後はナメクジ進行だ
フウの呪文が紡がれ終わると行き止まりだった土壁は黄色の石造りで等間隔に火が灯されたしっかりとした柱に支えられた回廊へと姿を変えていた。
「もうすぐですよ」
その言葉通りついていくと、長方形のテーブルに複数人が座れるように用意された多くの椅子、赤を基調とした絨毯、部屋の壁には暖炉があり、向かいの壁には窓がつけられ光が取り入れられている。
不思議と生活感はないが、埃が積もっているわけでも蜘蛛の巣が張っているわけでもないが……ただ使われた気配が全くないまるで新品の家具ばかりだった。
洞窟じゃないのか?と思うかもしれないが、これは幻影で光を映しているものだろうもっと高価なものになれば外や魔界の景色をそのまま映すことができたはずだ。
部屋を抜けてさらに進むと一層豪華な調度品に彩られた部屋にカリンは居た。
「待っていたわよ」
王冠に髑髏の意匠が付いているのはなぜだろう……らしい、と感じてしまっている俺がいる。
フウを見てみれば、フウは頷き言葉を続ける。
「残念ながら、まだ復活はしていないのです」
違うそうじゃない。
「フウの言葉通り、私はまだ復活していないわ」
そっちも勘違いしたまま話を進めないでくれ。
「魔王さまは、六つの鍵で封印されているのです。その一つを見つけたので、こうやって姿を見せることができるのです」
六つ……いやまさか……可能性はある、のか?
俺は首を振るってその考えを否定する、そんな都合のいいことがあるはずがない……二つ目の封印を解いたときにわかる……か。
「どうかしたんですか?お兄さん?」
首を振るった俺を訝しげに見ながら、カリンは現状を確認していた。
「それでフウ。カズトにはどこまで説明したの?」
「まださわりだけです」
魔王の復活を手伝ってほしいとしか説明はされていなかったので、どう手伝うのかは聞いていない。
「なるほど」
ん?手伝えとも説明されてなかったかもしれない……説明はしてくれるのだろうか。
「カリンさま、カリンさま」
フウがカリンに耳打ちをしているのだが、打ち合わせがどうとか言っている。
「ようこそ、歓迎するわ」
どうしよう……ここはあえて乗ってあげるべきだろう、唐突に態度が変わったことは突っ込んではダメだろう。
「さあ、座って座って。フウ、お茶とお菓子を」
普通はいきなりやさしくされても逆に警戒すると思うのだが……どこかポンコツな感じがするのはなぜだろう、俺の知っている華琳が見れば悶絶しそうな気がする。
手を顔の前で振り流石にダメなことを示す。
「フウ……こんな反応をされているのだけど、どうしたらいいかしら?」
「第二段階ですよー。男性は胸がすきなのでー……フウでは効果がなかったですが魔王さまなら効果があるかもしれないです」
「私の胸を差し出せというの?今朝あなたは抱きしめられていたようだけど」
見ていたのはカリンだったのか、何やら視線を感じていたから誰かが見ているのかとは思っていたが……手を出す気は元からなかったが出していたらここで追及されていたんだろうな。
あぁ、それでフウは裸だったのか、ここで追及する材料にするためだったと。
フウとカリンは話し合っているが、いい手は思いついたのだろうかこちらを向いて口を開く。
「さきほど言った六つの鍵のうち、一つは発見しています。残り五つの発見を、お兄さんにお願いしたいのです」
ごり押しに決定したようだ。
頷きながらも首を傾げ、言葉の先を促す。
封印の鍵の場所がわからねば手の打ちようがないとは言わないが、難しくはなるだろう。
「無理と言わず聞きに徹するのは好評価よ」
「お兄さんに冒険者としての仕事を依頼したいわけではありませんよ」
フウは微笑みながら
「迷宮好きのお兄さんに、お願いしたいのです」
良く迷宮は巡るが、好きか嫌いかで言えば好きな方だな……住んでいたものを想像するのは、面白いものだ。
「残り五つの鍵の場所は、おおよそはつかめています。この山にあります」
この山に……決して大きいとは言わないが小さいという訳でもないのだが……いや手掛かり無く世界中をしらみつぶしにするよりはよっぽど狭い範囲か。
「ですが、さすがに山を崩すことはできません」
景観が損なわれるし、他からもよからぬものが寄ってくるだろうし、最悪国から文句を付けられる可能性も十分にあるな。
山は言わずもなが、森もそして流れる川も国からすれば十分資源として扱われるものだ、それを根こそぎ崩してしまえば封印の鍵探しどころではなくなる。
「ある程度の目処をつけて穴を掘るしかないのですが……金銭的に困りました」
納得がいったという風に頷く、商会の力を借りているのだ元手がなくなれば力を借りるわけにもいかなくなる。
フウがすればいい?フウは先にも説明したが商会の人物だ、そういう訳にもいかない。あくまで力を貸す、できるのはそこまでで直接手伝うことはしてはいけない。
「そこで、考えたのです。お金がないなら、稼げばいいと」
となれば手伝うのは迷宮の運営、迷宮を広げることで封印を解いていくといったところか。
だが、迷宮でお金をどう稼ぐのか?それはフウが答えてくれる。
「ここに迷宮を作り、やってきた侵入者たちから巻き上げようと思います」
人を殺めてまでお金を得るというのなら断らざるを得ない、眉を顰めカリンを見る。
「話は最後まで聞きなさい。フウの言い方が悪かったから勘違いさせたかもしれないけど、私は侵入者たちを害するつもりはないわ」
ふむ、顰めた眉を元に戻す。
「私はただ復活したいだけよ。人を苛めてどうこうする趣味はないし、私の復活のために犠牲になれとは言わないわ。だから、作る迷宮も人を楽しませる前提よ」
人を楽しませる?自然と首をかしげる。
「ええ、迷宮だから、怪我ぐらいはするでしょうけど……殺す気はないわ。信用しなさい」
遊園地のようなものを想像したが、入場料を取るような理由もないから気絶させて追い剥げという事か……手加減間違えたらやばいな。
「ふふ。何を悩む必要があるの。その迷宮を作るのは貴方……カズトなのだから私がどう思っていても無駄でしょ?」
手加減ミスらないかプレッシャーで胃が痛いような気がする。
「貴方が作るのよ」
とてもいい笑顔でさらに押してくるカリン……決定事項らしい。
天井を仰ぎ見る。
本来映るのは天井だが……過ぎ去った日を思い浮かべる。
あぁ……なんだ。殺さなくていいなら、その方が楽じゃぁないか。
俺は頷くことでカリンの手伝いをすることを了承する。
元々手伝う気だったし、不殺で問題がないのだ、何を迷う必要がある、何も迷う必要などありはしない、復活させることに全力を費やせばいい。
「そう……私の復活、手伝ってもらうわよ」
その言葉に再度頷く。
こうして俺は迷宮の作成の手伝いをすることになった。
「とりあえず、お兄さん。迷宮の設計をしましょう。今は通路だけですからお兄さんには、侵入者を撃退する迷宮エリアの設計をお願いしたいのです」
迷宮の設計は初めてだが、どのようにするのだろうか。
「がんばりなさい」
カリンからも励ましの言葉をもらう。
やはり懐かしいと感じてしまう、提案をした時はこうして背を押してもらっていたな。
だが、どうすればいいのかわからないのでフウを見る。
「とりあえず、作りたい迷宮の形を考えながら、この水晶に念じてください」
促された水晶に手をかざし、ぞくりと背筋に怖気が走ると同時に世界が揺れた気がする。
見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた見つけたミツケタ視つけた観つけた診つけたみつけた
水晶から手を咄嗟に放す……ナニカニタシカニミラレタ。
「大丈夫ですかー?」
フウは不思議そうな顔をしていた、急に手を放して何かあったのだろうかと心配しているのがわかる……フウからのものではない。
カリンからのものでもない……ではなにか?水晶を通す必要がある?あの視線は昔に感じたことがある、確かにある感触だがあの粘着くような視線は……まだ生きているのか……あぁ、今度こそコロシテヤロウニドトフザケタマネヲデキナイヨウニ……シヌマデコロシツクシテヤロウ。
あまりにも険しい表情をしていたのだろうフウが引いている。
ポリポリと頭を掻いて雰囲気を解く。
「あのー……駄目でしたか?」
頷きこれを使えないことを両手でバツ印を作ることで使わないことを強く示す。
「むう……魔力多そうだったんですけどね。では、第二案です」
魔力で作れるのが一番なのだが……あれが居るのなら仕方がない。
「お兄さんの魔力で迷宮を作れる作業員を召喚しましょう。こちらの魔法陣の中央に立ってください」
フウに指示された魔法陣の上に立つ。
今度は見られなければいいが……水晶が使えない以上こちらでやるしかないだろう。
……
…………
………………
呼ばれた魔物?はペンギン似た姿で語尾に「っす」とつける腹にポケットを付けた生ものが呼び出されていた。
すまない、これ別の魔界で見たことがあるんだが、なんでこいつらが出てくるんだ。
「大将!迷宮の整備終わったっす!」
「罠設置っす!」
「大将次は何っすか?」
仕事も早いし、さぼらないし、賃金やすいとか……これは普通に作業員が呼ばれるよりもあたりか?
「フウ!?」
「えー……誰ですかこの人たち……」
「しっかりしなさい!」
カリンが魂を吐き出してそうなフウを必死に呼び戻していた。
……
………
カリンの頑張りもあり無事に戻ってきたフウは気を取り直し、守備要員の召喚をお願いしてきた。
俺はその言葉に無言でプリニーたちを見る。
「やるっす!」
「お任せっす!」
「頑張るっす!」
やる気満々らしい、おかしい俺の知ってるプリニーは怠け者だった気がするんだが。
「ああ!?フウ様がまた魂吐いてるっす!?」
フウにもノルマというものがあるからな、そのノルマに関係ないプリニーたちだと魂も抜け出るだろう……どうしたものか。
「今度は!今度こそは!こちらのカタログから選んでください!」
気炎を上げながらカタログを渡してきた……やべぇ、爺がカタログに載ってやがる。ギュンギュスカ―商会脅しやがったな。
爺が何者かだって?前にフウが説明していただろう、大陸を統べるようなでっかい力を持った魔王もいるって……そいつだよ。
呼んだら呼んだで、フウにダメージ行きそうで怖いが呼ばない方が怖いというのがなあ……
呼ばざるをえないか。
召喚用の魔法陣の上に立ち、『大魔王バーン』を召喚する。
「はっはっは、久方ぶりだな!」
魔法陣が輝き、光磨杖を右手に持ち豪奢なローブを着こなした状態で召喚されるバーン。
それとは別にカタログに乗せられている魔物が二種類、マジロウとプチが召喚される。
「ぶふおっ!!」
フウが吐血した。
「お……おおおおおおおおおおじい様!?」
カリンも青ざめているんだが……大爺様?
「うむ、カリンちゃんも元気そうじゃな」
そういえばこっちの世界で戦ったのも孫がどうとか言っていたが……バーンの孫娘がカリンだったのか。
「千年もの間、音沙汰がないから心配しておったが……貴様もおるし丁度いい」
戦った理由が孫娘の許嫁を探してだったか?爺に勝てば嫁にやるとか言ってたな、そういえば。
「カリンよ」
おい、まさか……
「お前の許嫁が決定しておるぞ」
たしかに爺には勝ったが……
「え?」
「わしに勝った、こやつがお前の許嫁に決定じゃ」
「え?」
カリンがバーンの奴を見て、俺を見て
「え?」
思考が追い付いてないらしい。
俺はバーンの爺を睨む。
「ほう?」
にやりと上がる口角に失敗を悟る。
そういう意味で睨んだわけじゃねぇ!?
「『胸』が小さいカリンでは不満じゃと?」
プリニー 出典:ディスガイア
大魔王バーン 出典:ダイの大冒険