これはそんな1枚から着想を得て、下書きに埋まっていた作品です。
化石燃料から太陽光へとエネルギー獲得を移した人々はそれぞれの国を3つの経済圏に集中させ、世界の統合化を図った。しかし、それは形だけで、実際には3つの軌道エレベーターを作り、それぞれが武力を抱えまるで牽制し合うかのような冷戦状態に陥っていた。そんな世の中で私設武装組織ソレスタルビーイングはあらゆる闘争に対して武力で介入することを宣言。それは恒久和平実現のため、さらには来たるべき対話のためにイオリア・シュヘンベルグが数世紀前から計画していたことであった。
イオリアは各経済圏への武力介入のために人類を新たなステージへと導く存在イノベイド。世界の情勢、それに基づく行動予測を行う量子型演算システム『ヴェーダ』。無限可動エネルギー発生機関GNドライヴ。GNドライヴを搭載したモビルスーツ『ガンダム』。そして、そのガンダムを操るべくヴェーダにより選ばれたガンダムマイスター達。ソレスタルビーイングはこれらを用いて幾度も武力介入を行い、世界からの嫌われ者となるも彼らは世界平和のため、紛争根絶のために戦いを続けた。
時に仲間を失い、家族を失い、愛する人を失った。
けれども、新たな仲間を得、探していた者と出会い、分かり合う気持ちを育み、人の素晴らしさを彼らは知っていった。
やがて、戦いを続ける中で彼らの理想は現実となった。それは彼らの望んだような形ではなかったのだが、戦争の醜さ、凄惨さを身に染みさせ心に浸透させた人々は恒久平和実現のために新政府軍を立ち上げ、少しずつではあるが平和の道を歩んでいた。
しかし、イオリア・シュヘンベルグの予想よりも早く異星人、外宇宙の生物との接触があった。地球外変異性金属体、ELSと名付けられた生命体は人と同化することによって分かり合おうとしていた。しかし、群ではなく個として生きる人々にはELSのやり方は合わず、互いにファーストコンタクトを誤った人類とELSは戦うこととなる。
だが、イノベイターとして覚醒した刹那・F・セイエイは彼らとの対話を得て、ELSの母星へと向かった。彼と共にティエリア・アーデはELSと人々との共存を目指すも、やはり人類の中にはELSの存在を看過できない者がいる。
新たな火種を抱えた地球を離れる2人は新たなガンダムマイスターを選定した後、ELSと共に彼らの母性の代わりとなる惑星を探していた。GN粒子によるワープを繰り返すうちにティエリアはとある星を見つける。
「刹那」
「なんだティエリア」
「あの星は火星じゃないか?」
言われて刹那はヴェーダを通して方向を示すティエリアの言う『火星』を見る。確かにそこにあったのは火星だ。刹那は予想外だと思いながらも、こういうこともあるかとコンソールを操作して再び粒子ワープへと移ろうとする。
「どうやら遠くへ行くはずが近くに来てしまったらしい」
太陽系の外へと飛び出すつもりが誤って戻ってきてしまったと勘違いした刹那にティエリアは首を横に振り、粒子ワープを待つように進言した。
「いや刹那、アレを見ろ」
ティエリアに言われてその先を見やる。すると、そこには見慣れない白い宇宙ステーションらしきモノが浮かんでいる。艦艇や航空艦を多数在中させれそうな大きさを誇るその宇宙ステーションに刹那とティエリアは当惑した。
「なんだアレは…?」
刹那が呟いてる間にティエリアはヴェーダで、人類が火星へと進出したかどうかを検索するも該当するような項目はない。木星探査へ出た宇宙船はあれど、火星に宇宙ステーションを浮かばせるプロジェクトなどありはしない。
「行ってみよう。何か僕達の知らない何かが動いてるのかもしれない」
「ああ」
若しかするとELSとはまた別の知的生命体が火星に拠点を構えている可能性もあるため、刹那とティエリアはELSクアンタで火星へと接近。
「なんだこの火星は…」
近づいて大気、水分を分析するとヴェーダから得た火星の情報と不一致した。火星とよく似て非なるその星にティエリアは首を傾げた。また刹那も異質な空気、そしてイノベイター故の直感なのかパイロットとしての勘なのか、刹那は何かがやってくることを察知した。
「ティエリア、何かくる」
「なに?」
謎の火星について詳細なデータが得られていないというのに、レーダーにはこちらもモビルスーツ1機よりも少しばかり大きい飛行物体が火星へと急速に近づいていた。
「GN粒子の反応はない」
「旧世代のエネルギー反応も見られない」
ならばアレは何を動力源にしている。2人にそんな疑問が浮かぶ。分からないのなら直接確かめようと刹那はその接近する機体が見える場所へと移動する。
「……輸送機か?」
「いや、中に何かいる」
イノベイターの刹那でも抽象的で漠然とした物言いしか出来ないほど接近する飛行物体は謎であった。すると飛行物体は火星の大気圏へと突入。スピードを殺さず徐々に重力に引かれていく飛行物体は、大気圏を抜けきる前に白い外装を開く。その中から現れたシルエットに見覚えのあるティエリアはふと呟いた。
「アレはモビルスーツか…?」
15メートルは軽く超える巨大な鋼の塊に、力強い胴から伸びる2本の腕と腰から伸びた2本の脚部。頭部は黄色い外に開いたアンテナと緑色に光るツインアイ。そして鋼の骨格に白と青のアーマーが付けられたその姿に刹那は無意識にある言葉が思い浮かぶ。
「ガン……ダム…?」
獣のような細く尖った白い爪のついた手には剣の形を模したようなメイスが握られており、さらに腕に取り付けられた銃砲が回転すると地面へと放たれる。
「まさか」
「行こう」
ティエリアが言い終えるよりも早く、刹那はELSクアンタで火星に突入する。ELSの力を借り、大気圏を難なく抜けたELSクアンタ越しに地表を見渡す。すると、地上では戦闘が行われておりチラホラと破壊されたモビルスーツや地上用の戦闘機の残骸が散見される。空に滞空したままそれらを見ていると装甲の分厚い砂のよう機体色が特徴的なモビルスーツがこちらを見上げる。
「やはり我々の知るモビルスーツとは違うようだ」
「ああ」
周囲を見渡して状況の把握を行おうとするティエリアと違い、刹那はガンダムと思わしき機体を見つめていた。あの重厚なる装甲を持つ機体をソードメイスの一撃で叩き潰したパワー、火星の大気圏を抜けても燃え尽きていない上に稼働している装甲やフレームの強靭さに刹那は強く引かれた。
「どうする刹那」
「……」
沈黙する刹那にティエリアは訝しむも、介入行動に移る前に何やら重装甲のモビルスーツ達が撤退していく。恐らく、刹那達をガンダムらしきモビルスーツの増援と勘違いしたらしい。離れていく機影を追うことなく、小豆色の外装をした量産機のようなデザインのモビルスーツ達は重装甲機に向けていた敵意をこちらへと向けてくる。
しかし、刹那達に敵意はなく、むしろコンタクトを取って少しでも情報が欲しい。
「パイロットと通信をとる」
「……わかった。慎重にな」
「わかっている」
回線を開こうとするが、火星が使用している回線が分からないと刹那はマイクを通しての通信を試みる。
『俺達は敵じゃない』
手を大きく広げ何も持ってないこと、戦闘の意思がないことを伝えるも突然現れたELSクアンタに向かい合ったパイロット達は未だに構えを解かない。しかし、一番の殺気を放ちあの中で最も手練であろうモビルスーツが装甲の隙間から煙を吐き出す。
『……あれ?なんか、バルバトス動かなくなった』
『はぁ!?』
『こんな時に!?』
緊張感のない言葉に彼の仲間と思わしき量産機に乗るパイロット達が驚きの声を上げる。その様子を刹那とティエリアは無言で見守っていると、量産機の中でピンクに塗られた機体のパイロットから通信を受ける。
『…ほんとに敵じゃねぇんだな?』
『ああ』
しばし間が空く。恐らくあちらは何らかの武装組織で、その大将に連絡を取って確認をしているのだろう。刹那を敵と見なすか、あるいは中立の立場と見るか。
『オーケーだ。信じるぜ……命令を聞いてくれたらな』
その言葉に刹那達は身構えるも、ピンクの機体は膝をついて未だに白い煙を吐き出すガンダムらしきモビルスーツを指差すとこう言った。
『団長からの命令だ。アレを運ぶのを手伝ってくれたら信用するってよ』
男の言葉に刹那はティエリアを見つめる。静かに首肯したのを見て、刹那は『了解した』と返すとELSクアンタを動かした。