ボウロロープ侯の娘   作:neocy

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タイトルにバルブロって入ってるけど、「今回は」まだクロエ視点ですよ。

久々にバルブロ出したのでテンションが上がって文章がやばくなってるかもしれないけど許し亭ゆるして。


王国頂上作戦-八本指よ、首を洗って待っていろ-
おおきなバルブロ、あらぶるザナック


「か、帰ってきましたわ……!」

 

カルネ村での一件から幾ばくの月日が流れただろうか。

 

『柳生一族の陰謀』の烏丸少将リスペクトなセリフを使ってしまい、偶然にもナザリックからの監視役に気づいてしまった私はしばらくはエ・ランテルでライヘンバッハとして活動せざるを得なかった。

 

当然、エ・ランテルにやって来たモモンとナーベにも会っちゃったり、すんでのところで漆黒の剣の面々をクレマンティーヌやカジットの魔の手から救い出したり、ズカズカと原作介入する羽目になった。

 

ついでにクレマンティーヌは簀巻きにして馬に載せて法国に送り返しちゃった。テヘッ

多分風花聖典とかが回収しているに違いない。うん。

 

あとはエンリの成長の方向性が大きく変わった。

原作ではゴブリンの小笛を貰って覇王エンリルートが始まるはずだったが、ライヘンバッハとして拳法の基礎や聞きかじっただけの武術流派の話題を教えている内にメキメキと実力をつけ、その結果、オーガ相手に五点掌爆心拳(モンク版グラスプハート)を決めてしまったのだ。

 

結果としてその強さを野良モンスターに見せつけた彼女をゴブリンやオーガが『族長』と慕い出す始末。

 

……私、五点掌爆心拳は教えてないですわよ?

というかキル・ビルの話なんてしてないし経絡のケの字もだしてませんわ……。

 

だというのに……、エンリ……恐ろしい子!

 

 

======

後にエンリ・エモットは独自の流派『王国不敗』を創始、周辺各国に『拳王』としてその名が広まり、数多の門弟を抱える事となる。

 

そして圧倒的な脅威に対して門弟を引き連れて戦いを挑むのだが、それはまた別の話。

======

 

 

そんなこんなで、ようやく監視の気配が無くなったのでクロエ・カティナ・デイル・ボウロロープとして王都に帰還ですわ!

 

 

それにしても何だか王都の雰囲気が変わった気がしますわね。

何というか、以前に比べて活気が溢れているような……。

 

 

「おかえりなさいませクロエお姉様!」

 

む、恐らくファンガールAな娘子ですわね。

挨拶がてらこの活気について聞いてみるのが良さそうですわ。

 

「ただ今帰りましたわ。王都での暮らしに変わりはないかしら?」

「それが大変なんです!何とバルブロ王子とザナック王子が……」

 

んん!?

待て待てですわ、まさかあの二人が何かとんでもない事を……

兄弟喧嘩!?だとしたらザナックが不味いですわ!

バルブロは見ての通りパワー系の闘士、互角の勝負どころか一方的な殺戮ショウの開幕ですわよ!?

 

いやそれよりも!

このタイミングで兄弟の仲が悪くなるとそれを煽るアホ貴族連中が余計に厄介ですわ……!

 

「王都開発すると意気込んで、どこもかしこも工事中なんですよ!お陰で至る所が通行止めになっていて困っちゃいますわ!」

 

「……ンーフーン?」

 

何のこっちゃいでぇすわぁ。

 

※※※※※※※※※

 

まずそれはバルブロの一つの発言から始まった。

 

「王都の道路事情を何とかしなければならん」

 

クロエが里帰りしてからというもの、王都周辺では連日の雨にみまわれた。

 

建国以来の記録的な降水量のお陰で王都に巡らせれた道路はぬかるみ、石畳に足を取られるなどして転倒する等の事故が多発、日常生活を妨げる事態になっていたのだ。

 

真面目に城外視察をしていたバルブロも被害者の一人だ。外套を着用していたため衣服の汚れは避けられたが、「王になったら」などと悠長に構えられる状態ではない事を痛感し、早速行動を開始する。

 

聡明な読者の皆様もご存知の通り、バルブロは道路整備事業がどのようなものかわからぬ。

 

故に彼はまず「道路」について訪ねまわった。

貴族、市民、冒険者、出稼ぎの農民、兵士、商人など、あらゆる人々から地道に不満を聞き出した。

 

次にバルブロは妹のラナーに助言をもらいに行った。

嫁の次に怖いと思う女性であるが、彼女なら自分では思いも付かぬ発想が得られると思ったからだ。

 

「お兄様、どこかで頭でも打ちましたか?」

「……?いや、転びはしたが、頭は打ってないぞ?」

 

当の「黄金」ラナーは困惑した。

脳筋の標本のような兄から市民の意見書の束を受け取り、「王都中の道路整備をしたいんだがどうすればいい?」という、ものすごいフワフワした質問を受け取ってしまい、はて、どう答えれば良いだろうか、と。

 

「……お、お兄様?お兄様はどのような道路をお望みなんですか?」

「む、民の意見書はお前に渡しただろう。それが質問への答えだ。まぁ、俺のわがままを言えば王国の都にふさわしい立派な道路を敷き詰めたいな!」

 

 

なんとも、まぁ、大雑把な要望でしょう。

ラナーの表情筋はそれから一日ヒクヒクと引きつり続け、その晩は普段以上に顔面のストレッチを要したという。

 

「……お兄様、この場合道路だけでなく建物など区画ごとの再開発が必要になります。なので技師を雇って土地の計測、図面の作製、人件費と作業期間の算出、そし「すまん、何かに書いてくれると助かる」ガッデム!!」

 

どこか異国の言葉で悪態をついたラナーから指南書を受け取ったバルブロは技師を雇い昼夜を問わず王都のあらゆる所を計測し、図面を作成し、民の要望を満たせるような完成図と計画書を作成し、意気揚々と御前会議に持ち込んだ。

 

何だかんだで市民と触れ合う機会の多くなったバルブロのプレゼンテーションは素人特有の拙さを充分に補うだけの熱量があった。

彼が初めて自分だけでなく人の為、それも貴族がおざなりにしがちな民の為に提案するその姿に感銘を受けたランポッサ三世は、その日の日記を3ページに渡ってバルブロの成長を喜ばしく思う気持ちを書き綴っている。

 

「王子の思いの丈は十分に理解しました。しかし、肝心の財源はどうするのですか?」

「王子の計画に賛同したい気持ちはありますが、まず当面は今年の戦争を優先する必要がありますので落ち着いてからでも良いのでは?」

「私どもも資金提供したいのですがいかんせん領地の税収が……」

 

しかし貴族の反応の多くは賛成派でも積極性を欠くようなものばかりで、それは言外に「無関心」を物語っていた。

 

「面倒なものには蓋をしよう」

そう考えた貴族たちはラナー王女に対して行ったように、小手先の宮廷政治手腕で廃案に追い込もうとする。

「まぁ相手は第一王子だし、後で何とでも言いくるめられるだろう……」と。

 

だが それが

逆にバルブロの逆鱗に

触れた!

 

「んぬぅ〜っ、貴様らさっきから聞いておれば金だ何だと……!わかった!もう貴様らの支援はいらん!この事業、俺の仕切りでやらせて貰うっ!手出しは無用だ!」

 

 

激怒したバルブロは会議を飛び出すと、雇われ技師や城下の有志を引き連れて作業を開始するのであった。

 

※※※※※※※※※

 

「……ほうほう。それで自分の裁量で使える額を使い切りそうなところなんですわね?それにザナック王子。本来貴方が歯止めをかけるべきなのに……どうしてこうなったんですの?」

 

「ちょっと魔が差したといいますか……こう、面白くなってきまして……義姉上、面目次第もございませんっ!」

 

第二王子のザナックが心底申し訳ないという表情で頭を下げてきた。

 

まぁ、そりゃあ面白くてテンション上がっちゃったってのは容易に想像できますわ。

 

様々な意見が書き入れられているだろう設計図、

完成後の町並みのイメージボードの束、

大テーブルに漸くおさまるレベルで作られている王都のミニチュアジオラマ。

 

あぁでも無いこうでも無いと議論を交わし、

一つの物を作り上げるのって絶対楽しいですわよねぇ。

 

「最初は道路整備だけと考えていたんだが、ほかにも調べていると色々と改善しないといけない問題がでてきてな……本当にすまない」

 

「いえ、バルブロ王子。それは継続していいと思いますわ。というか私、別に怒ってませんもの。寧ろ王家が民を思っているという好印象を与えられたと前向きに考えるべきですわね」

 

原作では王位を争っていたバルブロとザナック。

その二人が、まぁ理由はともかくとして互いに手を取り合い、一つのことに取り組んでいるこの状況は、王国だけでなく私にとってもグッドプレゼンツ!

 

(原作的にも)なかなかできることじゃないよ。

 

というか、さっきからかなり気になってた事があるのですけれども……

 

「バルブロ王子?その、なんというか……雰囲気変わりましたかしら?」

「……いや?特に変わりないと思うが……」

 

 

「ツッコミが弱いっ!」

 

「ざ、ザナック王子?」

「はぁ……いつものが始まってしまったか」

 

え、なんですのこれは。

突然ザナックが自分の膝を叩いて叫んだと思ったら事情を知っていそうなバルブロはため息ついてますし。

というか私の知らない事を知っているなんて生意気ですわ!

この……バルブ!

 

「義姉上、兄上の雰囲気が変わったのは確かなんですが、もっとこう……変わったところがあるでしょ!」

「えぇっ?うーん……あ、髪型変えました?」

「カスりもしてないッッ!もっと全体的です!全・体・的っ!」

 

ぜ、全体的?

全体的と言っても……うーん、よく分からないから総当りでいきますわよ!

 

「あ、整髪剤変えましたの?」

「いや?」

「髪から離れて義姉上っ!」

 

「……服を仕立て直されました?」

「あぁ、最近きつくなってきてな」

「うーん、かなり正解に近くなってきたぁけどそこじゃないっ!」

 

「あっ、わかりましたわ!体臭が前よりキツくない!」

「おっ、わかるか?城下で民に進められた薬膳を試しててな。そうか、思ったより早く効果が出たみたいだなフフフ……」

「えっ?あ、本当ですね……じゃなーくーてーっ!体臭とかじゃなくてもっとこう……第一印象というか、見てわかる感じの変化です義姉上ッッ!」

 

見てわかる変化……。

うーん、つま先から頭のてっぺんまで見ても「いつものバルブロ」って感じ……少し精悍さが出てきたくらいですけど。

ザナック王子も肩で息するほどツッコミで体力を持っていかれているみたいだし、これ以上ツッコミをさせるのは酷ですわね……。

 

「……降参ですわザナック王子。正解を教えていただけますかしら?」

「ハァッハァッ……マジですか義姉上……。いいでしょう、そこまで言うのならお教え差し上げます。正解はこちらっ!兄上、起立!」

「お、おう……」

 

あーバルブロが立たなきゃわからないタイプの問題なのですわね。

一体どこがどうか、わって………!?

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ!」

理解(わか)りましたか義姉上ッ!」

 

で、でっかぁああ〜〜……

シャンデリアに髪の毛カスってんじゃん。

骨延長手術でもしたの?

範間の血かな?

モモンガさん以上?

スタンスが板垣風(バキっぽい)

 

 

雰囲気が変わった理由とは即ち、

バルブロがデカくなったと言う事!

 

私が気が付かなかった理由!

基本的にバルブロは「見上げるもの」という概念に囚われていたから!

 

「……成長期?」

「流石に無理があります義姉上!」

「む、違うのか?俺はてっきり第2の成長期だとばかり」

「だから無理だっつってんでしょうが兄上!」

 

あーまたザナックの息が上がってますわ……。

ちょっとは運動したほうがいいですわよ。

 

「にしても改めて見るとデカいですわねえ……巨人とのハーフとか言われたら絶対信じる自信ありますわ」

「純粋に人間だぞ」

「知ってますわよ。何年の付き合いだと思ってますのよ?」

「そりゃあもう幼い頃からだなぁ……」

「懐かしいですわね……王子をぶん殴ったあの日……」

 

そう、あれは確か………………

……………

………… 

………

……

 

「ちょっと、ちょっとちょっとちょっと!その流れだと私があまり接点の無い思い出話に発展する流れですよね!嫌ですよ!一人だけ流れに乗れず置いて行かれるみたいな扱いぃ!」

 

「お、おほほ。そんな扱いするわけないじゃないですかザナック王子。……あぶなかったですわ

「いま危なかったって」

「言ってませんわよ」

「いやでも」

「私は、何も、言ってませんわ。わかりましたね?」

「アッハイ」

 

 

「なぁ、取り敢えず再開発計画の話に戻らないか?責任者としては資金難である事がかなり気がかりなのだ」

 

 

ぐぬぅっ!まさかのバルブロツッコミ!

成長したのは体格だけじゃあないってことですわね……!

面白ぇ漢じゃあねぇですの……!

 

「じゃあ早速ですが私も出資しますわ。当然お父様にも首を縦に振っていただくので当面は何とかなる筈ですわね」

「おお、ボウロロープ領の財力とは頼もしい!」

「しかも義父殿の支持があれば貴族どもも体面的に出さざるを得ないか……。手出し無用と啖呵を切ってしまった手前、個人的にはモヤっとするが、背に腹は変えられんな」

 

「ただし、将来的には王国全土の主要道路の整備が条件になりますわ。王都ばかりを贔屓すれば当然遠方からの批難は避けられません。故に王子には今後の計画書も作ってもらい、王国民に向けて発表してもらいますわよ?」

 

「そこはラナーが提案していた街道整備の案を採用してもいいか?そうすれば工期と人件費の算出だけで済むであろうし」

「そこはラナーさんに承諾を取るなり相談次第ですわね」

「兄上、ラナーに相談なさる時は私もお供します。ここまで来たら一蓮托生です」

「うむ、頼りにしてるぞザナック」

 

……うんうん、正に兄弟愛。よきかな、よきかな。

原作では政敵同士だった二人が、こうも手を取り合って一国を良い方向に導こうとする姿に感動を覚えずに居られないですわ。

ありがたや、ありがたや。

 

あと帝国との戦争が避けられそうな件については……、今の王国には劇物過ぎますわね。

まだ確定事項ではないし、帝国からエルフの件で動きがあるまでは黙っておきましょう。

 

「まぁまぁお二人とも、これでもまだまだ資金は足りないくらいですわ。何せ王国全土を股にかける大事業。まだ安心はできませんでしてよ?」

「そうとはいえだなクロエ、これ以上ともなれば徴税に頼らなければならないぞ。個人的には反対だ」

「そうなると周辺国に働きかけて援助してもらうぐらいしか解決策がなさそうですね……帝国と評議国は無理だとして法国と聖王国、ツテを探すだけでも骨が折れますよ」

 

「お二人とも『灯台下暗し』ですわね。あるじゃないですか。全財産を没収しても王国も民も懐が痛まない、とっても好都合な連中が」

 

そう、『八本指』という奴らなんですけど。




物語はついに王国の命運を分ける八本指編に突入!

果たしてクロエが思い描く対八本指作戦とは!?

そしてバルブロの王都再開発計画の行方は!?

というか、どうしてそんなにでかくなったバルブロ!?

さらにザナックの腹が引っ込む日は来るのか!?

覚悟しろよ八本指!


新章「王国頂上作戦」開幕!


※なお、バルブロがデカくなっていたことに気が付いていたのはザナックだけだった模様。

ランポッサ三世「いや、ほら……元からガタイは良い方じゃったし」
ラナー「私にだってわからないことくらいあります」

ザナック「まともなのは俺だけか…!?」



追記
牛鍋SMASH様、早速の誤字報告ありがとうございます!

6/12追記
一読様、麻婆餃子様、れいのやつ Lv40様、マガミ様、誤字報告ありがとうございます!

誤字大杉ジャン……
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