廃嫡皇子の帝国再建   作:あじたまんぼー

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自宅待機その二。火遁でウイルスが死滅するかを実験しました(大嘘)。思った以上に長くなりそうなので前編、後編に分けることにしました。


デモクラシーの行方(前編)

 ナイトレイドと望まぬ邂逅を果たしたクルスは、彼らに連れられる形でアジトに居た。一応信用のため拘束はされているが、クルス本人には危害は加えられていない。アジト内の一室で半ば軟禁されている状態でいるが、既に状況はロニー達にも伝えてある。アジトに移動する前に、即席で作った使い魔にあるメッセージを仕込んで放った。内容は、『ナイトレイドと接触する。明々後日の昼までには帰る』と記されている。その使い魔も、ロニー達が読み終わった後に、メッセージごと消失するため証拠も残らない。少なくとも当面の問題は解決しているが、肝心な「直近の問題」は未だ解決はできない。タツミと呼ばれる少年は歓迎されているが、少なくともクルスはそうではないようだ。

 

「まぁ、急に現れた仮面の男とか。俺でも疑うし歓迎はしないよな…。」

 

 仮面の裏では苦笑いを浮かべつつ、彼らがここから出してもらうのを待とうとも思ったのだが、

 

「流石にやられっぱなしなのは性に合わねーよなー。外すか」

 

 段々と怒りが湧いてきた彼は、脱出を選択。手始めに、彼を拘束していた手枷と足枷を、魔力を流して揚力が上がった手足で力ずくで引きちぎった。自由になった体を捻って血流を循環させながら辺りを見回す。最低限の家具が置かれている簡素な部屋である。そんな面白みのない部屋を眺めながら柔軟をして、現在の状況を整理をする。幸い、仮面は外されなかったため顔は割れていない。そんな最低限な安堵をもって、部屋を後にした。

 部屋を後にして、暫くは廊下を歩いていたが気づいたかのように使い魔に話しかけた。

 

「ランサー。いるんだろ?」

 

 主の声に、姿を見せずに気配が動く。

 

『もちろんさ。今度はどうしたんだい?』

「決まっているだろ。客人に対してマナーがなってないと一言文句を言いに行く。」

『殺し合いになるかもしれないよ。』

「そん時は加勢しろよランサー。」

 

 と、軽口を叩きながらもランサーの気配感知を辿って目的地に向かって歩く。そこには、ナイトレイドの一味が集まっていた。彼は一抹の怒りを滲ませながらも歩みを止めずに部屋に入る。大広間だろうそこにいる者達は、クルスの姿を見て驚愕した面持ちをしていた。

 

「ひどいなぁ…仮にでも俺は客人だぜ?訳ありとは思ったけど、数時間も軟禁をされるとは思わなかったよ。」

 

 クルスはそれに構うことなく不満を呈した。彼の言葉にリーゼントの男が我に返るように、

 

「あぁ…すまなかった実はこちらも立て込んでいてね。」

「領域内に侵入者だろ?それなら手も貸せたのだが。」

 

 彼は男の言葉に重ねるように言った。実は、クルスがこのような待遇を受ける理由も大体は理解している所で、ランサーに周囲の様子を見に行かせていたからわかったことである。彼はそれをあえて言わない。黙って放置されたのだからこれでフェアだと彼は認識している。リーゼントの男、ブラートは、内心焦りながらも、予期せぬ客人に対して言葉を続ける。

 

「そうか、どうしてだか分らんが、俺たちの行動は筒抜けらしい。ここは自己紹介をしよう。俺はブラート、元軍人だ。」

「シェーレです。」

「レオーネだよ。おねーさんと呼んでもいいよ?」

「マインよ」

「ラバック」

「アカメだ。もう一人、ナイトレイドを指揮するボスがいるが今は席を外している。」

 

 妙に素直に自己紹介を始めるナイトレイドに対して、クルスは仮面の裏で困惑していた。

 

「警戒をしていた割には身元を明かすんだな。俺がお前たちを殺すか、脱走した後に警備隊にでも告発をするとは思わなかったのか?」

 

 警戒を露にしつつも返答を待つクルスに、黒髪の少女、アカメが口を開いた。

 

「もしそのつもりならとっくに襲撃されていただろう。襲撃や脱走をする気ならそもそも私たちが集まっている所を襲うとは思えない。拘束を自力で突破できるんだ。私達を相手取って殺すことも可能なはずだ。」

「何を持ってそう確信をしている?たかが拘束を引きちぎっただけだろ?」

「その程度でお前一人なら問題は無かった。ただ、もう一人いるな(・・・・・・・)?」

「もう一人?」

「どんなカラクリかは聞かないが、お前からは二人分の気配がする。私達が誰なのかを理解した上で、駆け引きに持ち込むということは、相当な戦力であることは間違いない。」

 

 アカメの言葉に、関心するようにため息をついて頭を抱える。単身で巣に飛び込んだ時点で、ある程度の所までは看破されるのは覚悟をしていたが、まさかサーヴァントの存在を認識してしまう者がいるのには驚いた。見たところ魔術師ではないため、直感で感知出来たのかと考えるともう考えることを放棄したくなる。

 

「まいったな。多少の個人情報漏洩は覚悟していたが、まさかそれが最初とは。何?千里眼かなんか?」

「どうやら、お前にとっては痛手な情報だったようだな。私達もこうして名も明かしている。それに倣うのが礼儀じゃないのか?」

 

 アカメの言葉に、クルスは大きなため息をつく。確かに、このままアクションを起こさなければ、まず彼らの信用も信頼も勝ち取れない。偽名の可能性はあるが、間違いなく顔は偽造されていない。彼らは顔を明かして歩み寄ろうとしている。ボスは不在だそうだが、少なくとも指揮官が戻るまではここにいることが必須。でなければ、ここまでやってきた意味がない。そう感じたクルスは、頭の後ろに手を伸ばし、仮面を固定している紐を解いて、仮面を外した。

 

「ならば礼儀に応えようか。俺はクルス。ただの旅人だよ。」

 

 と、不敵に笑った。

 

 

ー同日 帝都ー

 

 軍寮の白狼騎士団の執務室に、団長のシロン・ゼッケンドルフと、騎士団付き魔術師のラフィ―ニャ・ジーナスの他に、二人の騎士が座っていた。一人は大きな黒の鎧を纏った黒に近い紫の髪色をした女性、ジュン。その右には、金の装飾を施した漆黒のドレスメイルを纏った金髪の女性、クリスティーナ。二人は、シロンの招集に応じて帰還をした部下であり、騎士団の中でもシロンの次点で戦闘力の高い。クリスティーナに至っては、常に最前線で敵戦線を壊滅させる戦闘狂(バトルジャンキー)である。ジュンに関しては副団長をしているのに殆どが門番という変わり者だ。さしずめ攻撃のクリスティーナ、防御のジュンと言ったところで、ジュンの防御力と防衛能力は帝国屈指の実力である。守る戦いであればエスデスやブドーを相手にも引けを取らない。そんな二人であるが、どうして東方でシロンの代わりに指揮を執っていた二人が、帝都に召集されているかであるが。

 シロンは、座っている三人に紅茶を振舞っている。料理は全くできないが、紅茶を淹れることに関しては騎士団の中でも随一である。東方を攻略をしていた時は、シロンにはティーポットしか触れない程である。三人は、紅茶を口にし落ち着いたような表情を浮かべている。それを見てシロンは、

 

「三人とも、ご苦労だった。特製のラベンダーティー、これで少しは落ち着くものだ。」

「流石団長。気が利くぅー」

「ふむ、味も変わりなく美味だな。」

「長旅のあとにこれは、確かに落ち着きますね。」

 

 と、三者三様の感想を述べる部下に、シロンは少し笑いながら自分のカップにも紅茶を注ぐ。そこから数瞬堪能した後に、ジュンが静かにカップを置いて団長に話しかけた、

 

「わざわざ私たちを呼び戻したのは、お茶を振舞うためではないでしょう。本題に入りませんか?」

 

 彼女の言葉に、シロンは同じようにカップを置いて、ラフィ―ニャに目配せをする。その意味を理解したラフィ―ニャは、術式を展開して執務室内に結界を形成した。

 

「盗聴対策は完璧」

「あぁ、ありがとう。さて…。」

 

 と、おもむろに立ち上がり、真剣な面持ちに切り替えて話を切り出す。

 

「お前たちに頼んだ…。あの件はどこまで進んでる?」

 

 白狼の長は、静かに、そして冷たく言葉を紡いだ




次回予告:ナイトレイドのアジトに滞在して数日。ナイトレイドのボス、ナジェンダが帰還する。クルスが待ち望んでいたその人物は、そしてナイトレイドは敵か味方か。革命軍との、ナイトレイドとの、正義を天秤にかけた話し合いが始まる。一方帝都では、皇帝の勅命を受けたシロン達がとある密造酒ビジネスを追っていた。そしてサヨも買い出しの最中で怪しい取引を偶然目撃してしまう。
次回「デモクラシーの行方(後編)」

結果として嘘予告になってしまったことをここで謝罪いたします。計画性のない投稿ってやっぱり駄目ですよね…でもやはり計画を立てるのが苦手な私でしたとさ。是非是非感想をお待ちしています。
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