魔女集会で会いましょう?
寒さに震えながら、目が覚めると雪国だった
「…うん?」
目が覚めると雪国だった。
目が覚めると雪国だった!!
「何処?」
目が覚めると雪国だった!!
「いやマジで…」
途方に暮れる俺は、寒空の下2時間程呆然としていたらある女性が通りがかった。ウェーブのかかった長い黒髪に若干つり目の目にルビー色の瞳。黒と青を基調にした冬服を纏った妖艶な色香を漂わせるその人は、俺前で立ち止まり、しゃがんだ。
「お前…見ない顔だな…。」
そして、顔を覗き込むように俺を見る。そして、手に持っていた籠から水筒を出して渡してきた。
「ほれ、特性のショウガ茶だ。暖も無しで冬のラボンの外は一日ももたないぞ。親とはぐれたのか知らないが、私の家で良ければ暫く居ても構わんが…来るか?」
女性は、優しく微笑んで俺に聞いた。寒さで凍えていた俺は迷わず顔を縦に振った。
こうして俺は、北東の地ラボンで暮らす魔女、リリスの家に置いてもらうようになった。
ラボンの凍て地でリリスに拾われてから3年の時間が過ぎた。預けられた当初、記憶が混濁していた俺は、自分の名前も分からず、何者かもわからずにリリスの世話になりながらも家事の手伝いをしていた。記憶喪失に近かったのだが、リリスは何も言わずに家に置いてくれた。その時、俺は彼女に「何故優しくしてくれるのか」と、聞いたこともあったが、彼女は多くを語ってくれなかった。
そして、彼女に保護されてから混濁していた記憶も徐々に整理できるようになり、自分の記憶も鮮明になってきた。そこで厄介なことになったのが、自分の前世に当たる記憶と同時に、自分のものではない記憶も入ってくること。この問題も、前世の記憶を思い出していくうちに解決されることになる。
俺は、前世で事故に巻き込まれて死んでしまったらしく、ある特典をもらって転生した。この世界に存在する毒素の浄化、英霊召喚に必要なスキルと、破格な魔術師の才能。毒素の浄化は試してみるととても使えるスキルで、蛇毒だけでなく、蜂や麻薬に至るまで、その毒性を中和できる。前世であれほど嫌っていた蜂や蛇、ムカデに至るまでの毒虫が全く怖くなくなった。よく見ると可愛いよね、スズメバチ。この浄化の力をそこそこ大きな町で使ったたところ、やばそうな宗教の人たちから「御使い」認定されてストーキングされたから、使いどころに少し注意が必要。というか、このスキルって絶対聖女様みたいな人が持つやつだよね。
そして英霊召喚だが、これが考えるだけでも破格。前世で俺がハマっていたfateシリーズに存在するもので、伝説の勇者とかを一週間に一回とはいえ召喚が可能であり、転生の付属的に得た膨大な魔力と、並外れた魔力効率によって聖杯という魔力の疑似無限リソース無しで一騎、現状無理をすれば三騎まで使役が可能。神霊クラスならその分消費魔力は増える。これは、概要だけでも用途が無いとただの魔力の無駄遣いをになるため、しかるべき時に使ってみることにする。今使っても、リリスの仕事の手伝いくらいしかできないし。魔術の素質は言わずもがな、教わってすらない奴がどうこうできるものではない。
俺が転生した方法は、神様転生。しかし、他とは違って多少の代償は払っている。というのも、俺が転生をする時に必要なエネルギーを前世いた世界から搾り取らなければならず、結局その世界の寿命とエネルギー100年分を燃料にして転生が出来たという流れ。俺が復活するのに、以前いた世界のの寿命と、使用するはずだったエネルギーを一世紀分くすねた挙句に違う世界に高飛びした形。まぁ、個人的には戻れない世界のことなので気にしていないが、あっちの世界は困ってるだろうなー。だって一世紀分のエネルギーが何かしらの形で判明するんだもん。俺が生きていた時代はまだ石油に頼り切りだから、失ったエネルギーが石油とか生活インフラに直接打撃を与えるものでないことを祈るだけだ。今更気にしてもあれだけど、あの世界も割と好きだったから申し訳ないとは思ってるんだよね。強く生きるんやで…。俺はもうそっちに戻れないからさ。
そしてもう一つ、転生の形式である。憑依転生らしく、前世とは違う母親の腹の中からのスタートではなく、憑依して意識が混成されてからのスタート。憑依したということは、元々この体を使っていた人がいるわけで、その人と意識を統合する過程でおそらくは記憶が混濁していたと考えればつじつまが合う。神様に聞いたわけではないからこれが答えと100%断言できないが、今の俺の頭ではそうとしか考えられない。その前提で話を続けていくと、どうやらこの憑依先の少年、帝国の皇子らしい。先代皇帝の血を引く証として首筋に月の紋章が刻まれている。紋章には力は無い。ただの証、スティグマみたいなやつみたいだ。…まぁ、俺も最初信じられなかったし、整理した後にリリスに言っても鼻で笑われたよ。俺もそうするし信じない。でも、話を続けて、首筋の紋章を調べてもらったら、彼女も信じてくれたよ。
さて、その皇族が何故帝都の遥か北東のラボンの地に置き去りになっていたのか。それは、何者かによって拉致されて、そのままここに捨てられたようである。少年、クルスの記憶も、急に襲撃をかけられたため顔も正体も分からない。ただ、彼の中に残っている記憶を辿ると、ようやく自分が転生した世界が判明した。栄華を極めた千年帝国、革命軍、悪逆非道の大臣、帝具。お分かりかな?
そうだね。アカメが斬るだね。…人生ハードモード過ぎるよぉ…。内容は全く知らないけど、友人から聞いた話は、革命軍配属の暗殺集団がていこくを蝕む悪逆非道の大臣を殺す話だった気がする。原作には傀儡の皇帝に兄がいたかは不明だが、血縁的には負け戦に加担しなければ…?ダメだ、原作の流れが分からない。どうしよう。
とまぁ、記憶を取り戻したわけだが。問題はこれからどうするか。一応捨てられているから帝国のしがらみは無い。魔術の素質、自前の浄化能力を利用できればこの地でも充分生活は可能。しかし、精神的には他人とは言え、いずれ傀儡になる弟がいると分かった以上、自分の気持ち的に放置するのは心苦しい。弟がいなかったら知らないふりが出来たのだが。そして、記憶の整理が完全に出来た後、一か月くらい悩んだ末、当面の目標を決めた。それは、
ー悪逆非道の大臣のオネスト大臣をリタイアさせて、帝国を再建する
と、いう目標である。しかし、今の俺には人を従わせる権力も無ければ、屈服させるほどの力もない。所詮国に捨てられた元皇子。それが俺の現在地。そして、権力を得ることは極めて難しい。大陸の北東にある辺境だしね。しかし、力ならもう俺の中にある。問題はこの力をどう使うかだが、これもかなり近い所に答えがある。
気温が上がり、積もっていた雪も解け始めたある日の夜。リリスと俺は、いつも通り夕食を終えて食器を洗っていた。普段から薬草や治療で忙しいリリスに代わって家事をすることが多いが、今日は余裕があるのか、リリスも食事の後片付けをしていた。俺は、一度作業を止めて、リリスの方向かう。彼女もそれに気づいたのか、「どうした?」と振り向かずに聞いてきた。俺は、それには答えずに、真剣に彼女に頼んだ。
「俺に、魔術を教えてくれないか?」
と。この時の彼女の驚いた表情を、俺はきっと一生覚えているだろう。そう思えるほど、彼女の表情は驚きに満ちていた。
キャラクター紹介:
クルス
憑依転生者で魔術師。元々は帝国の第一位皇位継承者だったが、何者かの陰謀により廃嫡。大陸の遥か北東の地「ラボン」に捨てられる。前世は大学三年生で軽い歴史オタク。特に少な所はピューリタン革命から第一世界大戦前までのイギリスと、プロイセン時代のドイツ。嫌いな統治者はスターリンとポルポト。
死にたくないし、生きるためなら何でもするが、精神的に他人とはいえ、この世界の唯一の血縁者である傀儡の皇帝は助けたいと思っている。
腐敗した組織に対する対応は、外部の反乱要因を利用して効率的に膿を出す考え。
拾ってくれたリリスに対しては言葉にできない程には感謝をしており、彼女の仕事を手伝ったり、家事も半分以上こなしている。
リリス
クルスを拾った魔女。薬草を売ったり、近隣集落に出向いて病気の治療を行うなどして生計を立てている。他の魔女と違い、人間の生贄等を好まず基本的に血を見るのが苦手。
主な魔術は原初ルーン魔術。昔は東方の王国に仕えて、帝国にも牙をむいた東方最強の魔術師だが、現在は引退をして、大陸北東のラボンで隠居生活をしている。半分自給自足の生活だが、概ね満足な暮らしをしている。普段は封印しているが世界を見渡す千里眼を持つ偉大な魔術師