らかにU.B.C.S.らの反応が険悪なモノに変わり、こちらに銃口を向けている者も居る始末だ。
「下手に出ていればこれか……。せめてジノビエフ君ぐらい仕事に誠実ならばそれだけで良いものを……」
ジャクリーンはそれを一瞥して哀れみと侮蔑に近い視線を送ると、深い溜め息を吐き、T-001から数十kgはあるであろうネメシス用ガトリングガンを受け取るとU.B.C.S.らの方へゆっくりと歩いて行く。
そして、一歩一歩踏み締めるごとに彼女の擬態が解けて行き、全身の皮膚が触手とヒルへと置き換わって行き、それらが意思を持つように蠢いた。
「うわぁぁぁあぁぁ!?」
「馬鹿がッ!? 止めろ!」
明らかに化け物へと変態していくジャクリーンへ向け、恐慌状態になったU.B.C.S.隊員数名がアサルトライフルを始めとした火器を放つが、それはまるで意に介さず全てをその身体で受け止め、変わらぬ歩調で歩み続ける。
ミハイルとミハイルの隊だった者たちが攻撃を加えた者たちを抑え込んだが、そのうちに通気口やエントランスの扉という扉、下水道への出入り口などあらゆる穴という穴からヒルが雪崩込み、それらがそれぞれ触手の塊となり人型を取る。
また、幾らかのヒルは怪物の方へと伸び、その身を捧げて同化し、瞬く間に怪物の身体が修復され、まるで無傷な姿を維持し続けた。
「"忠誠"は"服従"ヲ生み」
女性だったフォルムが縦に細く長く伸び、手足と胴が不自然に伸長され、樹の幹のように太くなると共に身の丈が3m程まで拡大する。
また、人肌の色を保っていた配色が青黒くとも黒緑とも見えるように変わって行き、それと共に全身の質感がゴムのようで湿り気のあるモノへと変わった。
「"服従"ハ"規律"を生厶」
そして、手足が触手で指のような機能を持ち、人間のようだった顔が沈み込むように消えると頭部が咲き、背中を中心に生え出た数多の触手が蠢く。
ゾンビなど比ではなく、様々なB.O.W.を知るニコライから見ても震えを覚えるほど異質な真性の怪物が顕現し、その片腕はネメシス用ガトリングガンが一体化しており、生物兵器という名を体現した存在と化す。
「"規律"は"力"トナり、ソの"力"ガ全ての源トなル」
怪物よりも遥かに小さく華奢だが、更に生理的な嫌悪感を覚える醜悪さを持つ大量の人型ヒルは、器用に壁と天井を伝って広がって行く。
途中で事切れている監視員の死骸が攫われ、ヒルの波みに取り込まれると貪り喰われて消え、仕上げと言わんばかりに壁と天井を"数百体"の人型ヒルが埋め尽くし、瞬く間にエントランスを黒々とした様相へと変えた。
「美しい……」
白いエントランスホールが黒く蠢くものに塗り潰され、蠢動する体内のように変わった様を眺めながらポツリとウェスカーは芸術品を目にしたかのような言葉を呟く。
それとは対象的に冒涜的なまでのB.O.W.としての正しい在り方と悪夢のような景色と蠢く異音に加え、戦ったところで虐殺にしかならないであろう戦力差を見せ付けられ、U.B.C.S.らは完全に戦意を失う。
『生憎、見テノ通リ"手足"ハ足リテイルノダガ……少々人間ヲ助ケルニハ不向キナ風体ナモノデネ。サア、生キタケレバコノ私ニ"服従"シタマエ……』
それは最も動物的な規律と原始的な恐怖によるただ絶望的な"力"そのものであった。
○この後、ジャクリーンがU.B.C.S.らが受ける恐ろしいこと
・予防接種(デイライト)
・アンブレラのB.O.W.に対する防衛術
・装備や食糧の提供
・警官との混成部隊とした部隊の再編成
など
※夜間と室内では無敵のタイプのラスボス。ラクーンシティ警察署周辺がクッソ安全なのは、日没から明け方に掛けてあらゆる感染生物が粗方ディナーにされるから。
〜 QAコーナー 〜
Q:コイツ弱点とかあんの?
A:シュトロハイム(紫外線照射装置)。
多分、ボス部屋の前のアイテム部屋に説明書があり、決戦フィールドに何故か落ちている。
〜 増えるジャクリーンちゃん 〜
ヒルは1匹で雄と雌の両方の生殖機能を持つ同時的雌雄同体と呼ばれる生物であり、2匹で交尾をしどちらも受精して産卵する事も可能。ヤマビルなら一個体から1〜9個の卵嚢を産み、1個の卵嚢から1〜8個のヒルが生まれる。また、産卵から孵化までは約2か月を要する。
ジャクリーンの場合、無論彼女自身とそのヒルは同時的雌雄同体であり、ぽこじゃか増える。そして、何より黄道鉄道の列車内で卵が孵化していた辺り、ジャクリーンのヒルが産卵から孵化するまでの時間は長くとも1〜2日程度。産む卵嚢の数もかなり多いためヒルは一度の産卵でに数十〜百に登るため、ねずみ算式にぽこじゃか増える。ヒルは下水道の生活用水や食品廃棄物を餌に育つ。そして、ラクーンシティに滞在していた期間はおよそ1ヶ月と3週間ほど。
何故かよくジャクリーンはラクーンシティの下水道に出入りしていた。ちなみにどのような手段を用いてかは本人が語らないために不明だが、本来ならば1年以上掛けて仕込んでジャクリーンは己の手でラクーンシティを地獄に変える気だったらしい。