というかビビりまくってます。
「エタ覚悟」なんてタグつけちまったけど、こりゃ気軽にエタれねぇぞ……。
俺がエタらない限り、「ボウロロープ侯の娘」は続くぞぉ。
だから、
止ま(エタ)るんじゃねぇぞ……。
あ、今回のお話の時系列は「クロエ・ファクト30」よりもチョイと遡ります。
どうも皆さん、
王国どうでしょうのお時間でございますわ。
って、イカンですわ。
憎き転生空間のマネごとをしてしまうなんて、このクロエ一生の不覚ですわ…。
実は私、今年で21歳になりました。
そして遂にお父様の名代として侯爵位を授かりましたの。
遺憾ながらバルブの婚約者というおまけ付きですが。
チクショー。
ま、まぁこれで晴れて政界デビューですわ。
何とかカルネ村襲撃事件に間に合ってよかった……。
会議初日という事もあり、事前に色々と作法について耳にタコができるんじゃあないかと思うくらい説明を受けましたが、何よりも大事なのは第一印象!
超絶美少女から絶世の美女に超☆進☆化を果したクロエちゃんスマイルでハート☆キャッチィですわね!
これも私の未来の為に必要な布石、
クロエ!腐った貴族政治を〜、ぶっ壊す!
※※なお、スマイル全開で議場に入ったクロエは彼女以外の六大貴族を含む大半から目を背けられた※※
「……うぇ〜、思った以上にスマイルキープって大変ですのね……。ラナー様の表情筋ってどうなっているのかしら?」
「ボウロロープ侯、少しよろしいか?」
「ん、父上がここに……って、あぁ、そういえば私もボウロロープ侯でしたわね。どうなされましたか、レエブン侯」
私が廊下でほっぺをムニムニしていたら親バ……じゃねぇですわ、レエブン侯が声をかけてきましたわ。
そっかぁ、このタイミングだともうリーたんが産まれてて面の皮の下はザ・子煩悩って感じの筈なんですわよねぇ。
「いやぁ、無事に初陣を終わらせた貴方にご挨拶をと。それにしても初めての議会とは思えぬ佇まいは見事の一言に付きますな。感服いたしました」
「あら、腹芸も覚束ない小娘を煽てても何も出ませんわよ?」
「はっはっは、腹芸の覚束ない淑女はそのような深読みはされませんぞ」
「あらやだ!一本取られましたわね、おほほほ」
あぁ〜、この掛け合いたまりませんわぁ……。
こう、知能指数がギュンギュンと高まってきそうな知的なフィールドにいるって感じが最高ですわ。
権謀術数(笑)が蠢く議場のなんて、これに比べたら小学校の学級会レベルですわね。基本的に机の下で足を蹴り合ってるだけですもの。
あ、そうだ。
あのことを聞いてみましょう。
「ところでレエブン侯、一つお尋ねしたい事がございますの」
「っ!……何でしょうか?」
「その……、私の笑い方って不自然かしら?」
「……は?あ、いや失礼……は?」
「二度も!?」
あっれぇ〜?
いきなり緊張しだしたり鳩が豆鉄砲をお喰らいになったような顔をしたりと何かリアクション顔芸人みたいになってるぞぉ〜?
「いや、質問の意図がわからず……。どこぞの貴族になにか言われたのですか?」
「いえ……、今日は議会初日だから印象を良くしようと意識して笑顔を保ってたのですが、多くの方に目を伏せられてしまったのです」
「……あぁ、なる程。納得がいきました。あ、いえ。ボウロロープ侯の笑顔は大変お美しいです。問題はその……ううむ」
うっわぁ、凄い言い難そうなオーラが出てますわね……。
でもここでモヤっとしたままにするのも性に合いませんし、ズバッと聞き出してやりますわよ!
そう、ズバッと!
「レエブン侯、はっきりと仰ってください。女人の私を気遣って下さるのは嬉しいですが、この身は爵位を受けし身でございます。揶揄も嘲笑も覚悟の上で権謀術数の世界に飛び込んでいるのです。その覚悟に対して侯は女の腐ったような誤魔化しで応えられるのですか?リ・エスティーゼ王国六大貴族と名高きエリアス・ブラント・デイル・レエブンともあろうお方が!」
……くぅ〜!啖呵切ってやりましたわ!やってやりましたわ!
人生でいつか使ってみたい言葉「女の腐ったような」を使ってやりましたわよ!全国130人のクロエファンの皆様〜!
この北条政子ばりの啖呵、
これはもうクロエ名言集ノミネートですわ。
「……わかりました。その眼差し、そして先程の言葉。貴女の『覚悟』が然と伝わりました。これから先、真実のみをお話します。ご不快になられても責任は……と、これは貴女には不要な言葉でしたな」
「私をご理解いただけて何よりですわ、レエブン侯」
そしてこの後、私は「クロエ・カティナ・デイル・ボウロロープの30の真実」の存在と、
【クロエが笑った時、善人は尊さを感じ、悪人は本能的に恐怖を感じる。】
という噂が流れている事を知ったのでした……。
やっべ!マジ超☆爆☆笑ですわ!
え、私の扱いチャック・ノリスなの、炎のテキサスレンジャーなの。
コブラに噛まれたら丸5日苦しんでコブラが死にそう。
あとフロントガラスに空手キックかましそうですわね。この世界ならステンドグラスが関の山っぽいけど。
でも私は女侯爵クロエ・カティナ・デイル・ボウロロープ。
流石に端なく笑うのはやべぇですわ。
というか良識人のレエブン侯にやべぇ奴認定とかされたくないし。
ここはクロエ奥義「淑女笑い」で乗り切ってやりますわ!
「おほほほほ、市井には実に剽げた冗談を流布する達人がいるようですね。気を抜いたらお腹が捩切れてしまいそうですわ」
「……お怒りには、ならないのですか?」
「見事な剽げに腹を立てるほど無骨じゃあ無くてですわ。お父様だったら首を刎ねろとか言いそうですけど」
「大抵はそう言う反応になりますがね……。あ、今のはご内密に」
「もちのロンですわ。でも今のお話を聞いて確信したことがありますわ」
「ほぅ、良ければ聞いても?」
「今のお話を聞く限り、侯は『善き貴族』様なのだと言う事ですわ。先程の会議で決して目をそらさず、ここでお話してその誠実さを確かに理解しました。レエブン侯、これからも末永いお付き合いができることを願いますわ」
「おお!それは願ってもない申し入れですな!私からも良きお付き合いをさせていだきたい」
っしゃぁ!
何とか乗り切ったですわぁ!
ここから笑顔のままになっても全然不自然じゃないし、漸くテンションも落ち着いてきましたわ。
あー、クロエちゃんまじクール。
名誉勲章もののお嬢様ロールでしてよマジで。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
後世、一線を退いたエリアス・ブラント・デイル・レエブンは自著『王国史』にてクロエ・カティナ・デイル・ボウロロープを次のように評した。
――宮廷政治の議場とは人間性の醜い部分をこれでもかと押し込めた見世物小屋である。そして王国のソレはその数段上を行く様相であった。
彼女はその場に真っ向から乗り込み、権謀術数にかけては腕が確かな歴戦の貴族に立ち向かい、その悉くを退けてしまった。
彼女はその耳目で汚濁の裡に隠匿された真実を暴き出し、
その口から放たれる弁舌は龍の咆哮が如き威を纏い、数多の侫言を一蹴するのである。
このように評すれば如何なる傑物かと思われるが、彼女は齢21になったばかり、しかも父親の名代として爵位を得た新参であった。
(中略)
彼女の人物評は定説の通り類を見ない人格者であり、彼女が言う所の「善き貴族」である。
民草を愛するだけでなく、民草の目線に立ち、彼女自身の持ちうる限りを持ってそれに応えた。
彼女は自らを「究極的な利己主義者」であると嘯いていたが、その利己主義は確かにどんづまりの王国を立て直し、王国と民衆に『誇り』を取り戻した。
私が知りうる限り、彼女ほど気持ちの良い利己主義者は他に知り得ない。
彼女の人生はまさに波乱万丈の一言に尽きるが、その生き様に人は今も尚憧憬を抱かずにはいられないのだ。
近いうちにコメ返しとかもしなきゃ……
オイオイオイ、書いてる間に評価ゲージが赤っぽくなってるわアイツ
ますますエタれねぇぞぉRIDE ON……。
クオーレっと様、誤字報告ありがとうございます!