袁公路の死ぬ気で生存戦略   作:にゃあたいぷ。

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袁家の人間は不安よな。


間幕.七乃動きます。

 大陸各地に点在する張姓ではありますが、

 その中でも汝南郡にある張家と云えば、代々より汝南袁家に仕える暗部のことを意味する。

 この大陸には東洋の島国から忍者と呼ばれる一族の末裔が存在しているが、あのように行動的な存在ではなく、もっと現実的に卑劣な手段を用いることを得意としている。例えば、古くからある酒場をまるっと買い取って従業員だけをすり替えることで、信頼ある老舗の看板を付けた酒場を情報源にする手法を用いたり、娼館の運営をすることで裸の付き合いをした相手から情報を仕入れたりと暗部関連の組織運営を生業とする。

 そんな張家が今回、楊宏の監視に付いたのは屋敷で不穏な動きがあるという話を聞いたからだ。

 屋敷は袁逢から下贈されたものであるが、その屋敷に近頃、使用人と思われる少女が住み着くようになった。この少女が何処まで袁家の事情について知っているのかわからないが、街中では暗部らしき者と接触している――という話を暗部の者が入手しており、張家の現当主は一門の者を送り込んで直接、監視をすることになった。

 監視に留めているのは、楊宏が要注意監視対象であると同時に保護対象でもある為だ。その命を奪うことは許されず、しかし忠告としても拷問は許されている。私が派遣されたのは、楊宏に余計なことをさせないようにする為の抑止力の役割を期待されてのことだ。まあ大した仕事ではない、少なくとも私のような組織から抜けても大した問題ない末端に任されるような御役目である。

 適度に手を抜き、最低限の成果を。それが私が持つ人生哲学。

 

 これが退屈で楽な仕事だと認識した私は意気揚々と楊宏の屋敷へと赴き、堂々と潜入を果たした。

 私の役割は諜報活動ではなくて抑止力である以上、正体を隠す必要はない。お前は監視されている、と訴えることに意味がある。必要以上の敵意を与えて追い詰めすぎず、さりとて威圧感は与えておく為に、馬鹿正直に堂々と名乗ったりはしない。あくまでもまだ監視対象、決して懲罰対象ではないことを忘れてはならない。

 とりあえず、今はそれだけをしておけば良い。家事は必要最低限、ぐうたらと怠けた人生を満喫する。

 世の中で、よく謳われているように一生懸命、汗水流して働くことなんて馬鹿らしい。他人の金で食う飯は格別に美味しくて、楽して稼ぐことこそが人間の生きるべき道だと思っている。真面目で真っ当に、なんていう言葉は搾取する側の人間が使う言葉だ。経営者の夢は無料で真面目に働いてくれる労働者だと相場で決まっている、それができないから格安で真面目に働く労働者で妥協する。

 真面目で真っ当なんて、まったくもって馬鹿らしい。

 

 朝、目覚めた後に簡単な身支度を整えた私は実家から楊宏の屋敷に足を運ぶ。

 太陽も昇り切っていない時間帯、通りを吹き抜ける風は肌寒かった。まだ眠気の引き摺っている体には丁度良いかもしれないが、まだ商店街に建ち並ぶ店も閉ざされているのに仕事に赴くのは億劫だ。どうせ使用人という設定で楊宏の屋敷に潜り込んでいるのだから住み込みで働いても良かったかも知れない。監視の意味合いを考えれば、寝食を共にする方が効率が良いのは事実だ。

 しかし、それをしたくない理由がある。

 私が独自に集めた情報によると彼は袁家の屋敷に住む全員と肉体関係を持つ性欲の塊なのだ。嘘のような真の話、私も最初は信じていなかった。袁家の秘術とは何か、障りだけは知っていたのでありえない話ではないと思ったが、いや、しかし、三日三晩も休憩なしに屋敷の全員を満足させるというのは、どれだけ絶倫で化け物なのだ。

 同じ屋根の下で過ごしていられない、と身の危険を感じた私は男装することで同性を装った。

 幸いにも私は変装する為に髪は短くしているし、声色を少し変えてやることで少年と同質の声を発することができた。実際、仕事で男性として行動することも少なくなかったので、そうすることに違和感はない。私は自らの貞操を守る為に全力を尽くす所存である。

 同棲しているという少女もきっと調教済みに違いない。

 

 この名探偵七乃に死角はありません!

 

 そんなこんなで楊宏の屋敷に辿り着いた。

 う〜寒い、と冷たくなった合鍵を片手に玄関に上がる。靴下は厚め、先ずは台所に出向いて朝餉の準備を整える。

 基本的には昨日、用意していたものを温めるだけだ。少しすると女装姿を強制されている屋敷の主人が現れるので先に茶を淹れて、食事の準備ができるまで机で待って貰う。そして朝餉を机に並べる頃合いに同じ使用人の程立が見計らったように寝間着のまま姿を見せる。まだ眠たそうに瞼を擦る程立に「ご飯の前に顔を洗ってきたら?」と楊宏は声をかけると「ん〜そうしますね〜」と少女は重い体を引きずるように台所へと向かっていった。のんびりとした会話、緩い日常。使用人が戻ってくるのを待つ主人。顔を洗って、幾分かすっきりとした顔付きの少女が主人の隣の椅子にちょこんと座り、「いただきます」と二人揃って手を合わせてから食事に手を伸ばした。とても主従にあるとは思えない二人の関係性。黒と金、髪色は違っているが少し歳の離れた姉妹のように感じられた。

 さて、ここで働くようになってから一週間が過ぎている。

 今のところは二人に不穏な動きはない。色恋沙汰もなければ濡れ場もなく、ついでにいえば修羅場もなかった。寝室の掃除をした時、敷布に不自然な皺や染みがなかったことから子供禁制の事態に発展していなかったことは分かっている。元より二人が一緒の寝室に入るところも見たことがない。私の前だから遠慮している可能性はある。しかし二人で外に出ることもなければ、恋仲、もしくは愛人関係であったとしても肌の触れ合いが少ないように感じられた。互いに自然体の会話を交わしており、異性として意識しているようにも見えなかった。

 あれ、もしかして、私の勘違いだろうか? 私はなんという過ちを……(節穴)

 

 名探偵七乃は本日を以て廃業しました。

 

 更に二週間が過ぎた、ある日のことだ。

 程立と良い感じに分担しながら仕事を熟していた時の話、「付き合ってくれませんか?」と将棋盤を両手に持った程立が話しかけてきた。必要のある時しか関わってくることがない程立に少し不思議に思いながらも、退屈凌ぎには丁度いいかな、と深く考えもせずに承諾する。監視対象の楊宏は週に一度か二度しか帰って来ないし、要注意人物に指定されている程立も今のところは不穏な動きを見せていなかった。毎日、飽きもせずに書籍を読み漁っており、時折、外に出たかと思えば新しく書籍を仕入れるだけだ。家事が昼過ぎには終わってしまうこともあり、とにかく私は暇を持て余している。

 それに私は将棋や囲碁といった盤遊戯が得意で、そんじょそこいらの相手には負けない自信がある。

 事実、彼女との一局は私の優勢で事が運ばれていた。

 

 程立は駒に指を添えようとして、考え込む素振りを見せた後に顔を上げる。

 

「そうですね〜、ただ勝負するだけっていうのは味気ないですね〜」

 

 程立がにんまりと笑みを浮かべて告げる。

 

「ちょっと賭けでもしてみませんか?」

 

 私は少し考え込む素振りを見せる、振りだけだ。

 パッと見た感じでは互角の局面だが、私には勝ち筋が見えている。そして先程、程立が手を伸ばそうとした先にある駒は私の勝利をより確実にする為の一手だ。これは勝ったな、と私は込み上がってくる笑いを堪えながら眉間に皺を寄せる。大人しそうな見た目とは違って、目の前の少女、程立は意外と博打が好きな性格のようだ。だが、勝負とは勝利を確信している時に行うべし、そうでなくとも優勢の時に勝負は仕掛けるものだ。程立の顔を盗み見る、その挑発的に浮かべた笑みは裏がないことを示している。策士とは、こういう時は表情を隠すものだ。今、私がそうしているように!

 だ……駄目だ。まだ笑うな……堪えるんだ……し、しかし……程立、笑いを堪えるのがこんなに大変だとは思わなかったですよ。

 

「意外と博打が好きなんですね」

 

 当たり障りのないことを問いかけると「そうですかね〜?」と程立もまた当たり障りのない言葉で躱した。

 きっと彼女は嘘を吐くのが下手なのだと把握した、これはもう負ける要素がない。

 

「何を賭けるおつもりで?」

「そうですね〜、お互いに誰にも話せない秘密を喋るというのはどうでしょう?」

 

 履いている下着の色とか、いつも自慰をしている回数とか。その時に使っている道具を御披露目とか。

 そう楽しげに語ってみせる程立に「自分はしていない、はなしですよ。その場合はもう一度、質問し直しますから」と条件を付け加える。もちろんですよ〜、と私を見据える程立の雰囲気が変わる。今、この時になって、ようやく私を仕留める気になったようだ。だが、もう遅い。将棋には自信があるようだが、次の一手、それで局面は覆せなくなる。

 程立、貴方の敗因はただ一つ。やる気を出すのが遅過ぎた、それだけだ。

 

「それでは……私は自らの真名、風に誓って、この約束を違えないことを約束します」

 

 見せつけるように指先で駒を摘んで、そして挑発的に私を誘ってくる。

 

「では私も自らの真名、七乃に誓って、この約束を違えないことを約束しますね」

 

 程立はまだ勝負が決まっているとは思わず、勝利する可能性があると信じている。

 だが、まだ次の一手を差していない。次の手を打つまで悟られてはまずい、その場合は勝負の行方がわからなくなる。

 彼女が駒から指を離してから勝利宣言をしよう。

 

「言いましたね?」

 

 すっと駒を戻すと、その手で隣の駒を横に滑らせた。

 

「待ったはなし、ですよ」

 

 あ、これまずい。形勢が覆ったことを直感的に悟る。

 いや、まだだ、まだ勝負が決まった訳ではない。くしゃりと髪を掻きながら盤面を見つめる。しかし、考えれば考えるほどに相手が私を追い詰める手が次々と思い浮かんでいった。

 ま……負けるですか? 私は負けるですか!

 

「あまりこういうことを言う趣味はありませんが〜」

 

 程立は振袖から棒付きの飴を取り出すと、それで口元を隠すと嘲笑うように目を細めた。

 

「計画通り、と言っておきますね〜」

 

 その後、程立の手堅い戦術を打ち崩せずにじわりじわりと追い詰められて負けてしまった。

 

「策士、策に溺れる。とはこのことですねえ」

 

 くわばらくわばら、と余裕ある声が脳裏に響いた。

 呆然とする頭で程立の顔を見やると、彼女は初めて感情を込めた顔で私のことを見つめていた。

 それは酷く腹が立つにやけ面だった。

 

 

 勝負を終えて数分後、

 程立は盤上に並べられた将棋の駒を、じゃらじゃらと意気揚々に片付けている。

 能ある鷹は爪を隠す、と云うが彼女がそう。無害そうな顔をしてとんだ狸だ、と内心で悪態を吐き捨てた。賭けを始める時に真名に誓っている為、ある程度のことは喋らざる得ない。綺麗に嵌められた、ということからも覚悟はしている。何を聞かれることになるのか、戦々恐々とする私に「新しく茶を淹れましょう」と程立が提案する。どれだけ焦らすつもりかと、絶対に性格が悪い。用意した急須から白い湯気の立つ液体が、こぽこぽと二人分の湯飲みに注がれる。茶請けまで用意される徹底ぶり、えっなに、そこまでじっくりと話を聞くつもりなんです? 程立は無害そうな顔で一口だけ茶を啜り、ふうっと息を吐いた。

 それからゆっくりと私の顔を覗き見る、それだけで心臓が握り締められるようにごりごりと精神が削られる。

 

「まあ勝負に負けたからと言っても話せないことは多いと思いますがー」

 

 ゆったりとした言葉遣い。楽しんでやがるなあ、とじっとりと睨みつけてやると程立は困ったようにはにかんだ。

 

「胸襟を開いて語り合いたいと思った次第です」

 

 そんなことを彼女はほざいた。はい? と思わず、問い返してしまった。

 

「正直に云うと手詰まりなのですよ。流石は汝南袁家と云うべきでしょうかー。誰かを雇うにもひと苦労で、雇えたとしても袁家の防諜能力には敵いません」

 

 むむむ、と眉間に皺を寄せる少女を前に私は呆気に取られる。

 まさか自分からあっさりと手の内を明かすとは思っていなかったからだ。

 敵対行動を取っている、と自ら宣言する言葉に身構える。

 

「敵になるとは言っていませんよ?」

「今、正に宣戦布告も同然の言葉を聞いたような気がしましたけど?」

「敵になるも、味方になるも、正直いうとまだ決め兼ねています」

 

 程立はズズッと茶を啜り、唇を潤して告げる。

 

「貴方と(ふう)で手を組みましょう。風はまだ好奇心旺盛なだけの女の子なんですよ」

 

 満面の笑顔、作った笑顔で告げられる。

 

「私は貴方を信用していませんよ?」

「風も貴方のことを半分程度しか信用していませんからおあいこですねー」

「それで手を組めなんて無茶じゃないですかー」

 

 茶請けを口に放り込んで、ぼりぼりと頬張る。甘くなった口に茶を流し込めば、丁度良い味加減になった。

 相変わらず、どこまでが本気で、どこまでが冗談なのかわからない。

 

「なので、お互いに話し合いの場を設けさせてもらいました」

「……真名を賭けてまで場を整える必要ありました?」

「その方が話し合いもスムーズに進むと思いましたのでー」

 

 すむぅず? と聞き返すと、円滑にって意味です。と程立は端的に答える。

 

「勝負に負けたからと言っても話せないことは多いと思いますが、胸襟を開いて語り合いたいと思った次第です」

 

 仕切り直すように改めて告げられる。

 言いたいことは色々とあるが、とりあえず今は茶を飲んで、彼女の出方を窺うことにした。

 もう一度、茶を口に含み、喉を潤してから程立は言葉を発する。

 

「最初に聞いておきたいのですが、貴方は汝南袁家の諜報員ということでよろしいでしょうか?」

 

 仕切り直してからの第一声に、そこから? と思わず転びそうになった。

 

「ちょっと待って……貴方は、楊宏が雇った諜報畑の人間ですよね?」

 

 頭を抱えながら問いかけると、はて? と程立はわざとらしく首を傾げてみせる。

 

「食指が動かないわけではありませんが、そのことを御主人様は知らないと思いますよ?」

「じゃあ、どうして貴方を雇ったのです?」

「屋敷の管理さえしてくれれば誰でも良かったようですねー、私に求められたのも家事能力だけですし」

 

 そう告げる少女は面白いものを見つけた時のようにくすくすと肩を揺らした。

 これでも私は張家の中では、とびきりに優秀だと言われている。性根の腐った張勲と称されることもあるが、それはそれ、私が持つ才覚を乏める言葉にはならない。そんな私を相手に鮮やかに嵌めてみせた彼女の才覚は私よりも格上だとわかる。それは初めて彼女と顔を合わせた時から感じていた違和感のはずで、彼女の才覚を知った今、その存在は歪に照らされていた。

 つまるところ、彼女がただの使用人として、此処にいることが歪だった。

 

「……貴方は、どうしてここにいるのですか?」

 

 その質問をした時、程立は愉悦に顔を歪めてみせた。

 

「よりにもよって、その質問を先にするのですね? 他にも聞くべきことは多くあるというのに、違和感に気付いたら真っ先に問いかけるですね? 風が敵か味方か、を確認するよりも先に、風の正体を訊くよりも先に、急所を捉えますかー」

 

 敵か味方かを確認することは必要なことだ。彼女の正体を知ることは重要なことだ。

 その二つよりも先に私が知りたいと思ったのが彼女の目的だった。

 程立は楽しげに甘味を頬張りながらただ一言、「理由はないですよ」と不条理に告げる。

 

「強いて理由を上げるとすれば、ここは私にとって縁も所縁もなかったことが理由として挙げられますねー」

 

 じとっと睨みつけると程立は「本当のことですのでー」と私の視線から逃れるように顔を背けた。

 

「勘の良い小娘は嫌いだな」

 

 程立は振袖で口元を隠しながら、あたかも頭の上に乗っけた趣味の悪い人形が喋ったかのように振る舞ってみせる。

 

「あ、こらっ、他人を小馬鹿にした態度を取ると、めっですよ」

 

 ポカリと人形の頭を叩く彼女の振る舞いこそが他人を小馬鹿にしていると思うのは私だけだろうか。

 

「……なら、どうして影の者を雇ったりしたのですか?」

「それはまあ、一応、私の主人は楊宏様ってことになっていますのでー、一宿一飯の恩という訳ではありませんが、義理くらいは果たそうと思ったわけですよー。冴えない面をしている割には汝南袁家の屋敷に招かれているのですからびっくりしました」

 

 司書って聞いてましたよ、と程立は半目で不貞腐れる。

 さて、この程立という少女。字面だけを受け止めるのであれば、今は敵でも味方でもない。それを判断する為の情報が足りていないのは事実なようであり、その情報を収集する為に私と手を組みたいと言ってきていているようだった。ただ彼女は腹芸ができない人物ではなく、その智謀は決して軽視して良いものではない。

 重要なのは、彼女は仮にも楊宏に仕える人物。そして他とは縁を持っていない、という点だ。彼女は孤立している、そうでなくては危険を犯してまで獅子身中の虫と分かっている私と手を組む理由がなかった。

 それもまた彼女の言葉を信用すればこその話であるが――――

 

「貴方の目的は?」

 

 ――分かるのは、彼女を放置していては危険という一点だ。

 

「今の穏やか生活が維持できれば、と思っていますねー」

 

 じいっと程立の目を見つめるが、彼女の瞳に嘘を吐いている気配はない。

 後ろめたいものがある時、人は視線を逸らす。絶対に隠したい何かがある時、人は見つめ返してくる。しかし彼女はまるで腹の虫を探られることを恐れていないように自然体で私の視線を受け止めた。逆にこれは異常だった。目を見つめられると人は少なからず、身構えるし、動揺や困惑、焦燥が生まれる。

 つまり、余裕があるということ。そこを探られても痛くない、ということは探られて痛い腹はあるということだ。

 

「そういう貴方の目的はなんでしょう?」

 

 問い返されて、私は素直に答えるべきか迷った。

 

「……それはもちろん張家の繁栄ですよ」

 

 迷った末に、嘘ではない言葉を告げる。

 なにかの為に熱心に生きるつもりはない。適当に生きて、適当に馬鹿やって、楽しく生きられれば良いと思っている。ただ自分の為に張家を犠牲にしても良いとも思っていない。私には汝南袁家に対する忠誠心はなく、張家に対して服従もしていない。そこにはただ情があるだけだった、情があるが故に私は張家を裏切るつもりもない。繁栄してくれれば良いな、とも思っている。繁栄させるのは私ではない誰か、という前提の話だが。

 なるほど〜、と程立は意味深に笑みを浮かべると改めて手を差し伸べてきた。

 

「損はさせませんよ」

 

 と告げる程立の手を受け取り、「楽はさせませんよ」と返した。

 困りましたね〜、と目を細める程立は何処か楽しげだった。

 

 

 




新年明けましたおめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
私は軽く筆が詰まっており、仕方ないのでアトリエ黄昏シリーズのプレミアムボックスを買いました。
アトリエをやらなきゃって思ったら、筆が進むようになりました。

暫く間幕が続きます。

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