ドイツ帝国
内閣は荒れていた。
というのもドイツの、ゲッベルスの思惑と現実があまりにも違うからである。
ゲッベルスの作戦はパーパルディアを煽り、虐殺を起こしそれを理由にトラウマを抱えるドイツ国民を立ち上がらせる。さらに列強国であるパーパルディアを倒すことにより世界中にドイツ帝国という名を轟かせるのが目的だった。
轟かせた後適当なところでパーパルディアと講和するつもりだったのだ。
そのためにカイオスのクーデター計画を利用し、資金や情報を第三国経由で、ドイツが関わってないように提供していた。
それが、クーデターは失敗。反乱軍の発生によりカイオスを始めパーパルディア幹部全てが死亡。
突如出現した反乱軍を概ね倒したものの、
陸軍も半壊しておりこのままでは講和どころの話ではない。
パーパルディアが消滅する。
経済大臣ヒャルマル シャハトはゲッベルスに質問する。
「現在、戦費はまだ賄うことはできますがこれ以上出すのは無理だ!このままいけば資金不足で食料輸入もきつくなりカブラの冬を繰り返すことになるぞゲッベルス!」
カブラの冬 それは1916年から17年に起きた大飢饉の事だ。
穀倉地帯であるフランス、ロシア、ルーマニアとの戦争による食料輸入量の減少。
イギリスによる、ドイツへの輸送船を取り締まる海上閉鎖によってアメリカからの食料も閉ざされる。
農民は軍需工場や兵隊となり人が足りなくなる。
豚が食糧を食べるから豚を減らせばいい。
この噂が流れたことにより動物性タンパク質の不足と、解体すら出来ないレベルの人手不足。売り出されることも無く腐る豚肉。
肉不足による、肉の傘増しの為にじゃがいもを入れ始める。
さらにここへくるじゃがいもの凶作。
食料でもないカブラを食べ始め飢えをしのごうとしたがそれでも収まることはなく大量の餓死者を出した。
さらにこの後スペイン風邪が襲ってくる訳だが、この時のドイツの死者数はとんでもない数でありもしせめてロシアを相手にしなければ良かったとヴィルヘルム二世は語った。
ゲッベルスは答える。
「まさか、パーパルディアが壊滅するとは思いませんでしたよ。」
誰だってそうだろう。まさかパーパルディアの反乱軍がカイオスの相棒だったなんて。
反乱軍というのはここにいる人達全員知っている。何しろ第2皇子が暗殺されかけたのだ。一時期は反乱軍壊滅作戦なんて出たが実行できる訳もなく見送られた。
その反乱軍がこんなに脅威だったとは。
「ここまで来たらもう、パーパルディアを直接占領するしかないでしょう。マンシュタイン元帥、可能ですか?」
マンシュタイン元帥は答える。
「可能か不可能かで言えば可能です。空挺降下作戦と強襲上陸作戦を両方共にやればの話ですが」
「となると海軍の方の意見を。レーダー提督」
レーダー提督は、資料を持ちながら喋る。
「現在、主力艦隊はアルタラス王国にて待機しています。そのため出撃は可能であります。ですが強襲上陸用の船をまだ運んでないため直ぐに実行することは出来ません。1週間、待ってください」
「ということは可能なのか」
「はい。現在、最新鋭の強襲揚陸艦を配備したため以前より上陸が楽になっているかと。」
レーダー提督は皆にその書類を配布する。
シュレスヴィヒ=ホルシュタイン級強襲揚陸艦
元々1930年から計画された、対イギリス連合上陸作戦の一環で考案された強襲揚陸艦計画。
普通の上陸艦艇では一度に運べる数も少なく大量の輸送船がいるため効率が悪い。さらに戦車もどうにか運べないか考え、1934年2月
「どうせなら上陸用の兵だけを運べる船を作ればいいんじゃね?」「でも一度にたくさんの兵を送れるようにしようとしたらどうしても大型になる。それでは浅瀬の海岸にたどり着けない」「ならいっその事中に上陸艦艇入れればよくね?ボートとか?」「いいなそれ!」「じゃ、戦車も運べるよう改造するわ!」「戦車は戦車用で分けようか!」
という発想を実現したのがこの船だ。
シュレスヴィヒ=ホルシュタイン級強襲揚陸艦
ホルシュタインと
シュレスヴィヒ
設計者がシュレスヴィヒ=ホルシュタイン出身でどうしてもこの名前を譲らない。だがシュレスヴィヒ=ホルシュタイン戦艦は実在するため、(現在は無い。)2分することで決着がついた。
ホルシュタインは兵員用でシュレスヴィヒは戦車用と使い分けられている。
ー問題を変態的な技術と発想で解決するのがドイツー
一度に運べる人数は最大2000人が限度だが、パーパルディア相手には十分であり足りない分は往復すればいいだけ。
なおこれの一回り大きい新型強襲揚陸艦の建造も始まっている。
メーメル級強襲揚陸艦(仮)
「これがあれば上陸できるのでは?」
「ええ。19世紀のイギリスも裸足で逃げ出しそうなパーパルディア海軍は既に半壊。ですが距離の問題で上陸してもしばらくは数の暴力に晒されます。なので出来ればそれを少しでも減らして欲しいのです」
弾に余裕はない。
「なら安心してください。このゲッベルスに作戦があります!」
他の人は彼の作戦を尋ねる。
「この作戦は成功率が高いかと。カイオス無き今、パーパルディアは事実上無政府状態です。軍部の中佐が臨時政府を指揮してるようですがほとんどの支持を得られていない。だが、彼より支持を得られさらに我らが占領しても負担がかからない方法が一つだけあります」
「それは?」
「レミールを。彼女を皇族として、パーパルディア皇帝として即位させパーパルディア帝国を作り、臨時政府を倒せばいいのです!」
ただでさえカオスな状態のパーパルディアに内戦という新たな要素をたすことによりこの混沌を収束しようとしているのだ。
「もし、レミールがこちらに反旗を翻したらどうするのかね?」
「それについてはご安心を。第二皇子とレミールを結婚させれば問題ありません。」
「パーパルディアに行くことになりますが問題ありません。定期的に帰国すればいいのですから」
ドイツがパーパルディアを直接占領すれば統治がかなり困難になるだろう。文化の違う場所を統治するのは困難だ。それは世界大戦後、アジアの統治やロウリアの統治で経験済みだ。ロウリアでは何件も文化の違いによる問題が多発している。
レミールには半ば強制で合意させ、第二皇子と結婚。
そのごパーパルディア帝国を建国させ本格的な内線がぼっ発した。
◆◇◆◇
2週間後ー
オランダ王国
議会
ヘンドリクス コレイン 首相 は、ありのままのパーパルディアの惨状を女王含めて皆に報告した。
レミールをトップとするパーパルディア帝国は、ドイツ帝国の援助の元、パーパルディア皇国に宣戦布告し内戦に突入。さらに皇都にドイツ軍が上陸し制圧したことにより国民の半分がパーパルディア帝国についた。
そのごパーパルディア帝国は74ヶ国連合と和平を結び、パーパルディア皇国を追い詰めた。
また反乱軍はパーパルディア帝国と皇国両方共に戦闘しており各地でゲリラ戦を繰り広げるものの弱ってきているが反乱軍のリーダーであるディーノはまだ捕まっていない。
さらに、レミールと結んだ契約は、カイオスの死亡により消滅。パーパルディアの利権はほぼ全てドイツへ流れるだろう。
要はオランダは、ドイツとの利権競争に負けた。向こうにその気がなかったとしてもオランダはドイツに負けたのだ。
「さらにもうひとつ、反乱軍が図書館を焼き払ったとの情報が」
「どうしてこうなったんだ!!」
◆◇◆◇
デンマーク
クリスチャン フォン グリュックスブルク国王(親独派)
は、コペンハーゲンを眺めながらワインを飲んでいた。
「ドイツ帝国か。我が国がシュレスヴィヒ=ホルシュタインをドイツに奪われたのは痛いが、それを抜けばいいパートナーだな。
栄枯盛衰。どんな国も衰えるか。我が国も昔は北欧を支配してたのに今や弱小国だ。ドイツ経済に依存しすぎないようにしとけよトルヴァル首相ー」
◆◇◆◇
オーストリア帝国
このパーパルディアとの戦争には参加していない。その理由は戦争する余裕が無いからだ。
オーストリア皇帝カール4世は、これから始まる1937年アウスグライヒの準備を始めていたのだ。
アウスグライヒーそれは妥協。
かつてオーストリアだけでハンガリー含めた地域を統治するのは出来なかったため、マジャール人と連携して統治しようという、オーストリア・ハンガリー帝国誕生日のきっかけとなったもの。
だが世界大戦後、民族主義により統治が出来なくなり色々あった結果、ボヘミアなど多数の地域に自治権を与えざるを得なくなりオーストリアはほぼ崩壊状態となった。
だが今はそんなことをしている場合では無いのだ。
オーストリアを再びまとめなければ本当に崩壊する。
だが1番の障害はハンガリーだ。
ハンガリーは今ややりたい放題でありハンガリーの力を削がなければ統一なんて出来ない。
「なら、ハンガリーを怒らせるようにすべきなのかもな」
1937年 アウスグライヒは始まるー
次回くらいでパーパルディア編終了です。
次回ー元列強パーパルディア