コーパス警備サービス本社、オペレーター室。
ここは特に仕事はなく、同僚と話すことしかやることがないので陸の孤島と言われているが唐突にクビになることもなく、テンノに強襲されて死ぬこともないことを考慮すれば楽園と言っても差し支えないだろう。
今日も多くのオペレーターは暇を持て余し、同僚とたわいの無い話で盛り上がっていた。
通信機は鳴ることのない置物として扱われ、気にするものは誰一人いなかった。
しかし今日、その置物が大きな声をあげて喚き散らかしたのだ。
『コーパス警備サービスとやらであっているか?!』
⦅はいはい、こちらコーパス警備サービス。ご依頼を承ります。⦆
全オペレーターは即座にお喋りをやめ、持ち場についた。
ここに勤めから初めての仕事だ、みんな気合が入っているのがよくわかる。
『こちらトーパ王国!助けてくれ!』
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コーパス警備サービス実働部隊
⦅それでは、今回の依頼の概要を説明しよう。私は今回の実働部隊隊長John prodmanだ、よろしく頼む。⦆
john prodman。生きる伝説にして、コーパス従業員の憧れの的。そしてなによりもコーパス月間最優秀社員賞を取ったことのある大人物だ。
悍ましい感染体の怪物、PHORID*1を相手に自らのprova*2のみで殴り合い、勝利をその手に収めた。その業績と名声は方々に轟き、コーパス取締委員会ですら彼のことは無視できなくなっていた。
そこで持ち上がっていたPMCの展開案を利用して
Johnが話し始める。
⦅今回は、トーパ王国へ、有害鳥獣駆除の名目で我々は派遣されるんだが・・・今回の害獣は知能を持ってる。まぁいつものことだな。⦆
コーパスはエウロパにおいて非常に高い頻度で“感染体”の脅威に脅かされている。感染体の一般個体に対した知能はないが、PHORIDやLEPHANTISなどの成長した感染体は人間すら上回る高い知能を持つ。
彼らにとって化け物退治は日常茶飯事だったのだ。
各人は配布されたレジュメを見ながら説明を聞く。
⦅魔王と呼ばれた個体は強力な魔法を使用するそうだが最大のものでもその射程距離は1kmくらいらしい。⦆
説明は続く。要約すると下記のとおりになる。
○ 魔王と呼ばれる害獣は知能を持ち、他の害獣を配下に置き、組織的に人間等各種族に対して害を与えようとする。
なお、彼らの主食は人間である。
○ 魔王は寿命が無く、不老である。
○ 魔王は古の魔法帝国と呼ばれた古代文明が作り出したものらしい。おそらくは遺伝子操作に類似した技術であると思われる。
○ レッドオーガ、ブルーオーガと呼ばれる魔獣も相当の強さを誇るらしい。
○ オークと呼ばれる魔獣は全長2・5m程度の巨人のような者であり、知能は低いが弓は通る。
○ ゴブリンと呼ばれる魔獣は人間より力は弱いが強暴であり、すぐに数を増やす。
○ 現在、トーパ王国騎士団が城塞都市トルメスで魔王軍をくいとめている。
⦅今回の任務内容はオーガの抹殺及び人質の救出。さっさと終わらせよう。⦆
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コーパス降下船団がトーパ王国に到着した時、地面は見たこともない怪物の群れによって埋め尽くされ、悲鳴と怒号がそこら中で飛び交っていた。
⦅こりゃすごいな……⦆
⦅給料分の仕事くらいはしようじゃないか⦆
降下船は轟音を上げながら、地面に近づき、着陸シークエンスを始める
⦅そこの兵士たち!死にたくなければ場所を空けろ、ご協力に感謝する⦆
スラスターから青い炎が吹き出し、地面を焦す。忠告を聞かず、その場に居座っていた兵士は不運にもチリとなって消えてしまった。
地に着陸脚をつけ、コーパス人とロボティクスがぞろぞろと船の腹から降りてくる。
壁の上にいるトーパ王国軍の騎士ーー現場の責任者のようなものであろうーーにして今回の依頼主、モアが降りてきた。
「おお!あなた方がコーパス警備サービスとやらの!」
⦅ええ、そうですとも。御依頼はあの化け物の掃滅ですね?⦆
「ええ、ええ!本当にやれるんですね?!成し遂げてくだされば相応の額を支払いましょう!」
モアはすっかり興奮している。
その一方コーパスはひと抱えもある紙の束を持ち出し、説明を始めた。
⦅ではこちらの契約書にサインを、なおコーパス中央取引法に基づいてこの契約書はサインしたその時から発効します。免責事項やその他各種注意事項に目を通し……⦆
彼方で悲鳴が聞こえようともコーパスは淡々と説明を続ける。
モアはあの悲鳴が自分の同僚であることに気づき、居ても立っても居られないようだ。しかしながらコーパスは一向に戦い始めようとしない。未だに紙の束を抱えてページをめくりつつ何かを話し続けている。
⦅免責事項その52、乙*3の広域攻撃に甲*4が巻き込まれた場合乙は一切の責任を負い兼ねる。免責事項その53……⦆
「わかった!わかったから早く戦っていただきたい!こうしている間にも前線のみんなは傷ついているんだ!」
ついにモアの堪忍袋の緒が切れた。前線で兵士が傷ついているにもかかわらず、ゆったりと緊張感も無く。滔々と何かの説明をしている。根っからの武人であるモアには耐えられなかった。果たして彼らは本当に戦おうとしているのか、果たして彼らには戦士としての誇りがあるのか!
モアは契約書を奪い取り、サイン欄に自らの名前を記した。
⦅では契約成立ということで……オペレーター!座標を伝える。衛星爆撃用意。⦆
コーパスの一人がそう叫ぶと空の彼方が輝き始めた。
⦅座標。194386の5E0M67⦆
⦅砲撃開始。⦆
空から光線が迸り、前線の半分を消し飛ばした。
前線とともに魔物のほとんども消し飛んだがトーパ王国軍にも多大なる被害が出てしまった。前線に構築したバリケードも無に帰し、戦っていた騎士も溶けた鉄の塊を残して蒸発してしまった。
一人の幸運な生き残りがその悲惨な状況を報告し、モアは激怒した。
「何をするんだ、何をしたんだ!!味方が、味方が!消し飛んだぞ!」
モアはコーパスの代表者と思しき人物に掴みかかった。コーパスの体は思ったよりも軽く、簡単に持ち上げられた。
⦅契約書をよく読まないからですよ、閣下。しっかりと書いてあったでしょう?!⦆
「何がだ!」
⦅免責事項その52、我々の攻撃に巻き込まれても我々は一切の責任を負わない。これを読んでいれば巻き込まれる可能性に気づいて我々ではなくグリニアや日本に依頼すると言う手もあったはずですが………それを説明している途中に奪い取ってサインをしてしまった。キチンと読まなかったあなたが悪いのです。 ⦆
コーパスはやはりどこまでも商人だった。より効率的により多くの利益を上げる方法を常に考え、この場合においてはトーパ王国軍諸共化け物どもを攻撃すると言う方法だったわけだ。
「うっ…くっ……」
痛いところを突かれたモア将軍はもはや沈黙するしかなかった。手の力は緩み、コーパスの体は地面に落とされてしまった。
⦅いっってえ……戦闘を続行する。戦線の状況は?⦆
⦅ロボティクスを展開、生身の人間の代わりに前線を張っています⦆
いつのまにか降下船がもう一隻現れ、金属の箱状のものをどんどん投げ落としていた。
そして金属の箱は地面に接触するや否や即座に二本の鳥のような足を展開し、自律行動を始めた。コーパスが誇るセキュリティロボットが一種、“モア”である。なお騎士のモアとはなんの関係もない。語源は鳥のモアだ。
その背に背負ったレーザー砲で魔物への砲撃を開始し、一匹一匹と確実
仕留めていく。
殲滅速度は遅いものの確実に魔物の数は減っていく。
⦅よし……これで前線はひとまず安定するだろう。⦆
⦅この後はいかがいたしますか?⦆
⦅上にジャッカルもしくはハイエナパックの出動要請を送る。⦆
ジャッカル。コーパスが誇る汎用型セキュリティロボットが一種にして汎用型最強を誇る。テンノでさえ油断すれば瞬きする間にやられてしまう*5。
これほどの戦力があればこの戦線は安泰だろう。
⦅それでは諸君、会議室へ。⦆
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コーパスの商人にとって真の戦場とは会議室であり、銃火飛び交う前線ではない。会議室で自らの主張を通し、より多くの予算を分捕り、より多くの利益を上げる。その裏では破壊工作、情報戦、暗殺など様々な工作がされており、戦争の前線に勝るとも劣らない血が流れ続けているのである。
⦅それではロボティクスオペレーター諸君、報告を。⦆
コーパス傭兵隊隊長が言う。これを合図に会議は踊り始める。
⦅モア部隊により前線は安定。しかし押し返すことは不可能かと。⦆
⦅上層部よりジャッカルの使用許可が下りました。現在輸送中。⦆
⦅衛星爆撃はいつでもいけます。前進観測隊が降りてきます⦆
情報が一気に押し寄せ、情報の高波、そして津波と化していった。
ロボティクスによる奮闘の様子、衛星砲の状態、上層部の判断、その他多数の情報が銃弾のようにそれぞれの口から撃ち出される。それを隊長は受け止め、うまくそれぞれの情報を繋いで現状を把握する。
⦅現状把握は完了した。それではこれからの戦略を練ろう。モア殿、情報提供を求める。⦆
「うぬ……この戦場より北にはミナイサ地区があり、そこに人質は囚われていると考えられている……」
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先程の会議で得られた情報をまとめるとこうだ。
○ 魔王軍約2万は突如としてグラメウス大陸からトーパ王国管轄、「世界の扉」へ侵攻、守備隊は全滅した。
○ その後、魔王軍は城塞都市トルメスの北側に位置するミナイサ地区に侵攻し、これを陥落させる。
○ ここにおいて、トーパ王国軍の援軍が到着し、これより先の侵攻を被害を出しながらくいとめている。
○ 魔王はミナイサ地区の領主の館を使用し、外には出てきていない。
○ ミナイサ地区には、まだ逃げ遅れた民間人約600名がおり、彼らはミナイサ地区中心部の広場に、昼間に一度集められ、毎日数人がつれていかれ、魔王その他の餌にされている。
そのため、当初600名いた逃げ送れた民間人もその数を減らし、現在は200名まで減っている(食されたため)
○ 魔王軍に与えた被害はゴブリン約3000体、オーク10体であり、こちらの損害は騎士約2000名がすでに死亡している。
○ 3回ほど、ミナイサ地区の人質救出作戦が行われたが、広場に至る大通りには必ずレッドオーガもしくはブルーオーガのどちらか1体がおり、多大な損害を受け撤退、細道を行った騎士は各個撃破され、戦線は硬直している。
○ 人質は毎日食されており、早く助けなければならない。
コーパスとしては人質が会社の重役やコーパス取締委員会会員でもなければ別に救出しなくてもいいと考えているが、今回は契約に盛り込まれているため人質を出来るだけ四肢が揃ったまま確保しつつ、オーガを抹殺せねばならない。
⦅面倒だ……ジャッカル突っ込ませて済むならいいが……⦆
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なんだあいつらは。
モアが彼らに抱いた感想だった。
頭には箱のような形をした兜をかぶっており、声も人間のものとは思えない。
前線で皆が傷ついていると言うにあの長ったらしい話が終わるまで誰も戦おうともしなかったし、先程は仲間ごと魔物を撃った。
奴らには誇りと呼ばれるものはないに違いないが、この仕事はきっちりこなしてくれるだろう。
にしても奴らはどうやってオーガを倒すつもりなのだろうか?
あの鉄の怪鳥は素早いが力がそんなにあるとは思えない。
コーパス人にしてもあの細っこい体で戦えるとも思わない。
これから軍議だと考えると気が滅入る……
そう考えながらも部下を従え、彼は会議室へと入っていった。
コーパス人はすでに代表であろう者とその護衛を従えて席に座っており。私と部下が入室したのを見て立ち上がった。
代表はかなりがっしりとしている。戦士らしい体型だ。腰にも剣だかなんなのかわからんがつけている。
とにかく彼らを着席させ、私も座った。軍議の始まりだ。
最初に口を開いたのはコーパスだった。
⦅モア殿、この先の地形について……⦆
その言葉を打ち切って、音が響き渡った。
パリン!!!
天窓のガラスが砕け散る。
入ってくる黒い物体。
物体は漆黒の羽を生やし、白い服を着て会議室に降臨する。
「魔王の側近、マラストラス!!!」
誰かが叫ぶ。
剣を抜き、マラストラスへ向け、構える。
私が剣を構えたところ、会議室にいた他の騎士たちもすでに剣を抜いていた。
「ホホホ・・・人間の頭を討ち取るために、我が足を運ばねばならぬとはな・・・。永き時をへて、なかなか進化したようだな、人間どもよ」
マラストラスはそう話すと、騎士隊長へ向かい、手を向ける。
手の先は、魔力により空気が歪み、黒い炎が現れる。
「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
副騎士長が距離を詰め、魔族マラストラスの横から斬りかかる。
気持ちの悪い笑みを浮かべ、マラストラスは手を副騎士長へ向け、魔法を発動する。
「ヘル・ファイア」
黒い獄炎の炎が副騎士長に襲いかかる。
「ギィアァァァァァァァァ!!!」
黒い炎は彼を焼き尽くす。断末魔と熱風が辺りを支配する。
コーパスの者たちは、あせった顔をしている。
マラストラスから離れようとしているようだ。
やはり、数々の伝説は噂だったのか?
彼らは、背負っていた鉄塊を魔族マラストラスへ向ける。
いったい何が出来るというのか。
バシュン!
一言も発さずに彼らは鉄塊についている引き金のようなものを引いた。そして鉄塊からは光の玉が一発とそれに伴う光の板のようなものが飛び出した。
それは光の板と玉が触れたあらゆるものを燃やし、消滅させながら魔族マラストラスへ飛んでいき……
断末魔どころか声ひとつ上げることもなく彼もしくは彼女は蒸発した。
モアが見た鉄塊はコーパスが誇る携帯プラズマ砲arcs plasma。放射線と高い熱を伴う衝撃波をプラズマ弾と共に射出する強力な兵器である。テンノの中にも愛用しているものは少なくない。
⦅それでは話の続きをしようじゃないか。⦆
代表は何もなかったようにモアに向き直って言った。
顔は兜のせいで窺い知れないが声は落ち着き払っており、護衛も鉄塊を抱えて側に立っている。
侮れない相手だ。
その後軍議は深夜まで続き、朝日が見えてからようやく会議室から皆は解放された。
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怖い・・・怖い・・・誰か、た す け て )
城塞都市トルメス、ミナイサ地区で飯屋を営んでいたエレイは恐怖に震えていた。
魔王の侵攻で生き残った者たちは、昼間に一旦広場に集められ、夜には魔物に管理された建物内へ移動させられる。
広場では、周囲を魔物が警戒し、逃げ出せない。
現に逃げようとした人はいたが、すぐに捕まり、民衆の前につれてこられ、その場で料理されてしまった。
魔物たちは料理される被害者を指差して、「生き踊り、はっはっは」などと笑っていた。
毎日、何人かが料理のために連れて行かれた。
「今日は・・・おばえと、おばえと・・・おばえだな。」
隣に住んでいた幼馴染の少女メニアも昨日連れて行かれた。
メニアの両親は娘をつてれいかれまいと、必死に戦ったが、3人そろって連れて行かれてしまった。
生き地獄。
何故今、魔王が・・・御伽噺に載っていたような恐怖が復活したのだろうか。
神様がいるなら、助けてほしい。
幼馴染で、傭兵になったガイ君、騎士モア様がいたな。助けに来てくれないかな。
モア様は、世界の扉に勤務していたから、もう死んじゃったかも。
何回か、王国騎士たちが助けに来ようとしたけど、今広場と城門を結ぶ大通りに立っているレッドオーガにやられてしまった。
昔話では、魔王軍とエルフの戦いで、エルフの神の祈りを聞き届けた太陽神がその使いをこの世に降臨させたとあった。
私はエルフだ。
神ではないけれど、祈ろう。
神様!神様!どうか皆を、そして私たちを助けて下さい。
魔を滅して下さい!!再び太陽神の使いを降臨させて下さい。お願いします!!
祈るが、何も起きない。
「ええと、今日の肉はと・・・」
また、魔物が料理のために各種族を見ている。
「魔王様は、今日はあっさりしたものがいいと言っていたな」
「今日は野菜をメインにして・・・」
皆に安堵の雰囲気が流れる。
「味付け程度に、エルフの女くらいが丁度いいだろう。おばえな」
魔物がエレイの右手を掴む。
「イヤァァァァァァァァァ神様ァァァ助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「ゴラ、暴れんな」
その時だった。
ドウン・・ドウン
レッドオーガの周りが煙に包まれた。
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⦅脅威判定……大。排除を開始⦆
合金で作られた四足歩行の化け物、コーパスの科学技術の真髄が作り出したものの一つ。the jackal。
コーパスセキュリティロボットの傑作と名高い製品であり、テンノの妨害がなくなった今では量産され、各戦線で猛威を奮っている。
二機の大口径機関砲でゴブリンを薙ぎ払い、マイクロミサイルで集ってくる有象無象を吹き飛ばし、その屈強な四肢でオーガへ飛びついた。
⦅分析完了。レッドオーガ、脅威レベル低下。このグズめ。⦆
ちなみにであるがthe jackalには煽り機能がついている、誰だこれ取り付けたの。
その言葉に激昂したレッドオーガは棍棒を振り上げ、渾身の力で持って振り下ろした。しかしながらthe jackal は合金製の装甲板で易々と受け止め、逆に持ち上げてオーガのバランスを崩し、その醜悪な赤い体の上に覆い被さった。
⦅グリッドウォール起動⦆
その無慈悲な一言とともに赤い光が見えた、高出力のレーザーだ。
哀れなレッドオーガはレーザーによって体を無数のサイコロに切り刻まれ、そのまま死んでしまった。
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人質救出作戦に参加している別働隊は、涸れた上水道を通じ、広場の真ん中にある涸れた噴水から飛び出してきた。
ゴブリンロードが10体ほど民を見張っている。
パパパパパパパパ……パパパ…
脅威判定……小。抹殺開始。
噴水だった建物の上の少し高い位置から、ゴブリンロードを排除する。
騎士モアと、傭兵ガイも噴水から飛び出す。
「まったく・・・こんな敵の真ん中に出る作戦を考える奴は、正気の沙汰じゃないぜ」
そんな事を言いながら、ガイは辺りを見回す。
ゴブリンロードに手を引かれるエルフの女性を発見する。
「あ・・・あれは!!!!!」
ガイは一直線にエレイへ向かい、ゴブリンロードに剣をふり下ろす。
ピギャァ!!!
ゴブリンロードは、ガイの剣撃により、絶命した。
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エレイは死を覚悟した。
魔王の食事の肉にされるため、化け物が私の手を引く。
「イヤァァァァァ」
「ゴ・ゴラ、暴れるな」
なおも手を引こうとされたとき、大通りにいた鬼の足元が爆発した。
鬼は怒りの顔を浮かべ、脇道に入っていった。
ドグン!!ダダダダダ・・・!!
大きな何かが破裂する音が聞こえる。
他の魔獣たちも、僅かな魔物を残し、音のする方向へ走っていく。
その時、広場の真ん中にある涸れた噴水塔から、緑色の変な格好をした人間が現れた。
斑模様で気持ち悪く、一瞬魔物と間違えたが、良く見ると人間であり、手には黒い杖のような物を握っていた。
彼らはその杖を使い、激しい音の出る何かの攻撃魔法で魔獣を葬りさった。
私の手を握っていた魔物は唖然としている。
1人の剣士がその魔物を斬って捨てた。
彼は・・・私の良く知る人物だった。
「よ・・・よぉ、エレイ、大丈夫だったか?」
幼馴染の傭兵ガイだ。
彼は、良く私の店にも食べに来てくれた。
3年前には付き合ってほしいと告白されたが、丁重にお断りした。
だって、現実を見たら、傭兵って安定していないんだもん。
でも・・・私が死にそうな時、助けてくれた。
こんなに怖い魔物がいる戦場に、私を助けに来てくれた。
(ちょっぴりカッコ良かったよ・・・)
そう思って、ガイに話しかけようとした、その時、
「エレイさん、大丈夫ですか?」
後ろからの声に反応し、光の速さで振り返る。
「モ・・モア様ん」
(いかんいかん、一瞬気が迷ってしまった。戦場まで助けに来てくれたのは、モア様も同じ。やっぱりモア様は、私の白馬の王子様よ。絶対に逃がさん)
「私のために来て下さったのですね。エレイ、カ・ン・ゲ・キ!」
報われぬ傭兵ガイだった。
ーーーーーーー
⦅市民の皆様ー、慌てずに落ち着いて避難してくださーい。全員の席がありますよ、全員登場できますよーー⦆
コーパステックがヘルメット内蔵のボイスチェンジャーを拡声器がわりにしながら避難誘導をしていた。
手にsupra……レーザーガトリングを持ちながら叫び続ける。
その時、後方から雄叫びが聞こえた。
「ちくしょう!ブルーオーガだぁぁぁぁ!!」
市民は一瞬にしてパニックに陥った。
ーーーーーーーー
彼らはよくやってくれた。あの四角い兜をかぶった、真っ赤な兵士は手に持っている鉄の塊をブルーオーガに向けて、光の球を放っている。
あの伝説のブルーオーガがオークを数十匹率いてこちらに向かっている。今度こそダメだろう。ああ、神よ、なぜ我々を見捨てたもうたのか。
⦅arca plasmaあったろ!持ってこい!⦆
四角い兜の者たちが一斉に動き始める。
しばらくすると鉄塊を抱えた者がやってきてオークを消しとばし始めた。鉄塊から光の玉と板が発射されるたびにオークが消えていく。だがオーガにはあまり効いていないように見える。肌と筋肉が焼けていっているが焼けたそばから治っていっている。
⦅モアをありったけ連れてこい、jackalもだ!⦆
叫び声を聞いてから鉄の鳥と獣ががどんどん集まってきた。
光の球は光の塊のように見えるほどに多くなり、オーガを押し始めていた。
焼けたそばから治っていくが、治る前にもっと焼けさせる。なんと言う頭の悪い戦法だろう。
しかし有効だ。
ブルーオーガはすでに腕が一本なくなっている上に腹の肉が半分以上なくなっている。
鉄の鳥は頭から光を撃ち、獣は腹から光の壁を打ちだす。
オークはとっくに全滅しており、残すはブルーオーガのみ。果たしてこの削り合いはどちらが勝つのだろうか?その答えを我々は見た
ズゥーン……
ブルーオーガがついに倒れた!
その死体はひどい状態だった。穴だらけで、ほとんどの肉がなくなっている。死肉を食うハゲタカですら寄り付こうとしないだろう。
我々は……伝説を見たのかもしれない。
ーーーーーーーーー
⦅ミナイサ地区制圧完了!旗を掲げろ!⦆
一人が合図を出した。
合図を聞いた他のものが壁の上からホログラムを展開し、壁一面にトーパ王国のシンボルとコーパスのシンボル……青い円の内側に三角がひとつ……を映し出した。
これよりこの街は魔物の支配より抜け出し、栄光ある人類の名の下に再び栄えるのだ。