廃嫡皇子の帝国再建   作:あじたまんぼー

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性能テスト

「oh......」

「超級のデスタグールをこんな簡単に」

 

東の大魔女リリス・メーヴィンと、その弟子のクルス。彼女達の目の前には巨大な恐竜型の超級危険種デスタグールが息絶えており、その上でクルスのサーヴァント、エルキドゥが涼しい顔をしていた。

うん、確かに力を試すって言ったけど、そうなんだけどそうじゃない。いや、強いことに越したことはないけどほぼワンパンで超級危険種狩るってもうそれ俺常に命の危険と隣り合わせじゃん。

と、クルスは冷や汗をかきながらそう思っていた。これは少し時間を遡る。

 

 

「サーヴァント・ランサー、エルキドゥ。キミの呼び声で起動した。どうか自在に無慈悲に使って欲しいな。マスター」

 

 火山の火口という極限地帯。そこに似つかわしくない姿をした青年が、クルスにそう言った。名はエルキドゥ。人類最古の英雄叙事詩「ギルガメッシュ叙事詩」に出てくる英雄王ギルガメッシュの友。最初は神から離反したギルガメッシュを殺すために、神が土から造り出した鎖の兵器であるが、大決闘の末にギルガメッシュと親友になり、数多くの冒険を共にしてきた。そんな彼の結末は、天の女神イシュタルの持つ神牛グラガンナとの戦闘の果てで死んでしまうというもの。そんな逸話を持つ彼だが、もちろん、クルスにもリリスにも縁は無い。無論、クルスの体にメソポタミア関連の縁も存在しない。もしかしたら皇帝の血筋がギルガメッシュの血筋の可能性はあるかもしれないが、それは考慮しなくてもいい。きっとそれは限りなく低い。

 

「クルス」

「何?」

「お前、まさかメソポタミアと縁があったのか?」

「んなわけないでしょ。そっちは?」

「私はただの魔女よ。それにルーツは北西の寒冷地よ。掠ってすらいないわ。」

 

クルスは取り敢えず確認をするが、ルーン魔術を基軸にしているリリスにとっては中東地域の伝説と関わりがあるわけが無い。クルスの前世は当然。日本人とメソポタミアに縁があるわけが無い。エルキドゥが2人の前で首をかしげながら口を開いた。

 

「キミと僕の縁か…それがなんであれ、マスターはキミだろ?」

 

と、端的にクルスに言った。その言葉にクルスは溜息をつきながら立ち上がる。

 

「まぁ…わからんことを考えてもわからんしなぁ…。クルスだ。今回は聖杯戦争ですらない可能性があるが、大丈夫か?」

「あぁ、多少のことは聖杯からの情報にあるよ。召喚された以上は、サーヴァントとして全力で君を守るよ。」

「オーケー。よろしくな、ランサー」

 

2人はそう言葉を交わして握手をした。

 

 

火山から少し離れたところで、帰路に着くべく3人は歩いていた。その間にも、ランサーについて聞けるところまで、聞いて、今後について話していた。

 

「というわけで、お前も召喚できたし準備が出来次第帝都に乗り込む」

「君、偶に行動が単純って言われない?」

「急に来た!そして、まさかのサーヴァントにも言われた!?」

「会って間もない使い魔に指摘されるとか…プフッ…!」

 

師匠と同じことを指摘されて、肩を落とすクルスに、リリスは笑いこらえながら弟子の肩を叩いていた。そんな二人を、懐かしいものを見るように、エルキドゥは眺めていた。そんな平和な時間が過ぎていたが、ここは大陸随一に危険な地域。安全な場所は存在しない。三人の足元が揺れ、一定のタイミングで地鳴りが響く。そしてその地鳴りの音源が近づくように大きくなっていく。やがて、三人の影が大きな影によって覆い隠される。足元を見て、次に三人は上を見上げた。そこには、堅牢な骨を纏った恐竜の如き生物。見た目は全身骨が露出しているティラノサウルス。

 

「師匠、冬ってデスタグールの活動期でしたっけ?」

「いや、奴は冬眠しているはずだが…」

 

 超級危険種、一個大隊レベル相当の危険度を有する恐竜。デスタグールである。そんな恐竜がじっと三人を見つめていた。師弟は術式を展開して臨戦態勢を整える。ランサーは二人の行動を見て、敵と認識しつつもデスタグールを見上げていた。

 

「ランサー!奴は地上で最も危険なカテゴリーのモンスターだ!」

「地上で最も…マスター。」

 

 主からそう聞いて、少し興味が湧いたランサーはマスターに問いかけた。

 

「キミがこれから戦おうとしている相手に、あれより上の戦力はいるのかい?」

 

 サーヴァントからの問いに、意図が分からなかったが、少し考えてから答えた。

 

「おそらくな。腐っても千年帝國だ。それがどうした。」

 

 術式を編みながら、標的から目を離さずに問い直した。ランサーは、緊迫した状況下で不敵な笑みを浮かべて、主に提案をする。

 

「マスター。僕なら、あれを斃せる。そしてキミたち無しでも、より早く処理できる。」

 

 その言葉に、リリスは驚いて言葉を返す。

 

「エルキドゥ、貴方が太古の神造兵器なのかどうかは知らないけど、私たちもそれなりにこの山で奴を駆逐している。その二人相手に手出しは無用って、よっぽど自身があるのね。」

「まぁまぁ、師匠。そこまでで…で?ランサー、お前なら何分で片付けられる?」

 

 師匠を宥めながら、冷静にランサーに問いかける。その質問に数瞬考えた後に口を開けた。

 

「三分あれば、あれは沈められる。」

 

 自信満々に放たれた言葉に、クルスは気圧されながらも、ある感情が芽生えた。実際に彼が、その力を示す所を。そう思ってから、クルスは師匠の方に目を向けて、アイコンタクトで魔術の展開を解除した。リリスは弟子の意図を察したのか、展開した術式を解除して、周りには魔術のために使われようとしていた魔力の残滓が滞留している。それを確認してクルスは、ランサーの方に顔を向けた。

 

「三分か…ちょうどいい。お前がどれくらい強いのかは確認していなかった。宣言通り三分で倒せ。好きだろう?性能テスト。」

 

 好奇心と少しの狂気が混じった笑みを浮かべて、ランサーに命令を下す。主の顔を見て、つられるように笑みを浮かべて、足元から無数の鎖を顕現させる。

 

「性能テスト…ね。キミとは仲良くできそうだよ、マスター」

 

 その不敵な笑みを浮かべながら、視線をマスターから標的に切り替えた。それまで、二人に向けて警戒していたデスタグールも、急激に危険性が増したエルキドゥの方に視点を変える。二人はその隙にその場所から離れて、大きな岩の裏に隠れた。岩の裏に隠れた後に、リリスが口を開く。

 

「なぁ、本当に良かったのか?」

「えぇ、いずれ実力は知らないといけませんでしたし。それにもしここでやられたら、それまでの話です。後、彼が本当にエルキドゥならば、超級とはいえ簡単に倒せるでしょうし。一石二鳥っすよ。現に俺たちは戦わずに済んでいるわけだし。」

「それはそうだが…」

 

 二人は、そう話しながら、ランサーの方に目を向ける。そこでは既に戦闘が始まっていた。咆哮を轟かせたデスタグールは、ブレスを放つ。ランサーはそれを軽やかに避ける。避けながらも、鎖で怪物に攻撃をする。しかし、デスタグールの外皮の厚さで攻撃は弾かれる。それを見て、彼は感心するように笑う。

 

「ふーん。確かに、マスター達が警戒するわけだ。しかし…」

 

 怪物の特徴を掴んだランサーは、更に魔力を大地に流し込み、より強力な鎖を練り上げる。そして練り上げた鎖を脚の裏の関節部分を狙って放った。放たれた鎖は、比較的脆弱な外殻を貫いて、直接間接を締め上げた。その痛みで、声帯が擦り切れんばかりに吠えるデスタグールをみて、少し哀れみを持った表情を浮かべる。

 

「性能テストとはいえ、申し訳ない。でも、キミは確かに意味はあったよ。」

 

 ランサーは、そう言って、締め上げていた鎖を体内から切り裂くように頭にまで伸ばしていき、脳を貫いて、頭部から鎖を貫通させた。先程まで、叫んでいたデスタグールが、糸が切れたかのように沈黙して、轟音を轟かせながら斃れた。既に息絶えていた。

 

 

 そして、冒頭の会話に戻る。所要時間はおおよそ二分弱。ランサーが指定した時間よりも早く超級危険種を討伐した。その実力、その力に、二人は驚くしかなかった。しかし、クルスの方は若干疲れが見える。英霊召喚で多大な魔力を消費したのち、使い魔であるランサーが魔力を消費して戦っていたために疲労が発生したのだ。若干立ち眩みながらもリリスの後に付いて死に絶えたデスタグールの所まで歩いた。

 

「マスター、約束通り…あぁ、すこし本気でやったから魔力の消費が?」

「気にするな、予想より減っただけだ。まだ動ける。」

 

 ふらついているマスターを少し心配するが、クルスは手で制しながらそう答えた。そんな二人をよそに、リリスはデスタグールの死体に近づいて観察をしていた。クルスとランサーも彼女についていく。

 

「にしても、冬眠してるやつが、なんでこんな真冬に…穴持たずか?」

「違うな。穴持たずならもっと気性が荒い。見るなり襲撃してもおかしくなかったが…。考えられるのは英霊召喚で地脈が急激に動いたから驚いて起きたんだろう…だから初回の反応も鈍かった。」

 

 二人はそう話しながら術式を展開。ルーンで浮遊を付与してデスタグールを宙に浮かせた。そして、クルスが縄に括り付けた。

 

「マスター、これは?」

「こいつを家まで運ぶ。食料としては最悪だけど、装備品や秘薬の素材としても使えるしな。秘薬の素材は師匠が、装備品の素材に関しては有名な技師にでも売ればしばらくは働かずに済む。」

 

 クルスはそう言うと、縄を引っ張って、リリスと共に帰路についていた。ランサーはそれを見て、マスターの方に歩み寄った。そして縄に手を取り、

 

「手伝うよ、マスター」

 

 と、主に言った。それにクルスは笑顔を浮かべて、

 

「助かるよ」

 

 と、言ってランサーに縄を渡した。

 

 

 そのまま、家までたどり着き、留守番をしていたロニーに、デスタグールの死骸を見て腰を抜かす等の、小さなハプニングはあったものの、英霊召喚によって仲間がもう一人増えた。そして、強力な仲間を得たクルスは、本格的に、帝都に乗り込む計画を立てようとしていた。




次回予告:
前回、ランサー、エルキドゥを召喚したクルス。その後、ラボンから出るために準備を進める。長年暮らしてきた土地に別れを告げる切なさを持ちながらも、弟を救うために決断を下す。そして、そして起きているかもわからない聖杯戦争と、帝国を壊すためにクルスは旅に出る。弟子は、師匠に一時の別れを告げる

次回『旅立つ弟子に花束を』
※更新は遅くなります


新作品:
 2030年、東京。見せかけの災害支援、超インフレ、超少子高齢社会、そして外交問題。あらゆる問題から日本政府が逃げ続けたことにより日本という国家機能が崩壊する。それによってもたらされたのは、地方では、政府に見切りをつけた地方自治体が離反して海外勢力と結託して本州内でもパスポートが必要な所に。そして東京では、差別、格差、貧困、テロリズムが蔓延るディストピアと化してしまった。そんな東京には一人の暗殺者がいる。

 彼は中立である
 彼はフリーランスである
 彼は平等である

 金さえ払えば善人であろうと悪人であろうと全てを等しく代行して裁く。そんな彼には正義は無く、悪も無い。しかし請けた仕事は期待以上の成果で応えるプロフェッショナルである。そんな有名な傭兵に依頼をしてきた少女がいた。その依頼は『拉致された妹を助けてほしい』というありきたりな依頼。傭兵は、その依頼を受けた。その依頼が、彼の運命を大きく変える出来事であったことも知らずに

最新作『天秤の弾丸』

春頃、ハーメルンと小説家になろうで配信予定。そして更新が停止している『機械少女は笑わない』も、三月ごろに再開予定。

https://ncode.syosetu.com/n3854fw/ ←なろう内の小説のURL

乞うご期待!!
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