白亜の通路の途中、■■■と■■■は対峙していた。
剣を切り結び、剣戟の音を響かせながら、視線を交わし■■■の瞳には涙が浮かび歯を強く食いしばり、■■■の■にはもう■はなく■■■に■■■に返していた。
「お願いだから!もう■■■■よ!」
この先に■■はない、もうすでに■■などないことを教えられていた。
だから■■■事を選んだ。
でも■■■にその力はなかった。
無かったから■■■■の■■体として■■■■った……全ては■■為に。
なのに■■ない。
「なんで!なんで!■■■■よ!」
■■を使えども■■を使えども、■■■の剣は■を負わせることも■を捉えることも出来ずに■に■きつけられて、■■が落ちていく。
■だと、手を伸ばす。
■■ないでと、手を伸ばす。
■■■ないでと、手を伸ばす。
もう■の■■はない、■の■■で決定された。
折られた■の■■■だけが■■の前に残り、■■の上に■■■■が置かれる。
■■の■■。
■■通りの■■。
■■■■が■び■■■、それを■■だろう、■■■■の始まり。
そうなることを■■たくて■■てきたのに■■が終わった。
布団をはねのけ起きた桃香は涙に濡れた顔のまま虚空に手を伸ばしていた。
「よくきたの、孫策よ。今麗羽姉さまから泰山への連合の誘いの書簡が届いたのじゃが……おぬしらは参加するのかや?」
扇子で口元を隠しながら美羽こと袁術は呼び出した客将の孫策を観察するように視線を投げかけている。
その様子を知ってか知らずか孫策は共に連れてきていた周公瑾とアイコンタクトで相談をする。
「参加したいけれど……」
「兵が足りないのでしたら、こちらから出しますよぉ?千ですか?二千ですか?五千くらいまででしたら問題ありませんのでぇ……参加、しますよ……ね?」
孫策の言葉を途中で遮り七乃が笑顔を崩さずに確認という名の強制執行を告げ、それを孫策には断る力もなく了承するほかなかった。
それでも最低限のことはするべく言葉を吐き出す。
「孫権にも経験を積ませたいので……呼び戻してもよろしいでしょうか?」
「ふぅむ……よいぞ」
扇子を閉じて年相応の表情で「うわはは」と馬鹿のように笑いながらあっさりと孫策と孫権の合流の許可を出す。
それは客将である孫家の反乱の足掛かりになることを承知しながら許可を出す。
「では準備を進めるのじゃ。一番にたどり着き連合の仕事などさっさと終わらせてしまうのじゃ!」
「きゃー!お嬢様流石ですぅ!」
誇大妄想ともとれる美羽の言葉に早々に退出する孫策の表情は憤怒に染まっていた。
そんな孫策を底冷えするような冷徹で計算高い視線が見ていることなど露とも知らず。
「(孫策はあちらの噂を知らぬか、そして孫権の姿を見たという噂は虚ではなく実。孫権が二人も居るとはのう……炎蓮の噂を知っておれば一も二もなく誘いに乗っておったろうな。はてさてどれほどの英傑がこの盤面を作ったのやら)」
七乃も準備のために退出し玉座の間には美羽ひとりと思えば柱の陰から白欧の肌をした巨漢と線の細い女性が出てくる。
「二人には留守の間の事を任せる。増やすも使うも自由にせよ……どうせ華南もくれてやるつもりじゃったからの……が、これだけお膳立てしてやっても獲れぬのであれば遊んでやってもよいぞ」
「承知した盟友よ」
「えぇ運営の方は任せなさい。お嬢ちゃんも怒り心頭だったみたいだし?時期的にも動くでしょうね自分たちの動きが読まれてるだなんて考えずに」
ころころと口元を隠しながら孫策の様子を思い出しながら笑う姿は将というよりも王族に近しいと思えるだけの気品を持ったものだった。
「大きく流れを作るはずであった黄巾の乱は乱となる前に早期に消えた、帝がお隠れになりその子供が次帝を引き継ぐ前に攫われておる、それゆえ本来であればこのように反董卓連合が組まれることはないと考えておったが麗羽は……絶対考えなしじゃぞ、あのおバカは」
その言葉に三人が揃ってのどを鳴らして笑う。
考えなしの大馬鹿そんなことは知っていた、でもそれはどこか美羽の想う人に重なってしまう。
そしてそれを二人は知っている。
だからそんな言葉に笑ってしまう。
一番遠くて一番近い不思議な魅力を持つのが袁尚、麗羽という女性だった。
「計画はそれでも順調じゃ……妾は再び会うために努めましょう。この外史を欺き正史にたどり着くために……」
「
淡々と熱を感じさせない声音で蝋燭だけの明かりの部屋の中、于吉はパソコンの前でとある呪文を口ずさみながらキーボードに指を走らせていく。
外史の管理者以外に入ることのできない空間をさらに厳重にロックした部屋の隅には二つ仙人の服を着たままのミイラが転がっていた。
一つは于吉と同じ服であり、同じ眼鏡をしているもの。
もう一つは于吉の相方であるはずの左慈と同じ服装のものだった。
「お前は再びそれを作るのか……」
茶とつまむものを盆にのせた左慈が入ってきて、椅子に腰かけパソコンに向かう于吉に声をかけるが左慈にしても于吉が何を作り上げようとしているのかは知っている。
「えぇ。不要になることが望ましいですが、保険をかけないわけにはいかない世界だというのも知っているでしょう……北郷一刀がカズトになるために、ならなければ……」
「人は全て泡沫の夢に消え去るか、可能性の芽を摘み取られただ滅びる、それとも閉じた世界から出る事叶わず押しつぶされるか」
「後は対抗手段が取れずただ滅びる、でしょう?」
いつの間にか二人がいる空間に現れる九つの狐の尾を持つ女性が最後の結果を答える。
中華風の服を着こなし、妖艶とも流麗とも取れる空気を出しながらも二人を警戒することを隠しもせずに会話に混ざる。
「……貴女はなぜこちら側に立つのです?妲己という紂王を諌めた瑞獣、本来ならば外史を見守る側に立ちそうなものですが」
「あなた達の目的も知っている。どうしようとしているのかも知っている。そしてこの外史は正史の影に消える事も知っている。だから私はこちら側に立っている」
「はっ。すでに目的は達成できない、俺たちのすることはもうほとんど残っていない。銅鏡……いや、封印解くための鍵はすでに投げ渡した。それでも
左慈の問いに彼女は一度目を瞑り再び目を開いた瞳には強い怒りの感情が見られた。
「えぇ、何度でも。置いて行かれた、追いつけなかった、間に合わなかった。私が……私たちが弱かったから。だから何度でも繰り返しましょう、もうご主人様を
'EL ELOHIM ELOHO ELOHIM SEBAOTH' “永遠なる主、サバオトの神”
'ELION EIECH ADIER EIECH ADONAI' “栄光に満ちたるアドナイの神の名において”
'JAH SADAI TETRAGRAMMATON SADAI' “さらに口にできぬ名、4文字の神の名において”
'AGIOS O THEOS ISCHIROS ATHANATON' “オ・テオス、イクトオス、アタナトスにおいて”
'AGLA AMEN' “秘密の名アグラの名において、アーメン”
'A MEN AMEN'
パソコンを閉じて、二人を于吉は見る。
「それで?したいことはわかりました。ですがそれをどうやって達成するつもりなのですか?カズトは殺せない、というよりも……ハハハ……殺した程度で死んでくれるのでしたら苦労はしないんですがね」
指を鳴らすと何億何兆と書物の収められた書庫へと移動する。
この書庫は北郷一刀の人生を綴った物語を纏めている自動書記といわれる手法を使った彼の生を見続ける二人の精霊が今も書き続け増え続けている。
「一冊一冊、彼の人生を終わりまで書かれたものです。えぇ……終わりまで書き綴られたものなのですよ……この冊数が意味することが分かりますか?」
その書庫はあくまで見える場所で幾兆冊と数えることができる膨大な数が収められながら奥には暗がりに閉ざされながらも通路が続いている。
「彼は死んで繰り返し続けた……それでも終に辿り着いたのは十にも満たない。世界の夢アザトース、全ての悪夢ロード・オブ・ナイトメア、人の終点デウス・エクス・マキナ、一にして全全にして一カオス、完全なる世界アポトーシス、全知全能■■■■。終に辿り着きながら彼は繰り返す、彼の願いは叶えられることはない叶えようのない夢……繰り返した末の対、では一刀の始まりはどちらだ?彼女たちは過去に助けられた、だからこそ現代において彼のために捧げた。彼は現代において助けられただからこそ過去に亘り彼女たちを助けた」
一度口を閉じてその続きを話す。
「助けようとした。私は彼の希が助けることだと思っています。過去に遡り現在を変えることはできない、過去を変えれば現在が変わってしまう、そうなればカズトの希は叶えられない。だからこそ繰り返させているのでしょう」
于吉の答えに妲己は思わず反論する。
「待て、カズトは……人間じゃろう?」
妲己の論に左慈は顔を片手で覆う。
「違う。カズトは……
「
火線を巡らして焼き切る炎刃を線上に飛ばしながら木刀を構える獣と対峙する一人の紫色の鎧に身を包む兵士。
他にも一緒に突入した兵士もいたのだが、プリニー達に回収されてすでに居ないからこそ、兵士は出し惜しみせずに己の
炎刃を断ち切りながら向かってくる獣に氷結の散弾を撒き散らしながら距離を確保しながら隙を探す。
「
撒き散らされた散弾の跡地には氷柱が生み出され、進路を阻害するための障害物となって獣の歩を阻む。
筈なのだがそんなもの知らんとばかりに木刀の一閃にてただの一瞬で横に断たれ砕け散る。
砕けた氷塊が操られるように獣へと向かってくる。
「甘いで。
魔力を内包した氷塊が臨界を超えて魔力を注入されて爆発するも兵士の首元には木刀が付きつけられていた。
「あかん、甘かったのはわいの方やった。降参!降参や!でもせめて空タン、白タンには会わせてーな、かずぴー」
兜を外して顔を晒したその顔は、眼鏡をかけたなんとも言えない三枚目の顔で似非関西弁を操るかつての聖フランチェスカ学園での同級であり友人であり、この古代中国三国志な世界に来る前に居たファンタジーな世界における仲間の一人で魔術師をしていた、
気付けば大所帯になるのはいつもの事