主人公:城崎 輝夜(しろさき かぐや)
4月から白糸台高校に入学する高校1年生
ふわりとした栗色の長い髪と、少したれた水色の瞳が特徴的
麻雀は幼少期から行っているため、デジタルの腕は確か。しかし、オカルトの類はからっきしである
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輝夜「ーーーー、以上で新入生代表の挨拶を終わりとさせて頂きます」
(綺麗な人…しかも、「持ってる」)
ある者は運命を感じとり
(ふむ…高校生活、やはり緊張はするものだな)
ある者は露知らず、これからの生活に思いを馳せる
そんな彼女らの歯車が、動き出す
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episode1 邂逅
照(迷った…)
白糸台高校には旧校舎と新校舎がある。
授業を主に行う新校舎と、部活棟等が入っている旧校舎は渡り通路を挟んだ先にあるのだが
その渡り通路を見つけられないのが照である。
宮永照。赤色でツノのような髪型が特徴的な彼女もまた、麻雀部に入部を希望する1人であった。
白糸台高校麻雀部。3年前に発足したにも関わらず、都内でベスト8とそれなりの実力を誇っている。
西東京地区は突出した強豪はいないが、全国でも指折りの全体的なレベルの高さがあり、その中でのベスト8というものはこのチームの地力の高さを示す。
照(入部初日に遅刻はまずい…)
やっとの思いで麻雀部の部室の前に到着した照であるが、時計は確実に遅刻とも呼べる時間を指している。
入部するのは明日にしようか、等と逡巡している所に、思いも寄らず声をかけられた。
輝夜「あれ、キミももしかして麻雀部?」
照「…挨拶の人?」
どこかで見た事のある容貌は特徴的な事も相まって、すぐに思い出すことが出来た
輝夜「あはは…その話はちょっと恥ずかしいなぁ…。私は城崎輝夜っていいます、キミは?」
照「宮永照」
これが私達の、始まりの会話
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麻雀部に入部してから1週間が経った
照(お腹空いた…でも、今日も打つのは意外と楽しい)
1週間打ってみて、他人の大体の能力は「視えて」きた
輝夜「リーチです」
城崎さん、もとい輝夜は6歳から打っていたとだけあって地力の高さは部内でも上位に入る。
特筆すべきは放銃率の低さであり、部内ナンバースリーには食い込むであろう防御力である
菫「ロン、それです。」
そしてもう1人、菫。出会った当初にひろせさんと呼んだら物凄い嫌そうな顔をしていたので、菫と呼んでいる。
彼女は輝夜とは対照的に和了率、特にロンの割合が高い。
狙い撃ちが上手いのであるが、どこか不思議な力の様なものを僅かに感じさせる。
そんな彼女も和了率で部内4位と優秀な成績を残している。
しかし防御力も和了率も1位は照である
彼女はたった1週間で、部内にその存在を知らしめたのだ。
照(私も負けてはいられない、もっと強く、そして)
ある者は見据える。心の奥底に秘めた願いを。
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白糸台高校麻雀部は名門とは言わずとも、強豪クラスの実力はある。弘世菫はそう考えていた。
上等だ、その中でこそ自分を磨く事が出来る
同学年は20名弱と大勢いるが、その中でも特に宮永照と城崎輝夜は強烈な存在である。
まず、宮永照。
入部して1週間、彼女の強さは周知の事実となっていた。
こちらの全てをまるで視ているかの様な思考、無駄な打牌の無い打ち回し、勝負所の勘、どれをとっても死角がなく、誰も口にはしないが間違いなく部内最強の雀士であるだろう。
一方で城崎輝夜は突出した能力といったものは無い。
しかしある程度の上級者になると彼女のデジタル打ちの
正確さを理解する事が出来る。
経験に裏付けられた打牌は、普段の彼女の柔らかな雰囲気とは異なって自信に満ち溢れているように見える。
的確な打牌、攻め所と引き所を理解した打ち回しは綺麗なものである。
だが
菫(もちろん、私も負けるつもりは毛頭ないがな)
ある者は決意する。誰よりも麻雀も、心も強くなる事を。
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麻雀部にも慣れてきて、最近は朝練のための早起きも出来るようになってきた、気がする
先輩も同級生も、皆レベルの高い雀士ばかりで毎日学ぶ事ばかりの今を楽しいと思いながらも、同級生の中でも特に2人、気になる人物がいる
輝夜(宮永さんと、弘世さん)
高水準の雀士が揃う中でも特に突出している同学年の2人には、憧れと共に負けたくはないという気持ちを持っている。
これまではネットで1人で打っているだけであった自分は、これからどのような道を進めばよいのか。
今はただ、毎日の練習で積み重ねる段階であり、分からない。
私は今日も家を出ていく
輝夜「いってきます!」
返事の返ってこない、大きなこの家を
ある者は逡巡する。自分がこれから向かうべき、未来を。
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episode2 始動
監督「レギュラー決め、やるよ〜」
5月の初週、ゴールデンウィークを週末に控えた火曜日のミーティングで監督がいつものような調子で告げる。
部内ランキング、上は1位から下は50位まであるが、その中の1〜10位が一軍、11〜30位が二軍、それよりも下が三軍、という扱いになっている。
一軍のトップに君臨するのはもちろん照であるが、輝夜と菫も五指に入るかどうかという位置までは来ている。
それだけに、こうなる事も必然だったのであろう。
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監督「ん〜、城崎、弘世。他に2人面子加えて打って。」
レギュラー決めも終わりに近づいてきた頃、監督がそう告げた。
事実上の一騎打ち。
この勝負がレギュラーかどうかの分水嶺になる事は、誰の目から見ても明らかであった。
輝夜「はい!」
菫「はい」
お互いに気が合わない訳ではない。
むしろ、互いの練習への取り組みは尊敬し合う2人であるが、今は互いを喰らう事を考えるしかない。レギュラーの椅子は、5つしかないのだから。
ここまでの試合でランキング単独トップに君臨する照もこの勝負には気を引かれ、観戦する事に決めた。
今、賽が振られる。
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東場は輝夜の優位で進んだ。
輝夜「ツモです、1300、2600」
輝夜「ロンです、3900」
しかし、菫もタダではやられない
菫「それだ、ロン」
一軍の3年生への跳満直撃、2人の点棒に大差はなくなる
一進一退の攻防は続き
半荘もオーラスを迎えた。トップは輝夜の35400点であり、菫が34000点とすぐ後に付けている。
和了った方の勝ち、単純でわかり易い状況である。
菫「…」
菫手牌
567三三三九九②③④⑤⑦ 九
照(迷い所。⑦が一見綺麗な良形手への近道、だけど)
輝夜手牌
111234777②②⑤⑥
照(城崎さんはそこを塞いでいる。この人はさっきから、しっかりと場を見ている)
菫(普通に考えたら⑦切りだ、しかし)
なんだ、この違和感は。
狙われているはずなのに、むしろこう…獲物を探している時の高揚感…?
少なくとも今はこんなものを感じる場面では無い
しかし
菫(私は…私を信じる!)
菫「リーチ!!」
菫 打三
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照(…へぇ…なるほどね)
感じてた違和感は、不思議な物の類であった事を確信した。
照(他家を狙い撃ちする能力…)
本人はまだ気づいていないか、確信していないかの段階であろう。
照(一方で…)
輝夜「っ…」
輝夜手牌
234777②②⑤⑥⑥⑥ ⑥
輝夜(もしも上家が⑤待ちじゃなかったらな…くやしい…けど…)
輝夜 打⑥
菫「ロンッ!!」
菫の凛々しい宣言で、静かな激闘に幕が落とされた。
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漢数字→萬子
数字のみ→索子
○と数字→筒子
です!
闘牌描写はあっさりとしたものにしていく予定です、見にくいところ等のご指摘待っています!