オラリオの絵描き   作:ナギ丸

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第1話

薄暗い工房に筆が走る音だけが響く。絵を描き終え、筆を置き、背伸びをする。

「ふぅ~~。」

長い溜息が出る。なかなかの作品が出来て、達成感と心地よい疲労が混ざって気持ちいい。主神に見せるか。そう思い、支度をする。

 

迷宮都市オラリオ。世界と中心と呼ばれる場所。俺はそこで画家をしている。ここでは神のファミリアに入り、【神の恩恵】を与えられ、モンスターを倒して魔石などを得る冒険者が人気だが、それ以外の人間もたくさんいる。ギルド職員もそうだし、商人や酒屋、宿屋などその種類は多岐にわたる。だから、画家というのもそこまで珍しくないのだが俺のようにファミリアに入っている画家はそういない。そう、俺は画家でありながら冒険者であると言う二足の草鞋を履く男なのだ。周りからは散々変わり者呼ばわりされているが、もちろんこれには理由がある。 

 子供の頃から絵が好きだった。身寄りが無く、預けられた孤児院の壁によく落書きして大人に怒られた。孤児院を出ると、絵でなんとか小銭を稼ぎ、その日暮らしをしていた。売れない画家と言うやつだ。このままではいけないと故郷をを飛び出し、オラリオに向かった。

道中、身ぐるみ剥がされたり、奴隷落ちなりかけたりしながら、何とかオラリオに着いた。多種多様な種族、見たこともない物、たくさんの神。自分の世界はなんて小さいものだったのかと感動に打ち震えた。その感動を全財産はたいて買った画材で描いた。馬鹿だとは思うが、それまでの人生で一番良く描けた。もうこれが売れなかったら、終わりだな~と思いながら、市場に座り込んだ。市場と言っても店と店の間の小さな路地だ。左右の店主にお願いして、居座らせた貰った。絵は、今見ると安い画材と衝動に任せて描いたものなのでとても見れたものじゃない。しかも、誰も気づかないような場所で売っているのだから、当然売れなかった。疲労と空腹が蝕んでいくのが分かった。ふと、暗くなった。顔を上げて見ると大男がいた。まだ若いが正に戦士と言った風貌であった。

「いくらだ?」

男が自分の絵の金額を聞いていると理解するまで時間が掛かった。もう撤収しようかと思い始めていたからとても嬉しかった。

「あんたが決めてくれ。」

だから、その男に任せることにした。今なら自分の絵は誇りを持って人に値段を決めさせるようなことはするなとか、もう一ヴァリスも無いのだからそんなことやめろとか思うが、その時は任せて見たくなった。この男が決めたのならば俺も満足できる。何故かそう思った。

 男は、ズボンから袋を取り出し俺に投げた。

「また来る。」

そう言い残し、去っていった。袋を覗くとそこには大金が入っていた。既に第三級冒険者であった彼にはそれほどであったかもしれないが当時の俺にはとってもびっくりした。その金で生活できるようになり、絵を描き、それをまた男に売った。余り絵なんて興味がないような見た目をしていたが、男は定期的に買って行った。男が俺が居る市場に来るのは大体絵を買いに来た時なので、目立つ彼が来ればすぐに行き、絵を売った。段々と余裕が出来てきて、少しずつオラリオについて知っていくと男が有名ファミリアに所属していることを知った。ダンジョンが危険と言うことは知っていたので、男に護衛を紹介して貰えないかと頼んだ。ギルドに頼んだときは危険だという理由で断られたからだ。男は自分も用があったと言い、ついてこいと言った。そして、俺は彼の主神と出会った。その神は美しく妖しい色気があり、男であれば逆らえない。そう本能で分かった。

その神は

「自分で潜ればいいじゃない。」

と囁いた。自分には冒険者は無理であるのと、自分を入れるようなファミリアはどこにもないと返した。

「私のファミリアに入りなさい。」

そう言われて拒否の言葉を言える男はいないだろう。そうして俺は冒険者になった。

 

摩天楼施設『バベル』迷宮都市オラリオの中心にそびえ立つ塔の最上階。そこは、頂点に君臨する【ファミリア】の主神の特権だ。その部屋の扉をノックする。

「失礼します。フレイヤ様、お久しぶりです。」

 

俺、レイ・マスタングの主神様はフレイヤ様であり、俺は【フレイヤ・ファミリア】の副団長である。

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