という事で上げてみた
中華では今、それぞれの国々で結婚式が話題に上がっていた、魏の王曹操が結婚するという事で。
ただ、それぞれの国での反応は違っていた、呉と蜀では国がこれで安定すると喜ぶ者たちが多いのに対して、魏にでは荒れる者達が多かったという。
魏が蜀と呉に勝利してから二年……魏が三国を平定し改めて蜀と呉に領地を安堵させ、そし天の御遣いが魏から消えて二年……魏の将たちは仕事に没頭することで悲しみから逃れようとしていた最中の事だった。
天狗の鳴き声が魏のとある邑で大気を揺るがす。
「曹操様や将軍の方々には報告するな……」
その隊を率いる隊長はその命令を徹底させたが、当然のようにそれに反発しようとする者たちもいた。その隊長がとった行動はその隊員の胸ぐらをつかみ悲痛な声で説得した。
「将軍たちの心境も考えやがれ、ぬか喜びだった時に責任が取れんのか!?」
いろいろな意味で限界だとその隊長は考えていた……いや、その隊長もギリギリのところに立っていたのだろう。天の御遣いが創り出した警邏隊が発足されて最初からいた一人だったのだから。
違ったなら、という恐怖に足がすくむことを自覚しながら、それでも確かめなくてはと隊を引き連れて流星が落ちた場所へと向かう。
そこには、かつてあった白い衣服が無残にも血に染まりいくつもの切り傷に、鋭い槍に穿たれたような孔、焦げた後も散見された、一部は凍り付いておりどうしたらこんな状態になるのか想像もつかない、右腕はひじから先が金属製の義手になっており、左目は潰れて眼窩が見える酷い状態の、天の御遣いが横たわっていた。
「っ……んな……そんな…………救護!手当急げ!」
その姿を見て呆然としていたがすぐに気を取り直し、瀕死と思われる天の御遣い、カズト隊長の手当てを部下に命令していく。
すぐに動かせる状態とはとても見えない為に医者の華佗を呼ぶ為に一人早馬を走らせる。
応急の手当てを始めてすぐ、左目を開きカズト隊長が起きる、その左目は血のように赤い光を宿していた。
「ここは……いや、生きて、いる?」
今も血の滴る左腕を動かし、動かすたびに何かが千切れる音が聞こえてくる。
「隊長!動かないでください!」
「今、どうなっている?」
声をかけた隊長との視線を合わせ、現状を確認してくる。
「カズト隊長が居なくなってから二年経っています……曹操様の御結婚が決まっています……」
「そう、か……声音から歓迎された結婚という訳ではないんだな?」
何か考えるように視線を外したと思えば、すぐに左目だけでこちらを見てくる、警邏隊を率いていた時よりも凄みのある視線に背筋が寒くなる。
「はい。日付は今月の25日……隊長が曹操様に話していた、生誕祭という日に合わせた日を指定されました」
「……はぁ……あと何日だ?」
なぜか少々呆れを含んだため息を吐かれた後、結婚式までの日数を教えれば、血を流しながら立ち上がる。
「待ってください!せめて血止めだけでも!」
応急処置だけでもと止めようとするが、止血帯と針と糸を受け取ったと思えばいつの間に来ていたのか曹操様の馬である絶影が傍に立っていた。
「すまんが騎上でする。絶影……急げってことだな?」
絶影の頬を撫でたと思えば、怪我をしていたとは思えない動きで絶影の背に乗りすぐさまに駆けだしてしまった。
………
……
…
…
……
………
私は数日後に迫る結婚式に憂鬱に思っていた。
国を安泰させるために結婚を行ない血を残す必要があることは理解しているし、国が続くことを民たちに示し、蜀と呉に魏が健在であることを表明しなければならない。
判っているのに……あの時、私の運命を変えた言葉が胸に突き刺さる。
『曹孟徳、お前の覇道は……民を守るといった言葉は、そんなにも易いものなのか?』
正面から批判をされた、私の歩み方。
呆れを含んだ双眸が酷く私の今を揺さぶる。
あの時は、あの時の言葉が此処まで残るとは思わなかった……今、民たちは笑顔だろうか?私は何を間違えた?
「間違えたというのなら、間違えているというなら……戻ってきなさいよ。……カズト……」
カズトの知っている歴史を捻じ曲げることで、カズトが消えることはきっと春蘭を助けたときに気が付いていたはず、右目の視力がほぼなくなったと知ったのはカズトがいなくなってから数日後、頭痛を治すために招いた華佗から聞いた。
『本人からは止められていたが……』
定軍山で秋蘭と流々を助けた代償に右肺と右腕の神経を失ったと、赤壁では勝利と引き換えに消滅を決定的にしたと笑いながら誇っていたと。
『俺一人の命でそれ以上を助けられたのなら……ならば誇るべきだろう』
そう笑っていたと、華佗はカズトの最後の言葉を続ける。
文字通り自身を使ってでも人を守ることを貫いたカズト。
『最後の宿題だ。お前は曹孟徳か?それとも覇道を歩む覇王か?それとも、違う答えを出すか?』
思い出すのは最後の月夜、別れを二人だけで行ったあの夜の事。
「消えるの?」
「ああ、俺の役目はもう終えた」
「貴方の役目はこれからでしょう?」
「いいや。これからはカリンたち、この世界の人たちの役目だ」
「貴方の知識は平和でこそ……」
「俺の役は乱世の平定まで、管路も言っていただろう?乱世を収めると」
「残りなさい」
「俺のしなければならないことが残っているなら残れただろう」
「私の命令よ」
無理を言っていることなんてわかっていた。
抱きすくめられ、透けていくその姿を見せつけられながら、涙が抑えられないことを自覚しながらカズトの言葉を聞くしかなかった。
「」
「カズト……」
「」
「いやよ……」
「」
「消えないで……」
布から糸が抜けるように消えていく様を見せつけられた。
どうしても止められないという現実を突きつけられて、抱きしめられていた感触が消失した瞬間に悲しみからへたり込み泣くことしかできなかった。
「ああ。私はその時から曹孟徳でも覇王でもなくなった……」
無感情に式が進む中、大きく音を立てて式場の扉が開かれる。
全員が扉に注視すれば赤い服に身を包み、顔を上半分仮面で隠した不審な男が堂々と新郎新婦に歩み寄ってくる。
「この結婚に異議を申し立てる」
当然のように凪や春蘭が立ち上がるが、声は大きく全員の耳を打つ。
「この結婚は民たちが望んでいない」
男は歩調を変えることなくカツコツと足音を確かに鳴らしながら毅然と進んでくる。
「異議のあるものは向かってこい」
男は私を抱きかかえると堂々と式場を出ていく。
「カズ……ト……?」
その声は魏の将であれば皆が聞いたことのある声だった。
その結婚式の珍事の後、魏の覇王と天の御遣いを見た者はいないと言われている。
………
……
…
…
……
………
「……なんて夢を見たわ!」
カリンが俺とバーンを呼んだと思えば、そんな結婚式の話をされたのだが俺とバーンは一度視線を合わせ一度頷き合うと、そっとカリンのおでこに手を当てる。
うちのカズトが魏に再臨して華琳が結婚するっつったら
花嫁(カリン)奪っていくだろうなーってことで書いてみた