ボウロロープ侯の娘   作:neocy

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話をしよう(エルシャダイ感)

サブタイからもわかるように俺はクロエとラナーの百合ん百合んした話を書いていたんだが、全く百合ん百合んしてない話が出来上がってしまったんだ。
ナニヲイッテルカワカラナイトオモウガ(省略)

サブタイは百合ん百合んした話を書きたかったという名残なんだ。
ただ、それだけを伝えたかったんだ……。


義姉なるもの

私には義姉がいる。

 

 

私が物心がついて間もない頃のことだ。

 

私のもとに一人の女の子が訪ねてきた。

 

「あなたがラナーね?私はクロエ!よっろしくぅーねっ!」

 

私よりも5歳年上のその女の子は、とても明るくて

 

「おはようからおやすみまで、窓から上がり込むクロエですわっ!」

「ラナー!お菓子《お宝》を探しに冒険の海(厨房)漕ぎ出す(忍び込む)わよっ!」

「はわわっ!料理長に見つかりましたわっ!後方に向かって全速前進ですわっ!」

「う、うおおーっ!?お菓子、お菓子があぁーっ!?わ、私は諦めねぇですわーっ!」

 

……とても変人。

 

でもそんな彼女を「姉」として慕っていた時期があったのは事実だ。

 

曰く、私は「賢すぎる」らしい。

そのせいで周囲の大人は私を不気味がっていたし、私も周囲の大人が不気味がって避けようとしているのは理解できた。

 

そしてこの国が滅びの道を辿っているという実情も。

 

だからだろうか、彼女(クロエ)の陽気、奇想天外な性格はそうした現実から私を遠ざけてくれる「聖域」のように思えてしまうのだ。

 

「クロエ姉さま、なんで姉さまは私に構ってくれるのですか?」

「え?だってラナー、あなた友達いねぇじゃねーですの」

「ひどい!?」

 

それはふとした思いつきの質問だった。

彼女は陽気な変人というだけで愚者ではない。

不気味がられる私にどうして親身になってくれるのか?

聞けばボウロロープ侯の一人娘らしく、政略的な意図で近づいてきたのだと勘繰った末の質問。

それに対して、彼女は決定的な事実を私に突きつけることで答えとした。

 

「アハハ、メンゴメンゴですわ。まぁ、王様に蝶よ花よと育てられてるとはいえボッチじゃあ性根の歪んだ王女様になりそうだなぁって思って、ここぞとばかりに友だち一号の座を獲っただけですわよ」

「ぼ、ボッチ……」

「小鳥や花に話しかける麗しの王女様……。でもボッチじゃあ……ねぇ?」

「わ、わぁーん!ボッチって言わないでください〜!」

「ギャーッ!?ゴメン、ゴメンって!だから目に指を突っ込もうとするのはやめるのですわーっ!?」

 

……いま思い出しても恥ずかしさの余りに顔から火が出そう。

 

事実を認めるのは癪だが、そう、たしかに当時の私には同世代の友人がいない、いわゆるボッチだった。

だからこそ、「友だち一号」の彼女には心を許せたのかもしれない。

 

 

要するに、私は彼女に魅了されていたのだ。

 

 

しかし、時の流れは残酷で、「友だち一号」はいつしか「義姉」になった。

 

 

「えぇっ!?あのバカ……バルブロお兄様と結婚されるのですか!?」

「いまフッツーにバカって言いましたわよね?」

「……いや?」

「えぇ……」

 

私が13歳の時に彼女はバカ……長兄のバルブロ第一王子との結婚話が来ていることを教えてくれた。

 

「ねぇお姉さま、ふとした弾みで第一王子の首を蹴り飛ばしたりできませんか?」

「できるわきゃーねぇですのっ!全身を壁にめり込ませるのが関の山ですわっ!」

「あっ、それならできるんだァ……」

 

やっぱり義姉は変人だった。

義姉が普通じゃない事には気付いていたつもりだったが、それは片鱗でしかなかったという事をこの頃は痛感させられた。

 

ば……長兄は殴るわ、「鍛冶師になった!」と工房を建てた事を報告するわ、「ちょっと戦争行ってきた」とボロボロになって報告してくるわ……

基本的に事後報告が多い。

 

あと御前試合にどういう訳か参加していた時は「本当にどうかしている」と思ったものだ。

 

※※※※※

『えぇー、続きましての試合は……』

 

『いぇーい!ラナー見てるー?このスーパークロエちゃんがビシッと決めてやりますから目ぇかっぽじって見るんでしてよぉー!』

 

『ブフゥッ!?クロエっ!貴様そこで何をしているっ!?』

 

『まぁまぁお父様。軽ぅーく勝ち進んでやりますからどっしり構えててほしいですわ!』

 

『ハッハッハ。侯の息女は父親譲りの豪快さがあるのぅ』

 

『陛下……娘には後でキツく言い聞かせますので、どうかご容赦を……』

※※※※※

 

「あっそうでしたわ。ラナー、あの娘とは仲良くできてる?」

「ラキュースですか?えぇ、昨日も彼女とは一緒に楽しくお茶をしましたよ」

 

そしてアインドラ家の令嬢、ラキュースを私と引き合わせた事。

彼女もまた英雄に憧れて冒険者になった変人だが、義姉のそれと比べると凡人、下位互換的な存在である。

 

「良かった……ボッチの変人で私以外に友だちを作れないんじゃないかと心配してたけど杞憂でしたわね」

「えっ、お姉さまだけには変人って言われたくないです」

「え?」

「それと、私にはクライムという素敵な騎士がいるのです。だから、ボッチ呼ばわりはやめてください!」

 

そう、可愛いクライム。

子犬のような瞳で見つめられて以来、彼無しの生活は考えられなくなった。

うへへ……。クライムは最高だぜぇ。

 

だからこれ以上のボッチ呼ばわりは控えて欲しい。

 

……話がそれた。

 

「まぁほら、私も結婚したら晴れて王族の一員になるわけだけど、政治や領地経営の勉強にも力を入れたいし、そしたらボッ……ラナーともこうしてゆっくり過ごす時間も少なくなるからって理由もあるのだけれど……」

 

「どーにも私には防げなかったみたいですわね。貴女の心の歪みは」

 

……あぁ、やっぱり貴女(義姉)嫌いだ(素晴らしい)

そうも簡単に私の本性を見抜いてしまうなんて。

でも、ボッチと口走ろうとしたのはいただけない。

 

「あぁ……、王女がしちゃいけないような顔になっちゃってますわよ」

「あぁ、ごめんなさい。ちょっと直しますね」

「その顔芸(ムニムニムーブ)は可愛らしいのに……」

 

それはフォローのつもりなのか。

でも、ちょっとだけ嬉しい……。

 

まぁ義姉に看破された通り、私の性根は常人に比べて歪んでいる。

 

と言ってもそれは客観的評価であり、主観的には「周りの人間のほうが理解できない」のだ。

ただし、義姉は例外とする。

 

あの理解の出来なさは、私じゃなくても理解できないということだけは分かる。

 

 

 

「あ、いつもの顔に戻りましたわね。……で、私が構えなくなる時間が多くなっちゃうからラキュースやクライムに容赦なく支えられろってぇ事ですわ、私が言いたいのは!オーケー?」

 

「ふふ……オーケーです」

 

 

確かなことは、義姉の訳のわからなさに私は助けられていたという事。

もし義姉が「友だち一号」じゃなかったら、心の歪みは今以上に酷くなっていたかも知れない。

それこそ、「化け物」と呼ばれてもおかしくない位には。

 

そして今、そんな義姉ならこの国を変えられるのではないか。

そんなことを私は考えていた。

 

※※※※※

 

「ラナーよ、俺に知恵を貸してはくれまいか?」

 

その日、初めて人に頼られた。

その人はバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。

要するに長兄、第一王子だ。

 

何でも王都の道路整備をする方法が知りたいらしい。

 

「お兄様、どこかで頭でも打ちましたか?」

「……?いや、転びはしたが、頭は打ってないぞ?」

 

うーん、この皮肉も通じぬ脳筋王子純情派!

……今のは一体?

 

……まぁ、せっかく頼られたのだし?

ここは妹として素直に知恵も貸しても良いのだろう。

理解できるかは別として。

 

「……お、お兄様?お兄様はどのような道路をお望みなんですか?」

 

「む、民の意見書はお前に渡しただろう。それが質問への答えだ。まぁ、俺のわがままを言えば王国の都にふさわしい立派な道路を敷き詰めたいな!」

 

 

このあと、滅茶苦茶頭が痛くなった。

あと表情筋も引きつったのでムニムニした。

 

 

 

あの長兄(バルブロ)が人に教えを乞う。

そんな長兄の成長に正直感動した。

立ち会った事はないが、赤ん坊が二足歩行を始めたり、初めて言葉を喋ったりしたときの感動というのは、恐らく今回のような事に近いのかも知れない。

 

ラキュースがこの成長のことを知ったら、一体どういう顔をするのだろうか。

里帰り中の義姉は……、あぁ、なるほど。

長兄の成長は彼女の影響か。

 

確か義姉の振るう暴力(本当に訳がわからない)から逃れる為に市街地に向かったのをきっかけに、最近は市民との交流を深めているらしい。

 

あの貴族然とした「下々の苦労など分からぬわ!ガッハッハッハ」といった価値観を変えさせるとは……本当に義姉の力は底が知れない。

 

それにしても、自分が転んだのをきっかけにって、……フフ。まるで義姉みたいな発想だ。

 

※※※※※

 

義姉、義姉さま。

今ほど貴女に頼りたいと思ったことはありません。

 

「御機嫌よう。王国の『黄金』、ラナー第三王女」

 

悪魔。

知識としてその存在は理解していたが、そこには「恐怖」というものはなかった。

 

だが、いま確実に。

私は「恐怖」している。

 

「一体、何のご用でしょうか?」

「なに、ちょっとした世間話だよ。ただ、盗聴対策は取らせてもらうがね」

 

その悪魔、デミウルゴス曰く、

「至高の御方」なる人物にこの世界を献上するという使命があり、その足掛かりを作る為に私に接触してきたらしい。

 

「聞けば王国は周辺国に比べて落ち目なのだろう?……あぁ、確か第一王子をはじめとして王族が改善に奔走しているのは知っているよ。しかし、人間は脆弱だ。君の兄上や義姉上がどれだけ尽力しようとできる事などたかが知れている。それに、人間の行為に『絶対』はあり得ない」

 

随分と遠回しな言い方だが、要するに「王国を売れ」と。

そして私にとって悪魔的(悪魔の言だから当然である)な魅力のある提案を持ちかけてきた。

 

「君の理想の実現は保証しよう」

 

あぁ、なんという事か。

悪魔は人を誘惑するというが、これほど魅力的な誘惑は人外の所業と言えるだろう。

 

彼の悪魔が醸す存在感こそが、ある種の担保と言っても良いだろう。

この悪魔に任せれば、まず間違いなく私の理想は実現されるだろう。

 

 

しかし、その代償は王国。

なんとも、なんとも馬鹿げた取引だろうか?

だからこそ、私はハッキリとこの悪魔に伝えなければならない。

「話になりませんね」

「……ほぅ?」

 

話にならない。

人間の行為に『絶対』はあり得ない?

えぇ、それは至極当然。

人間の歴史は「過ち」の上に成り立つ物だ。

しかしそれでも、六大神や十三英雄の助けがあったとはいえど、人間は600年の歴史を積み重ねた。

故に『絶対』などは不要。

必要なのは来たる『必然』に対処する知恵と力だ。

 

そして現在の王家は知恵(私とザナック兄様)(バルブロ兄様)を有しているし、

知恵と力の両方を有する個人(義姉)も有している。

 

つまり理想の実現のためには悪魔の甘言に乗る必要がないのだ。

そして今、私は初めて私が『嘗められた』事に怒りを覚えた。

 

「貴方に心配されずとも、王国の問題は王国の力で、王家の力で解決します。そして、――私は私の手で理想の実現を成し遂げます」

 

「だからあまり、王家(私たち)を嘗めないでください。デミウルゴスさん」

 

義姉さまに『顔芸』なんて言われる私も、流石に悪魔向けの顔なんて当然準備していない。

 

目の前の悪魔は「呆気にとられた」とも言っていいような表情で固まっている。

 

だから今、私はどのような顔でこの悪魔に啖呵を切っているのだろうか。

 

「……これはまた何とも予想外の反応ですね。こちらとしては大人しく恭順して貰いたかったのですが、まぁいいでしょう」

 

「あら、貴方ほどの悪魔であれば魔法を使って無理矢理にでも私を傀儡にする事ができるのでは?」

 

「勿論できますが我が主はそれを望まないでしょう。……後日改めて王国の真価については見定めさせていただきます」

それでは御機嫌よう。

悪魔はそう言うと夜の帳に溶けるように姿を消した。

 

その瞬間、全身からどっと汗粒が吹き出した。

足腰に力が入らず、堪らずうずくまった。

胃がきりきりと悲鳴を上げた。

心臓が激しく鼓動した。

感情が爆発しそうになった。

 

「こっ……!」

 

怖かった……!

これが恐怖……!

 

あれ(悪魔)は不味い。

あれは、あの悪魔は間違いなく王国、人類に災厄をもたらす存在だ。

唯一の救いは悪魔の主(至高の御方)という存在。

言葉の端々から察するに、悪魔の主は力に任せた支配は好まない。いや、それは楽観的に過ぎる。

 

あの悪魔は王国の真価を見定めると言った。

価値を定めるには何かしらの基準が必要だ。

悪魔の行動原理は『主にこの世界を献上する』こと。

 

その足がかりとして王国に接触してきた。

なぜ王国だったのか?

帝国や法国に比べて土地や資源に恵まれる反面で政治的腐敗を抱えていたからだ。

つまり「乗っ取り」の為に王国に接触した。

 

しかし私が提案を断った事で悪魔は予定を変更しなければならなくなった。

焦る様子も伺わせなかったことから予備の作戦がある事はまず間違いない。

 

王国の穏便な掌握は断念。

強硬手段は悪手。

つまり、この時点で悪魔は「王国の扱い方」を見直さなければならなくなったのは確かだ。

 

つまり王国は『利用』される事を前提とした生存戦略が必要となる。

しかし使い潰されるような立場になってはいけない。

「利用価値なし」となった王国の末路は想像に容易い。

であれば「相互利用関係の構築」が最低条件、ベストは「政治的友好関係の構築」だ。

 

……ふぅ。

頭を使っていたら恐怖も薄らいできた。

 

まだ色々と疑問はあるが、それを解明するのは今じゃなくても良い。

今対処しなければいけないのは、近いうちに悪魔が何かしらの形で再び現れたときの対策。

その時の行動次第で王国の命運は決まるだろう。

 

……うん、ここはやはり義姉に頼るしかない。

 

義姉は変人だけど、何だかんだで実力者だ。

政治手腕も軍人としての腕も確かだし、度胸もある。

変人だけど。

 

そうと決まれば明日の朝一番にでも話をしなければ!

 

王国と世界の命運は義姉、クロエ・カティナ・デイル・ボウロロープの双肩にかかっているのだからっ!




ワイが百合百合書けなかったのは全部デミウルゴスのせいや!(責任転嫁)

と言う事で無事(?)ゲヘナ発生フラグ建設です。
旗の代わりにキマシタワー建てろオラァ!(本音)

>王家(私たち)を嘗めないでください。デミウルゴスさん
いやね?
カッコいいセリフを言うラナーってのも乙だなぁと思ったんです。
(この考えがキマシタワーをぶち壊した)
元ネタはわかる人に伝わって。

ラナーの主観描写は基本的にドゥルァァァイな感じだと思う。
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