廃嫡皇子の帝国再建   作:あじたまんぼー

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すっっごくお待たせしました!!社会人って大変ですね!


狼の帰還

 クルスとロニーは、良識派の文官の協力を取り付けることが出来ずに途方に暮れていたところ、アリアの助けによって二人は安全な寝床にありついた。しかし、アリアとその家族は、サヨとイエヤス等の地方からやってくる若者を標的に拷問を趣味にしている、人格破綻者な連中であった。現在は、死にかけていた二人をクルスが助けて、自室に匿っている状態。

 クルスは、部屋に入ってきたロニーに、二人について手短に話した。ロニーは、少し驚いたが、納得するまでにそう時間はかからなかった。

 

「なるほど…昨日そんなことが…」

「そう。この二人以外はもう冷たかったよ。」

 

 ロニーの言葉に、クルスが遠い目をしながら返した。状況を把握したロニーは、サヨの方に顔を向ける。

 

「初めまして。俺はロニー・マクスウェル。元政務官だ。訳あってそこのクルスと共に行動をしている。」

「サヨです。よろしくお願いします。」

 

 そう、彼が名乗り、彼女もそれに応じる。そして、クルスの方に向いて、今後のことについて話し始めようとしてドアの方に目を向ける。その行動を見て、クルスは、

 

「ここでの会話は外には漏れない。結界で閉ざしている、それに、ランサーの気配感知で見張らせてる。」

 

 と、術式を掌で見せながら言った。それに安心をしながらロニーは口を開く。

 

「で、これからどうする。二人がそこまでなら俺たちも…」

「まぁ、いずれ同じことになってただろうね。金持ちに成りすましたとはいえ、俺たちは田舎からやってきた道楽者としか思っていないだろうし。何より、ナイトレイドにでも殺されたことにすれば罪逃れは簡単でしょ。」

 

 ロニーの言葉に、クルスも欠伸をしながら同意する。そして言葉を続けた。

 

「こうなった以上はここにいるのも危険だし、ここを離れておかないと…あ」

 

 と、言ってから閃いたかのように考え込む。2人は黙って彼が話始めるのを待つ。

 

「墓地ってのはどうか?」

「「はい??」」

 

クルスの言葉に、2人は首を傾げて聞き返した。

 

 

 その日の夜、クルス達四人は帝都の共同墓地に来ていた。イエヤスはまだ意識お取り戻していないためクルスが背負って運んでいる。

 

「屋敷から離れるのはわかるが、なんで墓地なんだ?」

 

 サヨを背負いながら、クルスに付いて行くロニーが聞いた。クルスは振り向いて返す。

 

「医者に見せようにも、二人は症状としては治っている。大きな宿を取ろうにも、帝都の大開発で部屋は取れそうにない。そもそもアリアから逃げている以上は余計に足は付けられない。じゃあ人目につかず、いくらか空気もいい場所は?」

「まさか…墓地か?」

「正解ー」

 

 イエヤスを背負いながら墓地の中を歩く続けるクルス。そして、少しの間をおいて口を開いた。

 

「あともう一つ、目的があってね。」

「目的?」

「右手を見てみ?」

 

 クルスの言葉に、ロニーが右手の甲を見ると、そこには呪印のような、痣のようなものが浮き出ていた。

 

「はあ!?なんじゃこりゃ?」

「ここに来る前に言ってたろ。自分の身を守れるサーヴァントが欲しいと。まぁ?それが出ない限りは無理な約束だったんだがな。」

 

 そう言って、クルスは右手の甲をロニーの方に向ける。

 

「令呪と呼ばれててね、三画の膨大な魔力を編まれた呪印みたいなもの。これがあればサーヴァントを呼び出せる。魔術師じゃない奴が聖杯に選ばれるのは珍しいんだよなー。レギュレーションが少し違うのか?」

「令呪…これがあれば俺も」

「おう、サーヴァントを呼び出せる。」

 

 クルスの言葉に、ロニーは驚き、サヨは会話の内容が理解できずに首を傾げる。

 

 

クルス達が墓地に潜伏をしたのとほぼ同じ時間帯。宮殿の謁見の間で青年がひざまついていた。青年の目の前には、年端もいかない少年と、肉を貪っている太った男。少年が、帝国のトップ。皇帝。男はそんな若すぎる皇帝の後見人のオネスト大臣。革命軍から、いの一番で的にかけられている男だ。

 

「シロン・ゼッケンドルフ。ただいま東方コルネウスより帰還しました」

「うむ、大儀である。詳細はオネストから聞いている。東方の反乱勢力を殲滅したそうだな。」

 

シロンと名乗る青年が、恐縮ですと言って頭を垂れる。

 

「しかし、ゼッケンドルフ将軍の手腕もさすがですなぁ…他の将軍で3年かかるコルネウス攻略を半月で完遂してしまうとは。」

「お褒めの言葉なら、私ではなく部下達にお願いします。私一人ではどうにもならなかったことですので。」

 

大臣の言葉にも、冷静に受け答えをするシロン。表情を表に出さず、あくまでも謙虚であり続ける若き将軍を見て、大臣は内心憎悪で煮えくり返っていた。大臣がいくら褒賞をチラつかせても釣られない者は多くはないが存在する。そして良識派の様にそれを腐敗と紛糾する者も存在する。ブドー大将軍の様に逆賊を殺した暁に首にかけると言う者もいる。しかし、シロン・ゼッケンドルフという男は釣られない上に良識派でもない。ただ皇帝の勅命には敬虔に従う者だ。それ故に彼にとって大臣の存在は、皇帝のオマケ程度にしか考えていない。

 

「相変わらず謙虚ですねぇ…東方の難攻不落の地を落としたのですからもう少し誇れば…」

「もう少し誇れば皇帝の隣にいる牛脂擬きはなくなるのでしょうか?私はただ陛下の命を忠実に全うしたに過ぎません。」

 

寧ろ、シロンから見ればオネスト大臣こそ邪魔だと考えている。そしてそのことを隠す気も無い。時折透明な殺意が顔を覗く。彼にとって従うべきは皇帝であり、大臣ではない。その態度を隠す気もない。当たり前のように上司に不敬を働く将軍に、オネストの張り付いた笑顔がひきつった。そんな2人の険悪な空気を察することなく、皇帝は満面の笑顔で、

 

「ともあれご苦労だった。褒美として金や食料を贈呈したいのだが。」

 

と、言った。シロンはそれにも表情を変えずに、

 

「ありがとうございます。きっと部下達も喜ぶでしょう。」

 

と、頭を垂れた。

 

 

謁見の間からシロンが部下を連れて去った後、大臣は皇帝に

 

「陛下、シロン・ゼッケンドルフという男は信用してはなりませんぞ。」

 

と、進言した。先程までは何とか保っていた笑顔も殴り捨てるように。それに皇帝は不思議そうな顔をしながら、

 

「どうしてだ?」

 

と、聞いた。大臣はもちろん皇帝にわかるように説明をしようと、先程まで謁見の間で堂々と罵った若き将軍を思い出してさらに腸が煮えくり返った。

 

「あの者は確かに実力は申し分ないですが、性格に難がございます。あんな真正面から不敬を働く者等…」

「あれに関してはシロンの方に一理あると思ったのだが。あやつはあの若さで帝国に貢献してくれている。何が気に入らないのだ?」

 

そう、皇帝が訊ねると大臣は咄嗟に返す言葉が見当たらなかった。皇帝のことは如何様にも可能な立場にいる大臣であるが、シロンと呼ばれる男に関してはそうはいかない。皇帝から絶大な信頼を得ていることもあって、彼の扱いに関してのみは純粋な皇帝の意思で動いている。その上頭もよく回るため、民のためにならない命令ならばやめた方がいいと進言をして諌めることも出来てしまう男だ。如何に大臣が皇帝を洗脳してその命令を通そうとしても、その洗脳は解こうと思えば溶けてしまうのである。

勿論、その事は皇帝本人には言えないため言葉選びに迷ってしまう。そうしているうちに皇帝が欠伸をしながら、

 

「まあ良い。オネストもシロンも国に貢献していることはよく知っている。喧嘩は程々にな。…余は遅くなったので寝るぞ。」

 

と言って、付き人を連れて謁見の間を後にした。大臣ひとりになった空間で、その手に持っていた骨を握り潰しながら、怒りと憎悪に満ちた顔で佇んでいた。

 

 

その頃、帝都の共同墓地の林の中では、

 

「サーヴァント、アサシン。聖杯の寄るべに従い馳せ参じた。見た所魔術師では無いようだが…」

「あぁ、そこにいるおっさんがあんたのマスターだ、アサシン。」

「オッサン!?」

 

クルスが描いた術式の上で、黒い外套を纏った仮面の男が、ロニーの方を見て確認をしていた。心無しか仮面には困惑の色が見える。召喚を目の当たりにしたサヨは何が何やらわからずに混乱。ロニーは目の前にいる少し奇怪な男を見て、額に汗が浮かぶ。クルスはサーヴァントの情報を持っていたため顔色変えずに眺めていた。念の為ランサーを傍に控えさせている。アサシンはロニーの方に向き直して跪く。そして、

 

「では、改めてよろしく頼もう。魔術師ではないマスターよ。我が力を、マスターのためだけに使うと誓おう。」

 

と、改めて誓いの言葉を述べたのだった。




帝国にオオカミが戻り、クルス達も新たな仲間を迎えることが出来た。サヨもイエヤスの容態が改善していく中。クルスは、ランサーとアサシンを連れてあるところに向かうのであった。口封じを行うために。

次回「邂逅」
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