12話のクロエパートのような物なので文量は短めです。
【バルブロがムッハハハハとツルハシを振るっていた頃】
「はいリーたんこっちでしゅよぉ〜。うーん、リーたん最高ですわね!」
「でっしょ〜う?やっぱりリーたんは最高だぜぇ!」
珍しい事にレエブン侯から王都の別邸に招待された私は、侯の一人息子である「リーたん」に現在進行形で心奪われてしまってますわ!
にしてもこのレエブン侯、キャラ崩壊にも程があるってもんですわ。
インテリ感皆無ですわよ!
「ほーらリーたん、クロエお姉ちゃんお菓子持ってきましたわよ〜。何個欲しいかな〜?」
「んー、さんこ!」
「さんこ!お菓子3個ほしいんでしゅね〜!ぇあ〜よしよしよしよしよ〜し」
うぐぅ!さすがの私もリーたんの可愛さに当てられて○ョコラータみてぇな事口走ってますわね……!
リーたん……、恐ろしい子!
※※※※※※
「さて、私を呼んだのはリーたん自慢のためではないのでしょう、レエブン侯」
「ははは、流石はクロエ様だ。確かに、リーたん自慢は要件の6割ほどですね」
「半分超えてきましたわねぇっ!?」
だ、大丈夫かしらこのレエブン侯……。
いやいや!原作ではレエブン侯は王国貴族の良心的存在にして先見性のある人物!
ただリーたんガチ勢なだけの有能ですわよ!
少し、そうほんの少しだけ抜けてるだけですわ、大丈夫ですわよ……!
「いやぁ、やはり家族というものは良いですね。クロエ様も……あいや失敬、今のは無かった事に」
「大丈夫、まだリーたんの声が耳に詰まって何も聞こえませんでしたわ」
「ですよねぇ!やっぱりリーたんの声最っ高ですよねぇ!」
「しまった!これ全然話が進まないやつですわっ!」
……し、仕切り直しですわ。
「それにしてもレエブン侯とこのようにお話するのは随分久しぶりですわねぇ……」
「あれは確か……そうだ、貴女が初めて宮廷会議に参加された後の事ですね」
「そうですわね……侯爵として、そして王子の后として私も奔走してきましたけど、王国は変わりましたかしら?」
私の質問に対し、レエブン侯は僅かな間を置いて答えた。
「確かに王国は改善されていっています。しかし、まだ我が子が安全に生きてゆく国としては安心できませんな」
「……やはりレエブン侯は善き貴族ですわね」
「子を思えば、と言うやつです。今年の戦争が回避される可能性が出たとはいえ、僅かに凌げた程度でしか無い。やはり帝国との間に講和を結ぶ必要があります」
私が王都に帰還して間もなく、帝国から件の奴隷兵と皇帝直筆の書簡が届き、城内はとてもざわめいた。
何せ人類の守護者たる法国が王国領内に帝国兵に偽装した部隊を送り込んだという事で、法国寄りの貴族の肩身が狭くなったのは勿論、主戦派貴族達も対帝国を頑なに主張する者、帝国と足並みをそろえて対法国に備えようとする者で分裂、王派閥、貴族派閥ともに混迷を極めた。
最終的にはランポッサ三世が戦争の回避に向けて帝国との交渉に臨むとの英断を行うに至ったのだが、
「今の状況では今年の分を回避するだけで精一杯、それ以上は法国が再びやらかす事を祈る他に無いですわね」
「通じぬと分かった手段を二度も取るほど法国も阿呆ではありません。変に天運に任せるのは止しましょう。……帝国にとって王国の肥沃な国土は喉から手が出るほど魅力的です。あの鮮血帝がそう簡単に諦めるとは思えません。であるならば、王国が取るべき手段は帝国から戦争を仕掛ける気を削ぐことです」
「だからこそ、王国にはあらゆる改革が求められる、と」
「えぇ、更に付け加えるなら軍事力に頼らぬという事です。下手に軍事力を高めれば帝国侵攻の用意ありと誤解されかねないですから」
流石はレエブン侯ですわ。
私の冗談に乗らず、持論をしっかりと説明してくれる。
やはり、レエブン侯の根っこは真面目なのですわね。
……でもしかし、それだけでは満点はあげられないですわよ?
「……確かに王国は改革が必要ですわね。でもそれらは実現に長い期間を要しますわ。寧ろ、鮮血帝であれば彼自身の手腕で一晩にでも実現させてしまうでしょう」
「あくまで改革は王国の都合、という事ですか」
「その通りですわ。だからこそ、王国が帝国に対して示すべきものは『確証』ですわ」
「確証……ですか?」
恐らくランポッサ三世が交渉のテーブルで改革案を山程提示してもジルクニフは対して興味は示さない。
それほどにまで帝国の王国に対する「期待感」は低い。ドン底もあり得る程度には。
貴族の腐敗に麻薬汚染、在野の犯罪結社が周辺国にもちょっかいをかけるわ、当の王国の取締は緩いわ、隣国として存在していること自体が邪魔な国だと思われても仕方がない。
そんな国が「改革する」と言っても「頑張ってね」と応援する気にもなれないだろう。
「つまり、論より証拠。王国に自浄作用が残っていて機能することを証明するのが望ましいという事ですか?」
「大正解ですわ!しかも、その贄にふさわしい大物気取りの犯罪者集団が丁度いますわよね?」
「……八本指ですか!」
「ええ、奴等を潰せば溜め込んでいる資金を王都再開発に回せるし、繋がりのある貴族を国政から追放できる。国民の治安への意識が高まり、地方領内でも警備活動が盛んになる。それらを帝国に提示することで対王国の評価を稼ぐ。結構いいこと尽くしだと思いませんこと?」
八本指様々ですわ、と大袈裟に言ってみるとレエブン侯は口元に指を当てて独り言をつぶやき始めた。
もう彼の頭の中ではどの様に立ち回るかの計算が始まっているようだが、彼の立場は最初から「こちら側」なので満足するまで待たせていただくだけですわ。
「ちなみに、他にこの計画を知る者は?」
「バルブロ王子とザナック王子には八本指から資金を毟り取るとしか。あとはラナー王女がほぼ同じ意見だけど、条件付きで賛成ですわね」
「あくまで王族主導という事ですか……わかりました。この話、乗らせていただきましょう」
勝ち馬の確認をしたレエブン侯の決断はまさしく風のごとしと言うべき速さですわね。
こうして八本指検挙作戦にレエブン侯を取り込むことに成功した私は、
「ウェッヒヒィッ!リーたん最高〜!」
「あーぃリーたん、パパのところにおいでぇ〜」
この後滅茶苦茶リーたんしたですわ。
……………
…………
………
……
…
「はぁ、まさかあそこまで積極的に求めてくるなんて……。このクロエ、一生の不覚ですわ。……それにしても、デカすぎて、めっちゃ、運び、辛い、ですわ!」
思わずノックダウンしてしまったバルブロをベッドに運びつつ、彼が老執事、恐らくナザリックの執事である「セバス・チャン」と接触した事について考えていた。
「奇貨も奇貨。とてつもない幸運ですわね」
全てはバルブロのとった行動の賜物。
王都再開発計画、日課の視察、観察眼、夜なべして仕立てた上着。
その全てが奇跡的に噛み合わさり、王国とナザリックのコネクションが増えた。
「できた」と表現しないのは私が最も恐れるデミウルゴスがラナーとの間に築いているコネクションを想定してのものだ。
……あれ?この時点でもう接触ってされてる?
うーん、八本指編好きだったのに、意外と仔細を覚えてねぇですわね……。
まぁ、わからない以上ほぼ同時に構築されるものとして考えるしかねぇですわ。
この2つのコネクション、名付けるならば「セバス・コネクション」「デミウルゴス・コネクション」だろう。
デミウルゴス・コネクションについては、原作に基づいて考えればその役割はほぼ受信専用チャンネルだ。
ナザリックの外部協力者であるラナーに指示を出すためのものであり、そこに第三者が介入できる余地は皆無。
ラナーもラナーで欲望実現のために立ち回るから、なかなか厄介なコネクションですわね!
だからこそ、私はセバス・コネクションという奇貨を最大限に活かさねばならない。
「いまやバルブロはラナーに引けを取らぬ王国の人気者。継承序列を考えれば前者が双方に利益を生み出すのは明白ですわね。というか個人的にはバルブロとの対談とか見てみたいですわ……」
モモンガ様とバルブロ王子……本音で語り合えそうな未来しか見ぇねぇですわ……!
ヤバい、すっげぇ、すっげぇ実現させたいですわ!
「そうなれば友好関係を築くために王国は改革中って事を大々的にアピールしなければいけませんわね……」
まずは犯罪撲滅宣言をぶち上げて国内外にアピールして、
ラナーや青の薔薇にも計画の共有して連携を取らなきゃいけないですし、
あとはお父様にも花をもたせる形で精鋭兵団を王都派遣してもらうのもアリですわね。
それにセバスのところにも訪問したり、万が一のゲヘナを想定した準備も必要ですわね……。
あーもう、残り時間に対して作業量が尋常じゃねーですわ!
あぁ、リーたん吸入したい……。
『リーたんはまだガンには効かないが、そのうち効くようになる』
ーーエリアス・ブラント・デイル・レエブン(王国貴族)
誰かオバロ二次でレエブン侯とリーたんメインのほのぼの作品書いて(無茶振り)
釣りを楽しむ親子とか見たいわ。
そういえばセバスがツアレを見つけてからゲヘナ発動までってほぼ一週間しかないんですよね。(8/26~9/5)
王国の興亡を掛けた大一番に向けてやりたい事、やるべき事がいっぱいなクロエは、それはまるで夏休み終盤まで溜め込んだ学校の課題を一気に終わらせようとするキッズの様であったという……。
クロエ、つらみ……。
次回はナザリックが王国をどう評価しているかみたいな話を書くかァ……。