BEYOND 〜時空を超えた会合〜   作:通りすがりの魔術師

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#3 開戦前

 

 

 

異世界人を名乗る男がガンダムによる武力介入を行うと断言したその後、展開は彼らの望むように夜明けの地平線団との正面衝突となった。その過程には鉄華団の能力を非常によく買っているギャラルホルン地球外縁軌道統制統合艦隊を統べるセブンスターズの一派であるマクギリス・ファリドの要請があってのものであった。

鉄華団の戦力だけでは敵の規模には届かないが、ギャラルホルンの力を借りられるとなれば五分に届くというくらいにはなった。おかげで重い腰を上げることができ、今は戦いに備えて準備を推し進めている。

この戦いに勝利すれば、宇宙の航路を荒らす海賊団を排除、あるいは衰退させることが出来る。それは義兄弟で輸送業を主にする名瀬・タービンやテイワズの親玉マクマード・バリストンに利益をもたらすことが出来る。軍資金は鉄華団を攻撃するように支持した活動家に払わせることができるし、なにより宇宙に名を轟かせる大海賊団に目を付けられたとなれば将来どこかしらで戦闘になることは予見されていたので、オルガはマクギリスからの要請を受諾した。

それに彼らの力を見定める場としても使えるとオルガはホタルビのモビルスーツデッキに立つ GNT-0000 ダブルオークアンタと言われていた機体を見上げる。彼らいわく本来の姿とはかなり変化しており、ELSと同化し"ELSクアンタ"と名乗るのが適切ではないかというほどに外見が変わっているのだが、元の姿を知らないオルガからすれば知ったことではない。しかし、何度見てもガンダム・フレームとは異なる内部構造に青と白の流線型な装甲や背中の触手のような羽根も何やら神秘的なものを感じさせる。

 

 

「にしても、なんでこいつの周りはキンキンうるせぇんだ…?」

 

 

その音の正体はELSが発しているものであるが、一応の説明を受けたものの、彼らが相互理解のために合体したり、模造品を作り今は自分たちが安全に住める星を探しているという情報しか知らず、ELSが発する特有の音に関しては聞かされていなかった。脳量子派を持たないオルガでも少し気に触る音はずっと続いており、ELSからのメッセージが叫びのように聞こえたというティエリアからの話を考えると正気を保っていられるかも怪しい。

 

 

「そういえば、鉄の人の近くでも鳴ってたよ」

 

 

そのつぶやきに反応したのはオルガの隣で火星ヤシをつまむ三日月であった。

 

 

「鉄の人? 刹那のことか?」

 

 

「うん」

 

 

鉄の人、というのは髪や肌がやや銀色に見えるからであろうか。三日月のネーミングセンスは独特というか当人の心境を考えていないものが多い。鉄の人というのも刹那が聞けばどういった反応をするかは分からないが、オルガにとっては彼を表した単純明快でわかりやすいあだ名という印象であった。これからしばらく共に戦う者として名を覚えたオルガであるが、三日月に至ってはあまり興味が無いらしい。

 

 

「そういやイノベイターの因子を持つやつに優先的に近付くとか言ってたな」

 

 

「イノベイター?」

 

 

「平たく言えば新人類ってやつだな」

 

 

「へー」

 

 

勘がよくなったり、寿命が今までの人類の2倍だったり、身体能力が高かったり、脳の処理速度が早いなどの特徴があるとティエリアが話していたが、そんな人種が存在しないこの世界ではピンと来ない話である。

 

 

「まぁとりあえず戦争根絶を掲げる奴らのお手並み拝見ってとこだな」

 

 

とは言ったものの、平和主義を謳いながらも暴力による解決を望むというのはなんとも矛盾しているではないかとオルガは思ったが、それは幸せを掴むために戦いに積極的に身を投じていく自分たちも同じことかとオルガは自嘲するように笑った。

 

 

 

一方、自分たちの本来の世界に帰る方法が今のところ不明瞭な刹那たちは鉄華団に身を置くこととした。粒子ワープも量子間移動をしてもオルガたちの火星に戻ってきてしまう以上、何かこの世界でやることがあるのかもしれないと結論付けた2人は夜明けの地平線団との戦いまでの日々を過ごしていた。

 

 

「…本当に子供ばかりなんだな」

 

 

 

しかし、素性を吐かせたとはいえそれが真実か分からない鉄華団にとって刹那を自由に歩かせることは出来ず、彼の移動の際には必ず監視を付けることとなった。CGS時代からのメンバーに限定されており、今日は副団長であるユージンが担当していた。

 

 

「あぁ、成人してるのは事務方とおやっさんくらいじゃねぇのか」

 

 

自分やオルガも酒は飲んだが成人はしていない。他のメンバーに関しても同じくであり、年齢的なことを言われれば自分たちはまだまだ子供である。

 

 

「けどよ、俺たちは多くの修羅場を超えてこうして一躍急成長企業にまでなったんだ」

 

 

それはユージンにとって誇らしいことであり、オルガについてきてよかったと思える結果であった。失った仲間は決して少なくないが、だからこそ死んでいった彼らのためにも今を未来を懸命に生きなければならないのだとユージンは思う。

 

 

「そうか」

 

 

そして、それを聞いた刹那も思う。もし自分がリボンズ・アルマークに目をかけられソレスタルビーイングのガンダムマイスターになっていなかったら、こういう境遇に陥っていたのではないかと。

鉄華団の面々を見ていれば不満もなく、それこそ楽しそうにしているように見えるが、ここは寿命的な死は訪れず戦場での死と隣り合わせの職場なのだ。その悲惨とともとれる死から逃れることは武闘派企業の体制から脱却するか戦いのない日々が訪れない限りは出来ないだろう。

 

 

「お前たちの戦いに意味はあるのか」

 

 

「意味? 知るかよんなの。売られた喧嘩は買うのが礼儀だろ」

 

 

ただ牙を向けられたから刃を突き立てる。それだけのことだとユージンは言ってのける。

 

 

「そうか」

 

 

刹那は彼らを理解するのには時間がかかるものだとその答えから感じとった。ELSの反応からこちらにはイノベイターに成りうる人間はいない。いたとしてもそれは彼らにとっては戦争に対する大きなアドバンテージとなりうるだけで相互理解のために使うかどうかは別の話になるだろう。そもそも、イノベイターとは純GN粒子で脳構造が遺伝子レベルで改変された人類とされているため、GN粒子のないこの世界では無理な話なのだ。

 

 

「そういや、今日はティエリアとかいうのはいねぇのか?」

 

 

「彼ならブリッジの管制システムにいると言っていたが」

 

 

自由に動ける身体が欲しいと嘆いていたティエリアであったが、ヴェーダのシステムの一部を鉄華団のネットワークシステムに取り付けたことでイサリビやホタルビのシステムへと行き来することができるようになっていた。さらには地球の鉄華団へも足を伸ばすことが可能であり、もしどちらかが非常事態に陥れば彼を介して交信ができるようになったわけだ。

 

 

「マジかよ。そんじゃあ俺らあいつに裏切られたら終わりじゃねぇか」

 

 

「そんなことはしないと思うが」

 

 

それに行き来ができるだけでシステムのハッキングができる訳では無いため、ユージンの危惧しているようなことは起こらない。それでも副団長としてそういう不測の事態に備えるのは責任感の強い彼らしいと言える。

 

 

艦内をあらかた見て周り、あとはモビルスーツデッキだけとなったところでユージンは足を止めると刹那を見た。

 

 

「明後日には敵とかち合う。あんたにも出てもらうことになるが」

 

 

「大丈夫だ問題ない」

 

 

「いやそういうことじゃねぇ」

 

 

「いや、わかっている」

 

 

刹那の言葉にユージンは「じゃあ言ってみろよ」と試すように言葉を返す。

 

 

「期待はしていないが、仲間に危害を加えたらタダではおかない…こんなところか?」

 

 

「…そうだよ。わかってんならいい」

 

 

ホントに新人類なのかよ…と小さく呟いたユージンが背を向けて再び歩きだし、刹那はそれに続く。しかし、刹那がユージンの思惑、いや鉄華団の総意に気付けたのはもし自分と彼の立場が逆ならどう思うかを考えたに過ぎない。それくらいにソレスタルビーイングのメンバーが大切な存在になっていることに新人類のくせして鈍感と言われる刹那は気付かずユージンの背中を追いかけるのであった。




鉄血って一期は1話からぶっ通してみても辛くないのに、二期は途中からやめようとなっちゃうから不思議ですよね。OOはそんなことなかったんだけど。
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