アルトリア・ペンドラゴンの人生はクソゲー   作:puripoti

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第1話 アルトリア・ペンドラゴンの人生はクソゲー

【苦粗芸 (くそげい)】

 

 前漢の発明家・江児孫(えじそん)が考案したとされる、将棋と碁と麻雀その他色々を組み合わせたまったく新しい遊具。遊んだ者のことごとくが「ハイクソー」「二度とやらんわ」と絶賛したことで知られる。転じて面白くない遊びの意味として用いられることになった。これが現代における「クソゲー」の語源である事は聡明な読者諸兄には言うまでもないだろう。

 

 武理天書房 刊『みんなであそべる残酷死亡遊戯百選』

 

   *

 

 人生はクソゲーという言葉が真実であるというのなら───ブリテンの歴史にその名も高き英雄、アルトリア・ペンドラゴンの人生こそはまさしくクソゲーである。

 

 一人の人間の生き様がクソゲーと化すにはなにがしかの理由があるものだが、この女の場合に関して何が悪かったのかと云えば、結局のところ何もかもが悪かったとしか言いようがない。

 

 なんせ彼女が王として即位した当時のブリテンと云えば、トキはまさに世紀末! よりも始末の悪い戦国時代真っ只中。石を投げれば原作:武論尊で作画:原哲夫な感じの悪者に当たり、その悪者が明日の実りを信じるじいさんの種籾をふんだくり、さらには隣接する蛮族共がその悪者とじいさんを諸共で根こそぎにするという世にも汚い弱肉強食ピラミッドがあちこちに違法建築されてるという有り様なのだ。それ以前に種を蒔いたところで土地が死んでるからろくすっぽ実りゃしねぇし。

 

 生態系もなんかおかしい。フィールドを歩けばエンカウントするのがドラゴニックオーラを使う野生のりゅうおうと口からカイザーフェニックスを吐く野良バラモス。しかも死ぬ気で倒したところでゴールドも経験値も手に入りませんというクソ仕様である。仕様設計とテストプレイ担当は何も言わずに舌を噛め。

 

 事程左様に、誰がどう贔屓目(ひいきめ)に見てもそびえ立つクソ案件みたいな国で王様としてやっていこうなんて、真っ当な人間なら黙って首を横に振る。いくらお値頃価格であろうとも、見えてる地雷級のクソと判りきってるゲームをプレイしたがる奴はいない。

 

 しかし何を血迷ったのか、アルトリアと呼ばれた少女は選定の剣を引っこ抜き、我こそブリテンの王たらんと名乗りを上げて、都合10年近くに渡るクソゲープレイに明け暮れたのである。一体全体、なにが彼女をそこまで駆り立てたのかは知らないが、そこらの事情はどうあれこんなどうしようもないクソゲーを10年の長きに渡り、一時も(たゆ)まずプレイし続けたその不屈の精神にだけは心の底から頭が下がる。

 

 

 

 ただ世の中には無駄な努力・無益な献身というものも間違いなく存在しており、結果としてアルトリア・ペンドラゴンというなんとも報われぬ女が艱難辛苦(かんなんしんく)の末に為してきたことのすべてこそが、まさしくそれらの総天然色見本であったという話である。

 

   *

 

 ───自分も一度でいいから湯水のようなマネーとパワーに物を言わせた米帝プレイとやらをやってみたいもんだ。現状はマッチ棒で廃課金勢に立ち向かう、できたてチャーシューみたいな縛りプレイだけど

 

 誰にも聞かれぬ悪態つきながら今日も今日とてやりたくもないお仕事に精を出すアルトリアである。決して周りに悟らせこそしなかったが、王様になって数年もすると彼女も相当にやさぐれてきた。かつては天工が彫琢したエメラルドのごとく喩えられた瞳も、今や腐ったドブの底みたいな目ン玉である。

 

 そんな彼女の本日のお仕事はブリテン領内の予算配分的な振り分けについて。いわゆる内政・育成パートである。もちろんクソゲーである。

 

 赤貧洗うが如しとはいうけれど、ブリテンの場合は洗う水さえもったいないほどのド貧乏。僅かなリソースだってムダには出来ない。どこかの暇人が暇にあかせて書いた暇つぶし系二次創作ならどこからともなくコネチカットのメリケン的なんかが現れてなんかすごいことをヤってなんか万々歳! なんか素敵! なんか抱いて! となるのだろうけど、現実とはいつだって妄想の万分の一ほどの甘味さえありゃしねぇ世知辛(せちがら)苦渋(くじゅう)の味なのだ。たたかわなきゃ、げんじつと。

 

 したがってダメっぽいところはさっさと切り捨てまだマシなところにヒト・カネ・モノを集中するのがお約束。経営戦略の基本だが(お約束・基本ではあっても成功するとは限らない)、しかしそれやると配下の声と図体がでかいアホどもが黙っちゃいないのが困ったもんだよ。お前ら、無い袖は振れないって言葉しってるか。この国の言葉じゃねぇけど。

 

 十を救うために一を切り捨てれば、やれ騎士道に反するだの王たるものの責務を蔑ろにしているだの鬼畜にも劣る悪魔の所業だのアホどもは言いたい放題である。いや、仮にも王様相手だから面と向かって言われるわけじゃないけれど、それでもそういう空気くらいは取り繕えよとは思う。

 

 どいつもこいつもうるっせーよ、私だってやりたくてやってんじゃねぇんだ。円卓に揃ったアホ面を見渡したアルトリアは、いつものように口には出さず顔色さえ変えず腹の中で毒づいた。

 

 ───そもそもお前らみたいなのの心が理解できるようになったら私ゃ身の破滅だっつーの

 

 円卓連中は知らんのだろうが(あるいは故意に無視してたか)この時代の騎士という連中、基本は国に雇われて身元保証があるだけのヒャッハーみたいなもんで、道理もなにもあったもんじゃない。行軍中の合言葉ときたら『男は◯して女は◯せ!』みたいな輩ばかりだ(◯の部分にはお好きな文字をお入れください)。騎士騎士騎士、人として恥ずかしくないのか恥ずかしくないんだろうなみんなしねばいいのに。

 

 後に家臣の一人から、人の心がわからないと評されたアルトリアではあるが、彼女が家臣たちへの理解どころか交流を深める努力すら拒んだのは、別に彼らの心がわからなかったからでもなんでもない。ただ単にあんなトンチキ連中と不用意に会話をしようものなら、キャメロットに右往左往するアホどもへ片っ端から約束された勝利のハリケーンミキサーを叩き込んで回りかねなかったからである。

 

   *

 

 クソみたいな内政パートが終われば次は楽しい楽しい戦争パートがはっじまっるよー☆───などというわけもなく、やはりクソみたいな戦争パートである。貧乏が暇なしなら、クソゲーは面白なしなのだ。

 

 でもブリテンの兵隊って剣から謎のビームとか謎のレーザーとかブッパする謎連中いるじゃん、そいつら使えば少なくとも戦争パートに関しちゃヌルゲーじゃん、などと考える輩はクソゲーに対する理解が足りていない。

 酷いレベルでバランス崩壊をぶちかますのもまたクソゲーなのだ。

 

 当然というか、こちらが出来ることは向こうだって出来る。味方が聖剣謎ビームをブッ放せば敵に魔剣謎レーザーを撃ち返され、それを聖盾謎バリアーで弾く程度はまだ序の口。魔術だか神秘だかの嘘くさい言い訳の元、数十発の謎光学兵器や謎ミサイルが乱れ飛ぶ末世的光景こそがこの謎時代の謎戦場の謎常識である。ほんとうに謎すぎる。

 

 こんなひと目でSAN値をガリゴリ削られる戦争があっちゃこっちゃで行われるもんだから、ただでさえ痩せた土地がさらにショボくなり貧乏が加速していく悪循環。したがって本音としては戦争を可能なかぎり避けたいが、やらずにいれば調子こいた蛮族が攻めてくる緊急ミッションが湧くので、どっちにしたって国と土地が荒れて今日もまた貧乏に拍車がかかる。あぁ、ままならねぇなあ。

 

 それゆえに多少の性急さや痛みを伴うものであろうとも、TAS先生もびっくりの最短・最速の勝利をもって戦の芽を潰しておく必要がある。さもなければ自国どころか周辺蛮族諸共に、ブリテン含めた周辺地域全土が枕並べて仲良く共倒れという間抜けを晒しかねない。アルトリアの施策や軍事が性急とも云える行動にならざるをえない所以である。

 

 ほんでもってそれらの行動が巡り巡ってアルトリアへの好感度低下イベントに繋がるのもお約束なのである。

 

 最短距離を征くためには途中に蠢く有象無象へ構っている暇はなく。救いを求める嘆きの声を、無法に屈する怨嗟(えんさ)の声を、ときに無視してときに切り捨て、ただひたすらに進むのみ。

 小の虫を殺して大の虫を助けると言えば聞こえはいいが、つまるところ小の虫を助ける選択肢を持ちえぬ非力無能の言い訳であると誰よりアルトリアが承知していた。故に誰に何を言われようとも黙っていた。沈黙は金なり。

 

 ただし時と場合によっては沈黙が自体と情況を悪化させることもあるのだが。

 

 ギャルゲーであるならプライバシー保護の観念がやたら薄い親友がおせっかいを焼いて、攻略対象の個人情報と一緒に忠告のひとつもくれるのだろうが、残念ながらこれはクソゲーな上に当のアルトリアが忠告苦言を聞く耳を持たない始末なのでどうしようもない。

 

 たとえ見苦しかろうとも、事の次第の説明と理解を周りに求めないことには回るものも回らなくなるのは世の常であるのに、その労力すら惜しんだからこそ、この女の立ち場は峠最速で急低下するのだ。

 

 いかな知勇に優れ、衆生(しゅじょう)を引っ張り上げる器量があろうとも、末期の手前でさえそれを理解しなかったこともアルトリアがクソゲー沼に沈んでいく理由のひとつであった。

 

   *

 

 どうあったところで、終わりの日は確実に、そして唐突にやってくる。

 

 アルトリアが王様になってしばらくの刻が経ち、荒れ放題のダメ放題なブリテン(クソゲー)がようやっと多少の落ち着きを見せ、それと反比例するように彼女はやさぐれ放題の目も腐り果て放題になったところで、なんでか見てるだけでぶん殴りたくなるガキがひょっこり生えて、何をトチ狂ったのか産んだ憶えもなけりゃ産ませた憶えもない息子だと名乗りを上げやがった。なんだそりゃ。

 

 楽しいことだけ数珠のように繋いで生きていけるわけじゃないとは、有名なロボットアニメの一幕ではあるが、クソゲーの場合はクソみたいなイベントが数珠繋ぎで押し寄せてくるからたまったもんじゃない。ついでとばかりにハチャメチャ(クソ)も押し寄せてくるんで泣いてる暇もありゃしない。

 

 奇声を上げてぶん殴りそうになるのをなんとか堪え、当の本人と知恵袋であるところの笑顔が死ぬほどムカつく魔術師に事情を聞けば、どうやら顔も名前も存在もよく知らない姉、あるいは姉っぽいなんかがトテモスゴイ魔術であれをこれしてなにした結果、にょっきり生えてきたらしい。まじゅつのちからってすげー! でもそれなら私の子でもなんでもないじゃん。

 

 大体、百万歩を譲りに譲って自分の子だと認めるにしてもアレ息子じゃなくて娘じゃん。バレてないと思ってんのかもしれんけどひと目で即バレだよ隠す気もなさそうだし。雁首揃えてるアホ共と書いて家臣と読む有象無象も誰かツッコめ。それともツッコんだら死ぬ脳ミソの病気でも患ってんのかならしょうがないね。

 

 ていうか、よく考えてみりゃこいつら何年も私を男だと思って疑いやしない節穴共だったもんな。乱心よばわりされてもいいからどいつもこいつも約束された勝利のオクラホマスタンピードをブチ込みたい。

 

 幸いというか自称・息子(笑)は能力だけは無駄に高かったので、精々、便利に使い倒して後は放置というか無視を決め込むことにした。時代が1000年ばかり後ならネグレクト云々うるさそうだが時はブリテン戦国時代、仕方ないと諦めてもらいたい。第一、面と向かって会話なんぞしようもんなら思わず約束された勝利のアックスボンバーをお見舞いしそうなくらい見てて気持ち悪く感じるのだからどうしようもない。

 

   *

 

 そんなこんなでクソゲー特有のクソイベの数々を、これもお国のためと我慢して、ひたすらに月月火水木金金と十年近く滅私奉公(めっしほうこう)していたら、ただでさえ積木くずしなご家庭がカミさんの浮気発覚から大崩壊、寝取り野郎は詫びもしないで逆ギレ刃傷沙汰からのトンズラという最底辺の男のクズムーブをかましくさり、追手を差し向けてケジメ案件させようにも前後のゴタゴタで家臣は離反かさもなきゃ逆ギレ野郎にぶっコ□がされてる始末。挙げ句に息子(笑)が叛乱(はんらん)キメて国を巻き込んだ大規模内乱ときたもんだ。ブリテン春夏秋冬のクソイベ祭りに涙がちょちょぎれるどころか流す涙もありゃしねぇ。

 

 かくて叛乱起こしたアホどもを、積年の鬱憤(うっぷん)晴らしとばかりに片っ端から約束された勝利のカメハメ殺法100手の餌食にしてたところを自称・息子(笑)に頭をカチ割られ、こちらもお返しに約束された勝利のビッグベン・エッジをキメてやったがそこで力尽きてガメオベラ。本当になんだこのクソゲー。

 

「ちくしょー、こんなことならあのヒトヅマニアとデカパイスキーと糸目ポエマーとそこでくたばってるクソガキと笑顔が死ぬほどムカつく魔術師とその他の一々数えてたらキリがないアホ連中、イチャモンつけて十発くらいブン殴っとくんだったあ!」

 

 あるったけの忌々しさを載せてほざいたそれが、誉れも高き騎士の王と謳われし稀代の英雄アルトリア・ペンドラゴン最期の言葉である。騎士の誇りも王の威厳も、ついでに英雄の矜持もへったくれもない、まことクソゲーの締めくくりにふさわしいものであったという。

 

   *

 

 今際の際に思い返すのは、なぜに自分がこんなクソゲーをプレイする羽目になったのかということだった。

 

 いや、自分の人生がクソゲーになるのは判っていた知っていた。

 

 あの日、せっかくだから私ゃこの剣を選ぶわと選定の剣に手をかけた運命の日。

 

 その直前で呼ばれもせんのにボウフラよろしくどこからともなく湧いて出た、笑顔が死ぬほどムカつくボウフラもとい魔術師───なんで話の最中にぶん殴らずにいられたのか今でも不思議だ───に、それ引っこ抜いたらロクな人生を過ごせずロクな死に方さえできないよと吹き込まれその顛末さえも視せてもらったのだ。

 

 クソゲー人生その果てに、今まさにくたばりかけてる“未来の自分の姿”。それをまざまざと見せつけられ立ちすくむ少女に、魔術師は重ねて告げた。

 

 ───運命を変えることはできない。君がどれだけ力をつけようが上手く立ち回ろうがなにをどうしようが、結末はいつだって同じさ。君はただの一度も報われることさえなく、最期はひとりぼっちで惨めな終わりを迎えるばかり

 ───それがいやならこんな貧乏くじはさっさと他人に押し付け、後はすべての厄介事に見て見ぬ振りをするといい。少なくとも君一人のささやかな幸せくらいなら、世界も見逃してくれるだろう

 

 ためらいはあったかもしれない、迷いもしたかもしれない。でも、それでも、なにもかもを承知の上で剣を取って、案の定というか自分は見るも無惨なクソゲーのプレイヤーとなり、ついにはごらんの有様だよ。

 

 顔も知らなきゃ名前も知らない、感謝だってしてくれないどこかの誰かなんぞのためにやリたくもないことばかりをやるだなんてどうかしている。何をどうしたところで自分ばかりが損こいて、見返りなんぞはもらえやしないのに。

 

 毎日のようにどうして私がこんな目にと愚痴を吐き、かつての自分の選択を含めたすべてに恨み節をこぼしてきた。忠義を尽くしてるつもりなのかそれとも人をコケにしてんのかよく判らんアホどもをあれやこれやと言いくるめ、血なまぐさい戦場を右往左往して、次から次へと増えるばかりの厄介事を片付けて目を回す暇すらない仕事をこなしてきた。他人が見れば自ら進んでそんな苦労を背負い込むとかお前、真正のアホかいなと笑ったろうと思う。それをやってんのが他ならぬ自分なので笑ったやつには約束された勝利のパワーボムだが。

 

 適当なところで折り合いをつけてやめればいいのに、運命を呪い歯をくいしばりみっともない姿を晒しながら駆け抜けて最期まで戦ったのは一体、何のためであったのか。

 

 ───それこそ最初から答えは出てる。“顔も名前も知らないどこかの誰かのために”と思ったからだ

 

 ああ、そうさ。私は見返りが欲しかったわけじゃない、感謝してもらいたかったからでもない。ましてや栄誉だの誇りだの、他人のためとか自分のためでさえない。

 

 ただひたすらに、正しいと思ったことのために身を捨てて最期の最後まで戦い抜きたいと、剣を手にしたあの日に決めたんだ。

 それがいつか、身の破滅を招くと判っていても、そのように生きていくことができたのならばそれはどれほどよいことか───あの日の己が死に様を視て、そう思わずにはいられなかった。

 

 たった一人だけでもそのような生き方を貫き通せた者がいたのなら、世界はきっと、ほんの僅かにだけれど良くなると信じたのだ。

 旅路はあんなにも無様で、終わり方はこんなにもみじめで、無為と徒労を積み重ねるばかりの一生だったけど、それでも私は最期まで戦い抜いたんだ。だったら私は決して───

 

 間違ってなんかいなかった。

 

 実のところ、「本当にそうか?」などと訊かれれば胸を張って「そうだ」と言い返せるだけの自信も根拠もあまりないのだが、どうせ間もなく看取る物好きとておらずにくたばる身だ。そんなものだろうと自分を納得させてさっさと死ぬことにする。せっかく良い気分で死ねそうなのに、ここで余計なことをごちゃごちゃ考えてこれ以上の厄介事を呼び込むなぞモグラの穴に足突っ込むのだってご免だ。

 

 なら、もう思い残すこともありゃせんな。アルトリアは最後の力を振り絞って口角を吊り上げた。もはや息をするだけでも苦しいが、それでも我慢して“ニヤリ”と笑う。どうせこれが最後の我慢なのだから、おもいきり痩せ我慢をして笑ってみせる。たとえどれほどのクソゲーでも、最期の最後で笑って死ねりゃハッピーエンド。苦し紛れの負け惜しみだと誰に(わら)われようと構うもんか。この瞬間、私は間違いなく三国一の幸せものだ。

 

 その後、ちょっとした“ごたごた”がありはしたものの、結局は“ちんまい”身の丈に見合った、実にちっぽけな満足だけを胸にアルトリア・ペンドラゴンは死んだ。

 

 ───でもやっぱり思い出すと腹立つことばかりだから、もし生まれ変わるなりしてまた出会うチャンスがあったのなら、あのクソ野郎どもまとめてブン殴ってやる

 

 最後に余計なことを考えて。

 往生際(おうじょうぎわ)で潔く終わらぬあたり、やはりクソゲーは死ぬまでクソゲーである。

 

   *

 

 しかしアルトリアは知らなかった。

 憎まれっ子が風呂場のカビよりしつこく世にはばかるように、クソゲーもまた世にはばかるものなのだということを……。




 登場人物

アルトリア

 目が腐っている 必殺技は約束された勝利のタワー・ブリッジ

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