が、基本的には相手の行動や言動の矛盾を突き付けての精神攻撃目的です
迷宮の奥で警報音が鳴り響く、その音に部屋も慌ただしくなっていく。
プリニーが駆けまわり、フウとカリンも俺たちの前に現れる。
「カズト、おじい様、それとそこの貴方、わかっていると思うけど侵入者と言えども害することは許さないわ。必ず生かして追い出しなさい」
「はっ、そんな生易しくていいのかよ魔王さまよお?」
カリンの言葉に孫堅が噛みつき、カリンはその反論があることを見越して即座に応える。
「あら?生易しいかしら?身ぐるみは剥がさせてもらうし、ここの迷宮の事も生かしておかなければ他に伝わらないでしょう?伝わらなければ他にくるものが居なくなるし……何よりも強い敵が現れなくなるわよ?」
孫堅の性格を短時間で見抜いていたのだろう、カリンの放つ言葉で孫堅の口角が上がっていく。
プリニーに気絶した侵入者をみぐるみ剥いで外に放り出す役目を与え、五人に孫堅に付くように指示を出しておく。
「「「「「うっす。やらせてもらうっす」」」」」
「しかし、立札を立てまわったとはいえ……些か早すぎんかの?まだ一日も経っておらんのじゃがな軍を編成するにしても、個人で来るにしても三日はかかると思っておったんじゃが?」
バーンは早い段階での相談し決行した作戦の重要部分に疑問を持った、邑々に天子を攫ったことを知らせる立札を立てた効果が早すぎることに、三国志?戦争などこちらには百害あって一利なし戦費に金を持っていかれる利など何一つない。
「おじい様?まだ迷宮は小さいのですが!?」
「そうですよ!この人数で大量の人が送られたらパンクしちゃいますよ!?」
その言葉に慌てるカリンとフウだがバーンはどこ吹く風と言わんばかりに目の前の戦闘への準備を始めていく。
「孫堅は右の部屋へ、儂は左の部屋じゃな……カズトには宝物庫の正面を守ってもらうとしようかのう……フウもカリンちゃんも何を心配しておるのか。カズト一人どころか儂もおるというのに心配されるほど耄碌はしておらんぞ?それにこの世界の英雄も助っ人に呼んだではないか戦力に何が不足があるというのか超魔生物化してパワーアップしておるんじゃ」
「爺!俺に何しやがった!?」
「超魔生物化……コ、コストが……」
フウが白目を剥いているが恐らくバーンが自前の魔力を使っての改造だろう。
いろいろと喋っているがそろそろ準備してくれないかな?プチを連れて先に正面に行っておく。
予想としてはあの三人だろうとは思うがどう頑張っても孫堅を抜けないだろうなあ。
あの爺……俺の身体を強化したとか言ってやがったが武器がただの鉄の剣じゃ何ともしっくりこねぇ……確かに体の切れや肌の艶だとかよくなってるんだが……
強くはなっている、強くはなっているが爺はおろかもう一人の若い男カズトとか呼ばれていたか、に勝てる想像が全くできない。
「あいつは一体何なんだ?」
金属同士がぶつかり合う甲高い剣戟の音を繰り返しながら、近くにいる怪しい生もの、ぷりにーとかいう奴に聞く。
「鈴々を無視するんじゃないのだ!」
「大将っすか?大魔王さまっすか?」
大魔王が魔王の復活たくらむとかどういう事なんだ、おい。
「大魔王さまのお孫さんらしいっす」
「お孫さんなら普通に手伝うんじゃないっすか?」
「おいおいおいおい、なんだいそれは……それじゃまるで……」
人と変わらないじゃないか、魔王なんて極悪非道な連中なんじゃないのかよ。
死人を蘇られさせて利用するとか五胡の妖術師と変わらねぇことして、俺たちとそう変わらねぇ感性を持っているとか、どういうことなんだよ。
「そうっすよー。俺らも元は人間っすよ。死んで地獄に落ちてお勤めしてるだけっす」
「なら、あんたたちが大将って言ってるやつは……何者なんだい?あっちの方がまだ魔王って言われた方がしっくりきちまうよ」
迫る蛇矛をはじきながらちっこいお嬢ちゃんをあしらいながらぷりにーに更に聞いていく。
そうすればぷりにー達は困ったような顔をして口ごもる。
「大将は大将っす、それ以上は言えないっす」
「そうっす。言えないんっす」
俺は知らなくていいってことか。一体どんな秘密があるのか興味がそそるじゃねぇか。
隣の部屋から何かが壁に叩きつけられるような音が響く、三度四度と続きそれからは静かになる。
「あっちは終わったみたいっすね」
「こっちもちゃちゃっと終わらせちまうっすよ」
そういうと腹に何でか付いてる物入れから、容量を無視したようなでかさの短剣と剣の中間くらいの長さの刃物を取り出した、それも二本。
そしてそれで殴り掛かる。
「おい……そいつは殴るもんじゃねぇ、斬るもんだろうが!」
「切ったら殺しちゃうじゃないっすか!」
そういや、殺すなっていわれてたか……お嬢ちゃんはあっさりと袋叩きにされて武器とお金だけ取られて外に放り出された。
ぎりぎりと杖と青龍偃月刀が交差し、お見合いするようにお互いを睨みあう。
片や怒りを顕著に映しそのまま力任せに押し込もうとしている、片や笑みすら浮かべて余裕の姿勢を崩さず手慰みにその勝負をうけている様に嗤っていた。
「ほれほれ、どうした先に進むのじゃろう?儂のようなおいぼれ一人倒せず先に進めると思うておるのか?随分と弱いのに自信満々と挑んできたものじゃのう?」
呵々と笑いながら片手を使って杖で青龍偃月刀を支え、もう片方の空いた手で顎髭をしごきながら黒髪のお嬢さんを揶揄っている。
「乱世を正す?人々の笑顔を守る?随分な大言壮語をほざく割には……一歩も進めておらんじゃないか才もある、知もある。じゃがまだまだ足らんのぅ」
「くぅっ……好き放題言ってくれる!」
私が義憤をもってこの青龍偃月刀を持ったのは、桃香様を義姉として支えてこれから来る乱世に泣くことになる民たちを助けたいと立ち上がる為なのだ。
それを嗤われるなど、夢物語と笑うならいい、ただただ嗤うなど許せるものか。
やれやれ、カズトの奴が違う世界でこやつらを苦手とした意味がよくわかる。
あのド外道どもと同じ匂いがプンプンするわい……地獄への道は善意で作られるとはよう言ったものじゃ。
こやつらは、こやつらの行いを疑問も持たずに押し付けそれこそが『善』だの『正義』だのほざくのじゃろうな。
ダイのように自分が化け物と後ろ指刺されようともそれでも笑ってくれているならという覚悟も、文字通り人を救うとがむしゃらに進んだカズトのような人が進むべきではない道に踏み込む覚悟も自覚もないとは呆れてものも言えんが、そんな阿呆にも救われてほしいとはカズトはやはり大馬鹿者じゃのぅ。
だからこそ面白いと自然と笑いがこみ上げる。
ダイには確かに竜の騎士という血の力があった、カズトには何もなかった、だが力の有無など二人には関係がなかった力があろうがなかろうが、願う根っこは変わらないからのう。
ただ幸せを願った。ただ他者の幸せを願った。自身の席を失おうともそれで笑っていられるならば……それを見た後ならばこやつらの言っている皆の笑顔など反吐が出る。
自身が真っ先に座りそれを願うなど、ただの耳障りの良い戯言にしか聞こえん。
だから抉ってやろう、お前たちの本心というものを。
「乱世を正す?ものも言い様じゃな、乱世を望んでいるのはお前さんらじゃないか」
儂の言葉に顔を真っ赤にして怒りをさらに発露させるが、否定しながら、心の奥底ではそれを望んでいたという証拠ではないか。
「そんなわけが!」
「乱世がなければ、戦がなければ、野盗どもが居なければ、お前さんの武も力も、なによりも……お前さん自身が不要じゃものなぁ」
ほれ隠れた本心をつついてやれば動揺して固まる。
「乱世になりそう?わかっておるのならば乱世にならぬようになぜ動かん?ほぉれお前さんらが乱世を望むという行動そのものではないか。乱世を経て権力を得ることが目的なんじゃろう?その権力があれば『自身の望む』民たちだけを笑顔に出来るものなぁ」
見透かすように理由を並べ立ててやれば、愕然とした表情をしてこちらを眺めている。
どうやここまでのようじゃな、ここで折れるならばそこまでの小物、まだ立ち上がり挑むならば何度でも叩き直してやろうではないか。
杖を振り抜き、壁に叩きつける。
剣を打ち合わされてその勢いをどうにもできなくて、壁に叩きつけられる。
チガウ
私はみんなの笑顔を守りたくて……
チガウ
悲しそうに見ているあの人の顔が頭の中から離れなくて……
チガウ
あの人を見たとはいつだっけ……
チガウ
確か子供のころ夢の中で……
チガウ
泣きそうな顔で、でも泣かないように必死に堪えている様な……
チガウ
そんな顔を見ていたら私も悲しくなって……
チガウ
夢の中なら思い出せていたんだ、あの人の事も、なんで悲しかったのかも……
チガウ
これが気絶する前なのかな……視界が暗闇に狭まっていく……
必死に手を伸ばして靖王伝家を手に掴み、歯を食いしばってよろよろと立つ。
私はまだ何もできていないから……
引き絞った一撃が再び壁に叩きつけられる。
あの人に……
壁に叩きつけられて視界がちかちかと明暗を繰り返す。でもそのおかげで落ちそうだった意識がはっきりとする、どこか夢で見た真っ白な部屋の中で爪を床に立て、立とうとできる。
がくがくと四肢が震えながら、身体を立ち上がらせようとする。
力が抜けるたびにべしゃりと倒れながら、起き上がることを諦めずに繰り返す。
何度ももがいて起き上がれたところに掬い上げるような一撃が私を天井に叩きつける。
自然と口が開き一言呟く。
「■■■■」
私は何を呟いているのだろう。
でもそういわなければならない気がした。
当たり前のように落下して床に叩きつけられ、私はついに意識を手放した。
私はまだ貴方になにも出来ていない、私は貴方を一人その道に進ませてはならなかったのに、私は貴方を止めなければならなかったのに、だから■■■■■■、■■■。
なんで目の前にいる怪物があの人に見えたのだろう。
「撃退……完了ですね」
「ふふふ。圧倒的ね……圧倒的過ぎて次が来ないんじゃないの?」
フウもカリンも今回の勝利に少々渋い顔をしているが、次は来ざるを得ない軍関連がしばらくしたら大挙してやってくるだろうな。
「やれやれ、肩慣らしにもなりゃしねぇ……もっと骨のあるやつがほしいねぇ」
孫堅は戦った相手が弱かったと感じてしまったのかさらに上を求めているのだが、張翼徳より強いとなるとかなり限られるのだが……超魔生物化してることで呂奉先よりも強くなってたら相手が居なくなるぞ。
「なーに、それは敵も数を集めてくるじゃろうから今度は何人切りできるか挑戦してみればいいわい」
「なるほど、そいつも面白そうだ……血に酔うとちいとやりすぎちまうかもしれないけどな」
「その辺はプリニー達が止めてくれるじゃろ」
「えっす?!」
「初戦祝いの料理持ってきたっす!」
「新人歓迎も含めてでっかくやるっすよー」
「その材料費はどこから出したのでしょうか?」
「周りが山っす。山菜もお肉も取り放題っすよ」
「おおー、それはいいですねー」
みんなでワイワイと宴の準備を進めていく、俺はどこかそれを懐かしいと思いながらも一歩離れた場所で見ていた。
「ほら、カズトも。楽しむわよ」
ほんの少しの間しか触れないのに、そういってカリンは皆の輪に俺を引き込んだ。
中央:『神殺し』カズト
左軍:『大魔王』バーン
右軍:『江東の虎』孫堅
罠無くてもどう抜けと?
巣作りカリンちゃん買ったので更新滞ると思われます