廃嫡皇子の帝国再建   作:あじたまんぼー

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自宅待機です。コロナよ無くなれ


邂逅

コルネウス攻略の後、皇帝に報告をするために謁見の間に向かった後。シロンは帝国軍の軍寮にある部屋の前にいた。彼は扉に描かれている自分が率いる騎士団の象徴である白狼のレリーフを確認した後にドアを開けた。

 

「これは遅いお帰りだね〜お色な街に繰り出したのかな?」

 

すると、肩まで伸びた白髪に蒼の外套を着た男がふざけた態度で迎えた。シロンは、男の言葉を無視して奥にある自分の椅子に座った。男は表情を変えずに続ける。

 

「つまらないな〜。で、陛下の様子はどうだったんだい?」

 

男の質問に、シロンは白金の髪をたくし上げながら、

 

「お前の想像通りだよラフィ。少し見ないうちに大臣に毒されてやがる。多少の理性は残しているが時間の問題だろうな。」

 

と、溜息をつきながら答えて、手書きのメモを部下に渡した。

 

「カイエン外交官、ヒリュー文部官、ダリル内政官…まだまだいるけどこれ、半月で?」

「あぁ、大臣に従わなかった良識派やそれ以外の勢力だ。半分は原因不明の変死。残りは事故死とあるが…」

「なるほどねー。こりゃあ酷い。」

 

 そのメモには、シロン達が帝都を離れていた半月の内に死んだ文官や武官の名前である。一応死因も書いてはいるものの、変死に事故死と疑わしいものが多い。これを見たラフィは、若干引きながらそのメモを眺める。

 暫く沈黙が流れた後に、シロンがラフィに思い出したかのように

 

「そういえば、コルネウスの復旧の方は?」

 

 と、聞いた。騎士団の軍師は、それを聞いておもむろに紙を取り出して騎士団長に渡した。

 

「ついさっき報告が来たよ。コルネウスでの復旧は、滞りなく進んでいるみたい。現時点での性暴力事件やトラブルは無し。現地住民からも一定の信頼も獲得できているし、僕たちがすぐ戻る必要は無さそうだね。流石は帝国随一の規律を誇る白狼騎士団だね。」

「妙に他人事だな。お前もその一人だろうに。」

「やだなぁ団長。僕はただの軍師で三流魔術師だよ?」

「言ってろ、元宮廷魔術師が。あっちはうまくやれているなら暫くは問題ないだろう。明日、褒賞として頂いた物資の大半をコルネウスに送るように手配を頼む。今日は休め。」

 

 そう言って、シロンは席から立ちドアの方に向かう。ドアの前に立ち止まってから少し考えてから、

 

「物資の手配のついでに、ジュンとクリスティーナを呼び戻してくれ。今じゃ帝都の方が危険だ。人手が欲しい。あと、クリスティーナ(バトルジャンキー)がそろそろ疼き始めるだろうからな。」

 

 と、部下の魔術師に頼んだ。それに魔術師も緩い雰囲気を纏いながら、

 

「了解だよ団長。ついでにやっておく〜」

 

 緩い口調で承諾をした。シロンは、それを確認した後に部屋を後にした。部屋から出てしばらく歩いていると、廊下に仄かな光が差した。光源の方を見ると、ひとつも欠けていない満月が煌々と輝いていた。それを見て立ち止まり、数瞬の間はそれを見ていたが、すぐに視線を前に向けて歩みを進める。長い廊下を歩き、軍寮の外に出た所で、シロンはある男を見かけた。全身鎧に身にまとった筋骨隆々の大男。彼は、その男の方に向けて歩を進める。

 

「大将軍とあろうお方が遅くまで警備ですか?」

 

シロンの言葉に気がつき、振り向く。表情は変わっていない。

 

「貴様は…。そういえば、今日帰ってきたのだな。」

 

男は表情を変えずにシロンに返す。それに若干苦笑いをしつつも、

 

「お久しぶりです。ブドー大将軍。」

 

と切り返した。

 

軍寮前で会った後。二人は、警備ついでにシロンの部屋のあるところらまで歩いていた。

 

「聞いたぞ。また無茶を働いたそうだな。」

 

と、ブドーはシロンに向けて言った。彼の言う無茶は、謁見の間での挑発行為の事だろう。その言葉には少しの心配も含まれている。シロンはそれに笑いながら、

 

「大丈夫ですよ。陛下は傀儡にはなっていますが、良心の呵責もありますし、頭も回ります。それに、今私が帝国から消されれば、それこそ革命軍に致命的な隙を与えてしまいす。…あぁ、もちろん貴方の実力を低く見てる訳では無いんですよ大将軍。でも、革命軍に対応ができる将軍があまりにも少ないんです。」

 

そう言うシロンに、ブドーも納得をしながら返す

 

「確かにな。俺が率いる近衛兵、貴様が率いる白狼騎士団、そしてエスデスが率いる軍団を除けば。現実として、士気の高い革命軍を押し返す程の戦力があるかと問われれば不安だな。エスデスも北部の制圧、そして貴様の軍は東部の復興に力を割いていると聞いた。」

「ありゃりゃ…どこからそれを?」

「フッ…ただの風の噂さ。ただ、帝国最高の将軍の息子のお前ならそうすると思ったまでさ。」

 

そう笑いながら言う大将軍に、若き将軍は亡き父を思いながら小さくうなづいた。

 

「父が死ぬ間際に言ったんです。『家訓を守れ』と。そして、『自らが守る民と、これから相対する敵のための軍隊であれ』と。殺戮を尽くすことだけが戦争に勝つ方法じゃない。最後まで父は言っておりました。どうせ勝つなら、負けたものも助けた方が良い、と」

 

父親の言葉を思い出すように、シロンはそう言った。それにブドーも空を仰ぎながら、

 

「あぁ、実に貴様の父が言いそうな事だな」

 

と、小さく呟いた。足元に残る水たまりに移る彼の顔は、職務の時には一切見せない程の笑顔を見せていた。

 

 

ー二日後ー

 

 ところ変わって共同墓地。そこでは、クルス達一行が潜伏を続けていた。拠点を移してからは、クルスが偽造魔術で姿を偽って買い出しを行っていた。そのため物資の面での心配はなかった。そして、この子の期間に、イエヤスが目を覚まし、サヨも歩けるまでに回復していた。身動きが取れないロニーは変わらず、二人の看病である。ランサーとアサシンは、それぞれの主を守るために霊体化して傍に控えている。イエヤスが意識を取り戻した今、彼らには憂慮すべき案件が残されていた。それは、

 

「ここにいる四人は、共通の目撃者がいることだよな。」

「そう、それだよ。流石元政務官。」

 

 ロニーが答え、それにクルスが応えた。そもそもロニーが元政務官。上層部に近い程に身元が明かされる確率が高くなる。この問題に関しては、帝国の行政機関を壊滅させるか、ロニーの汚名を返上、最終手段としての皇帝陛下の恩赦を勝ち取ることが必要とされる。そしてそれを現段階ではどうしても不可能だ。国家元首の前に立つにはあまりにも手札が無い。そのため、ロニーの問題に関してはいま議論する意味がない。

 ならば、それ以外の所で、四人共通の目撃者は明白。アリアとその家族である。サヨとイエヤスは実際に拷問をされて死んでいると思われ、クルスとロニーは偽名を使っているが顔が割れている事は事実。そして、彼らは夜中の内に逃亡をしている。街中で鉢合わせをすればどうなるか分かったことではない。

 

「あの女か…クソッ!俺が元気だったらやり返せるのに…ウッ…!」

「こら!病み上がりは無理をしない。…でも、私も同じ気持ちです。出来ることなら一発殴ってやらないと気が済まない…」

 

 イエヤスが怒りを滲ませながら、サヨは沸々と静かに沸き立つような怒りを内包して口を開く。クルスは、落ち着け、と言いながら、

 

「お前らの気持ちは分からんでもないが、今は絶対安静。でも街中を動く以上はどうしてもアリア達の存在が邪魔になる。そこで…」

「この際だから口封じをしようってか?」

「察しが良いね。流石。」

 

 ロニーの言葉に、口角を少し歪めながら返す。そして続けた。

 

「ロニーの身元に関しては、逃亡したとはいえ顔まで知っている人は町中にいるとは考えられない。現にロニーを追っているような連中が一人も見かけてない。しかし、アリアに関しては違う。夜中に逃亡をした、そして倉庫に侵入の痕跡があるのを確認をすれば、血眼になって探すだろう。そりゃそうだ。何人もの人を残虐に殺しているのだから。それが少しでも世に出ればそれこそナイトレイドに餌食だ。もう既に手にかけられているかもしれないが。」

 

 と、話したところでクルス、ロニーの傍らから各々の影法師が現れた。クルスはそれを確認をして、

 

「ナイトレイドに手をかけられていればそれでいい。ただ、まだ生きていたのなら…。義賊の真似事は好かないが殺そう。これでせめてもの弔いになればいい。何よりアリア達がいなくなれば俺達も比較的自由に動けるんだ。いつまでも共同墓地で引きこもるわけにはいかない。」

 

 と、締めた。そして、三人の顔を見てから、

 

「つーわけだ。今から行ってくる。」

「今からですか!?」

「いや当ったり前だろ。時は金なり、善は急げだ。」

「いや、善ではないと思うぞ。まぁ、迅速に動くことは大事だ」

 

 と、襲撃の支度を始めるクルスに、サヨとイエヤスが驚き、ロニーは知っていたかのようにため息をついて賛成した。そして、ロニーはある質問を投げかける。

 

「口封じを行うとして、ナイトレイドの連中と鉢合わせたらどうする。そこで顔が割れても後々不便になりかねんぞ。」

 

 ロニーの質問に対して、クルスがにやけた顔をしながら、鞄からある物を出す。

 

「そういわれると思って、今日の買い出しの時に買ったんだよ。東洋から伝来した狐のお面。それに、魔術で如何様にも偽造が出来るし問題なし。問題はナイトレイドの戦闘力だけど、その問題についてもランサーがいるから平気。」

 

 そう言って、おもむろにお面を顔につけ始める。主の言葉に、サーヴァントは微笑みながら、

 

「問題ないよ。僕がいればマスターが脅かされることは無い。」

 

 と、自信満々に言い放った。クルスの突飛な言動に、驚いてはいるも、いつまでも足踏みをしている所ではないというのは理解しているためか、少し息をついてから、

 

「俺たちはどうする?」

 

 と、質問をした。クルスは支度をする手を止めずに、

 

「ここで待機をしてほしい。まだ二人は満足に動ける状態じゃない。」

「そうか。了解。だけど、気を付けろよ。」

 

 ロニーが、支度を終えて準備運動をしているクルスにそう言うと、クルスが全身の筋肉をほぐしながら、

 

「わかってる。」

 

 とだけ返して闇夜に紛れた。

 

 

ー帝都 邸宅ー

 

 夜が深まる刻限。クルスは、アリアが住んでいる邸宅の近く。その森林に姿を隠していた。彼は隠れながら、開けた所にある倉庫の方に目を向けていた。

 

「…日を改めるべきだったな。」

 

 と、後悔するようにこぼしながら。その倉庫の扉は蹴破られており、邸宅の住人ではない者達が囲んでいる形である。その中に、アリアも拘束されている。帝都で噂される知名度、そしてアリア達が日頃行っている悪行を加味すれば、その連中が何者かは検討がつく。

 

「まさか今日、襲撃とは…」

『このまま放置しても良さそうだけど。』

「まぁ、あの状態ならまず助からないだろうな。でも、ここで奴らと接触するのも悪くないと思っているんだよねぇ…」

『その心は?』

「いざという時は、ナイトレイドも手札になるかも。」

『やってみないとわからないけど。きっとマスターにとっても鬼札(ジョーカー)じゃないのかい?』

「それは思った。あいつら、立憲君主制とかを鼻で笑いそうだし。」

 

 と、サーヴァントと共に捕らぬ狸の皮算用を行うクルス。その眼前では今もアリアが叫んでいた。きっと、「仕事を探して無一文でやってきたのだから、私達が目をかけてあげたのを感謝すべきだ」と主張しているのだろうと予想して、出るとしてもいつ出ようかと考えていたら、おそらくナイトレイドでは無いであろう少年が背中にある剣を引き抜いてアリアを切り捨てた。彼女は糸が切れたように地面に斃れた。あまりの思い切りの良さに驚いたのか、茂みの中で音を鳴らしてしまった。

 

 ナイトレイドの仕事は、アリアの家族を暗殺をすること。ただ暗殺を行うだけならばそれで良かったのだが、今回は一人観客が出来てしまった。タツミと呼ばれる少年である。アリア達の本性を知らない彼は、必死にアリアを助けようとしたが、レオーネが倉庫の扉を殴り飛ばしたことでそれが全て暴かれた。残虐な拷問の成れの果てがそこには転がっていた。見るも無残に捨てられていた遺体の中に、彼の知人がいたらしい。サヨとイエヤスと呼んでいた。悲しんでいるタツミを見てから葬ろうと思ったが、それをタツミに止められる。友人を殺されて何故かばうのかと思った矢先に、彼は剣を振り抜き、迷いなく外道を切り払った。そこまでの一部始終を眺めていたアカメの隣で、獣の耳を生やした女性、レオーネが感心をするように口笛を吹いていた。アカメ自身も驚いたが、アリアにしてみれば当然の帰結である。彼を騙した挙句、彼の友人すらも奪ったのだから。私怨による殺人は関心できないが、この結末になってしまったことには納得がいってしまう。仕事を終えた一同がそう考えていると、近くの茂みから物音が聞こえた。

 

 

「誰だ!!」

 

 茂みに向かって放たれる男の声。ナイトレイドと思しき連中は、刀を持った黒髪の少女、銃を構えたピンク髪の少女、獣の耳を生やした金髪の女性。巨大な鋏を持っている紫髪の女性、ゴーグルをつけている緑髪の少年、そして屈強な鎧を纏った者。この中で太い男の声が出来そうなのは鎧の者しかいない。もしかすると声が非常に太い女性かもしれないが、現段階では男性と仮定。一斉に目線を向けられているこの状況に、クルスは冷や汗をかいていた。

 

「ランサー。」

『なんだい?』

「これって下手に逃げようとすれば…」

『間違いなく、明日の新聞の一面だね。まぁ、僕がいる以上はそうはならないし、意地でも阻止させてもらうけど。』

「そうかよ。頼りにするぜ相棒。」

 

 と、ため息をつきながら茂みから出ることにした。ゆっくり立ち上がり両手を頭につけながら、自分に敵意が無いことを示すかのようにゆっくりを歩みを進めた。

 

「いやはや、見事見事。即死とは恐れ入った。…あぁ、見ない顔だって?そりゃあ、会ったことないから当然だよね。」

 

 警戒を解すように語り掛けるように話すが、彼らの理解を得ているかは不明な所である。現に、彼らは武装解除をしていない。そんなことを考えながらも歩みを進めて、あと3mのところで立ち止まった。

 

「ところで、君たちが噂の「正義の味方」かい?」

「私たちは、そんなものじゃない。」

 

 クルスが、そう聞くと、黒髪の少女が吐き捨てるように答えた。それにクルスは肩をすくめるようにして次の言葉を待つ。すると、ピンク髪の少女が銃を構えながら、

 

「どうするのよ。あのへっぽこだけじゃなく、こんな変な奴にもみられてるなんて。それになんか、変な寒気がするわ。」

「そうですね。あれは生かすべきではないかもです。」

 

 ピンク髪の少女が警戒感を露わにし、紫髪の女性が完全に臨戦態勢で鋏を構えていた。クルスは身動きをせずに視線だけで観察しても、ナイトレイドの連中が、すぐにでも自分を殺せるように準備をしているのが理解できる。

 

「どうやら、君たちは誤解をしているらしい。私には戦闘の意思は無いのだが…。」

「意思が無いならその仮面をはずせ。やましいことが無ければ問題が無いはずだが。」

「それはノーだ。君たちは顔が割れても行動に支障が出る程度だろうが、私にとっては死活問題だ。理解を求める。」

 

 黒髪の少女に仮面を外すように言われ、クルスはそれを固辞する。彼にしてみても危ない橋を渡っているのだ。せめて信用に足るところまでいかなければ顔を晒すわけにはいかない。冷や汗で背中が冷えているのを無視しつつ、身動きをとらずにいた。

 

「処遇はともかく、とにかくこいつも連れていくか。レオーネ、そこの少年はどうだ?」

「合格!!きっと良い暗殺者になるよ!」

「うわぁ!!」

 

 鎧の男が、そう金髪の女性に聞いて、それに彼女は元気よく返事をして少年を担ぐ。クルスは、鎧の男の方に顔を向けて、

 

「私にも来いと?」

「そりゃあ、俺達を見たんだ。それなりの話はさせてもらうぜ。」

「もし断ったら?」

 

 と、鎧の男に言葉を投げかける。鎧の男が、二つの遺体を担ぎながら。

 

「断るのは自由だが、そしたら俺たちがどうするのかを理解した上でならいいぞ。」

 

 と、言い放つと、周りのメンバーから視線が集まった。その中には確かな殺意が込められており、付いて行かなければ間違いなく戦闘が起きることは理解できた。

 

『マスター。僕なら問題なく返り討ちに出来るけど。』

『まぁな。でもここでこいつらを殺しても全く旨みが無い。むしろ悪徳連中が幅を利かせて廻り回って俺たちが不便被るだろうしな。』

『つまり?』

『そーゆーこと。』

 

 と、サーヴァントと念話での会話を済ませた後に顔を向けて、

 

「わかった。私も出来る限りの礼儀を尽くそう。」

 

 と、付いて行くことを伝えた。この形で巻き込まれた以上は、それを逆手にとってナイトレイドの縄張りに入って話を聞いてみればいい。例えば、この国を具体的にどう良くしていくのかを。自分の弟である現皇帝の処遇をどうするつもりなのかについて。彼らとどう付き合うか、どう利用するかをその時に考えれば良い。そんな思惑を持ってクルスは、ナイトレイドに連れられて移動をした。




次回予告:ナイトレイドのアジトで、ボスのナジェンダと、革命の後の国をどうするつもりなのかを話すクルス。どうやら、目的が一部同じであることを確認出来たクルスは、取引を行うことに。一方、帝都では、シロンの要請で二人の騎士が到着する。
次回「デモクラシーの行方」

あ、なんとなくで書き始めた西南聖杯合戦も是非読んでみてください
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