プリパラ 『半才と呼ばれる無気力人間の故事』 作:自由の魔弾
「♫〜」
らぁらとみれぃはくまから貰った新曲を試聴していた。2人揃って一段とやる気に溢れているのには理由があって、それは少し前まで遡る。
2人はトップアイドルの登竜門と呼ばれるオーディションライブに参加するための条件として、3人チームを組む必要があった。そこでらぁらが挙げた候補の1人が自分たちよりもアイドルランクが上の“北条そふぃ”だった。しかし、彼女の熱心なファンが集まって結成された親衛隊に邪魔されたり、家に出向くも会えずじまいという散々な結果に終わった。みれぃとくまに別の候補を探すよう促されるも諦めきれないらぁらは、他の誰からも認めてもらえるようにとにかく自分たちのアイドルランクを上げることに専念することにした。そして、今回の新曲披露がその足掛かりとなったというわけだ。
『新しいメイキングドラマを作って、ステップアップを狙う』
新たなスローガンを掲げていざレッスン室へ向かった2人だったが…
「芋洗いだね…」
「計算外ぷり〜」
夏休みシーズンという事も重なり、レッスン室はこの機会にランクアップを狙っているアイドルたちで溢れかえっていた。2人は仕方なく別の場所で練習することを余儀なくされた。
「はぁ〜…」
ハッシュは休み期間中にもかかわらずお店の手伝いに明け暮れていた。しかし、彼にも何か思うところがあるようだ。それを紐解くために少し時間を巻き戻してみよう。
〜1時間前〜
相変わらず梅干しピザを注文する北条宅へ配達に来ていたハッシュはコスモとこんな会話をしていた。
「今日はコスモさんが居てくれて本当助かりましたよ…また“あの”そふぃさんが出てきたらと思うとゾッとして…」
「え?あー、もしかして“そふぃ”のことバレちゃってる?そっか〜…そふぃがこの間会った男の子ってハッシュ君のことだったのね。それで、そのことなんだけど…」
「分かってます。他言しない…でしたよね?でもあんなに綺麗なのにジャージ着てるなんて、勿体ないですよね……っと、これは内緒でお願いします」
「フフッ…コズミック了解よ。でもハッシュ君がそんな反応するなんて意外だったわ。あなたって“半才”って呼ばれるくらい凄いんでしょう?女の子の1人や2人、放っておかないと思うんだけどな〜?」
「…昔の話ですよ。今は大切な家族のためにお店のお手伝いをする怠けた学生です。それに、女の子とは縁が無いらしいです。この前もクラスの女子に理由もなく警戒されてましたし…」
「理由もなく?……はは〜ん。ハッシュ君、その子はあなたに恋してるわよ!女の勘がコズミック間違いないって叫んでるわ!」
「え、えぇ〜…?」
〜回想終了〜
あり得ない。それがまず最初に思ったことだった。法の番人で一々突っかかってくる天敵のあの女が、自分を好きなど天地がひっくり返ることがあってもあり得ない。
そう思えば驚くほど頭の中がスッキリした。
可能性とか確率とかそんな話じゃない。あり得ないんだと思うことが今回の件は正解だったんだと。
「ご注文のピザでーす。ご利用ありがとうございました〜…ん?」
配達を終えるとふと視線の先に見知った人物がいた。らぁらとみれぃだ。
「(思わず隠れてしまったけど、あそこに居るのはらぁらと南…だよな?何で一緒に……まさか弱みを握られているのか?それとも俺のことを洗いざらい吐かせるために?)味な真似をしてくれる…。のんちゃん!悪いけど1人で帰って。ちょっと寄るところが出来たから!」
ハッシュは一緒に配達しに来ていたのん(先日の件で一応許してもらったけどあんまり口きいてくれない)にピザのお代を手渡して尾行を始めた。
「え、ちょっとお兄さ〜ん!!またこんな役…私って可哀想な子」
「ここか…2人が入っていったのはって南?もしかしてここ南の家か?」
尾行していた先に辿り着いたのはみれぃの家だった。どうやらみれぃは自宅にらぁらを連れ込んだらしい。←ハッシュ視点
広大な敷地面積を持つ日本庭園のある豪邸のようだが、肝心のらぁらが何処にいるのか分からなかった。
「…仕方ない。久々にやるか」
ハッシュは1番低い壁の前に移動し、周りに人が居ないのを確認すると壁目掛けて走り出し、一気に壁を蹴り上がって向かい側へ乗り越えた。←絶対に真似してはいけません。
「ありがとうジャ○キー、あなたのやり方のおかげで乗り込めた。しかしデッカい家だなぁ…さて、何処から入るか」
敷地内に入り込めたものの、あいにく針金は持ち合わせていないのでピッキングは使えない。困っているハッシュの視線にふと開いている小窓が映り込む。2階の窓だが壁を伝って行けば入らない高さではなさそうだ。(素直にチャイム鳴らせ)
「そうと決まれば…。飛び込み前転、壁歩き、あそこの出っ張りに手を掛けて、屋根瓦を伝って行けば…最後は気張って飛び越える!」
空いている小窓から屋内に入ると、そこは廊下のようだ。近くで人の声がするため、バレないように1階に移動しらぁらを探す途中、玄関に目をやる。
(成人サイズの革靴とヒールが1つずつ、それよりひとまわりサイズの小さい女物の靴、それとらぁらの靴。少なくとも今ここに居るのは3人か…ん?誰か出てくる!)
人の気配を感じ、陰に隠れてやり過ごすハッシュ。出てきたのはみれぃでどうやらキッチンに行ったらしく、なるべく歩幅を合わせてみれぃが出てきた部屋へ入った。
「え、お兄ちゃん?どうしてここに?」
案の定らぁらがいた。見たところ拘束された跡はなく、ひとまずホッとするハッシュ。
「南に連れ去られるところを見かけて、忍び込んだ。何かされたか?」
「え、いや特には何も…」
それ以上言葉にする前に、らぁらはかつてみれぃから釘刺されたことを思い出した。
「(委員長がアイドルだってこと、お兄ちゃんには言っちゃダメって言われてるんだっけ…。でも、何て言ったら…あ、そうだ!)か、かくれんぼ!委員長に頼んでかくれんぼの練習をさせてもらってたの!」
「…かくれんぼ?」
疑いの眼差しでらぁらを見つめるハッシュ。これ以上追求されたらボロが出ることになりそうなので、話を変えるように促す。
「ほ、ほら!委員長戻ってきたらお兄ちゃん怒られちゃうよ!ここに隠れて!」
「え、ちょ、痛ッ!」
らぁらに無理矢理机の下に押し込まれるハッシュと椅子に座って誤魔化すらぁら。丁度そのタイミングで帰ってきたみれぃ。
「真中さん?そこ私の机なんだけど」
「い、委員長の机の方が何か良いアイデアが浮かんできそうな気がして!(お願い!お兄ちゃんに気づかないで!)」
「…そう。なら私はこっちのソファに座るからいいわ」
そう言うとみれぃはソファに座り、置いてあったクッションを弄ってメイキングドラマの内容を考えている。
みれぃの視点からは丁度机の裏側は死角になっていることに加えらぁらが椅子に座って隠しているので、物音さえ立たなければ何とかバレない。
らぁら→ハッシュ(机の足下の空いたスペース)→机(前と横からは見えない)→みれぃの構図だ。
「(なぁ、アイデアって何のこと?)」
ハッシュが小声でらぁらに尋ねる。らぁらはみれぃにバレないように机の上に置いてあった大きめの本を開いて机の上に立てて死角にして答えた。
「(実は今、ライブでやるメイキングドラマを作ってて…。でも何を伝えたいのか全然決まらなくて。お兄ちゃん、何か良いアイデアあるかな?)」
らぁらの問いに体育座りの体勢のまま考えこむ。そしてふと感じたことを口にした。
「あ、らぁらのぱんt」
次の瞬間、らぁらの御御足が蹴りとなってハッシュの顔にめり込んだ。何とか声は出さなかったもののその蹴りの威力により机全体を揺らし、みれぃの注意を引いてしまった。
「ちょっと真中さん、あまり大きな音出さないで。計算中なのに気が散るじゃない」
「ご、ごめんなさ〜い。ちょっと足が痒くて…えへへ〜」
らぁらは謝りながら机の下にいるハッシュの頰を全力で抓って引っ張る。
「(〜ッ!!い、痛いのだけ飛んでけ〜!)」
「(もう!こんな時までふざけないでよ〜!)」
ハッシュは抓られた箇所と蹴られた箇所を摩りながら、ちゃんと答えることに。
「(だったらさ、思ったことそのまま伝えちゃえよ。楽しい気持ちとか嬉しいこととか幸せなことをさ。この前言ってたピザのやつもそうなんでしょ?)」
「あ、そっか!委員長あったよ。みんなに伝えたいこと!美味しいもの食べたり、可愛い服着たり…。プリパラはそれを全部合わせたくらい幸せだよって!」
「幸せ…それ、良いヒントになりそう!」
らぁらの言葉にみれぃも何か閃きかけているようだ。ハッシュに視線を移すと、まだ痛む箇所を摩りながらもサムズアップで返していた。
「君の考えは間違っている!」
「いいえ、あなたが見当違いなのよ!」
すると、突然家中に言い争う声が響き渡る。
「ちょっと、またやってるの!?もう!」
みれぃが見かねて部屋を飛び出していった。らぁらもそれに続いて出で行く前にハッシュに声をかける。
「委員長のこと、少しは分かってくれた?」
「…まぁ、そこまで悪い奴じゃないのかもね。とりあえずこのまま俺はバレない内に帰るけど、あんまり遅くならないようにな?」
「帰ったら、いっぱい癒してあげるからね…特別だよ?」
「痛めたところを…ね。ライブ、思いっきりやってくるんだぞ?」
かしこまっ!のポーズを決めて、満面の笑みで応えるらぁらだった。
〜ライブ終わりの帰宅後〜
「痛だだだだだだッ!!」
「もう!お兄さんまた言いつけ破って無理に身体動かしたでしょ!今日はこの前の怨みも込めてマッサージするから覚悟してよね!」
「あ、あはは…のんってば厳しいなぁ」
「ほらお姉ちゃんもやるの!1回きつ〜くお仕置きしないとお兄さんはわからないんだから!」
「か、かしこまっ!」
「かしこまるな!!」