プリパラ 『半才と呼ばれる無気力人間の故事』   作:自由の魔弾

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#7 一触即発?人蛇vs忍者

「1ヶ月ぶりただいま」

 

ハッシュが帰って来たのは連絡を入れてから1ヶ月以上経った11月中旬頃だった。暫く街を離れていた所為か懐かしくもあり、所々変わった場所もあるようだ。

 

「はてさて…一体どんな罰が待っているのやら」

 

ハッシュは期待1割不安9割を胸に抱いて店のドアを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あー、今回はこういう感じなのね。うちの子たちは」

 

思わず困惑しているハッシュの横には無言でしがみつくらぁらとのんの姿が。今までも家を離れたことはあったが、1日何でも言うことを聞く罰とか1週間お店のお手伝い罰とかはあったが、こんな仕打ちは初めてだった。

その様子を傍らで眺めていたらぁらママは、2人の心情を察しているようで微笑ましそうにハッシュに説明する。

 

「うふふっ…。ハッシュ君がこんなに家を離れるのは初めてだったから、2人とも寂しい思いしたのよ。少しは分かってあげてね?」

 

う〜ん…と唸るハッシュ。何故なら彼にはもう1つ懸念している問題があったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校を無断で1ヶ月以上も休むなんてどういうつもり!!」

 

そう、この問題だ。鬼の風紀委員長と評される(ハッシュしか言ってない)みれぃが顔を見た瞬間、詰問してくるのは予想していた。当然そうさせないための予防策を講じていたはずだったのだが。

 

「ま、待て待て!ちゃんと休むってらぁらに連絡させたはずだぞ!」

 

「初日はね。でもそれ以降は理由がはっきりしてないし、真中さんに聞いても知らないの一点張り。そんなのが認められると本当に認められると思ってたの?」

 

「…だって、中学生じゃん?」

 

ハッシュの言い訳に呆れた様子のみれぃ。嘆息混じりにこんな提案をする。

 

「まぁ、丁度いいわ。この前転校してきたばかりの生徒に校内の案内をする事になってるの。あなたにも参加してもらうわ」

 

えぇ〜っと見るからに嫌がるハッシュにギラリと眼鏡を光らせ肉迫するみれぃ。それに対してすぐさま教室からの逃亡を図るハッシュだったが、扉付近で入ってきた生徒にぶつかってしまう。

 

「きゃっ!」

 

地面に倒れる寸前で腕を伸ばし、生徒を抱き止めるハッシュ。どうやら休む前には見たことがない生徒のようだ。

 

「うわっ…と!危なかった〜。ごめん、大丈夫?」

 

ピンク色の髪、柔らかな物腰、何というか…和らぐ雰囲気を醸し出している生徒だった。だがいかんせん、体勢が不味かったようだ。

 

「あ、あの…出来れば起こしてもらえないかな?このままだと……恥ずかしいっ!」

 

その生徒は羞恥で顔を真っ赤にしてハッシュに訴える。咄嗟に身体を支えていたので、現在は所謂お姫様抱っこのように抱き止めていたのだ。

 

「真中君…。風紀委員長である私の前でよくもそんな真似を…」

 

みれぃが違反チケットを見せびらかしながら、鬼の如く迫る。すぐさまハッシュはその生徒を立たせ、背後に回り込み盾となってもらう。

 

「あなたはいつもそうやって違反ばかり!!」

「今のは人助けなんだからしょうがないだろ!」

 

ギャーギャー言い合ってる二人の間で板挟みになり、冷や汗を流し居心地悪くなる生徒。

 

「ふ、二人とも…リラックス〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ〜、それじゃウェストは俺が休んで暫くしてからこっちに越してきたんだ。どうりで知らないはずだ」

 

朝の騒動から時間は経って、休み時間になりレオナ・ウェストと顔合わせをしていた。因みに席はハッシュの左隣だったりする。(右隣は因縁のみれぃ)

 

「うん、まだ慣れないけどね。実はこの学校の子とプリパラでチームを組んでて、どうせなら一緒の学校に通ったほうが良いってドロシーが…あ、ドロシーっていうのは私の姉のことだよ」

 

ふんふんと話を聞いているハッシュだが、内心では何を言ってるのかほとんどちんぷんかんぷんで理解できてない。というのも、この約1ヶ月間はほとんど外部の情報を遮断してウォンを師として仰ぎ、彼とずっと修行に励んでいたのだ。その成果もあってか以前とは比べものにならない程の蛇の型を会得することが出来た。というものの、これはウォン師の受け売りで本人にはそれは理解できていなかった。

 

「あ、次の授業は体育だよ。早く行こう?」

 

レオナに促され移動するハッシュ。この時、自身の身体能力の向上を知る羽目になるとは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って何でドッヂボールなんだよ…うぉ!危なっ」

 

体育の授業に向かったハッシュたちだったが、担当の先生が風邪で休んだため急遽生徒たちの希望によりドッヂボールに。尚、怪我をしないよう考慮して当たっても痛くない柔らかい素材のボールを使用することで男子も女子も参加できるという算段だ。

 

「チッ…また避けられたわ。計算が狂ったわね」

 

相手チームとなったみれぃが執拗にハッシュを狙ってくる。恐らく日頃の鬱憤を晴らしているのだろうが、ハッシュは今のところ全て避けきっている。

と言うよりも以前より身体が軽く感じるのだ。そして何より思った通りに動けることに驚いていた。

 

「くっ…ちょこまかと動き回って、なんて生意気なの!当たりなさい!」

 

みれぃの放ったボールを身体を後ろに倒して避け、その勢いのまま後方宙返りで体勢を耐え直す。更にボールを拾った外野の放ったボールを、脚を180°前後に開くことで身体を沈み込ませて回避し、そのままウィンドミルの要領で身体を起こす。

 

「な、何その動き!?」

「ハッシュ君、頑張れ〜!」

 

驚愕の表情を見せるみれぃと開始早々に当てられて外野に送られたレオナが応援する。

その間、ハッシュはついこの前まで受けていた修行を思い出す。

 

「(蛇の型の極意は何者にも囚われないしなやかな動きと一瞬で急所を見切る判断力!それをこのボールに見立てて考えるんだ)…ハァア!!」

 

ハッシュは自分目掛けて飛んでくるボールの中心に渾身の一撃を放つ。すると、ハッシュの指先が触れた途端、中の空気ごとボールが破裂してしまった。

 

『…は?』

 

周囲に乾いた空気が流れる中、ハッシュは気持ちの高揚を抑えられないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校の備品を破壊しその分の奉仕作業を終えたその週の休日、レオナに「ハッシュ君も良かったら今度ウチのお店に来てよ」とリップサービスされてしまったので、早速出向いているというわけだ。

 

「ここか。ウェストの言ってた店っていうのは。“にんじゃもんじゃ”っていうのね。この前うちとドンパチしたらしいから、なるべく穏便に行こう」

 

ガラガラガラ〜と戸を開けると、店主と思われる男性と女性が出迎える。

とりあえず軽く会釈して空いている席に座って、お冷やを運んできた女性に話しかけてみる。

 

「あ、すみません。こういうお店でお好み焼きを食べるのは初めてなのですが、宜しければ食べ方をご教授願えますでしょうか?」

 

それを聞いて見るからに嬉しそうに喜ぶ女性。

 

「あら、本当!ならしっかりと教えてあげるわ!あ、ちょっと待っててね?」

 

すると女性は店の奥に消えていき、再び現れた女性の後ろにもう一人気怠げに出てくる。

 

「何だよ〜。せっかく今からプリパラ行こうと思ってたのに〜。それで、あんたなの?ボクに食べ方教わりたいっていうの?」

 

姿形はレオナにそっくりなその少女、しかし言葉の端々に気の強そうな雰囲気を感じる。

ハッシュはふとウォン師匠が言っていた言葉を思い出す。

 

(ハッシュよ…人を知るのは見た目だけではない「おい、聞いてんのかよ?」言葉や態度など表に出ているものが全てとは限らない「お〜い」内側から滲み出る本音を感じ取るのだ「もしも〜し」それを忘れるな)

 

「…何だ?」

「何だじゃねーよ!お前が呼んだんだろ?何で黙ってるんだよ!」

 

考え事から現実に意識を引き戻すと目の前の席に座ってぷりぷり怒った様子の少女。

 

「あー、ごめん。考え事してて…。あと、ちょっと被ってて」

 

「被ってるって何だよ!だから、ボクがお好み焼きの食べ方教えりゃいいんだろって話だよ!」

 

「あ、うん。お願いします。えぇ〜っと君の名前は?」

 

「…ドロシー。苗字はレオナと一緒だから分かるだろ?」

 

「もちろん。俺は真中ハッシュです。そっか、ウェストの姉さんがいるって言ってたのは君のことだったのか」

 

一人勝手に合点がいって満足しているハッシュを他所に、慣れた手つきで具材を混ぜて作っているドロシーは訂正を求めてくる。

 

「どうでもいいけどその“ウェスト”っていうの、やめろよな。どっちのこと言ってるか分かんないから、普通に名前で呼びなよ」

 

「あぁ、そうね。分かったよ、ドロシー。レオナの方も呼び方変えないとな…」

 

そんな会話をしているうちにドロシーが作っていたお好み焼きが出来上がり、小皿に取り分けて渡してくれた。

 

「ほらいっちょ上がり。熱々のうちに召し上がりなッ」

 

「いただきます…なッ!?う、美味いィ!」

 

「…!と、当然だろ!ボクが作ってるんだから…ま、お好み焼きを美味いって言う奴に悪い奴はいないって言うしな」

 

当然と思う反面、自分が作ったお好み焼きをハッシュが素直に美味しいと認めるとは思わなかったので若干気恥ずかしくなるドロシー。そう言いながらも続いてもんじゃを作り始めているのを見て、ハッシュは彼女に対してふと思ったことを口走っていた。

 

「へ〜…意外と優しいんだ、ドロシーって痛ァ!けど美味い〜」

 

「バ、バッカじゃないの!?いきなり何言っちゃってるのさ!?」

 

素直に褒められた恥ずかしさからなのか、ハッシュ目掛けてパンチが飛び出す。打たれた箇所を両手で摩りながら、まだお好み焼きに手をつけるハッシュ。結局、レオナが帰ってくるまでお好み焼きともんじゃとを完食したハッシュはしっかりとお礼と会計と先日のお店オープン時の騒動のお詫びの品を渡し、まぁなんやかんやでハッシュの初お好み焼きは成功に終わったのだ。

 

結果、お好み焼きでハッシュの心を掴んだ忍者の勝利。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「レオナ〜!何なんだよアイツ!」

「どうしたのドロシー?ハッシュ君、美味しいって言ってくれた?」

「うっ…それは、まぁそうだけど。っていうか元々レオナが相手するんじゃなかったの!?」

「まぁまぁドロシー、リラックス♪でも、すっごく素敵な人だったでしょ?」

「ふ、ふーん!まぁレオナの次の次の次の次くらいにはまともな部類に入るんじゃないの?」

「うふふ…ドロシーが気に入ってくれて良かった!」

「んなっ!?だ、誰があんな失礼な奴なんか〜っ!!もう会うこともないもんねーっだ!!」
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