恋姫で巣作り   作:ししお

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ほいほい増える厄介なメンバー
今回迷宮側での死亡者が出ます
残酷な描写があります
そろそろ呉の方も書きたい(レンファendをまだ見てない作者


第八話 「おい、やめろお前たちまで来るんじゃねぇ」

 氷牢に繋がれた女性がただ祈っていた。

 この暗闇で弱弱しい光源となっているエンジェルハイロゥは罅割れ所々かけて、かつて美しかった三対六翼の翼は片対が根元から捥がれ他の三枚も翼として機能しないほどに引き裂かれていた。

 ここはかつて神に反逆したルシフェルが敗北し繋がれた牢獄、コキュートス。

 なぜ彼女がそこに繋がれているのか、彼女は神の命に逆らい神に剣を向けた、そして死亡した。

 だから彼女は今こうして氷牢へと繋がれている。

 

「兄さんに救いがあらんことを……」

 

 繋がれ極寒の冷気にさらされようとも祈りを止めることはない。

 そんな祈りをささげる中、こちらに向かって近づいてくる足音に気が付く。

 

「やれやれ、ようやくたどり着いたぞ……世界の修復、構築維持……それらの功績をもってこの永遠氷牢より釈放だ。マリエル」

 

 かけられる声に顔を上げ、声をかけてきた人物を見る。

 声をかけてきた人物は中性的な顔立ちに天使には似つかわかしくない濡れ烏の様な黒髪で、天使の輪は金色ではなく白銀の色に輝いていた。

 服装は男装の麗人とも、正装をした凛々しい男性にも見えるスリーピースに身を包んでいた。

 

「サタン……」

 

 手枷の外れる音が部屋に響き、つかつかと確かな足取りで扉をあけ放ったサタンの前までマリエルと呼ばれた天使は近づく。

 

「エル付けるなっつってんだろうがぁ!!」

 

「ごぶはぁっ!?」

 

 近づいたら拳を振り上げ、サタンの左頬に右拳を容赦なくたたき込み錐もみさせながら向かいの壁に突き刺さらせる。

 壁は蜘蛛の巣状に罅割れ、欠片がぱらぱらとこぼれ落ちる。

 

「私は北郷 真理だ!」

 

 両手を腰に当てて仁王立ちをして怒りをあらわにしている。

 壁から抜け出したサタンは憮然とした顔で同じように怒る。

 額同士をまるで頭突きのようにぶつけて互いにメンチを切りながら怒鳴り合う。

 

「釈放の手続きで正式な名前を呼ばにゃならんの知ってるだろうが!俺だってなぁ……あの根性腐った禿饅頭のドぐされの配下だったころの名前でサタナエルとか呼ばれたくねぇよ!」

 

「うっさいわ!そんなことよりも、あのゴミ四文字顔面野郎はきちんとぶっ殺せたんでしょうね?」

 

「あぁ?他の神々たきつけて権限引っぺがしてリンチにして堕としに堕としてやったよ。おかげでてめぇを解放できんだ、ちったぁ感謝しやがれ。なんかゼウスだとかポセイドンだとかもいろいろ引っぺがされてたがな」

 

「はぁ?あんな糞爺や下半身野郎なんてどうなろうと知ったこっちゃないわよ。というか兄貴の情報はどうなったのよ?黙ってるならもう一発ぶっ飛ばすわよ」

 

「ふっざけんな。あいつの場所なら特定できてんよ、ほれ」

 

 額を一度離し紙を取り出せばそれを即座に分捕る様に奪い取る、その時に破れるような音がしたが気のせいだろう。

 サタンは足音を響かせながら、廊下を進んでいく真理の背を見ながら小さく呟く。

 

「やっぱりあいつの願いを受け入れることはできねぇのか……まったく、あいつは難儀な宿題を残していってくれるもんだ。メタトロンとアスモデの奴らも真っ二つに割れちまったしなぁ……」

 

 頭を掻きながら書類を机の上に広げ部下たちからの報告を読んでいく。

 大天使たちは根こそぎ討伐され、ごく一部を除き下位の天使たちのみで構成されている最も位の高い天使たちが先に述べたメタトロン、アスモディエル、サタン、マリエルを除けばヴァーチャーが最も高いと言えばわかるだろうか。

 もっとも、それらを倒す一翼を担ったのもサタンを中心とした上記の三名でもある。

 

サタン 人間殲滅戦争にて『主の罪』を裁いた天使大粛清の主格であり、偽神の殺害者。人間殲滅戦争が起きることを知っていながらそれを止めることをしなかった人物でもある

メタトロン 人間殲滅戦争中期よりとある人物の死から人の味方をするために天使に反旗を翻した

アスモディエル 最初期よりエデンの園より知恵の実を人界に渡らせる、ある人物を魔人として解き放つなど、天使と敵対しながらも人に封印されるが最終的に神との戦いにおいてサタンの援軍として参戦する

マリエル ガブリエルの分霊転生体であり人間北郷 真理として世に生まれながら人間殲滅戦争最終期まである人物と協力していたがアジ=ダカーハと相打ちとなり死亡している。死亡後本来であればガブリエルの本体に吸収され人として消滅するはずが、ガブリエル本体を逆に喰らい本体と成り代わった

 

「報告書だけ読めばひどい評価だな……当たり前といえば当たり前だが、やはり生き残れた『人間』は存在しない、か」

 

 音を立ててその報告書を握りつぶす、最後まで人間を人間として生き残らせようと足掻いた結果が人間の全滅を招いた、皮肉の効いた結果に怒りを収めきれず力が籠ってしまう。

 報告書には『知っていながらそれを止めることをしなかった』と書いてあるが、止めることそれすらできないようにされていたのが正しい、最後の審判という役割がある為それを止めるという行為すら許されなかった。

 ただ、違いがあるとすれば……元々この戦争は『人が二桁』も生き残れればそれこそ上出来すぎるというほどの凄惨なものだったりもする。

 そのために人間が全滅したとしても、始まってしまった以上仕方がないともいえる。

 

「だからこそ、あいつの『願い』か……どれだけの奴が……あいつを知っている奴でそんなことを望んでると思ってるんだろうなぁ」

 

 

 

 深夜迷宮にサイレン音が鳴り響く、それは本来の扉の守りであればありえない侵入者を知らせる警報音、バーンパレスに存在していた扉に施されていた封印に等しくとてもではないが力業であろうとも妖術師であろうともイエローを飛ばしてレッドの緊急性を表すのはおかしかった。

 プリニー達が迷宮に仕掛けられた罠は当然として、敵が仕掛けたかもしれないことを考慮しながら慎重に、ただそれなりに早く迷宮内を捜索していく。

 

「……」

 

 角から二つの鏡を使って念入りに確認するが何者の姿も確認できないことを確認して、フリッパーを振って先に進むことを示し、探索を進めていく。

 普段はぺたぺたと間抜けな音を鳴らす足音は鳴りは潜め、文字通りの無音で歩を進める三人のプリニー達、それは熟練の忍びの歩きを連想させた。

 まるで中身が別人にすり替わったと言われた方がいっそ信じられるほどに無機質な瞳が通路を見ている。

 

「……」

 

 何かに気が付いたのか三人ともが音もなく来た通路を戻り、角に身を潜める。

 武器は抜かれるが、いつもの大型のナイフではなく一人はククリナイフと呼ばれる肉を抉り取る為の刃物、一人は三節棍の両端に刃物が付いた変節槍、一人は盾と短槍を持っていた。

 

『第一隔壁Aの3限界っす』

 

 インカムから聞こえる声が知らせると同時に扉が粉砕され破片が角にぶつかり落ちていく。

 破片が落ち切ると同時にプリニー達が動き出す。

 盾を前面に押し出し細かく動かしながら、突き出される拳の衝撃をそらしながら肉薄して短槍を侵入者に繰り出していくが、空いている左手で捌かれ体を大きく開けされる。

 素早く蛇のように滑り込み足元を切りつけるように繰り出されるククリナイフは踏みつけられ止められ、その瞬間に手放し逆回転に変えて残ったククリナイフを上段に振るうが肘で掬われ上向きに跳ねさせられる。

 踏みつけた足は開いた短槍を持つ手を経由して、頭上から躍りかかる変節槍を迎撃しもう片側に絡みつかれる。

 

「α、接触、β攻撃援護要求、Θは撤退援護……相手は『怪人』左慈、要警戒オーバー」

 

 絡みついた変節槍を足場に飛び上がり足刀で蹴り落されながら、報告し落とされた衝撃を利用して距離を取りながら残ったククリナイフを投擲し、すぐさまポケットから小刀を二振り装備する。

 

「……っち、邪魔だ……」

 

 左慈の目の色が変わる、今までは雑魚を見るような見下した視線であったのに、苛立ちながらも確かな敵を見る目へと変貌していた。

 集められる気が変色していく。

 

「はっ、俺らの命なんて安いもんでね。通りたきゃ殺して通りなぁ!!」

 

 拳足と刃が交差し激突する。

 

 

 

「世界の要、『泰山の鏡台』はどこにある」

 

 右手で最後に残ったプリニーの下顎を掴み上げて尋ねるでもなく、ただ確認のために言葉にする。

 背後には力なく倒れたぷりにーの亡骸や爆発跡が幾つも見て取れた。

 すでに質問はしている、ただどいつもこいつもその答えを口にすることはなかった。

 知っていようとも知らずとも悪態を返し、最後まで反撃を試みようと虎視眈々とどこまでも最大の一撃を見舞う為の隙を狙ってくる、下手に尋問に時間をかけるわけにも、手加減をしてやる余裕もなかった。

 

「はっ……言った……だろうが!殺して通りやがれ!」

 

 こいつに至っては懐に入れた手榴弾のピンを抜くタイミングを計ってやがる。

 死兵よりも性質の悪い特攻兵。

 命を投げ捨てられる死兵、ではなく前提として既に命を投げ捨てている。

 叩きつけ砕ける音と共に引きちぎられる音が扉に叩きつけられる。

 

「っち、無駄な時間を使ったか」

 

 頭部の上半分と首から下のプリニーが張り付けられた扉を道術で開きながら、目的の場所を探す、罠の種類を見破りそれらがどういった存在が居るのかを予測づけ、もう一度舌打ちをした。

 

「厄介な……イレギュラーがどれだけいる。外史だの正史だのもう関係はない、ここは完全に異なる世界だが面倒な変態どもがかぎつける前に終わらせなくては……」

 

 地雷原のように敷き詰められた鋼鉄タケノコを掻い潜りながら、先を急ぐために術を足に施す。

 さらに奥の扉を開き左慈は顔を顰める。

 

「お前らか、世界を壊そうとしているのは!」

 

 部屋にいたのはサラド神父、孫堅、バーン……本来ならこの世界には存在せず、孫堅もまた既に死亡したことが確認されているはずの人物、孫策が呉の遺志を継いでいる為にいるはずがないのだ。

 

「おいおい、お前さんの方が『否定の管理者』でこの外史を消そうとしてんじゃねぇのか?」

 

 バーン以外が戦闘態勢を整えながらも、サラドが左慈の言葉を否定する。

 

「俺はもう管理者ではない、否定も肯定もくそくらえだ。かつて外史が正史に影響を出し大惨事を起こしたが……最終的に正史がああなると分かっていれば止める理由もない」

 

「俺にはお前らが何を言ってるのかわからねぇな!外史?正史?そんなもんは関係ねぇ、俺は今ここに『居る』。それで十分だろうがよぉ!」

 

 その言葉は、かつてこの似た世界で北郷一刀という男が、この世界の人物に言った言葉だ。

 この世界で生きている人間だ、と。

 その言葉を相手は傀儡だと笑ったのは左慈で、真っ向から噛みついた言葉であり、正史の世界もまた観測される側の、外史と何ら変わらない世界だと気付かされる言葉でもあった。

 






この作品のカズトは前世にてなんでこのメンバーで負けるんだ?
と思うようなメンバー揃えてるけど、それでも負かせるのが敵だったような修羅場くぐってる為ほぼ最強といえる強さを持っております。
より強いふざけるなという壊れがいるのでカズト自身は強いとは思ってませんが
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