逆行オイフェ   作:クワトロ体位

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第38話『焼討オイフェ』

 

 ぼくのちちうえはご公務がいそがしくてあまり弓を教えてくれません。

 

 だから、ぼくはあねうえに弓を教わっています。

 

 あねうえはすごいのです。

 

 ユングヴィで一番すばらしいお力をもっているのです。

 

 ぼくが当てられなかったテーブルのびんに、百発百中で矢を当てることができるんですよ。すごいでしょう?

 

 ……でも、ある日からあねうえはぼくに弓を教えてくれなくなりました。

 

 ある日から、ぼくはあねうえに弓を教わらなくなりました。

 

 

『海賊にさらわれてしまったの』

 

 

 もうひとりのあねうえが、そう言って泣いていました。

 

 海賊とは悪いやつなのでしょうか……。

 

 

 悪いやつなら、ぼくがやっつけてやります。

 

 ぼくがやっつけて、あねうえを助けてあげるんです。

 

 いっしょうけんめい弓を練習して、強くなって。

 

 必ず、あねうえを助けるんです。

 

 

 それで、あねうえを助けて

 

 あねうえに、もういちど会えたら

 

 うまくなったねって、ほめてもらうんです。

 

 

 だから、きっと

 

 必ず、助けるから

 

 

 ブリギッド姉上──

 

 

 

 

「……朝か」

 

 フィノーラの歓楽街。

 貴人向けの高級娼館の一室にて、ユングヴィ公子アンドレイは目覚める。

 どうにも砂漠の朝に慣れず、切れのよい目覚めとはいえない。

 

「……」

 

 慣れぬ気候で覚醒しきらぬ自分。

 感覚が冴えるにつれ、不快な感情が湧き上がる。

 

「チッ……」

 

 舌打ちひとつ。直前まで見ていた夢の内容が、ユングヴィ公子を苛立たせていた。

 ある日突然、いなくなってしまった、尊敬する姉。

 その幻影を求め、遮二無二弓を引く日々。

 気付けば、ユングヴィでは唯一無二の弓の達者になった己。

 

 だが、求めてやまない温もりはない。

 

「あ、アンドレイ様」

「……」

 

 不機嫌のまま起き出し、支度をするアンドレイ。

 共寝を務めた娼婦が慌てて手伝おうと起き出すも、アンドレイはそれを無視し、備え付けられた手水桶で閨房でかいた汗を拭う。

 見ると、娼婦の首筋には赤い痣が走っており、暴虐な荒淫が行われていたのは想像に難くない。

 

「アンドレイ様……」

 

 だが、娼婦の瞳は艶のある濡れ方をしており、視線はアンドレイの鍛えられた背筋を追いかけ続けていた。

 決して被虐趣味を持っている女、というわけではなく。

 乱暴な扱いをされても尚、ユングヴィの貴公子の魅力に抗えないだけだった。

 

 

「おはようございます、アンドレイ様」

「うむ」

 

 支度を済ませ、部屋から出たアンドレイ。

 待機していた側近の男に短く応えると、能面の如き無表情を浮かべる。

 貴人御用達の娼館は、内装や調度品も相応に豪奢となっていたが、アンドレイはそれらに全く興味が無いかのように歩を進める。

 付き従う側近達も、主の機嫌を損ねないよう黙して後に続いてた。

 

「あ、これはユングヴィの公子様」

 

 ヴェルダン産の一級品で拵えられた木製の扉の前に立つと、娼館の長が揉み手をしながら見送りに来る。

 しかし、アンドレイはこれも無視する。

 

「亭主、世話になった」

「はい。ありがとうございます」

 

 側近の一人が金子を取り出し、娼館の主へとそれを渡す。

 既に料金は支払っていたのだが、それとほぼ変わらない額の心付けを渡す事で、グランベル大貴族の貫禄を見せる。娼館の主はそれを分かっている為、恭しく受け取っていた。

 しかし、アンドレイはそのやり取りにもさして興味を示さず。側近が開けた扉をさっさと潜り、黙したまま娼館を後にした。

 

「……」

 

 気温が徐々に上がりつつあるフィノーラの朝。爽快感のある空気に包まれても、アンドレイの表情は暗い。

 待機していた馬車に乗り込むアンドレイ。その表情は、先程まで見た夢の内容もあってか、粘ついた闇が差していた。

 

「……」

 

 護衛の騎士達が馬車に随伴する様子を、つまらなそうに見つめるユングウィの公子。

 事実、この地に来てから、アンドレイの気持ちは晴れる事はなく。

 

 フィノーラ方面のイザーク軍に対するユングヴィ騎士団バイゲリッター。

 その指揮を実父リングから託されたアンドレイは、堅実な指揮ぶりを見せ、さして損害を出さずにイード砂漠北部からイザーク軍を追い払っていた。

 フィノーラ方面に展開するイザーク軍はお世辞にも精兵とはいえず、士気も装備も貧弱な軍勢であり。バイゲリッターの実力ならば、一人残らず殲滅する事も可能だったが、アンドレイは深追いせず騎士団の戦力保持に努めている。

 アンドレイ自身が無駄な消耗を嫌う用兵を好んでいたというのもあるが、此度の場合、この後に控える“大事”に備えていたという事情があり、余計な戦闘は控えていた。

 

「親殺しか」

 

 ふと、重たい声色でそう呟くアンドレイ。共に馬車に乗り込んでいた側近の男は、主が嘯く物騒な物言いにも眉一つ動かさないでいた。

 アンドレイは此度のイザーク遠征部隊の編成も任されており、“しかるべき時”に造反する騎士はそもそも連れて来ていない。リング卿に忠誠を誓う騎士はユングヴィ城に残っており、その数も少ない。

 そして、それらの騎士は先のヴェルダンによるユングヴィ侵攻を受け、ミデェールら極一部の者を除きその殆どが討ち死にしていた。

 

「どうせなら姉上も……」

「……」

 

 アンドレイの呟きを、再度黙して応える側近。実姉へ向けた冷酷な物言いにも、眉を動かさず。

 ヴェルダンの侵攻はアンドレイにとっても寝耳に水だったが、どちらにせよ宰相レプトールによる共謀を受けた時点で、分水嶺は過ぎていたのだ。

 

「御妻君はご無事でなによりでした」

「フン」

 

 側近がそう言うと、アンドレイはシニカルな笑みをひとつ浮かべる。

 ヴェルダンによるユングヴィ侵攻時。ユングヴィ城は略奪の限りを尽くされたが、アンドレイの妻は無事だった。

 なぜなら、アンドレイの妻は妊娠していた為、バーハラにあるユングヴィ公爵邸にて静養していたからだ。

 

「どうせヴェルダンの蛮族共も計画の一端だろう。妻が無事なのも予定通りという事だ」

「はっ」

 

 アンドレイの嘯きに、此度は応える側近の男。

 陰謀の一端により自国領内を荒らされた事は、アンドレイにとってさしたる問題ではない。

 イザークを呑み込んだら、次はアグストリアか、シレジアか。

 そして、それらの尖兵に立たされたヴェルダン王国並びに属州領も、最後は呑み込んでしまえばよい。

 奪える富は無数にあるのだ。最終的に、ユングヴィは己の統治で増々栄える事となるであろう。

 アンドレイはそう確信していた。

 それ故に、陰謀の全容を知らされていないアンドレイだったが、陰謀の全容を知る必要もなかったのだ。

 

「部隊の状況はどうか」

「はっ。既にリボー方面への出立準備は整えております」

 

 淀みなく応えるアンドレイの側近。

 陰謀の布石は着々と打たれており、バイゲリッターがリボーへ到着した時に、それは発露する。

 グランベル王太子クルト、シアルフィ公爵バイロン、そしてユングヴィ公爵リングの死という結果となって。

 

「主だった者達はどうか」

「皆、覚悟を決めております。アンドレイ様が案ずるような事にはなりませぬ」

 

 配下の掌握を再度確認するアンドレイ。

 元々、アンドレイはバイゲリッターの騎士達からの支持は厚い。これはユングヴィ公爵家の後継問題も絡んでおり、政治的な立ち回りを如才なく務めるアンドレイを、一部の者を除き期待する者が多いという事情があった。

 生きているかどうかも分からぬ公女に拘り続けるリングは、ユングヴィ公国主要貴族からの支持を失いつつあったのだ。

 

 現実的な政治判断をするリングが、唯一見せる非合理的な方策。

 十数年前に拐かされた、ユングヴィ第一公女ブリギッド。

 ウルの聖痕を色濃く受け継ぎ、神弓イチイバルの唯一の継承者であるブリギッドの生存を疑わぬリングは、私財はおろか公国の国庫金まで投じてその捜索を続けていたのだ。

 

 当初はユングヴィ貴族達も進んで協力していた捜索活動も、時が経つにつれ国庫を圧迫する捜索活動に不満を覚えるようになる。莫大な資金を投じても、ブリギッドの影も形もなく、徒に時間と金と人を費やす日々。

 有力貴族は捜索を打ち切り、アンドレイを後継指名するようリングへ訴えかけるも、イチイバルの継承に拘泥するリングはそれらの意見を一切無視する。あまつさえ、捜索に反対する貴族達を制裁するかのように、捜索資金の更なる供出を命じる始末。

 

 故に、リングへ見切りをつけ、堅実な実力を見せるアンドレイを担ぐ勢力が、年月の経過と共に勢いを増していくのは必然であり。

 宰相レプトールも、懇意にしているアンドレイがユングヴィを継ぐ事を後押ししており。仮に此度の陰謀がなくとも、いずれはアンドレイ派によるクーデターが発生していたであろう。

 

 これらの事情もあり、陰謀に加担したアンドレイ。

 父殺しという人道に外れた行いも、もはやアンドレイにとって躊躇するような事ではなく。

 

『アンドレイは駄目だ。いくら弓の腕が立つといっても、所詮ウルの力を継がぬ者。家督を継がせるのはブリギッド以外におらん』

 

 以前、父リングが実姉エーディンへ言った言葉を聞いていたアンドレイ。

 エーディンは父の言葉に反対もせず、黙って顔を俯かせるのみ。エーディンとしても、ブリギッドの生存は信じてやまない事。それ故、父の言葉に異論は挟めず。

 だが、この時点で、リング、そしてそれまで慕っていたエーディンへの想いが、アンドレイの中で消え失せていた。

 

『ぼくはブリギッドあねうえより強くなるよ!』

『いーや! それはないね!』

『そんなことないもん! あねうえより強くなって、ぼくがブリギッドあねうえやエーディンあねうえを守るんだ!』

『まあ、アンドレイったら。ブリギッド姉様もうかうかしてられませんね』

 

 少年時代。慈しい記憶。

 そのような事もあったと、アンドレイは薄い笑みを浮かべる。

 だが、もはや家族への情はない。

 

 それは、いまだ見つからぬ──生きているかどうかさえも分からない、ブリギッドへの想いも同じだった。

 

 誰が為に事を成すのか。

 ある日から──敬愛していた姉を喪い、その姉に及ばないと自覚してからのアンドレイは、寂しさを紛らわすかのように己の野心に忠実になった。

 ウルの血が濃くなくとも、己にはユングヴィを継ぐに相応しい力がある。

 それを証明する時が来たのだ。

 

 己の歪な野心を、静かに滾らせるアンドレイ。

 その表情に、後悔の念は無かった。

 

 

「……?」

 

 滾っていたアンドレイ。

 すると、駐屯地から来たであろう伝令の兵士が駆けてくるのが見えた。

 

「止めろ」

「はっ」

 

 馬車を止めるよう指示を出すアンドレイ。

 護衛の騎士が馬車戸を開けると、息を切らせた伝令が馬上のままアンドレイへ伝書を差し出した。

 

「アンドレイ様! こちらを!」

「……」

 

 伝書を渡されたアンドレイ。

 内容を読み進める内、その端正な眉が少しばかり歪んでいく。

 

「……領主の館へ」

「はっ」

 

 読み終えたアンドレイは、さして動揺を見せず、目的地の変更を告げる。

 ユングヴィ公子を乗せた馬車は、バイゲリッター駐屯地とは逆方向にあるフィノーラ領主館へと馬首を返していた。

 

「何事ですか?」

「……」

 

 側近の男がそう問いかけると、アンドレイは黙って伝書を差し出す。

 読み進める間、伝令がもたらした報告を咀嚼する。

 

(解せぬ)

 

 伝令がもたらしたその内容。

 それは、バイゲリッターの物資集積所が何者かに襲われ、物資の一部が焼失したとの報告だった。

 

「解せませぬな」

 

 側近の男も同じ考えだったのだろう。

 アンドレイは短く首肯する。

 

「イザーク衆の仕業にしては出来すぎております」

 

 側近が指摘する通り、厳重な警護を掻い潜り、軍団物資を焼き討ちするような真似は、戦力を喪失したフィノーラ方面のイザーク軍には不可能であり。

 少数精鋭で破壊工作を実施するにしても、そのような高い練度を保った戦力はもう残されていないはずだ。

 また、武具や兵糧には目もくれず、バイゲリッターが保持する()()のみが焼失したことも、アンドレイらにとって不可解であり。

 警護の優先順位が一番低かったであろう馬糧を狙ったのは理解出来るが、それにつけても手際が良すぎる。

 報告によれば、賊の姿を見た者はおらず、気が付けばバイゲリッターの馬糧の一切が焼失せしめていたというのだ。

 まるで、初めからそれが目的だったかのように。

 

「領主が馬糧を融通してくれるでしょうか」

「大枚を叩く必要があるかもしれんが、私が交渉に出向けば問題ないだろう」

 

 警備責任者への追求や、賊の正体は気がかりではあるが、何はさておき失った馬糧の補充をせねばならない。この即断力も、アンドレイが反リング派の貴族達に支持される一因でもあった。

 領主へ馬糧の融通を申し込むのも、流石にユングヴィ公子が直々に申し込めば嫌とはいえないだろう。

 しかし、フィノーラはグランベル東北地方における物流の中継都市でもある。隊商の為に用意された馬糧を全て差し出すわけにはいかず、またそれらを徴発するような無茶もできない。

 フィノーラが生み出す経済的利益は、バーハラ王宮にとって無視できぬ収益だからだ。今後の事を考えると、アンドレイの独断でそれをやるには憚られる。

 

「足りなければ兵の糧食を馬に食わせればよい」

「はっ。ですが……」

「分かっている。しかし、リボーへの到着を遅らせるわけにはいかぬ」

「はっ……」

 

 だが、バイゲリッターの行軍力を維持するには、フィノーラ中の馬糧を調達しても足りるかどうか。

 十分な馬糧が無ければ、騎兵はおろか物資輸送の馬にも力は出ない。行軍速度の低下は、リボーでの“決戦”に遅れる可能性が出る。

 なにより、仮に強行軍にて間に合わせたとしても、飯不足により気合が足りていないであろう兵馬で、果たしてバイゲリッター本来の実力が出せるのだろうか。

 

「気に入らぬな」

「……」

 

 しかし、そう言いつつも、冷静な表情を保つアンドレイ。

 側近は、予想外の難儀を受けても尚、泰然とするアンドレイに黙して応える。

 頼もしい将来のユングヴィ公爵に、絶大な信頼を寄せていた。

 

 

 そして、アンドレイは領主の館に到着し、目当てにしていた馬糧が殆ど()()()()()()()()()事実を受け、初めて渋面を浮かべた。

 側近は、黙ってそれに応えていた。

 

 

 


 

「もったいないねえ。これだけの量を捨てちまうなんて」

 

 フィノーラの南方に位置する荒野。レイミア傭兵団が土まみれとなり、懸命に地面を掘り起こしている。

 そして、掘られた穴に大量の馬糧が投棄されるのを、地獄の女傭兵レイミアは嘆息まじりに眺めていた。

 

「必要ありませんから」

 

 それに短く応えるオイフェ。

 フィノーラ領主との交渉にて、可能な限り馬糧を供出してくれた領主を思うと、少年軍師の心は少しばかり痛む。

 しかし、これは不必要な物資であり、必要な行為だった。

 

「ま、それはいいんだけど……でも、埋めるより焼いちまった方が早くないかい?」

「煙を出したくありません。出来る限り我々の存在を察知されたくありませんので」

 

 大量の馬糧は、当然燃やせば煙が出る。それを察知され、隠密行に徹するオイフェ達の存在を気取られるわけにはいかない。

 

「でも、フィノーラの領主サマがチクるかもしれないだろ?」

「だから急ぐ必要があるのです。領主殿には悪い事をしましたが……」

 

 そう言ったオイフェは、結果的にはフィノーラ領主を騙してしまったことを詫びていた。

 レイミアと一夜を明かしたオイフェ。デュー達へ馬糧焼却を指示した後、フィノーラ領主へ契約解除を申し出るレイミアに同行し、そのまま馬糧買収の交渉を行っている。

 もちろん、その名目はシアルフィ騎士団グリューンリッターへの馬糧補給という体だ。

 

 政治的な立ち位置としては中立を保つフィノーラ領主。しかし、心情はバイロン派一択であり。

 だが、中立的な立場を堅守する為、表立っての支援は憚られた。下手に宰相派に目を付けられると、フィノーラでの安定した経済活動に支障が出るからだ。

 とはいえ、政治的な機微をよく理解していたオイフェの案を聞き、少しでもバイロンへの恩返しになると判断したフィノーラ領主。限界ギリギリまで馬糧を提供するのを快諾していた。

 もちろん、交渉時にはバイゲリッターの馬糧は一切喪失しておらず、オイフェ一行が馬糧を抱えフィノーラを出立した後に、デュー達による破壊工作が実行されている。

 

「悪い子だねぇ」

「レイミア殿ほどではありません」

 

 嫌らしい笑みを浮かべるレイミアに、多少は慣れたのか減らず口を叩くオイフェ。

 

「言うねぇ……でも、そんなところも可愛いねぇ……」

「は、はあ……」

 

 しかし、嫌らしい笑みをイヤらしい笑みに変えたレイミアには、未だ慣れることは出来ずにいた。

 

「オイフェ……はやく行こうよ……」

 

 そのようなオイフェに、馬車の中から弱々しい声を上げるデュー。

 幌の隙間から僅かに顔を覗かせるその表情は、難しい任務を成し遂げたが故なのか、疲れ切った表情を見せていた。

 

「そうですね。レイミア殿、急がせてください」

「あいよ。お前達、モタモタするんじゃないよ! 急ぎな!」

 

 オイフェの言を受け、配下を叱咤するレイミア。バイゲリッターに追いつかれるわけにはいかない。

 埋め立てを急いで終わらせた傭兵達は、各々が馬、そして馬車へと乗り込む。

 

「お前達もいい加減にしな!」

 

 そして、レイミアはデュー()が乗っている馬車へと激声を飛ばした。

 

「お頭、ちょっとくらいいいじゃないですか」

「御褒美欲しい也……」

「まあ実際はデューくんがほとんどやったから、私達は付いていっただけなんだけどね~」

「でも一応護衛の役割は果たしたと思いますよ?」

「デューくんすげーっス! マジ半端()ねぇっス!」

「イきすぎにも限度あり。しかしそのスタミナ誉れ高い」

 

 デューに同行したカーガ達もまた、任務達成からか満足感ある表情を浮かべ、生気をギンギンに漲らせていた。

 これならば、これから始まる全てを救う為の計画──その核心も達成できるだろう。

 オイフェは精気をシナシナに萎ませたデューを、見て見ぬ振りをした。

 

「それじゃ行きますかね、オイフェ補佐官殿」

「はい……あの、なんで私はレイミア殿と……」

「つべこべ言うんじゃないよ!」

「は、はあ……」

 

 気合十分のレイミア隊。各々が馬を走らせ、一路リボーへと進む。

 なぜかレイミアが乗る馬に同乗する事となったオイフェは、上気したレイミアに気圧され大人しく手綱を預けていた。

 もちろん、オイフェが前だ。

 

「……ッ」

 

 レイミアの熱い吐息を頭上に感じつつ、オイフェもまた気合を入れ直す。

 王宮に巣食う奸賊共。その背後に潜む暗黒教団。

 そして、それらの中心にいる、ヴェルトマー公爵アルヴィス。

 

 奴らの野望、これにて止める。

 そして、完膚なきまでに叩きのめすのだ。

 

 己の歪な復讐を、静かに滾らせるオイフェ。

 その表情に、後悔の念は無かった。

 

 

 

「なあホリンよ。あいつらだけズルくね?」

「……」

 

 滾るオイフェの後ろを、渋面を浮かべながら追従するベオウルフ。

 ホリンは、黙ってそれに応えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




セックスばっかしてんなこの作品(小学生並みの感想)

※当初の予定では二言目には「貴様もステキカットにしてやろうか」とデーモン閣下みたいなアンドレイにするつもりでしたが、やっぱ大沢版のアンドレイも素敵やなって(遠い目)

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