「目が覚めたら面白そうなことをしてるじゃねえか」 作:ROGOSS
「派手なファンファーレくらい用意してくれてもいいじゃねぇか」
真っ赤にカラーリングされたレウルーラの格納庫にデルタプラスを着陸させる。
先の戦闘で数機の味方が撃破されたようだが、俺の活躍に比べれば微々たる犠牲に過ぎないはずだ。
「もしかしたら、こいつは雇い主を間違えたかァ?」
一瞬だけ思考を巡らせるもまだ答えを出すのは早いと判断し、俺はコックピットから降りた。格納庫には整備兵がせわしなく動き続けている。そんな中で優雅に拍手をしながら健闘をたたえてくれるマスクの男が目立たないはずがなかった。ヘルメットを外し、いつもの癖で右手を肩にまわして持つ。フル・フロンタル大佐は拍手を止めると「さすがだ、サーシェス君」と話しかけてきた。
「そいつはどうも」
「君の戦果に見合った歓迎ができない無礼を詫びよう。だが、君の提示した報酬は必ず支払う約束はする」
「そいつはありがたいね。ボッたくられでもしたら今すぐこの船を撃ち落としたくなっちまう」
「それは困るからね。案外、私はレウルーラを気に入っているんだ」
「だったらよ……」
俺はフロンタルへと近づいた。額同士が触れ合いそうになるまで近づくと動きを止める。
「なるべく早く報酬は支払ってくれよ。俺は雇い主の言う事はこなすがおとなしい飼い犬になるつもりはないんでな」
「アリー・アル・サーシェス! 先ほどから大佐への無礼が目に付くぞ!」
「アンジェロ大尉、良いんだ。彼の言っていることは当然のことだ。 さてサーシェス君、次の仕事の話をさせてもらってもいいかな?」
「もちろん構わないぜ」
俺が同意するとフロンタルは一枚の写真を撮り出した。美しい金髪を綺麗に短髪に整えている少女が映っている。
「彼女の名前はミネバ・ラオ・ザビ。少しおてんばが過ぎるところがあるが我々ネオ・ジオンの正当な末裔と言える」
「ほぉ……そいつをどうするんだ?」
「彼女は今、サイド4のスペースコロニー・インダストリアル7へと向かっていることが彼女の監督者であるジンネマン大尉から報告を受けている。至急、彼女の保護をしてほしい」
「子守はごめんだ」
「安心してほしい。中立コロニーであるインダストリアル7での戦闘は禁じたいが、どうやらきな臭い連邦の動きがある。ガンダム……といえばいいだろうか?」
「ガンダム、ね……」
面白い単語が出てきた。
ガンダム……あのとんでも兵器がこの世界にもあるのならば是非ともこの目でもう一度拝んでみたいものだ。そしてあわよくば……この手でもう一度……
「インダストリアル7までは我々も向かう。しばらくの間は休みでも取っていて欲しい」
「わかった」
俺は手をヒラヒラと振ると格納庫から出ていった。あてがわれている部屋へと向かっていく。
「アリー・アル・サーシェスッ!」
唐突に声をかけられた。
「俺はお前を認めない」
「俺はアンタに認められたいなんて思っちゃいねぇ」
アンジェロ・ザウパー大尉は怒り任せに壁を叩いた。鈍い音が廊下に響き、近くにいた者達は腫物でも見るかのような目で足早に立ち去っていく。
「お前が現れた日に落としておくべきだった」
「あれだけこっぴどくやられておいてよくいえるぜ。アンタを守るために仮面男はわざわざ出てきたんだろ」
「大佐を侮辱するのか?!」
「事実を言ったまでだ。俺は大将の言う事は聞くがアンタの命令を聞く義理はないぜ。せいぜい、もっと腕を上げてから出直してくるんだな」
「サーシェス!」
アンジェロは大声を上げる。無視して俺は部屋へと歩みを続けた。
どこの世界でもよく吠える犬はいるもんだ。己の実力がない事を理解せずにただ拳を振り回すだけの駄々っ子。迷惑極まりない存在だ。
「どうでもいいがな」
あの坊ちゃんが何と言おうとも現段階では、気にすることなどない。
俺が今、一番楽しみな事はガンダムとの再会だ。
「待っててくれよ、ガンダム」
ニヤリと笑いながら俺は部屋へと入っていった。