アルトリア・ペンドラゴンの人生はクソゲー   作:puripoti

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第4話 かくてワゴンにクソゲー満ちる

 竜頭蛇尾という言葉がある。

 

 終わりよければすべてよしは人生を(それのみに限定した話でもないか)良ゲーたらしむる条件の一つではあるが、世に出回る大抵の品々においてはまさしくこの言葉が示す通りに始めや中盤はともかく終わりはしょっぱいというオチへと文字通りに落ち着くものである。オチだけに。

 

 しかしてそのようなショボい〆であったとしても、それほど嘆くに値せぬものあたらぬもの。何故と言うなら、ただの一瞬であろうとも輝かしき時間があるのなら、それを希望という名の灯明として一寸先すら見えぬ判らぬ人生の夜闇を歩いていくこともできるのだから。世の中、その一瞬すら縁遠い者なぞ、それこそ売るほど掃いて捨てるほど溢れかえっているのだから。

 下には下がいるという安心感による、なんの実にもならぬ“しょうもない”慰めと言われてしまえばそれまでのことではあろうが、自分が不幸の一等賞などと安っぽいペシミズムに浸るより多少はよかろう。格好がつくかどうかはさておいて。

 

 そしてクソゲーにおいてはどうなのかといえば、これが困ったことに始まりにしてからがすでにショボいという、それこそ『これはひどい』と絶句するようなところがスタート地点というのさえ珍しくないというもので。

 さながら蛇頭蟻尾とでも言おうか。いや、蟻ん子の尻尾程度でも存在するくらいならまだマシか。尾っぽも存在しえぬなら、もはやそこにあるのは無。クソゲーによる無念無想の境地に到るということか。ああ、ときにクソゲーが苦行にも喩えられるってそういうこと。

 

 

 となれば、どうしようもないにも程のある幕開けによって始まった聖杯戦争が、いかなる終わりを迎えるのかは推して知るべしといえようか。

 

   *

 

 おそらくは聖杯戦争史上、最底辺の開幕を迎えたであろう二騎の英霊は再びにらみ合っていた。

 

(つら)以外に取り柄もない、甘ちょろけた優男かと思いきやよくも見破ったものだ、褒めてやる。ついでに今からでも大人しく目ン玉を潰される、もしくは首を差し出すのならもっと褒めてやらんでもない」

「───貴様のごとき腐った目をした輩が、真っ当な仕合をするはずもなし。騎士の戦いを(けが)慮外者(りょがいもの)め、恥を知れ」

 

 “ぴしゃり”叩きつけられた喝破(かっぱ)へ言い訳さえすることなく、目の腐ったセイバー顔はただ、「ふへっ」と鼻で笑うのみ。

 口には出さずとも心の底から腹の底、頭の天辺からつま先まで馬鹿にしてるのが丸判りなその態度に、イケメンの秀麗な(おもて)が抑えきれぬ嫌悪に歪む。つくづく人の神経を逆なですることにかけて並ぶものなしな女である。

 

 最早この目が腐ったセイバー顔とは付き合いきれぬと悟ったらしく、イケメンはここにいない主へ脳内電波を飛ばして切り札を開帳することにしたようだ。さすが七騎中最速の騎士だけあって手札の切り方も早い。

 

 しかしここおいてそれは悪手であった。なんせ目の腐ったセイバー顔も目が死んでる彼女のマスターも、この戦争を真っ当なド突き合いで勝ち抜こうなどとは端から考えてさえいなかったのだから。

 

 ───お手並み拝見だ、殺し屋。貴様が口にした世界の平和とやらのために精々、死を撒き散らすがいい。

 

 イケメンのマスターとはまた違った理由で姿を現さぬ己がマスターへ、皮肉も交えてつぶやくセイバー顔であった。

 

   *

 

 主の許しを得たイケメンは早速、自慢の宝具たる双槍を開帳し烈火怒涛の勢いで攻め立ててきた。さすがは槍の一献で歴史に名を刻んだ英霊、瀑布のごとき勢いで夜気を切り裂く槍撃は触れなば滅する死の烈風。いかな武芸に疎い者すら一度目にするただそれだけで、遣い手の辿りし修羅の道行き察せよう。それなるは数多の修練、果てなき戦、数限りなき屍山血河を対価とし、遂には武の窮極へと辿り着いた者の業と知らしめよう。

 

 対して目の腐ったセイバー顔が採ったのは、向こうが押すならこちらは引いてあちらが引けばこちらも引くという、真っ向から打ち合うどころか“のらりくらり”とやり過ごす戦法であった。

 蝶のように舞い蜂のように刺すというのはこの時代における有名な拳闘家の格言ではあるが、“にまにま”といやみったらしい笑みを浮かべ、一合の刃も交わすことなく夜闇の戦場を縦横無尽にうろちょろする姿はさながら人間大のゴキブリかハエのごとし。荒事に無縁の者でもそれと判るほど、やる気をドブの中へと叩き捨てたような戦いぶりである。

 

 とことん人をおちょくったその姿に焦れたのかイケメンは攻勢の手を止め、苛立ちを吐き出すかのような荒々しさで右手の長槍を突きつけ叫んだ。

 

「貴様ァ、いい加減にしろ! 戦場にありながら逃げるばかりで打ち合いすらせぬとは、剣の英霊としての誇りはどこにやったか! どこまで俺の戦いを汚せば気が済むか!」

「なぁに戯言(たわごと)ぬかしとるか猪武者め。仮にも戦争、汚いも蜂の頭も(イワシ)の尾っぽもありはせん」

 

 叩きつけられる激昂へ、呆れというより蔑みすら浮かべて目の腐ったセイバー顔は返した。

 

「殺しの技で褒めてもらえるのは下っ端だけ、戦場の私は限りなく効率的に“敵と味方を”死なせる商売だ。恥や誇りじゃメシを食えないんだよおめでてーな」

 

 以前に述べた通り、彼女にとって戦争とは『やりたかないけどやらねばならぬ』ということで嫌々やるハメになっていた代物以上でもなんでもなく、そんなもんに浪漫的なにかを求められても困るのだ。戦争という行為を(うと)み憎む、その意味においては彼女ら主従は似た者同士に違いなかった。少なくともマスターの方では頑として認めたがらぬであろうが。

 

 目が腐ったセイバー顔の恥じ入る心なぞ微塵も持ち合わせぬ主張、なによりも目ン玉にも劣らぬほど腐り果てた性根にイケメンの苛立ちがフルスロットルで加速する。しかし実のところ、苛立っているのは目の腐ったセイバー顔とて同じであった。というのも、

 

 ───ええい、あの愚鈍めが。とっととこいつのマスターを殺ってしまわんか。

 

 これである。尖兵となるサーヴァントなぞ無視して指揮官たるマスターの首を狩る、それがこの戦争において彼女ら主従の採った基本戦術であった。

 

 イケメンのマスターがどこにいるのかまでは知らないが、先の脳内電波はそう離れたところには飛ばせるものではない。まして戦場を信用に足る精度で俯瞰(ふかん)するためには最低でも目視できる範囲には留まる必要があろうから、野郎のマスターは間違いなくこの近辺に潜んでいる。自分がサーヴァントを釘付けにして相手の主を無防備に晒すことに徹していれば、後は迷惑魔術師専門駆除業者として名を馳せたマスターが自動的に勝ちをもたらすという、余人が聞けば効率厨乙! と言われること必至のプレイスタイルであった。

 

 切嗣のカミさん経由で(面と向かって言えよと伝えたが無視された)これらの戦術を提示されたセイバー顔は、一も二もなくそれを了承した。仮にも歴戦の戦争屋でもある彼女の目からしても実に効率的かつ無駄のない戦術であると思われたし、何よりも楽して成果がもたらされるのが素晴らしかった。自分はほぼ何もせず勝利が自ら転がってくるとは、生前のクソゲーぶりが嘘のようなヌルゲーではないか。浮いた時間で食べ歩きなりゲーセン通いでもしようなどと、目の腐ったセイバー顔は皮算用をしたものである。

 

 ところがどっこい(ふた)を開けてみりゃいつまで経っても眼前の相手は健在で、自分のマスターも勝ち名乗りを上げやせん。向こうにだってなんぞのっぴきならぬ事態が発生しとるのかもだが、それを考慮に入れて立ち回ってこその殺し屋だろうに、それすら出来ずこのざまとは《魔術師殺し》が聞いて呆れる。今代のへなちょこ魔術師一匹を始末するのにいつまでかかっとるか。

 

 生前、人のストレスを天井知らずに上げまくる家臣を相手に鍛えに鍛えたスキル、ベヒモスのケツより厚い面の皮【A++】で決して悟らせこそしなかったが、そうでなければ1ダース半ほどの舌打ちを漏らしていたところだ。

 

 そうやって子供向けアニメのネズミとネコよろしく追いつ追われつ繰り返すことしばし。

 今は遠き伝説の中に謳われし英霊達による、人の領域を逸脱した技量をもって行われるしょうもない戦いというか追いかけっこに飽きがきたのか、切嗣のカミさんがこっくり舟を漕ぎはじめた頃、戦場に唐突な変化が現れた。

 

 といっても別に、セイバー顔がいきなり心を入れ替え真面目にブチコロがし合いを始めたとかではない。こいつの勤労意欲なんてもんは生前に使い果たされ、今や跡形どころか消し炭すら残っちゃいない。現にこの女、いい加減にアホらしくなってきたので自らに(そな)わる水上歩行の能力を用い、海と川を渡ってトンズラこいちまおうかとまで考えていたのだから。

 

 急転直下の変化は空飛ぶ牛車(ぎっしゃ)に乗ったデカブツの形をしていた。なんだありゃ、時期と乗り物を間違えたサンタクロースの英霊か? トンチキこの上ないその光景に目の腐ったセイバー顔とイケメンの手も思わず止まり、牛車が放つ雷による神威の騒音公害に目を覚ました切嗣のカミさんはあくびをした。

 

 胡乱(うろん)な眼差しのセイバー顔と呆気にとられるイケメンの様子に気分を良くしたものか、呼ばれもせんのに飛んできたデカいのは聞かれもせんのに名乗りを上げた。それによるとなんでも生前は征服と侵略で名を残した王様とのことだった。

 

 ───つまるところはブリテンにアホほど押し寄せてきやがった腐れ蛮族共のボスキャラみたいなもんってことかよあのやろう。目の腐ったセイバー顔はデカブツに対する好感度が、3年目の3学期末にスケジュール管理を間違えて爆弾を10発くらい連続で炸裂させたギャルゲーヒロインくらいにまで落ち込んだのを感じた。

 

 セイバー顔への心象が、もはや攻略は不可能なほどに低下したことにも気付かぬデカブツが、ついでとばかりにまだ見ぬサーヴァント達に向かってプロレスラーよろしく「かかってきなさい!」と煽るやガチンコ漁法よろしく次から次へとサーヴァントどもまで湧いて出る。いや、電気を撒き散らしてるから感電漁法(ビリ)のが正しいか。どちらにせよ大の野郎どもが、雁首揃えて覗き見とはいい趣味をしてやがる。きっと真名は出歯亀(デバガメ)とかに違いなかろう。

 

 果たしてデカブツの煽りに応じ、新たに湧いて出てきたのはドルアーガの塔の主人公よろしく黄金の鎧に身を包んだやたらと偉そうな態度の金ピカ男。なおこっちは名乗りを上げたりはしなかった。本人が語るところによると、わざわざ口にせぬでも名を知っているのが当然というほどの著名人らしいのだが、誰なんだかは見当もつかない。ジャンプ力に定評のある俊足ヒゲ配管工の英霊か? ヒゲ要素ないけど。しかし正体はどうでもいいが鎧は正直うらやましい。売っ払ったら一生ゲームとおやつ代にゃ困るまい。

 

 なんやかんやと問答をするデカブツと出歯亀へと冷めた視線を送る目の腐ったセイバー顔。槍のイケメンも毒気を抜かれたような顔をしてるし、もうこの場はこいつらに任せて帰っちまおうかなどと考えていると、少し離れたところにドス黒い陽炎(かげろう)のようなものが立ち上がる。どうやら本日最後のお客様であるらしい、千客万来とはこのことだ。血気に(はや)る他の面子はさておき、セイバー顔としてはいい加減に疲れたし面倒くさいしで、とっとと帰って風呂入って寝たい気分なのだが。

 

 突如として巻き起こった黒陽炎が消え失せると、そこには“なんかへんなの”が顕現していた。もう少しマシな言い様はないのかと言われそうではあるが他に形容するべき言葉がないほど、それはへんなのであった。

 全身が先程の陽炎の残滓(ざんし)ともいうべき黒い霧というか“もや”のようなものに覆われていてイマイチよく判らなかったが、鎧甲冑に身を包んだなんかであるらしいのだけは見て取れる。さっきの金ピカが出歯亀なら、さしずめコイツは出歯亀・オルタといったところか。さっきのデカブツといいこいつといいこの戦争、珍奇な奴らしかいねーな。

 

 自分だけは例外と固く信じるセイバー顔をよそに、なんかへんなのは他のサーヴァント達なぞ目にも入らぬ様子で、先の金ピカを穴が空くほどに見つめている。視線を受けた金ピカはさも汚らわしいものを見たとばかりに不愉快そうな面をする。出歯亀と出歯亀・オルタで同族嫌悪こじらせてんのだろうか? 悪趣味仲間同士でご苦労なこった。

 

 だが問題となるのはそこではない。覗き趣味で歴史に名を刻むド変態共がどんな確執こじらせようが、そんなもんは目の腐ったセイバー顔の関知するところではない。問題となるのは、あのへんなのが現れてからこっち、彼女の慎ましき胸の内に揺らめきたゆたう感情にこそあった。嗚呼、いと懐かしむべきこの思い、かつて己が総身を焼き尽くさんばかりに満たしたこの感情。望郷の念にも似たそれこそは───

 

 そう、それはすなわち───ムカつきであった。はらわたが煮えくり返るほどの。

 

 なんでか知らんがあの“なんかへんなの”、見てるだけで死ぬほどムカつくのだ。というか無性にブン殴りたい、今すぐ。

 

 というか蹴っ飛ばしてた。

 

「なんも言わずに死ねやオラァ───ッ!!」

 

 天地を震わす雄叫び上げて電光石火の勢いで、クッソムカつくあんちくしょうの喉元めがけて約束された勝利のフライングレッグラリアートが炸裂する。なんでたまろう、金ピカに意識を向けっぱなしだったせいで予期せぬ攻撃をもろに食らったクソムカつくあんちくしょう、もといへんなのは暴走ドラッグマシンのごとくに吹っ飛んだ。

 

 受け身も取れずに地べたに叩きつけられたへんなのだったが、そこはへんなのではあっても一廉の英霊である。ド汚え不意打ちなにするものぞと跳ね起きるも、体勢を立て直す暇さえ与えず懐に飛び込んだセイバー顔に約束された勝利のドロップキックをねじ込まれ、さらにはその勢いを利用した約束された勝利のフランケンシュタイナーを決められてしまう。

 

 さしもの“なんかへんなの”もこれにはたまらずぶっ倒れるが、そこで慈悲をかけるようなセイバー顔ではない。へんなのを無理やり引き起こして力任せに頭上に担ぎあげ約束された勝利のボディスラム、大技に次ぐ大技に前後不覚となってダウンしたところを間髪入れずに大ジャンプ、土手っ腹めがけて魔力ジェットによる超加速を乗せての約束された勝利の急降下式ダブル・ニー・ドロップをお見舞いする。

 

 なさけむようの残虐行為手当が付くなら一財産が築けそうなほどに凄まじい暴力の嵐に放り込まれ、車に踏んづけられたカエルみたいな有り様で地面に這いつくばり手足を痙攣(けいれん)させているへんなのへ、約束された勝利のヤクザ蹴りを食らわせひっくり返したセイバー顔は背中から馬乗りになりフィニッシュホールドの約束された勝利の機矢滅留(キャメル)苦落血(クラッチ)の体勢に入った。

 

 ───が、力を込めたその瞬間、唐突にクソムカつくクソこんちくしょうのクソ手応えが霞のごとく消え去ってしまった。サーヴァントの緊急回避手段である霊体化だ。おそらくあのクソ野郎のピンチを悟ったクソマスターが、クソ小賢しくも魔力をカットして強制退場させたのだろう。もう少しで胴体真っ二つにしてやれたというに、余計なことをしくさる。

 

 あと一歩のところで怨敵を逃したその悔しさに、目の腐ったセイバー顔は歯噛みを抑えきれない。

 

 野郎、もし次に出会うことがあるなら今度は初手から絶対殺す系の技を叩き込んでやる。なんとも物騒なことを心に誓いセイバー顔はその場を後にした。他にやることとか大事なこととかあったような気もするが、もういい加減に疲れたのであと“一仕事”を片付けたらさっさと帰って寝てしまおう。

 

 当然のことながら切嗣のカミさんが勝手な行動を止めようとしてきたので、約束された勝利のクロロホルムを嗅がせ黙らせた。ぶっ倒れたところを米俵でも扱うようなぞんざいさで肩に担ぐ。

 まったく、初日からこれでは先が思いやられるというものだ。“ぶちぶち”と文句を垂れ流しながら、目の腐ったセイバー顔は戦場を立ち去るのであった。

 

 残された連中はしばしの間、狐につままれたような顔を見合わせていたが、結局は全員が疲れたような雰囲気となり示し合わせたようにその場は三々五々解散となった。

 

 

 開幕がgdgdなら閉幕もgdgdである。




 クソゲーずかん

目が腐ったセイバー顔

 目が腐ってて川澄ボイスでセイバー顔した不意打ちと場外乱闘と反則攻撃が得意な全盛期のダンプ松本の英霊

デカブツ

 しゅぞく:でんきえいれい みずタイプとひこうタイプにつよい じめんタイプとあさしんタイプによわい

金ピカ

 旧NAMC◯の英霊 塔の攻略してろ

なんかへんなの

 モーターマンの英霊
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