プリパラ 『半才と呼ばれる無気力人間の故事』   作:自由の魔弾

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#10 新天地へ!大自然の少女との邂逅

「ヨーロッパラかぁ…一体どんな所なんだろうね、師匠?」

 

ハッシュは好奇心を抑えきれず隣の座席で寝ているウォンに話しかける。そこは年相応といったところなのか、機内にもかかわらず新しいものに出会った瞬間は自分の感情を抑えきれないでいた。

 

「ハッシュ…少し静かにしてくれないか。その話、もう何回目だ?ただでさえこの“空飛ぶ箱”は苦手なんだ。それに加えてあと何時間もお前の話に付き合わされるなんて、一体どんな罰だ?」

 

かけていたアイマスクを少しずらして、嫌そうに対応するウォン。だが、ハッシュにはそんなこと御構いなしのようだ。

 

「師匠、そんなこと言わないでよ。そもそも今回の留学は師匠が言い出しっぺでしょう?僕は元々OKするつもりなかったんですから」

 

ハッシュは膨れながらウォンに噛みつく。噛みつくといっても実際に口で噛みつくのではなく、言葉で対抗するという意味での例えである。

 

「わかっているさ。だから学業の方はお前に任せる。その代わりとっておきの稽古をつけてやるからそのつもりでな」

 

それを受けてハッシュは渋々といった様子で引き下がったが、そのまま再び眠りに就こうとするウォンを見て留学の際に出された条件について独り言のように呟いた。

 

「保護者同伴が必須とはいえ、60を過ぎたおじさんをよく認めてくれたよな…。そういえば向こうでは何処に住むんだ?師匠はアテがあるから気にするなって言ってたけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、来週からよろしくお願いします。あと、こっちの言葉はほとんど喋れないので、なるべく日本語が通じる人がいると助かります…本当ご迷惑おかけします」

 

ハッシュは空港に着くと1人別行動をとって留学先となる学校に挨拶に来ていた。ちなみにウォンはというと、今後の宿泊先の場所が書いてあるメモをハッシュに手渡すと一足先に向かっていた。

 

「師匠め…面倒ごとだと思って抜け駆けしたな?とはいえ流石は外国!日本とは景観も食文化も大違いだな…ん?」

 

「ちょっと!やめてください!」

 

日本では聞き慣れない言語が飛び交う中、妙に聞き慣れた言葉が聞こえてくる。誰かが日本語を話しているようだ。ハッシュはすかさず声が聞こえた方向へ駆けつけると、見るからに悪そうな男が少女に絡んでいる様子だった。男が少女の肩を小突いた拍子に倒れそうになったところを間一髪、ハッシュが受け止めた。

 

「君、大丈夫?何があった?」

 

少女は小さく体を震わせながら、ハッシュに事の経緯を話した。

 

「あの人が商品を壊したのに弁償してくれないの。それを注意したら、こっちにも威張り散らして…」

 

視線を男の近くには向けると確かに商店があり、その周辺には何かが壊された痕跡があった。

ハッシュは男の前に立ち、軽く挑発してみせた。

 

「おい、あんた。弁償してやれよ」

 

ハッシュがそう言うが、男は応じなかった。というよりも伝わってないようだ。すかさず少女に通訳してほしいと頼む。

 

「君、日本語わかる?奴に通訳頼んでもいい?」

 

「え?うん、わかったわ」

 

ハッシュは耳打ちで少女に伝え、少女はそれを男に伝えた。

 

「お前みたいなのを見ると反吐がでる。全身の骨叩き折ってやるから覚悟しておけ!」

 

『!?』

 

ビシッと男を指差して言った少女の言葉に周囲の人々が滅法驚いている様子だ。ちゃんと弁償あげてとやんわり伝えたはずなのに。この少女は一体何を口走ったんだ?そんなポーズする必要ない台詞でしょう?と。

 

「こいつ…ブッ殺してやる!!」

 

激昂した男がハッシュめがけて殴り掛かってくる。ハッシュは何度か捌いてその太刀筋を見極めていく。

 

「(あからさまな大振り。多少力はあるみたいだけど、図体がデカいだけ次の一手まで時間がかかるのか…よし!)ハァア!」

 

男の放った大振りの一撃を躱し、同時に裏拳を顔面にお見舞いする。その怯んだ一瞬を逃さず、続けざまに連続回転蹴りを命中させる。

 

「そんな大振りじゃ、当たるもんも当たらないよ〜?通訳してくれ!」

 

「なんだそのへなちょこパンチは!止まって見えるぜぇー!!」

 

少女の通訳に一層盛り上がっている様子の周囲の人々。ハッシュは少女が一体何を言っているのかすら考えるもの面倒になってきたので、このまま一気にかたをつける。

 

「磨きをかけた蛇拳の極意、少し試させてもらうぜ?」

 

ハッシュは一気に詰め寄ると、男が放った拳を片手で受け止めるとその拳をもう片方の腕が蛇の如くまとわりつくよう迫り、男の顔面・首・胸部・鳩尾と連続で突きを喰らわせた。

男は受けたダメージに耐えきれず、そのまま横たわってしまった。手は抜いたので大丈夫だと思うがまだ息があるのを確かめて、男の財布を商品を壊された店主に渡して一応の収束に辿り着いたようだ。

 

「ありがとう!あなた、とても強いのね。びっくりしちゃった」

 

少女が駆け寄ってくるやいなや、助けたお礼を言ってきた。

 

「そりゃどうも。それよりさっきの男、酒に酔ってたみたいだから警察とか勘弁してあげて。あと、怪我はしてないと思うけど痛むようなら病院行って手当てしてもらって」

 

そう言って立ち去ろうとするハッシュだったが、その行く手を少女が立ち塞がる。

 

「ちょっと待って。お礼くらいさせて頂戴?」

 

ハッシュはそう訴えかける少女にきっぱりと断りを入れる。

 

「だーめ。お生憎様、早くこのメモのところに行かなきゃならないの。ただでさえ土地勘無いし、地図も読めないんだから」

 

ひらひら〜と手に持って見せたメモを少女は一瞬でハッシュの手から取って、その内容に目を通した。

 

「あら?ここって…もしかして、あなたが?」

 

「え?一体何だって…」

 

1人納得した様子の少女に対して、合点がいってないハッシュ。

 

「この場所なら案内できるわ。私について来て!」

 

「うえ?おあっ!」

 

少女はハッシュの手を掴むとそのまま走って先導する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって、どこかののどかな高原地帯。そこを走っている電車から見えて来たのは見渡すかぎり雄大な大自然。ヤギやヒツジといった動物や鳥の鳴き声が聞こえるのは、とても良い条件の土地なんだろうか。しばらくすると小屋が見えてきた。

 

「あそこに見えるのがそのメモの場所よ」

 

電車の窓から身を乗り出して小屋を指差す少女の特異な能力に、思わず感心してしまうハッシュだった。

 

「あんな遠くの小屋までよく見えるな…。視力いくつだよ」

 

ハッシュも別段視力が悪いわけではないが、少女に言われるまでその存在を視認できなかった。知らず識らずパラ宿という都会に染まっていたのを、彼女という存在によって思いだされるようだ。

少女とハッシュは停車した電車から降りてその小屋の扉を叩くと、中から見知らぬ人物が現れる。

 

「お、おんじ…?」

 

「おんじ?違うわ、おじいさんよ。おじいさん、お友達の方は先に着いたの?」

 

出迎えたのは白く長い髪と髭を蓄えたおじいさんだった。話を聞く限りこの少女のおじいさんらしいが、並々ならぬオーラを醸し出していたので一応警戒したがその奥に見える人物によってそれは無駄だと分かった。

 

「おぉ〜ハッシュ!遅かったじゃないかぁ。先に飲んでるぞ〜!!」

 

「師匠!?何で昼間から酒なんて飲んでるんですか!しかも大量に…」

 

奥で明らかに酒盛りをしている様子の師匠が大声でハッシュを呼び込む。どうやらこのおじいさんの顔も赤みがかっているように見え、そのことを少女が指摘する。

 

「あ、もしかしておじいさんもお酒を…?もう、あれだけ控えるようにって町のお医者様から言われてたのに!」

 

少女に叱られて、言いつけを破った子供のようにどんどん小さくなるおじいさん。小さくなるといっても物理的に実際に小さくなるわけではなく、態度が小さくなるという比喩表現である。

 

「まぁまぁお嬢さん、私と君のおじいさんは古くからの友達なんだ。長い間会ってなかったから積もる話も飲ませたい酒もあるんじゃ。どうせハッシュの留学の間は一緒に暮らすんだから、お互い仲良くやろうじゃないか〜?」

 

師匠の突飛な言葉に思わず面食らうハッシュ。すぐさま追及する。

 

「ちょっと師匠!同居なんて聞いてないよ!アテがあるって言うからてっきりホテルかなんか予約済みなのかとばかり…」

 

「馬鹿言っちゃいかんよ。ホテル泊まるのにいくらかかると思ってるんじゃ。それに金は酒に姿を変えてしまったしの…。まぁそれは建前で、本音を言えばここは修行するのに最適な環境なのじゃ。飯代と宿代も浮くし、ここはひとつ私に免じて…」

 

ほろ酔いの師匠に促されるも、素直に首を縦に振ることを躊躇しているハッシュ。

 

「師匠に免じてって言われても…第一、歳が近い女の子がいるでしょう?家族以外の女の子と暮らすなんて、それに彼女だって嫌がるんじゃ…」

 

「え?私は別に構わないけど」

 

少女の言葉に思わず硬直するハッシュを他所に少女は言葉を続ける。

 

「確かに最初におじいさんから聞かされた時は少し不安だったけど、さっきのあなたを見たらそんな心配する必要ないんだってわかったわ。だから、あなたさえ良ければここで暮らさない?」

 

少女はそう言って手を差し出す。どうやら握手を求めて待っているらしい。同居に否定しているのは自分だけだと気づくと何とも馬鹿らしく思えて、自然とその手を取っていた。

 

「…分かったよ。僕は真中ハッシュだ。これからしばらく厄介になるからそのつもりで」

 

「こちらこそ。私は緑風ふわり。あなたたちを歓迎します」

 

面と向かってにこやかに笑うふわりの雰囲気に呑まれそうになるハッシュだったが、さっきから気になって仕方がなかったことが頭を過ぎって思わず視線を逸らす。

 

「さぁ挨拶も済んだことだし、宴の続きといこうじゃないか!ここから先は大人の時間じゃ、子供は外に出てなさい」

 

師匠に促されて小屋の外に追い出されるハッシュとふわりだったが、すぐにふわりから話題を振る。

 

「もう、2人ともまたお酒飲む気なのね…。まぁ今日くらいは許してあげようかな?しばらくは慣れないかもしれないけど何かあったら遠慮しないで言ってね。もう家族みたいなものなんだから」

 

えっへん!といった様子で胸を張るふわり。ハッシュはさっきから常々気になっていて触れなかった事について聞いてみることに。

 

「…じゃあひとつだけいいかな?なるべく意識しないようにはしてたんだけど、白い服着る時はその、ちゃんと着けたほうがいいと思うよ……下着っていうかブラは…」

 

ハッシュの指摘を受けた瞬間、ふわりは自身の胸元を両手で覆うように隠す。その顔にはほんのり赤みがかっていて改めて羞恥心を感じていた。

 

「…もしかして、ずっと透けてた?」

 

「…うん。でも、前は見てない!見ないように頑張ったから…その、ごめん」

 

ふわりは深い溜息を吐くも、ハッシュのコロコロと変わる印象に興味を持ち始めていた。

 

「(さっきは自分より大きな相手にも強気だったのに、急にこんな弱々しくなって…ちょっとからかってみようかな?)…じゃあ私の下着、明日一緒に町へ買いに行きましょうか?」

 

「…きゅ〜」

 

ふわりの誘惑に羞恥心が頂点に達したのか、ハッシュはボンッと頭から煙を吹いた後、卒倒してしまった。その様子を見たふわりは次のように一言呟いた。

 

「本当、面白い人…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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