プリパラ 『半才と呼ばれる無気力人間の故事』   作:自由の魔弾

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#11 姉気取り少女&掟破り刑事

ピピピッとヨーロッパラの朝を告げる目覚まし時計のアラームの音が鳴り響く。時差の影響から漸く解放されて深い眠りにつくことが出来るようになってきた矢先、久々に安心しきっていたハッシュは寝ぼけなまこのまま時計に手を伸ばす。ハッシュたちがパルプスに越してきてから既に二週間が経っていた。初めての海外、実質的にはホストファミリーの扱いに近いものだったので生活に慣れるのには意外と時間はかからなかった。

 

「ん、う〜ん…。あれ、なんか視界が暗い?」

 

何の気なしに視界を遮っているであろう“何か”を手に取る。それは軽くて、それなりの布面積があって、だけど決して今ここにあってはいけないもの。

 

「えぇ…まさか昨日のじゃないよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、行きましょう!ラララ〜♪」

 

沢山の動物を引き連れて草原を走り回っているふわりの姿があった。そこに居所を聞いたハッシュが走り込んでくる。

 

「ふわり〜!!一体どういう事だ!!?」

 

「あら、おはようハッシュ。そんな顔してどうしたの?」

 

可愛らしく首をかしげるふわりに思わず脱力しそうになるハッシュ。しかし、そこは心を鬼にして本題へ。

 

「どうしたのじゃないよ!これ、また着けてないでしょ?ただでさえ目のやり場に困るのに、寝起きに頭の上に置かれるとかどんな仕打ちだよ…」

 

「だってそれ着けてると、胸元が窮屈に感じるんだもの。それにハッシュの顔に乗せてあげたら喜ぶってウォンさんが」

 

あのエロじじいが。内心怒りがこみ上げて仕方がないがこういう類のことは割と日常茶飯事、特にお酒が入っている時は十中八九次の日にはこんなイタズラが起こる。あの人の性格にはいい加減もう慣れた。

 

「…わかったよ。まぁ元々ふわりが自発的にやったとは思ってなかったし。でもふわりも注意しないと駄目だよ?気づいてないかもしれないけど…ふわりは可愛いんだから」

 

あえてぶっきらぼうに言うハッシュを見て、ふわりはどこか可笑しく感じてふとからかってみる。

 

「ふふっ…ありがとう。もしかして出会った女の子みんなにそう言ってるの?」

 

ハッシュはそんなことを言うふわりの頭を小突く。痛ッ〜と目を><の形にして小突かれた箇所を両手で押さえるふわり。

 

「この拙い脳みそでそんな洒落たこと言えるわけないだろう?素直に思ったことを言ってるだけだよ。なんか危なっかしいから心配なんだよ、ふわりって」

 

「む、そんなことないわ。それを言うならハッシュの方が心配よ?思ったこと何でもすぐ口にしてるもの」

 

そう言ってお互いに対面して静かに闘志を燃やしている二人。しばらく睨み合っていると不意に持っていたプリパスが鳴り始める。

 

「っと、プリパスから呼び出しが…ちょっと待っててね?」

 

ふわりに断りを入れてすぐさまプリパスに出る。

 

《あ、お兄ちゃん!こんにちは…っじゃなかった、そっちではまだおはようなんだっけ?》

 

着信の相手はらぁらだった。ちなみにヨーロッパラと日本では時差が約八時間あって、日本の方が先に進んでいる。これ豆知識ね。

 

「いきなり連絡寄越してどうしたんだ?日本離れる時にこっちから連絡したのが最後だったから二週間くらいかな?」

 

《い…じゃなかった、みれぃにお兄ちゃんも色々忙しくしてるだろうから向こうが落ち着くまで連絡しちゃダメって言われてたから。でもこっちでもいろんなことがあったんだよ!》

 

そう言って一人でまくし立てるらぁら。ものすごい勢いで話し始めて情報量が多すぎたので、簡潔にまとめるとこうである。

・らぁらママと大神田グロリア校長はかつてプリパラでチームを組むほどの友達であり親友でもあった。勘違いからお互いに離れ離れになってしまったのを、二十年越しに再開しプリパラを憎む大神田校長の心は無事に晴れたようだ。

 

・そらみの三人とドレパの三人で結成したチーム『SoLaMiドレッシング』が優勝し、パラダイスシューズをゲットしたらしい。そして、そのすぐ後の12月31日にまた新たなパラダイスコーデを賭けてライブが行われるらしい。今回優勝したチームは自動的に同じチームでエントリーされるとか。

 

・飛行機で発つ前にそふぃさんにお願いしていたサインが無事にのんちゃんの手に渡ったようだ。わざわざそふぃさん本人が手渡してくれたとのこと。それ自体はとても喜んでいた様子だったが説明なしで家を出てまたもや怒っているであろうのんちゃん。しかしハッシュから直接渡すよう頼んだことを伝えると「…ちゃんと帰ってきたら許してあげる」とのことだ。死んでも帰らなければ許してくれないらしいです。

 

端的に言えばこの三つ。結局、もうすぐライブだからという理由で渋々ながら通信を終えた。終始その様子を見ていて不思議そうにしていたふわりの様子を察して、ハッシュが補足して説明する。

 

「今の、妹なんだ。って言っても義理というか便宜上なんだけどね。だからって家族には変わりないよ」

 

「ふ〜ん、だからあんなに幸せそうな顔してたんだ。そうだ、あんな風に扱ってくれるなら私もハッシュの妹になろうかしら?」

 

ふわりの突飛な発言に対してハッシュは思わず苦笑しながら返す。

 

「ハハッ…ふわりが妹?あまりからかうのも止してくれよ。そもそも同い年じゃん、俺たち」

 

ハッシュが言及すると、てへっと可愛らしく舌を出して誤魔化すふわり。こういう事を狙ってやっているのではなく、無邪気にやっているから変に強気なのだ。ハッシュより少しだけ早く生まれたのを知った途端に、自分の方がお姉さんだと格付けが行われたらしい。

 

「ふふっ…そうね。でもここではあなたが弟で私がお姉さんみたいなものでしょ?私、こんなふうに何でも言い合える弟が欲しいな〜って思ってたの!」

 

そう言ってハッシュの頭を撫でるふわり。思えば最初にパルプスに来たあの日、ハッシュに女性耐性が無いことと女性に強く当たれないのを知ったのをいいことにやけに強気に出ることが多くある。

 

「…やっぱりふわりのが心配だ」

 

せめて彼女が誰にでもこうならない事を祈るばかりのハッシュだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッシュは学校の帰りにふと考え事をしていた。何でも自分より前に留学に来ていた生徒が、最近めっきり学校に来てないらしい。芸能活動に勤しんでいて、だからと言って学業は成績トップであることからその生徒も学校に来る意味を感じなくなっているんだろう。そこで急遽ちゃんと通ってくれて、家族状況から見てもすぐに引っ張ってこれるハッシュに白羽の矢が立ったというわけだ。

通りの喫茶店に入ってコーヒーを頼んでテーブル席で待っていると、目の前の席にいきなり見知らぬ男性がハッシュの対面に座った。

 

「ちょっと、あなた誰で「静かにしてろ。下、見てみ?」えぇ…んな!?」

 

男性に促されてテーブルの下を覗くハッシュ。そこで目にしたのは、男性の左足の足首に携帯されているホルダーに収納されている拳銃だった。

 

「もちろん本物よ。あそこのレジ見てみな」

 

視線をレジに向けると、男性三人組が何やら店員と話している。一見普通の光景に思えるのだが、そこに男性が追求する。

 

「一人は強盗で指名手配されてる奴だ。残りの二人は知らない顔だから今回誘われたんだろう。俺が合図したら、君はテーブルの下に隠れるんだ。もしもの場合は発砲するから射線に入らないようにな」

 

「そんな、もっと穏便に解決できないんですか…?」

 

ハッシュの言葉に呆れた様子の男性。

 

「おいおい、そんな綺麗事言うなよ。あいつらだって捕まりたくなくて凶器振り回したり、人質とったりするんだぞ?刑事だからって神様じゃないんだから、何があっても全員救えるわけじゃない。だから全力を尽くすんだ」

 

男性の言葉にハッとするハッシュ。立場が違えば考え方は変わり、人生も変わる。そういった人物の人生を更生させるのもまた刑事なのだと。

 

「っ!今だ、ちゃんと伏せてろよ……動くな!警察だ!」

 

男性がホルスターから拳銃を取り出して犯人グループに向けて構える。このまま一気に制圧できるかと思った矢先、男性は異変に気づく。

他の席に座っていた男たちがいつのまにか男性の背後に集結していたのだ。その数はおよそ十五人。

主犯格の男が得意げに話しだす。

 

「ケビン巡査、アンタがここに出張ってくるのは分かってたぜ。俺たちが少数で行動してると踏んでまんまと一人で乗り込んで来たんだろうが、お生憎様仲間を呼んでおいたぜ。お前に逮捕された兄貴の仇を取るためにな」

 

ケビンと呼ばれる男性は人数を確認して一瞬、不適に微笑んだ。

 

「…たったこれだけか?眠っちまうぜ腰巾着が」

 

もはやハッシュにはケビンが虚勢を張っているのか、本気で言っているのかは分からなかった。いざとなれば自分も加勢するつもりだが、ケビンが目線で制する。

 

「だったらお望み通り、死に去らせやァアア!!」

 

主犯格の男による一声により一斉に距離を詰める大勢の男たちに囲まれて姿が見えなくなるケビン。やはり無理があったかと思った矢先、ハッシュはとんでもない光景を目にする。

男性を取り囲んでいた大勢の男たちが次々と倒されていくのだ。つい先ほどまでケビンがいた場所には既に誰も居ない、その代わりにテーブルの上を次々と飛び移っていくケビンの姿があった。跳んだ先のテーブルの上を一回転して勢いで飛び蹴りを喰らわせていくケビン。殴りかかってくる男のパンチを体を反らす事で躱し膝蹴りを入れる。さらに手近なところのある椅子を持って男たちにぶつけていたり、殴って怯んだところを投げ飛ばしてガラスごと叩き割ったりと数に怯むことなく怒涛の勢いで倒していく。気がつけばもう主犯格の男しか残っておらず、眼前にはその仲間を一人で打ち倒してきたケビンが首を鳴らしながら仁王立ちしていた。

 

「な、何なんだよお前は!?あり得ないだろッ!?」

 

完全にケビンに恐れを抱いた様子の主犯格の男が、所構わず持っていたナイフを振りかざしてくる。が、ケビンは太刀筋を読んで体勢を反らして回避していくと同時に客が頼んだであろうホットコーヒー(淹れたて)の中身を男にかける。

 

「ぐァアア!!あ、熱いィ!!?」

 

熱に怯んでナイフを落とした男に間髪入れずに回転蹴り&顔面に膝蹴りを叩き込む。完全に沈黙したすぐ後、店の外にサイレンの音が聞こえてくる。

 

「遅いな〜。もう制圧済みだっての」

 

しばらくして店に突入してきた複数の刑事が倒れている男たちを拘束してパトカーに連行していく。その中の役職の高そうな刑事がケビンと話をしたいた。

 

「ケビン、お前何でこんなところに居るんだ?今日非番だろ?」

 

「だから、ちゃんと素手で倒しましたよ。どうせ銃に一発も弾入ってなかったし」

 

「ハハハ!!それは笑えるな。だが単独で踏み込んだ上、報告しなかったのは不味かったかもな。署に戻ったら始末書書いとけってよ。相変わらずお前のことで上層部は頭を抱えてるらしいぞ?」

 

「ったく、頭の固ぇ年寄り共は犯人逮捕より組織の体裁取り繕うことばっかり考えてやがる。随分前に巡査になってから昇給も昇格も無いよ。本当世知辛いねぇ…あ、店内に店員と子供がいるので後のこと任せてもいいですか?」

 

「ん、あぁわかった。手の空いてる奴で家まで送らせよう。任しておけ」

 

その後は警察に家まで送ってもらった。警察から事の経緯を説明されて本気で心配してくれたふわりとふわりのおじいさん。それとは裏腹に黙っていたウォン師匠に夜中、ハッシュは一つ頼み込んだ。

 

「師匠…俺、もっと強くなりたいです。お願いします…もっと修行をしてください」

 

ウォン師匠に土下座して頼むハッシュ。長い沈黙を破ったウォン師匠は静かに口を開いた。

 

「今こそ……貴様に秘伝を継承させよう」

 

 

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