恋姫で巣作り   作:ししお

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注意:時系列を無視した展開となっております、具体的にはカリンの封印が五つ解放され肉体を持った状態となっております


番外 「ヴァレンタインディー」

 カズトの目の前でカリンは、チョコレートで全身をコーティングをした状態で見降ろされていた。

 

「正座」

 

「いえ……あのね?」

 

 カズトはカリンの言葉を聞きながら、視線は冷ややかなものになっていく。

 

「せ い ざ」

 

「あの、私の格好を見て……」

 

 カズトの後ろに阿修羅が気炎を巻き起こしているのを幻視する。

 

「………」

 

「………」

 

 ゆっくりとカリンは床の上に正座をする。

 

「さて、俺が何を怒っているか分かっているか?」

 

「えぇと……」

 

 少しの間なぜ叱られることになっているのかを考えるカリン。考えがまとまったのか顔を上げ真直ぐカズトを見て口を開く。

 

「ちょっとチョコに資金を使いすぎちゃったかしら?」

 

 その答えにカズトは深くため息をつき、カリンの後ろを見る。

 カリンの後ろから静かに、ただし力強くカリンの肩を掴む手が伸びる。

 

「それは私の管轄ですねー。カリンさまは私の説教から受けたいようで―」

 

 間延びした声。

 感情を感じさせない声音。

 カリンの背後にいたのは羅刹を背負ったフウだった。

 

「ひぃっ!?」

 

 壊れかけのブリキ人形が動くようなぎこちない形で、震えながらカリンは正座したまま背後に立っていたフウの顔を見た、見てしまった。

 見てしまい、カリンはらしくもなく瞳に涙を浮かべて短く悲鳴を上げて固まる。

 フウの顔は笑顔だったのだが、それは怒りゆえに笑みを浮かべているものであり目の色が反転していた。

 

「お覚悟はいいですかー?カリンさまー……」

 

 ただ今フウによる説教中、一時間ほどお待ちください。

 

「ところでアスラ……お前は呼んでない、とっとと帰れ」

 

「なん……だ、と?エフェクト要員に、とバーンに聞いたのだがな」

 

 ショボーンと肩を落としながら説教されている部屋を出ていくアスラ王。

 入れ替わりの様になんだなんだと集まってきたシュウラン、シュンラン、カロン等が集まって、扉でこっそりと中を覗いていた。

 

「ふむ、丁度いい……誰かバーンも呼んできてもらえるか?」

 

 それは静かな声なのに、しっかりと怒りを感じられる言葉だった。

 その声に小さく悲鳴を上げて覗いていた全員が全員バーンを探すために散っていく。

 

「多分、バーンの奴は逃げているだろうなぁ………行先は蜀辺りか?」

 

 今回のチョコでの被害となった白丹、美羽に振り返る。

 魔力を抜いていなかったチョコを食べてしまい気絶していたが、プリニー達がいち早く気が付き命が失われることこそなかったが遅ければそれすら危なかっただろう。

 これは俺がメインとして食事を作っていた弊害ともいえるものだろう、そのあたりは仕方がないかコックを雇うお金もケチったのが最初だからな。

 

「うぅ……ごめんなさい……」

 

「ふー……ではお兄さん、説教選手交代ですよ。カリン様フウはまだ優しかったと思い知ってくださいねー」

 

 愕然とした顔でこちらを向いたカリンの顔が腕を組み立ちながらにっこりと笑う俺の顔を見て、絶望したようにさらに青くなっていくのがわかる。

 足も正座したままで痺れてきているのだろう外面を気にすることなく涙を流している。

 

「あ……足がしびれているの、す、少し休憩を……」

 

「いいだろう、三分間待ってやる」

 

「せめてもうちょっと!?」

 

「考える時間もいらないと、すぐに始めてもいいんだぞ?」

 

 その言葉にがくりと項垂れハイワカリマシタと了承の言葉を返してくる。

 そして三分後。

 

「さて、俺が何を怒っているか分かっているか?」

 

 フウに説教をされる前にかけた言葉と変わらない言葉で俺の説教は始まる。

 

「えっと、えっと……」

 

 答えを出せずに焦るカリン、それを見下ろし視線を逸らさない俺。

 

「まず魔力中毒は人間にとって非常に危険なものだ。魔界産の植物で作られた植物などはこれの原因となる魔素を多分に含んでいるのは知っているな?これの処理をせずに食堂に置いていたことで起きたことをまずは怒っている」

 

「あ……」

 

 チョコレートは甘いお菓子なのだ、子供が特に好む甘いお菓子なのだ。

 それが作りかけとはいえ食堂という食べ物が置かれている場所に放置されており、子供である白丹や美羽が自由に歩き回るのなら、それが起こることは容易に想像がついたはずではなかろうか。

 つまみ食いをしてしまったのだ。

 カリンもそれに気が付いたのだろう、顔色がさらに蒼くなっていく。

 

「更には体に溶けたチョコレートを塗ろうと思ったのは一体何を考えてなのか、白丹や美羽が真似をしないと思っていたのか?暑さに耐性のある魔族なら問題ないのだろうが、あの子たちは普通の人間だぞ?火傷しないとでも思っていたのか?」

 

 更にこんこんと怒鳴るわけでもなく説教していく。

 

「体に塗り付けるという行為を一体どこからの知識で仕入れてきたのか、食べ物を体に密着させて食べさせようというのは不衛生が過ぎる」

 

 今回のカリンの行動による軽率さを一つ一つ説明するような説教は二時間にわたり行われ、正座により痺れた足を反省の証として終わらせることとした。

 

 

 

 プリニー達は忙しそうに食堂とキッチンを行き来している。

 

「こっち魔素抜き終わったすっよー」

 

「チョコフォンデュもいい感じに温まってるっす」

 

 プリニー達に魔界カカオの魔素の抜き方を教えておけば、それを晩の食後のデザートに利用してくれた。

 白丹や美羽だけでなく他の女性メンバーにも好評なようでなにより。

 女性はやはり甘いものが好きなのだな。

 バーンには漏斗で溶かされたチョコを直接流し込まれているが、そこは見なかったことにしておく。

 終わってみればいつものドタバタとした変わらぬ日常の様にふっと表情がほころぶ。

 

 

 

追記:カリンのチョコはカズトが責任をもって食べました




ちょいと短いですが、ヴァレンタインの番外でござる
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